- 公開日:2020/11/09
- 更新日:2024/05/16
Withコロナの影響から、テレワークやリモートで仕事を進める企業が急激に増えています。それにともなって「そのような環境で求められるビジネススキルは何か?」というご相談をいただくようになりました。
2020年1月より、ビジネスパーソンが成長段階や組織での役割に合わせて、身につけておくべきビジネススキルについて、全6回のコラムを掲載してきました。
仕事を進める上で必要なスキルは基本的には以前のコラムでお伝えしたような内容で変わらないのですが、それとは別に、オンラインで働く上で必要なスキルというものも、徐々に明らかになってきています。
そこで、今回は特別編として、「リモート時代に必要なビジネススキル」についてお伝えします。
オンライン上で起こるすれ違い
Aさんがマネジャーを務める販売企画課は、全員がテレワークを中心に仕事を進めています。
間もなく販売スタートとなる新商品の販売計画を担当しているBくんから、チャットで連絡が来ました。
以下が、2人のチャット文のやり取りです。
Bくん「Aさん、今大丈夫ですか。相談があります」
Aさん「Bくん、おつかれさま。大丈夫だよ。どうしたの?」
Bくん「新商品の販売計画ですが、営業のミーティングで共有するように言われました。どのように準備すればいいでしょうか」
Aさん「誰に共有するように言われたのかな? あと、そのミーティングはいつなのかな?」
Bくん「開発担当のCさんです。ミーティングは来週の火曜日です」
Aさん「なるほど。営業ミーティングでの新商品の共有については、先月別の商品でも行っているから、その議事録を見てみたらどうかな」
Bくん「その議事録は先ほど見ました」
Aさん「なるほど、もう見ていたんだね。では、Bくんが分からないポイントは何かな?」
Bくん「分からないポイント、というか……。このミーティングの準備は僕がするんですか?」
Aさん「そうか。他にも何か迷っていることがありそうだね。今電話しても大丈夫かな?」
Bくん「はい。お願いします」
AさんはBくんに電話をかけて相談に乗ることにしました。
話してみると、Bくんは進め方が分からなかった、というだけでなく、今回営業ミーティングで共有する目的が理解できていないため、なぜ自分がやるのか、やるとしても何をどこまで準備すればいいのか分からなくなっていたことが分かりました。また、開発担当Cさんとの仕事の分担や、Cさんがいつも締め切り間近に依頼してくることにも不満があったようです。
オンライン、特にメールやチャットのような文字情報だけのコミュニケーションでは、このように「意図したことが上手く伝わらない」ということが起こりがちです。
上記のBくんは、上司のAさんに新商品チーム内での仕事の分担や進め方について相談したいと考えていました。しかし、初めに投げかけたのが「どのように準備すればいいでしょうか」という質問だったため、AさんはBくんが具体的な進め方を知りたいのかと思い、参考になる情報として過去の議事録を教えました。
今回の例では、Aさんが途中で違和感に気づいて電話会議に切り替えられたのですれ違いは解消できましたが、現実の職場では意図とは違う話の展開になったまま終わってしまう場合もあるでしょう。
どうして、オンラインのやり取りではこのようなすれ違いが起こってしまうのでしょうか。
オンラインのなかでもチャットでのやり取りでは、対面で話す時には把握しやすい表情や声の調子が分からず、感情が伝わってきません。そのため、相手が困って相談しているのか、単なる質問なのかを判断しづらくなります。
また、オフィスにいる時には、特に若手メンバーなどは伝えたいことがまとまらないまま「ちょっと困っているんです」「聞いてほしいんです」という語りかけで始め、だんだんと本題に入っていく、という場合もあると思います。逆に、上司の方から「最近どう?」というような曖昧な声かけをして、様子をうかがうこともあるでしょう。
しかし、チャットでは「ちょっと聞いてください」「どうしたの」「Cさんがちょっと」「Cさんがどうしたの?」というような、やり取りの量が膨大になってしまう会話をすることは現実的ではありません。
より求められる「分かりやすく伝える力」
チャットでのコミュニケーションでは、自分の伝えたいこと、聞きたいことを明確にして、それをテキストで伝わるように表現する必要があります。
弊社で2020年3月に行ったテレワークに関する調査(※)でも、「テレワーク環境下で必要度が高まるスキル」として「文章で、人に情報や要望を分かりやすく伝えること」が一番多く選択されました。
※「一般社員2040名、管理職618名に聞く テレワーク緊急実態調査」
通常のビジネスシーンでも必要な「ロジカルに伝える力」について、リモート環境ではより磨いていくことが求められるでしょう。同時に、文章を書くスキルの向上も必要です。チャットでのコミュニケーションはメールよりも気軽に呼びかけられるのがメリットである半面、あまり考えずに対面で話すように打ち込んでしまうことにより、「誰が」「いつ」などの情報が抜けやすくなります。すると、こちらの想像以上に分かりにくいものとなったり、相手に負担がかかってしまったりすることが起こりやすくなります。
また、背景や目的を伝えないためにどういう返事がほしいのかが分からない、というのもありがちな状況です。ペースが速いテキストコミュニケーションでも分かりやすい文章を打てるように、普段から文章力を磨いておくことをお薦めします。
〈チャットコミュニケーションで起こりがちなコミュニケーションロス〉
・主語がないため、伝えたい状況が伝わらない
・目的や背景が分からないため、質問に対してどこまで何を回答すべきかが分からない
・状況報告だけを送られたが、単なる共有なのか、何か指示が欲しいのかが分からない
〈分かりやすい伝え方を磨くのにお薦めの研修〉
◆ロジカルシンキングのノウハウ・ドゥハウ(問題解決に必要な思考法とツールを身につける実践的ロジカルシンキング研修)
◆話がわかりやすくなる!ロジカルコミュニケーション術
上記のBくんの場合であれば、「Cさんに来週の営業ミーティングの準備をするように言われましたが、納期が短くて困っています。Cさんにも一緒に進めてもらえるよう取り計らってもらえないでしょうか」、など上司のAさんに何を依頼したいのかを明確にして連絡するとスムーズだったと思われます。
自律的に仕事を進める力
また、リモート環境で仕事をする際には上司や先輩から細かく指示をもらうことが難しくなるため、一人ひとりが自律的に進める力を磨くことが重要です。担当する仕事の目的を理解すること、目的から照らした全体像を捉えること、スケジュールを決めてから進めることは、必ず意識したいポイントです。
上記の例でいうと、Bくんがもし仕事の目的と全体像について意識をしていたら、あらかじめ営業のミーティングで共有の機会があることを想定できていたかもしれません。
また、Aさんに何を依頼したいのか明確にした方が伝わる、ということを前章でお伝え前述しましたが、明確に伝えるためには文章力だけでなく自律的なスタンスも必要となってきます。
「自分が困っている」ということを伝えるだけではなく、仕事の全体像を考えた時に「何が最適案なのか」を自分なりに考えて伝える、というスタンスです。
◆(若手向け)仕事の全体像を捉える ~目的や成果を意識した仕事の進め方
メンバーが自律的に仕事を進めるようになるためには、上司の関わり方も意識していく必要があります。こちらは以前に掲載したコラムでもお伝えしましたのでご参照ください。リモート時代には、さらに求められるマネジメントスタイルです。
実際に新型コロナウイルスの影響によりリモート環境で働くようになった企業からは、自律的なマネジメントを目的とした1on1ミーティングの導入についてよくご相談をいただくようになりました。
最後に
最後に、ビジネススキルとは少し離れますが、リモートでの働き方として意図的に「雑談」の機会を持つこともお薦めしておきたいと思います。
これまでにお伝えしたように、リモートでの業務上のコミュニケーションは明解に、分かりやすい形で進めることが求められます。それは業務を進めるために必要なことですが、その結果、何気ない会話をしたり、雑談をして親近感を高めたりする機会が全くなくなってしまう、という状況を招く可能性もあります。
ただでさえ孤独になりがちなリモート環境で、上司や同僚と親近感や信頼感を持てるコミュニケーションを取れない状況が続くことは、仕事への意欲やチームワークはもちろん、雑談で早めに知っておけばミスを防いだり効率的に進められたりする情報共有の機会が減少する意味でも影響を及ぼすことでしょう。
時には1on1ミーティングを雑談に使う、チームでプライベートを含めて近況を報告し合う時間を持つ、雑談専用のスレッドをつくり投稿するなど、意図的に機会をつくりましょう。仕事でのコミュニケーションは明解に、それ以外に気を許して話す場も持つ、ということをお薦めします。
執筆者
サービス統括部
マーケティンググループ
マネジャー
石岡 由紀子
ITコンサル担当を経て、2004年リクルートマネジメントソリューションズ入社。ソリューションプランナー、公開研修サービスの事業開発、プロモーション職を務める。現職ではWEBサイトを通じて人事、人材開発担当者や働くビジネスパーソンがやりがいを持って働くための情報発信に取り組む。
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