マネジメント人材育成ブック【1】マネジャーになる(マネジャーへのトランジション研究) 新任マネジャーのほとんどが
トランジションに苦労している

近年、私たちが行った研究を6つのテーマでまとめ直した『マネジメント人材育成ブック』の抜粋をお送りします。
第1章は、「マネジャーになる」。マネジャーへのトランジション研究の成果をお伝えします。

なお、はじめに、架空の会社・X食品の新任営業マネジャー(加藤洋介)と、社内の誰かが対話する「ストーリー」がついています。
それぞれの章の研究成果を受けた内容となっており、本文の導入として気軽にお読みいただければ幸いです。

また、この記事はあくまでも『マネジメント人材育成ブック』の一部を抜粋したものです。
メルマガ会員の方はブック全体のPDFをダウンロードいただけます。ご興味のある方は、ぜひそちらもお読みください。


第1話 新任マネジャー、苦労する

加藤「小宮課長、先日は本当にありがとうございました。」

ビールを一口飲んだ後、加藤洋介はおもむろに言った。行きつけの焼鳥屋は騒がしかったが、2人はどちらも営業マネジャーで、声が大きかったから何の問題もなかった。

小宮「あれから5カ月か。あのときとは表情が全然違うな。」

小宮はつくねをひとつ取りながら、嬉しそうに答えた。

加藤「小宮課長のおかげです。完全に自信を失っていましたから。」

小宮「おまえ、これが初めてのスランプだよな? 営業のプレイヤーとしては、最初からずっと成績が良かったから。」

加藤「正直、あんなに悩んだのは、働き出して初めてです。」

小宮はニヤリとしながら、加藤を指さした。

小宮「けっこうあるんだよ、マネジャーになるところで苦労するケース。特に、おまえみたいな優秀な営業に意外と多いんだ。」

加藤「へえ、なぜですか?」

小宮「マネジャーとプレイヤーは違う仕事なんだよ。でも、優秀なヤツほど、今までどおりのやり方でできると思い込んで、つまずくんだ。」

加藤「マネジャーとプレイヤーが全然違うというのは、痛感しました。僕は最初の頃、毎日メンバーと同行していて、最終的にはいつも自分が前面に立って営業していたんです。自分では頑張っているつもりでしたが、いつまで経ってもチーム全体の成績が伸びない。このやり方じゃダメなんだと焦り始めたのが、マネジャー4カ月目のことでした。」

小宮「でも、どうしたらいいかがわからなかった。」

加藤「そうです。だから、小宮課長に相談に行ったんです。」

そう言うと、加藤は早くも中ジョッキを一気に飲みほした。

小宮「そのとき、何に困っていたんだっけ?」

加藤「大きく3つの悩みがありました。1つ目に、どこまでメンバーに業務を任せてよいのかがわかりませんでした。2つ目に、メンバーにどこまで厳しく接していいのかが見えなかったんです。3つ目に、プレイング業務が多すぎて、マネジメント業務とのバランスがとれずに困っていました。そこで考えたのは、僕がプレイヤーだったとき、どんなマネジャーを理想にしていたかでした。小宮課長が真っ先に思い浮かんだので、課長の行動を思い出しました。そういえば、課長は僕と腹を割って話す場をつくってくれたから、自分もそうしてみようとか。それで、アドバイスをいただきに行ったんです。」

小宮「洋介は、来る前にだいたい自分で答えを出していたから、アドバイスすることはあまりなかったけどな。」

加藤「そんなことないですよ。新任マネジメント研修は意外と役に立つから活かした方がいいとか、あの本が面白いとか、注意した方がいい点とか、いろいろ教えてもらいました。」

小宮「そうだっけ。それで、どうやって克服したの?」

加藤「課長や研修、本から学んだことを活かしながら、自分でよく考えて、試行錯誤しながら修正してきました。まず営業同行をぐっと減らしました。同行しても、自分は決して前に出ないようにしました。権限も少しずつメンバーに委譲しています。課長に言われた通り、厳しくするところは厳しくしながらも、メンバーの良いところを伸ばすように気をつけています。そんな感じで対応していたら、メンバー育成が楽しくなってきたんです。それに、自分のプレイヤー業務が少しずつ減って、マネジメント業務がうまく回るようになってきました。もちろん、まだまだ道半ばですが。」

小宮「順調じゃないか。何を学んだかもよくわかっているし、オレが言えることはもうないよ。その調子で頑張れ!」

加藤「はい!」

小宮「じゃあ、とりあえず、もう一杯飲もうか。」
 

5人に1人はマネジャーに適応できていない
残りの多くも、最初は問題への対処方法がわからない

最初に、マネジャーへのトランジションの全体状況について、定量調査(1)を中心に、わかっていることをお伝えします。まず指摘したいのは、新任マネジャーの5人に1人は、マネジャーに適応できていないという事実です。「今振り返ると、管理職に就任後の新しい環境への適応は、どの程度うまくいったと思いますか」という質問に対して、「適応が(どちらかといえば/まったく)うまくいかなかった」と答えた人が、20.1%いました(図表1)。自らマネジャーへのトランジションに成功していないと考える方がこれだけいるということは、決して小さな問題ではないでしょう。

また、定量調査(1)-1と同時に行った定性調査(1)-2では、半数以上が、「これまでの経験の中で最も大変だった時期」として「マネジメントへの移行時」を挙げています(図表1)。さらに別の調査では、「プロ経営者」の方の多くが、若いときにマネジャーへのトランジションで苦労し、修羅場〈第2章〉を迎えて、そのときの経験から多くを学んでいることがわかっています〈第6章〉。結果的には適応がうまくいったとしても、ほとんどのマネジャーにとって、トランジションは決して楽ではないのです。

※調査概要についてはPDF版をご参照ください。
 

 
次に、「管理職の仕事がわかるまでの期間」ですが、半年未満が40.5%、1年未満が64.6%、2年未満が80.6%となっています(図表2)。また、定性調査(2)では、8名中6名が、着任後3カ月後に壁に当たっており、6カ月後には何らかの形で壁を克服していました(図表3)。この結果を受けて、私たちは、新任マネジャーとなって数カ月ほど苦労した後で、半年後〜2年後には問題に対処できるようになり、軌道に乗っていく方が多いという仮説を立てて、この現象をマネジャーへのトランジションの「U字型カーブ」と呼ぶことにしました。U字型カーブを描くマネジャーは、最初はやる気に溢れているのですが、半年から2年ほどの間に一度モチベーションが落ち込んで、再び復活してくるのです。そして、モチベーションが落ちた後に復活できない方は、トランジションに失敗してしまうのではないかと考えています。

具体例をいくつかご紹介します。マネジャー就任時は「全国1位の組織にする」と宣言していたE氏は、3カ月目にはリーダーの業績不振やメンバーの離反に遭っており、大変な状況にありました。しかし、6カ月目に再びインタビューすると、リーダーやメンバーとしっかり向き合い、お互いに理解し合える信頼関係を築けており、業績も回復傾向にありました。着任直後のインタビューでは「分析が得意です」と語っていたH氏は、3カ月目には、年上のメンバーに指導できないことや、自分の価値がわからないことに悩んでいました。しかし、6カ月目にはキーパーソンと深く話し合うことで、自分の価値が明確になり、確実にマネジャーとしての自信をつけていました。E氏・H氏以外にも、図表3に紹介している方々は、それぞれ就任3カ月目には課題感があり、悩みを抱えていて、一時的にモチベーションが落ちていましたが、就任6カ月目には課題を半ば解決し、前進していました。
 

 
私たちは、この仮説を定量調査(1)で検証しました。
この調査では、モチベーションがU字型カーブ(左から5つ目)を描いたと回答した人は21.4%で、他にさまざまなトランジションのタイプがあることがわかりました。
横ばい(左から1つ目)、あるいは意欲が増している(左から2つ目)という回答が合わせて半数を超えた一方で、意欲が低下中だという回答(左から3つ目と4つ目)が25%ほどありました。
 

以上の成果を踏まえると、マネジャーに適応できていない方、意欲が落ちている方が4人から5人に1人いることは確かと言えるでしょう。
なぜここまでマネジャーへのトランジションが大変なのかといえば、マネジャーになって直面する問題への対処方法がわからないからです。
そこで次に、新任マネジャーが直面する問題をご紹介します。

♦PDF版のご案内

この他、第1章では「新任マネジャーが直面する問題」「問題をどう克服するか」「トランジションから何を学べるか」といった研究成果や「研究の背景」「先行研究」などを掲載しています。

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