- 公開日:2020/05/11
- 更新日:2024/04/06
ビジネスパーソンには、役割に応じて身につけると効果的に仕事が進むビジネススキルがあります。
元々得意なことや、仕事のなかで自然に身につけていくことができる場合もありますが、身につけるために遠回りをしたり、その過程で壁にぶつかったりすることもあります。
私たちが提供するビジネスパーソンの学び場「リクルートマネジメントスクール」では、お客様から特定の社員に何を学ばせたらいいのか、というご質問を非常に多くいただきます。
そこで本連載では、企業で働くビジネスパーソンに、求められる役割に応じて必要になるビジネススキルについてお伝えしていきます。
今回は、職場の中心となり、主力業務を担うリーダーに身につけてほしいスキルについてお話しします。
- 目次
- プロジェクトで起こりがちなトラブル
- プロジェクトの成功に必要なスキルとマインドとは?
- 複数プロジェクトをマネジメントするためには
- 身につけておきたい会議進行、ファシリテーションスキル、交渉力
- リーダーにこそ大事にしてほしい、セルフマネジメント術
- 最後に
プロジェクトで起こりがちなトラブル
連載第4回で中堅社員だったAくんは、リーダーに成長しています。初めてのプロジェクトリーダーとして、お客様を招いたユーザー交流会の初開催を任せられることになりました。営業などの他部署も含めて合計6人のメンバーがいるプロジェクトで、プロジェクトマネジャーは上司のBさんです。
プロジェクトが始まって1カ月が経ったころ、Aくんはプロジェクトメンバーである営業のCさんから相談を受けました。
Cさん「Aさん、プロジェクトについてちょっとご相談があるんですけど」
Aくん「どうしましたか?」
Cさん「ユーザー交流会の参加者について参加募集のDMを送ったのですが、参加申し込みが想定の半分程度だったんです。だから会場はもう少し狭いところにした方がいいかと思って会場予約担当のDさんに言ったら、『今から変更はできないし予定通り人数を集めるのが営業の仕事だろ』って言われてしまって……困っています」
Aくんは集客が進んでいなかったことを全く知らなかったため、驚きました。
Aくん「……そんな状況だったんですね。進捗が遅れていたなら早めに教えていただきたかったです」
Cさん「進捗は遅れていませんよ。予定通りDMは出しましたから」
Aくん「それはそうですけど……。営業からお客様に直接声をかけてもらってもう少し参加人数を増やすことはできませんか?」
Cさん「そもそも営業に負担をかけられないからDMで集客しようと決めたので、それは難しいですね。私も自分の営業活動があるので、これ以上プロジェクトに時間はかけられませんし。リーダーのAさんから、会場担当のDさんに、直接伝えてもらえませんか?」
このことについては、来週のプロジェクトミーティングで話し合うことになりました。
予期せぬ事態が起こり、困ってしまったAくんは、先んじて上司のBさんに相談の時間を取ってもらうことにしました。
上記のやり取りはプロジェクト進行において起こりがちな場面です。
ビルを建築したりシステムを構築したりするようなビッグプロジェクトだけではなく、例のようなイベント開催や、商品パンフレットの刷新、新人の育成など、一定の期間に決まった成果を出すことが求められるプロジェクト型の仕事はたくさんあります。1人が複数のプロジェクトに参加しているため、リーダーの期待とメンバーの参加意欲がずれてしまうことが起こります。
プロジェクトの成功に必要なスキルとマインドとは?
上の場面では、Aくんや会場担当のDさんには、Cさんが目標の人数まで集客することについて責任を持って進めてくれるだろう、という期待がありました。そのため、想定通り集客ができていない場合は、プロジェクトに相談の上、追加施策を考えるところまで担当してもらえるだろうと考えていたのです。一方、Cさんからすると、担当していたDMの発送は完了したのだから責任は果たした、これ以上時間を割くことはできないという意見です。
このようなすれ違いが起こってしまうのはなぜでしょうか。それには2つの側面からの理由が考えられます。
1つはプロジェクトリーダーであるAくんが、プロジェクト開始時に洗い出しておくべきリスクやその対処法について設定していなかったことです。プロジェクトにはリスク管理の他にも、PMBOKのように進め方を定義しているものがあります。企業独自でプロジェクト進行のためのルールやツールを準備している企業も少なくありません。リーダーはそのような基本ルールを活用してプロジェクトを進行させる必要があります。
ただし、セオリー通りに進めるだけではプロジェクトを成功に導くのは難しい時も出てきます。それが2つ目の理由である、コミュニケーションやチームワークの問題です。
プロジェクトに参加するそれぞれのメンバーがどのような目的や心構えで参加しているのかはさまざまです。リーダーとして何を期待したいと思っているのか、それに対してどこまで応えてもらえるのかをきちんとすり合わせておくこと、またメンバーが主体的にプロジェクトに参加してくれるように働きかけることも重要です。
こちらのコースでは、プロジェクトで起こりがちな問題への対処法とメンバーの巻き込み方についてお伝えしています。
◆<リーダー向け>社内プロジェクトの円滑な進め方 ~起こりがちな問題への対処法とメンバーの巻き込み方~【3時間】
複数プロジェクトをマネジメントするためには
また、メンバーだけでなくリーダーも複数のプロジェクトのリーダーを務める場合が多いと思います。Aくんのような、イベントの企画をやりながら、新商品のリリースプロジェクトも進め、新入社員育成チームのリーダーでもあり、WEBサイトの改修チームにはメンバーとして参加している、もちろんその他に日常業務もある、というリーダーは珍しくありません。
プロジェクトを複数担当している場合でも、基本的な進め方に変わりはありませんが、同時並行で複数のタスクが進み、忙しくなってくるので、よりポイントを押さえたリスク管理が求められます。
また、プロジェクトごとの相互関係を把握し、一方のプロジェクトで何かが起きた時に、他方のプロジェクトにどのような影響があるのか、どのように対処すればいいのか、を考える必要があります。そもそも、そうやって複数のプロジェクトの横串を通して見てほしい、という期待を持たれる人がアサインされている場合が多いのです。
身につけておきたい会議進行、ファシリテーションスキル、交渉力
さて、ここまでプロジェクトマネジメントについてお伝えしてきました。
次に、プロジェクトの進行はもちろん、リーダーが日常業務を進めるうえでも必要な、個別のスキルについてお話ししていきます。
リーダーは会議を進行する場面が多くなります。それも、プロジェクトの立ち上げや、難しい場面での調整など難度も重要度も高い会議が増えます。
数年前から働き方改革の浸透と共に、会議の生産性への注目が高まっています。会議の無駄を省き、生産性高く進めるために、まず大切なのは事前準備です。
・会議の目的を定め、メンバーと事前に議題を共有しておく。可能なら議論したいことをメンバーからも事前にもらっておく
・各参加メンバーへの期待役割を考える。会議に特段出なくてもいい人を招集しない
などを意識して進めるだけで、かなり会議の効果が高まります。
また、会議当日の進行のためにはファシリテーションスキルが必要です。メンバーの意見を引き出し、ゴールに向かって最適な解を出すために会議進行をするスキルです。特に課題解決やアイディア出しを目的とした会議においては、ファシリテーションによってアウトプットが大きく変わってきます。
プロジェクト内外で利害が対立した時の調整も、リーダーの役割です。
効果的な会議の進め方、ファシリテーション、交渉スキルなどを学んでおくことをお薦めします。
◆ミーティング・マネジメント(会議の生産性を高める!準備から運営、決定まで3つのステップで学ぶ会議力向上研修)【1日】
◆ファシリテーションの基本~会議の生産性を高める4つのスキル~【3時間】
◆ビジネス交渉人材育成プログラム(WIN-WiNの関係を実現する交渉力習得研修) 【通い2日】
リーダーにこそ大事にしてほしい、セルフマネジメント術
このように、リーダーの役割はなかなか大変なものです。仕事上の責任も重く、難しい対人関係に悩むことも多々あります。心身に悪影響が及ぶようなことまであっては大変ですが、そこまでいかなくても行き詰まった気持ちになり、前向きに仕事に取り組めなくなったりすることもあるでしょう。
時には自分自身を見つめ直し、物の見方を広げたり、新しい考え方の選択肢を増やしたりすることで、セルフマネジメント力を高めていく時間を取ることをお薦めします。
リクルートマネジメントスクールで提供している「アドラー心理学」や、「アンコンシャス・バイアス」「マインドフルネス」など、セルフマネジメントを高めるコースを受講するリーダー層が増えています。ビジネスの中核になるリーダー層だけに自分のケアも後回しにせず取り組んでください。
最後に
リーダーの役割は、方向性を示しチームを率いていくことです。今回はリーダーの役割について、チームを率いていくためのスキルを中心にご紹介しました。その他にもリーダーには、方向性を定めるためのスキルも必要です。
前回、中堅社員の回では問題解決スキルについてお伝えしました。リーダーになると、今度はどういった問題に取り組んでいくべきかを考えるための課題設定スキルも重要になってきます。
一度にさまざまなことを身につけるのは大変ですが、自分にとって何が課題となっているのか、また仕事の状況から見てどの優先順位が高いのか、考えながら学習を重ねていっていただければ幸いです。
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