職場での「心理的安全性」に関する実態調査 チームリーダー516人に聞く、心理的安全性の必要性や効能

「心理的安全性」という言葉が普及したのは最近のことであるが、そのなじみやすいコンセプトは多くのビジネスパーソンの共感を得やすいのではないだろうか。

本調査では、職場での「心理的安全性」の必要性や効能についての従業員の意識を調査すると共に、心理的安全性を構成する要素が何に影響を受けているかを明らかにすることを試みた。


調査概要

調査対象は、3名以上のメンバーがいる部・課・チームを率いる立場にある人とした。部・課などの定常組織に限らず、プロジェクト・チームも対象としているため、管理職層だけでなく条件を満たす一般社員層も対象に含んでいる。調査の概要については図表1を参照されたい。

「心理的安全性」を知っているか

「心理的安全性」という言葉が誕生したのは1999年だが、注目されるようになったのは2012年のグーグル社の研究結果によるところが大きいだろう。比較的新しい言葉ともいえる「心理的安全性」は、いまどれくらいのリーダー層に知られているのだろうか。確認したところ、約4分の1が「内容の詳細までよく知っている・だいたいの意味を知っている」と答えた一方、「聞いたことがない・知らない」という人が5割近くいた(図表2)。

「心理的安全性」は必要か

「心理的安全性」について、チームのメンバーそれぞれが「自分の考えや感情を安心して気兼ねなく発言できる雰囲気」という定義を行い、「心理的安全性」という言葉を知らない人も含めて、その必要性について確認した(図表3)。結果、「必要である」「やや必要である」が合わせて7割強となった。一方で「どちらともいえない」が約2割、「あまり必要でない」「必要でない」が5%強であった。多くの人から心理的安全性は必要と認識されているものの、必要ではないと思われる場面も少なからず存在することが窺える。

心理的安全性が必要な理由について自由記述で回答してもらったところ、「業務上、情報共有が必要である」ほか、「多様な意見や活発な議論によって新しいものを生み出す必要がある」「早期にリスク情報を挙げてもらって大きなトラブルにつながるのを防ぐ」などが多かった。「意見を発言できないとストレスがたまる」「いろいろな意見が出されないと組織をまとめられない」「良い雰囲気づくり」「モチベーションの向上」といった業務上の必要性というよりは心情面に配慮した意見もある。

一方、必要ない理由としては「ネガティブな感情が出される」「いろいろな意見が出されると組織がまとまらなくなる」という意見が多かった。

「心理的安全性」が必要な職務の特徴とは

心理的安全性の必要性の違いは何によって生まれるのか。必要性の高低ごとに業務の特徴を確認した(図表4)。心理的安全性について、「必要群(必要である・やや必要である)」には「常にメンバー間で連携・情報共有しながら仕事を進める必要がある」「多様な立場や領域の考え方をまとめる必要がある」などの特徴が窺える。逆に「不要群(必要でない・あまり必要でない)」では「異なる場所にいながら協働する必要」が少なかったり「新しいモノ・サービス・オペレーションなどを生み出すこと」があまり求められていなかったりという特徴があるようだ。

「心理的安全性」はチームの成果につながるのか

心理的安全性を必要と考えるチームにおいて、心理的安全性の高さはチームのパフォーマンスと関係があるのだろうか。

まず心理的安全性の構成要素と、チームが「会社が期待する以上の成果を上げているか」についての認識との関係を確認した(図表5)。なお、心理的安全性の構成要素は、ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンが提唱している7項目を翻訳したものに、「自分の考えや感情を安心して気兼ねなく発言できる雰囲気」に相応すると思われる4項目を作成して追加したものである。

「チーム成果・高群(あてはまる・ややあてはまる)」は、「チーム成果・低群(あてはまらない・ややあてはまらない)」に比べ、心理的安全性が高い特徴を示す項目が多かった。特に、「チームのメンバーは、問題点や困難な論点を提起することができる」「会議をするときは、各メンバーが同じくらい発言している」「チームのメンバーは、他のメンバーの反応に配慮しながら分かりやすく話をしている」という点に顕著な差が見られた。

また広くパフォーマンスを考えたときには、ベースとなるメンバーの心身の疲労も考慮する必要がある。そこでメンバーの「心身に疲れが見られるか」と心理的安全性の構成要素の関係を確認した。「疲弊・少群(メンバーのほとんどがあてはまらない・メンバーの多くがあてはまらない)」は「疲弊・多群(メンバーのほとんどがあてはまる・メンバーの多くがあてはまる)」に比べ、「チームのメンバーは、異質な人を拒絶することがある」「チームのメンバーが他のメンバーに助けを求めるのは難しい」という点が低かった。メンバーから拒絶されず、必要なときに助けを求められる関係が心身のために望ましいことが窺える。

「心理的安全性」を作るためには

心理的安全性を作り出すためにはどうしたらいいのだろうか。心理的安全性が高い群と低い群で、リーダー自身が意識していることは異なるのだろうか。自由記述回答をもとに、心理的安全性を高めるために工夫しているという点を整理した(図表6)。

図表5で挙げた心理的安全性の構成要素のうち、エドモンドソンの7項目を用いて、平均得点において上位・下位25%をぞれぞれ心理的安全性の高い群、低い群とした。心理的安全性が高い群では、特に「話しやすい環境を作る」「話を聞く姿勢」「仕組みを作る」についてのコメントが多かった。内容は多岐にわたるが「その他心掛け」も多く、日々のマネジメントでさまざまな工夫をしていることが窺える。

心理的安全性が低い群では、約4割が「なし」との回答で最も多い。次いで多かったのは「コミュニケーションの強化」であった。このカテゴリは抽象的な内容のものが多く、心理的安全性が低い群ではあまり具体的な取り組みがなされていないことが推測される。

また、「心理的安全性」のベースとしては、チームを構成するメンバーが信頼に足りるかどうかも影響するのではないだろうか。

メンバーに対する信頼といっても、能力面に対する信頼もあれば、意欲や倫理性に対する信頼もある。そこで、メンバーの特徴と、チームの心理的安全性の高低がどう関係しているかを確認した(図表7)。

おわりに−

「心理的安全性」はいくつかの意味合いを含む概念であり、個別のチームの状況によっては不必要な場合もあるかもしれない。しかし、生産性を高めていくという流れのなかでは、一方的な指示のもと遂行される比較的単純な業務は減り、双方向の情報共有が求められる複雑な業務が増えていくだろう。「心理的安全性」が低く、メンバーの経験から学んだり、もてる情報を統合した判断をしたりすることができない企業は、進む方向性によっては大きく劣後していく可能性がある。また「心理的安全性」が低い場合には心身の負担が大きくなる可能性もあるため、メンバーの能力を生かすどころか引きつけておくことも難しい可能性もある。

「心理的安全性」の効能について、今後も研究を進めて実践的な示唆を提供していきたい。

【text:組織行動研究所 研究員 松本洋平】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.48 特集1「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら
※記事の内容および所属は掲載時点のものとなります。

関連する記事

関連する調査・研究

関連するセミナー

お問い合わせはこちらから
WEBからのお問い合わせ
資料請求・お問い合わせ
[報道関係・マスコミの皆様へ]
取材・お問い合わせ
電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付時間
/ 8:30~18:00 月~金(祝祭日除く)

※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください。

記事のキーワード検索
Page Top