2019年新入社員調査 今年の新入社員は何を求めているのか? 個性を大事にする新入社員の生かし方

執筆者情報
ソリューション統括部
HRD事業開発部
研究員
小松 苑子

今年の新入社員は、何を大切にして働きたいと思い、どのような期待と不安を持っているのでしょうか? 弊社では、毎年、新入社員に対して意識調査を行っています。本調査は、新入社員の期待や不安などに関する5つの質問についてそれぞれの選択肢のうち、あてはまるものを最大3つまで選択する形式で行いました。
2019年3月19日〜4月15日に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の当該期間での受講者1178名(平均年齢:21.8歳/男女比:約5対5/最終学歴:大卒以上83.4%/300名未満企業比率:62.6%)を対象としています。


ルールやマナーよりもスキルや知識を大切にしたい

はじめに、今年の新入社員は、社会人として働いていく上で何を大切にしたいと思っているのかを見てみましょう。

昨年まで不動の1位だった「社会人としてのルール・マナーを身につけること」に代わって、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が首位になりました。
また、「何があってもあきらめずにやりきること」は調査開始(2010年)以降下がり続けて最低値を記録している一方、「仕事で高い成果を出すこと」が過去最高値の19.1ポイントを記録しています。

このことから、今年の新入社員は、仕事をすぐにあきらめずに失敗や挑戦を繰り返しながら粘り強く進めることよりも、目の前の仕事に必要なスキル・知識をインプットしながら着実に進めて成果を出すことに関心がありそうです。
「時短」「働き方改革」などの言葉に代表されるように、ここ数年の働き方の変容と連動して、効率的に成果を出すことを重視する傾向が表れているのかもしれません。

受け入れる上司や先輩としては、一般的なマナーやルールの意味や価値についても新入社員に伝えられるとよいでしょう。例えば、「さまざまなステークホルダーと仕事を進める上でマナーが必要である」「マナーあっての関係性構築であり、それが後々のチャンスにつながり、結果的に生産性の高い仕事につながりやすい」などと説明することで、新入社員も納得して取り組むことができます。

“集団”よりも“個”を軸とする助けあいを求める

次に、今年の新入社員はどのような職場で働きたいと思っているのかを見てみましょう。

この3年、「お互いに助けあう」「アットホーム」「お互いに個性を尊重する」は不動のトップ3ですが、「お互いに個性を尊重する」の伸長が著しく、2010年の調査開始当初から16.4ポイントも伸びています。
一方、「活気がある」「皆が1つの目標を共有している」「お互いに鍛えあう」「ルール・決め事が明確」の4項目は下がり続けており、「ルール・決め事が明確」以外の3項目は過去最低値を記録しました。

調査開始した9年前も「お互いに助けあう」が1位でしたが、どうやらそのころ求められていた“助けあい”とは中身が違いそうです。
1つの目標や決め事のもとで鍛えあいながら一丸となって進んでいく“集団的な助けあい”ではなく、互いの個性や特徴を認め、それを生かし合いながらあたたかい雰囲気のなかで仕事を進めていく“個性尊重型の助けあい”をイメージしているようです。

受け入れ側としては、目標やルールを伝える際、トップダウンで一律に“集団”に対して伝えるのではなく、一人ひとりの意見を聞きながら共に目指すべきものを見出す姿勢を示したり、上位目的の手段として提示したりするなど、それぞれ“個人”が大事にしていることにつなげて訴えかける工夫が求められます。

上司には高感度センサーを期待

続いて上司に期待することを見てみましょう。

「相手の意見や考え方に耳を傾けること」「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」「好き嫌いで判断をしないこと」「よいこと・よい仕事をほめること」の4項目の上昇率は著しい一方、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」「周囲を引っ張るリーダーシップ」「仕事がバリバリできること」がポイントを落とし続けています。
また、「仕事に情熱を持って取り組むこと」は、昨年から1ランク上がり4位になっています。

仕事に情熱を持つ上司を理想とするものの、その“情熱”が意味するところは、「仕事がバリバリでき」たり、「周囲を引っ張るリーダーシップ」を発揮したり、「厳しく指導する」姿ではないのでしょう。
今年の新入社員にとっての理想の上司とは、一人ひとりの声をキャッチして個別最適な指導を行い、よい点に目を向けてメンバーの行動やアウトプットを承認する、そんな高い感度を持った人といえそうです。

“リーダー”よりも“専門家”志向

では、今年の新入社員が「これから身につけたい力」を確認したいと思います。

昨年から、「専門知識」「プレゼンテーション力」「論理的思考力」が上昇している一方で、「マナー」「交渉力」「リーダーシップ」のポイントは下落の傾向にあり、過去最低値を記録しています。
このことから、リーダーや上位者として影響力を与えることよりも、必要な専門知識やスキルを身につけて活用することに意識が向いていることが窺えます。

研修や職場では、人前で円滑にスピーチを行うなど、プレゼンテーション力の高い若手の姿に驚く声が聞かれます。受け入れ側としては、新入社員の強みを生かせる仕事を任せることと並行して、関心が低くなりつつあるスキルについても意味づけて実践機会を与えることができると、ビジネスパーソンに求められる能力をバランスよく開発していけるでしょう。

“成長”から“やりたい仕事”へ関心が移行

最後に「仕事・職場生活をする上での不安」について見ていきたいと思います。

上位4項目の顔ぶれは調査開始以来変わっていません。
引き続きトップの「仕事についていけるか」は新入社員にとって1番の関心事項と言えますが、3位の「自分が成長できるか」が5年間で4.8ポイント下げて過去最低値を記録し、4位の「私生活とのバランスが取れるか」との差を一気に縮めました。
さらに、「やりたい仕事ができるか」が調査開始以来じわじわと上昇し続け、過去最高値を記録しました。
このことから、学生から社会人という人生の大きな転機において、仕事そのものについていくことややりたい仕事ができるかについての関心は高くなっている一方で、仕事を通じた成長欲求は下がっていることが分かります。

また、「雇用が継続されるか」についてはこの5年間ではあまり変化はないものの、調査開始当初の9年前と比較すると4.5ポイントも落ちています。
終身雇用という概念が薄くなっていることはもちろん、リーマンショック後に採用を控えていた時期と比較すると、現在は「第2新卒」「パラレルキャリア」という言葉が定着しているように、同じ会社で成長し続けることを想定していない世代といえます。

受け入れ側としては、例えば新入社員が希望する仕事をすぐにできない場合でも、目の前の仕事とやりたい仕事のつながりを伝えるなど、仕事や経験を中長期的にデザインする必要があります。また、目の前の仕事の積み重ねが能力を高めることにつながり、長いキャリア人生のさまざまなステージでそれらを発揮できることにも触れると、新入社員は意味を感じて行動を起こせるかもしれません。

さいごに

以上、最新の調査結果から、今年の新入社員の特徴と受け入れ側の工夫について解説してきました。

今年の新入社員は、マナーよりも仕事に必要な知識・スキルへの関心が強く、トップダウンではなく個人にフォーカスする職場や上司を求め、仕事を通じた成長欲求が薄くなりつつあることが分かりました。
背景に、労働時間の削減、働き方の多様化、個人に最適化された情報サービスの一般化、終身雇用概念の崩壊など、2010年代の変化のうねりが今年の新入社員の育ってきた環境と重ねて見えてきます。

受け入れ側の働きかけとしては、ビジネスにおいてマストで地味なことも、新入社員“個人”のやりたいことやキャリアに照らして意味づけをして本人を動機づけていくことが必要です。またそれは同時に、新入社員自身が自分の成長サイクルを回す上でも効果的であるといえるでしょう。
受け入れ側、受け入れられる側、それぞれが異なる経験を重ね、違う価値観を持っていることを理解し合い、互いの個を生かし合える組織が多く生まれることを願うばかりです。


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