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管理職の成長のための360度サーベイ活用 パナソニック株式会社

自律と挑戦の実現 ─ジョブ型・ポスト任期制・360度サーベイの実践

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  • 公開日:2026/04/27
  • 更新日:2026/04/27
自律と挑戦の実現 ─ジョブ型・ポスト任期制・360度サーベイの実践

360度サーベイを「管理職の成長」のために活用している企業事例を紹介する。パナソニック株式会社くらしアプライアンス社は、ポスト任期制という独自施策に360度サーベイを組み合わせ、部課長職ポスト最適任者の見極めと、マネジャーの成長促進の両方に同時活用している。同社 常務 CHROの塔之岡康雄氏にお話を伺った。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
2026年4月付で、パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社は発展的に解消し、
家電主体の事業会社(新・パナソニック株式会社)へと再編しております。
塔之岡康雄氏 パナソニック株式会社 常務執行役員 チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー(CHRO)、総務担当(2026年4月掲載時点)。

3年ごとに部課長ポストをすべてオープンポストにする
360度サーベイで最適任者を見極めながら成長を促す
トライアルの「ポスト総選抜」で課長の約30%が入れ替わった
今、人事変革に取り組まなければ将来の事業成長はあり得ない

3年ごとに部課長ポストをすべてオープンポストにする

パナソニックくらしアプライアンス社は、パナソニックグループのなかでも家電製品を中心に手がける、パナソニック株式会社の社内分社である。国内に約5000名、グローバルに約16000名の社員がいる。その組織が、ジョブ型人材マネジメントに加えて、「ポスト任期制」という独自の施策を導入し、注目されている。

CHRO塔之岡康雄氏が、ポスト任期制について分かりやすく説明してくれた。「私たちのポスト任期制は、部長職・課長職の全ポストに3年の任期を設け、3年ごとにすべてをオープンポストにする仕組みです。まず年度ごとに部長・課長のパフォーマンスとコンピテンシーの見極めを実施します。その上で、任期満了の3年ごとに当該ポストの公募を行い、手挙げ応募者と現任者を天秤にかけて、次の3年の長を決めるのです」

これは、全ポストを入れ替えるということではない。「現任者のパフォーマンスとコンピテンシーが共に標準以上の場合は、応募者(他候補者)と比較の上で再任も十分にあり得ます。これはあくまでも『最適配置』と『健全な新陳代謝』を実現するための施策なのです」

360度サーベイで最適任者を見極めながら成長を促す

彼らのコンピテンシーを評価するために、パナソニックくらしアプライアンス社は、全部長・課長を対象に360度サーベイを毎年実施している。「私たちは360度サーベイを大きく2つの目的で活用しています。1つは、部課長のコンピテンシーを評価し、3年ごとに最適任者を見極める際の材料の1つにするためです。本人たちにもそのための施策であることを伝えています。

ただ一方で、私たちはマネジャーたちの成長を強く願っており、彼らの成長を促す機会として360度サーベイを実施している側面も大きいのです。年に1度、マネジャー自身が周囲からどう見られているかを理解し、自分のマネジメントが世の中にどの程度通用するかを知って、今後のマネジメントの糧にしてもらいたいと思っています。

なお、私が考える360度サーベイとして重要な要件の1つは、世の中一般のなかでの相対的な位置を報告してもらえることです。部課長たちに自らの能力を社外一般と比較した上で、能力を開発してもらいたいのです」

トライアルの「ポスト総選抜」で課長の約30%が入れ替わった

塔之岡氏は具体的な事例として、A事業部門の「ポスト総選抜」を紹介してくれた。「A事業部門は経営再建が急務でした。そこで私たちは、ポスト任期制のトライアルとして、A事業部門で『ポスト総選抜』を行いました。69の課長ポストをすべてポストオフし、社員が自ら手を挙げて挑戦できる公募型の選抜制度を実施したのです。その目的は健全な危機感を醸成し、個人の発意によるチャレンジ機会を提供することです。また、優秀人材のモチベーション維持や成長の発展空間づくりの上でも有効だと考えました」

当然ながら前例のないチャレンジだったが、人事と責任者が目的と価値観を共有しながら進めることで、スムーズな実現に至ったという。「人事と責任者が協力して、制度の趣旨と運用方針を丁寧に職場へ浸透させ、抵抗感を和らげ、挑戦を後押ししました」

ポスト総選抜の結果、全課長ポストのうち、約30%が入れ替わった。「それだけでなく、ポスト総選抜の後は、A事業部門のエンゲージメントサーベイの結果が向上しました。ポスト総選抜が現場の自律的行動を醸成し、マネジメント登用への覚悟を高め、課長層の顔ぶれに対する納得感を高めた結果だと考えています」

このポスト総選抜の事例はパナソニック全社で高く評価され、全社人事部門の表彰を受賞するに至っている。「この成功を受け、私たちは経営陣と合意の上で、全社にポスト任期制を展開することを決めたのです」

今、人事変革に取り組まなければ将来の事業成長はあり得ない

塔之岡氏は、このような大きな人事変革に取り組んでいる理由を次のように語った。「当社の組織人事課題は、MISSION/VISIONを実現するための環境が整っていないことにあります。短期視点・内向き、人・組織の固定化、不十分な人材活用、部門最適な風土・組織間の壁の厚さなどが、挑戦を遠ざけていることが大問題なのです。

そこで私たちは2022年から、かなりの危機感をもって意識変革・仕組み変革に挑んでいます。かつての会社管理を常とするロックかつタイトなカルチャーを180度転換し、“社員自律”“アンロック”“ルーズ”を目指して変革を進めています。ジョブ型人材マネジメントやポスト任期制も、こうした人事変革の一環です。

今後もこうした変革の手を緩めるつもりはありません。今人事変革に取り組まなければ、将来の事業成長はあり得ないからです」

360度サーベイは、ポスト任期制を中心とした人事変革に欠かせない施策、貴重な人事データを提供してくれる施策として、今後も活用し続ける予定だという。また実は、部課長層の360度サーベイに対する評価も高いのだという。「実際にやってみると、意外なほど部課長たち自身が360度サーベイを強く求めていることが分かりました。多くのマネジャーが、周囲の声を生かして自己成長したいと思っていたのです。また、部下側の回答率もほぼ100%と高く、双方のニーズの高さを感じられました。さらに、部課長にサーベイ結果を渡し、レポートの読み方を教える『フィードバックセッション』も好評で、マネジャーたちが悩みを相談し合う場所としても価値が高いと感じています。

私たち人事から見ると、360度サーベイは貴重なデータ源でもあります。例えば、私たちはデータ分析の結果、360度サーベイと人事評価・エンゲージメントサーベイの間に一定の相関関係を確認しています。今後も人事基幹データの1つとして多角的に活用していきます」

【text:米川 青馬 photo:伊藤 誠】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.81 特集2「可能性を拓く360度評価」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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