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HRBPとは? 社内で果たす役割や必要なスキル、導入に向けたステップを解説
- 公開日:2024/12/05
- 更新日:2024/12/05
ビジネスを取り巻く環境が激しく変化する現代において必要とされているのが、各部門に特化した新しい人事の役割「HRBP」です。本記事では、そんなHRBPを導入するメリットや手順、導入にあたってのポイントなどを紹介します。
HRBP(HRビジネスパートナー)とは
HRBP(Human Resource Business Partner)とは、特定の事業部門担当の事業推進責任者のパートナーとして、組織開発や人材開発などの人事施策に取り組む役職のことです。HRBPの存在は、企業と人材の成長に効果を発揮し、戦略人事の実現において多くのメリットをもたらします。
一般的な人事担当者は、採用や人材配置といった人事領域における管理・運用業務が主な役割です。一方HRBPには、経営層と同じ目線を持ち、担当する事業部の成長や課題解決について、組織・人材面からリードすることが求められます。人事分野を通じて経営にも深く関与するHRBPは、企業の意思決定にとってより大きな影響を及ぼす存在であるといえるでしょう。
また、HRBPと似た役割を担うポジションにCHRO(最高人事責任者)がありますが、CHROは実際に経営層の一員として人事業務に携わる役職です。一方、HRBPは人事部署や担当事業部に所属して人事業務を遂行する点が大きく異なります。
HRBPの役割
HRBPの主なミッションは、担当事業部の課題解決や目標達成に向け、人と組織のパフォーマンスを最大化することにあります。つまり、HRBPにはただ従業員を管理するだけでなく、そのなかで企業運営や業績に対して明確な成果を残すことが求められます。
さらに、HRBPは実際の経営会議に参加し、企業の目標・戦略の立案段階で意見やアイディアを出すこともあります。従来の人事職が企業を陰から「支える」ポジションだとすれば、HRBPは企業を主体的に「動かす」ポジションだといえるでしょう。
ウルリッチの定義によるHRBP
HRBPという概念は、アメリカのミシガンビジネススクール教授デイビッド・ウルリッチによって提唱されました。ウルリッチは自著『MBAの人材戦略』のなかで、人事部門が果たすべき役割を以下の3つに定義しています。
■CoE (Center of Excellence):人事の制度設計
■HRBP (Human Resource Business Partner):設計した制度を活用した現場の課題解決
■HR Ops (HR Operation Services):給与計算などの定型業務
このようにウルリッチの定義において、HRBPは人事分野を通じてより現場に近い立ち位置で、事業の課題解決に向けた戦略の策定・実行に取り組む役割とされています。
HRBPが求められている背景
昨今HRBPが大きな注目を集めている背景には、以下のような要因があります。
人材獲得競争の激化
多くの企業でHRBPが必要とされる理由の1つが、人材獲得競争の激化です。近年、少子化による労働人口の減少や、DX化に伴うデジタル人材ニーズの高まりにより、人材獲得が困難になっています。
このような背景から、企業にとって必要な人材を確保し、限られたリソースのなかでパフォーマンスを最大化するために、人事部門に求められる業務のあり方も絶えず変化を続けています。そのため、戦略的な人事施策を行うHRBPへの期待が高まっているのです。
社会環境の変化
人事に経営的視点が求められるようになった要因としては、昨今の急激な社会環境の変化も挙げられます。例えば、最近では新型コロナウイルス感染症の影響により社会全体でテレワークへの需要が高まり、多くの企業で働き方改革が進められました。
企業が社会の変化に直面した際には、変化に対してどれだけ早急かつ適切に対応できるかがその後の事業継続を大きく左右します。HRBPにはそうした緊急性の高い場面における、課題解決力も期待されています。
下記の記事では実際にHRBPを導入した企業が、導入に至った背景を一例として紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
【企業事例】HRBP導入は事業の多角化がきっかけ
HRBPを導入するメリット
HRBPの導入は、企業に以下のようなメリットをもたらします。
事業戦略に合わせた採用や人材育成の推進
人事職でありながら経営的視点を持つHRBPは、各事業部の課題や目標を踏まえ、経営と連動した人事計画を立案できます。そのため、成長分野での即戦力採用や、将来のリーダー育成など事業戦略にもとづく人材強化なども得意としています。
世のなかの動きを予測することが困難なVUCA時代と呼ばれる現代において、こうした臨機応変なアプローチの重要性はより高まっています。VUCAについては、下記の記事でも詳しく解説しています。
HRBPに必要なスキル
HRBPとして活躍する人材には、以下のようなスキルが求められます。
コミュニケーション能力
HRBPの役割において、コミュニケーションスキルは役員や従業員と信頼関係を築き、業務を円滑に進める際に役立つ欠かせない資質です。
特に、HRBPは経営層と現場の双方のニーズに応えるポジションのため、立場の異なる相手に寄り添い、本音を引き出す対話能力が要求されます。
課題分析力
HRBPとして自社の課題解決に取り組むうえでは、まずは組織の抱える課題を正確に調査・分析することが大切です。現状への認識が誤っていては、効果的なアプローチを立案・実行することは難しいでしょう。
抱えている課題は企業や部門によっても異なるため、イメージや一般論に惑わされず、状況を論理的に捉える能力が求められます。
HR領域の知見
経営や組織運営にも関与するとはいえ、HRBPの位置づけはあくまで人事分野のプロフェッショナルです。そのため、業務では人材開発や人事制度、労務などの知見も問われます。
こうした領域はHR(ヒューマンリソース)領域と呼ばれ、その専門ノウハウは実際の業務を通じて経験を積むほか、関連する研修の受講や資格の獲得によって磨くことも可能です。
HRBPを導入するステップ
ここからは、実際にHRBPを社内に導入する際の手順を解説します。
事業部と調整して方針を決める
HRBPは事業部ごとの人事業務を担うポジションであるため、手がける事業部のニーズに合った形で導入することが大切です。まずは事業部と協議を行い、HRBPに任せたい役割や人事の方針に関して認識を共有しましょう。
また、HRBPは事業に積極的に関わりながら組織・人材面の施策を実行する役割を担うことから、既存のポジションと役割や責任が重複しないよう、権限の範囲なども明確にしておかなくてはなりません。
実行体制を構築する
導入するHRBPの概要が決まったら、関連するチームやメンバーを配置して実行体制を整えていきます。従来の人事体制にHRBPを加えることが難しい場合には、新たに部署を設立するといった選択肢も視野に入れつつ柔軟に配置を行いましょう。
加えて、実行体制を構築するうえではHRBPという役割を誰に任命するかも重要なポイントです。HRBPは専門性の高いポジションのため、もし適任者がいない場合は育成や外部からの採用が必要となります。
トライアルを実施する
HRBPはまだ新しいポジションであり、いきなり導入することは現場の混乱につながる可能性もあります。そのため、正式に導入する前に一度トライアル期間を設けて運用のシミュレーションを行うことをお薦めします。
HRBPは経営層と現場の双方からの信頼が欠かせない役割のため、あらかじめ関係性を構築しておくという意味でもトライアルの実施は重要な取り組みです。
本格運用を開始する
トライアル終了後は結果の評価・フィードバックを行い、効果が十分に期待できるようであればいよいよ本格的な運用に移ります。導入後も定期的に効果を確認し、課題が見つかれば絶えず改善を行っていきます。
一方で、もし現時点ではHRBPを導入すべきでないと判断した場合でも、経営と人事をめぐる知見は企業運営において大きなヒントとなります。別の形での取り組みも検討しながら、得られた学びを積極的に経営や人事に生かしていきましょう。
HRBPを導入するポイント
HRBPを社内に導入する際は、以下のような点を意識するとその効果をさらに高めることができます。
人事部門と連携しながら進める
部門最適な人事施策を検討していくHRBPが人事部に所属しない場合もあるでしょう。その場合でも、全社での人事施策を推進する人事部門と良い協働関係を築いておくことが重要です。全社の施策もうまく使いながら部門単体で行った方が良いことは行い、時にはある部門での施策が他の部門に横展開されていくこともあります。HRBPと人事部門が良い協働関係を築いて連携していくことで、より効果的な人事施策を進めることができるのです。
段階的に導入する
HRBPが自らの役割を果たすためには、その存在が社内に広く浸透していることも重要です。はじめは部門などを限定し、段階的に導入していくことをお薦めします。
特に、これまでHRBPを導入してこなかった企業では、HRBPはノウハウの蓄積がない状態で業務に臨むことになります。導入間もない時期はデータを収集する期間と考え、焦らずに効果を追っていきましょう。
HRBPをサポートするチームづくり
HRBPは大きな裁量を持つポジションではあるものの、すべての役割を1人でこなせるわけではないため周囲のサポートが欠かせません。なかでも業務を遂行するうえで重要となるのが、ウルリッチの提唱するCoE(Center of Excellence)に相当する存在です。
CoEは人事の制度設計などを担当できる高度なノウハウを有した集団であり、CoEとの連携はHRBPの業務をよりスムーズにしてくれます。CoEが社内に存在しない場合は、HRBPをサポートするチームの新設を検討しましょう。
各事業に必要な人材ポートフォリオを描く
経営や事業戦略を踏まえて人材の配置・開発に取り組むうえでは、「人材ポートフォリオ」から得られる情報がヒントとして大いに役立ちます。
人材ポートフォリオとは、事業戦略の達成にどのような人材がどのタイミングで必要になるかを予測・分析した資料です。人材ポートフォリオはHRBPの業務以外にもあらゆる人事の基礎情報として活用できることから、近年多くの企業で導入されています。
事業間の取り組みを共有・連携させる
社内の業務は単一の部門だけで成り立つものばかりではなく、なかには複数の部門が協力して進めているものも存在します。
普段から事業部同士が円滑に連携できる体制を整えておくことも、HRBPにとっては大きな助けになるでしょう。
まとめ
HRBPはまだ比較的新しい役職ではあるものの、企業がVUCA時代を生き抜くうえで果たす役割は大きく、すでに多くの企業で導入が進められています。ただし、導入にあたっては周囲の協力のもと、活躍できる環境を整えることが大切です。
ちなみにHRBPの導入には、弊社が提供する人事制度設計に関連した各種サービスも役立ちます。なかでも下記のサービスでは、人事制度によって実現したい目的を明確にしたうえで、コアとなる等級・評価・賃金・育成制度を設計し、その後の運用・定着までを一貫して支援します。ぜひご活用ください。
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