用語集
VUCA(ブーカ)とは? 意味やVUCAの時代に必要なスキルを解説
- 公開日:2024/01/30
- 更新日:2024/09/11
VUCA(ブーカ)とは
VUCAとは、あらゆる物事が激しく変化し、複雑かつ曖昧な様子が続いて将来の予測が難しい状態を指す言葉です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字で構成された造語であり、現代の社会やビジネスを考えるうえで重要な概念として昨今大きな注目を集めています。
なお、各キーワードは以下のように説明されます。
変動性(Volatility)
短期間で物事が急激な変化を繰り返し、的確に対応するのが難しい状況を指します。現代においては、テクノロジーの進歩や社会の仕組みの変化、人々の価値観やニーズの多様化などが該当します。
不確実性(Uncertainty)
物事に関して確実でない要素が多く、次に何が起こるか分からないという状況です。例えば、終身雇用・年功序列の崩壊により将来の見通しを立てにくい現在の日本は、多くの人々にとって不確実性のなかにあるといえます。
複雑性(Complexity)
さまざまな要素が複雑に絡み合っており、シンプルな解決策を導き出すのが困難な状況のことです。近年はインターネットの普及による経済のグローバル化にともない、異なる文化や法律が絡み合ってビジネスの形は複雑化の一途を辿っています。
曖昧性(Ambiguity)
出来事の因果関係が曖昧で、問題の原因がはっきりと解明できない状況です。上記の「変動性」「不確実性」「複雑性」が組み合わさることで生じるとされ、現代ではビジネスの成功・失敗要因の特定が難しくなりつつあることが挙げられます。
VUCAが注目される背景と起こっていること
VUCAはもともと1990年代のアメリカで軍事用語として誕生し、当初は冷戦終結後の国家間戦略を取り巻く状況を表す言葉として使われていました。しかし、2010年代にはビジネスにおいても使用されるようになり、2016年開催の世界経済フォーラム(ダボス会議)で用いられたことをきっかけに世界的に注目されるようになったといわれています。
地球規模の気候変動や新型コロナウイルス感染症の流行拡大、経済のグローバル化やデジタル技術の発展など、絶えず新たな課題に晒される現代はまさにVUCA時代といえます。そのため、企業や人材にはVUCA時代を生き抜くための、既存の常識にとらわれない新たなアプローチが求められています。
VUCA時代に必要とされるスキル
予測不可能な状態が続くVUCA時代において、過去の経験や既存のビジネスモデルでは対応できないことも増えています。柔軟な対応が求められる今、私たち一人ひとりがビジネスシーンで求められるスキルには、どのようなものがあるのでしょうか。
情報収集能力・情報処理能力
誰もがインターネットやSNSを利用し、簡単に情報を得たり発信したりできる情報過多の現代社会では、多くの情報を入手することだけでなく、情報を取捨選択し、使いこなす力が求められます。自分の目的に合った情報を取得し、適切な形で適用する能力は「情報リテラシー」とも呼ばれます。
「情報がたくさんあることは分かるが、情報の場所を特定するのに時間がかかる」「情報を取得しても、周囲が納得する分析や報告ができない」と悩んでいる方は、テーマや目的から逆算して情報収集を行い、情報収集自体を目的としないことを意識するとよいでしょう。
情報収集の基礎を学べる簡単な研修を受講するのもお薦めです。
仮説思考力
これまで仮説思考は、論理的思考や問題解決思考と比較して重視されていませんでした。しかし、過去と同じやり方ではビジネスが回らなくなったVUCA時代では、確実な情報が社内外にもない状態で当たりをつける、仮説思考力が必要不可欠になっています。
仮説思考は単なる勘と異なり確かな情報に基づいて行われますが、時間的な制約がある場合や、分析すべきデータが存在しない場合には、とりあえず立てた仮説をもとに物事を進行させ、その結果をもとに再び仮説を検証するというアプローチを取ることもあります。
仮説思考力については、こちらのコラムでも紹介しています。
不確実な時代には仮説思考が重要性を増す
決断力・行動力
VUCA時代では、テクノロジーの進化や新たなSNSの普及など、自社の事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。そのため、意思決定に時間をかけていると、その間に状況が変わってしまうことがあります。また、実行に移すタイミングが遅れると、世のなかの変化によって一度決定した意思決定でも成果が出せない恐れもあります。
スピード感を持って決断し、行動できる人には、目的意識や向上心が高く、積極的な性格であるといった特徴があります。一方で、自分自身に決断力や行動力がないと感じる場合は、仕事で明確な目標を立てることや、失敗を気にするのではなく次に生かす気持ちで業務に取り組むことで、決断力・行動力を鍛えることができます。
リーダーシップ
先を見通すことが難しいVUCA時代は、向かうべき方向性が見えにくく、アクションを起こしにくい環境でもあります。そのような時代に組織を動かすためには、先頭に立って目標を示し、その実現に向けて周囲を導いていくリーダーシップが求められます。
また、リーダーシップには自らが率先して動くだけでなく、周囲の主体性を喚起する能力も含まれます。いざという時に頼れるリーダーがいれば、他のメンバーも安心して実力を発揮できるでしょう。
VUCA時代における組織づくりのポイント
VUCA時代には、上記のように各個人がスキルを磨いていくことはもちろん、企業が組織としてどう動くかという視点も重要です。ここでは、VUCA時代における組織づくりで重要なポイントを紹介します。
組織内でビジョンを共有する
ビジョンとは将来のあるべき姿やありたい姿を言語化したもの。組織が、自らの軸をブレさせることなく、変化が激しい時代に対応するためには、すべての事業の前提となるビジョンやゴールを明確にし、組織内で共有することが重要です。ビジョンに対する共通認識があるなかで、各部門の方針や個人の業務への取り組み方についてはある程度現場に任せることで、VUCA時代に柔軟に適応しながら、組織としてビジョンの実現に向かうことができます。
ビジョンを含む経営理念の浸透については、こちらのコラムで各社の人事担当者が議論した内容の一部を紹介しています。
多様な人材を採用・育成・活用する
組織が予測困難で複雑なVUCA時代に対応するためには、全員が同じやり方を取るよりも、一人ひとりのスキルや個性を十分に活用することが有効です。多様な人材を採用し・育て・活用するためには、組織のなかで受け入れる環境を整える必要があります。例えば、メンバー同士で価値観を共有できるようなミーティングや、上司と部下との価値観の違いをすり合わせる1on1の機会を用意するとよいでしょう。テレワークや時短勤務を可能にするなど、制度面の整備も検討事項として挙げられます。
また、組織内でキャリア自律を支援することも重要です。キャリア自律とは、主体的に自らのキャリアを選んでいける状態を指します。社会やビジネス環境の変化が激しいVUCA時代では、1つ1つの仕事の寿命が短くなっており、次々と生じる業務に対して、自分に合った仕事を自ら選んでいくキャリア自律が求められるのです。組織として、社内公募制度や、階層別研修におけるキャリアの振り返りの場を用意することで、従業員のキャリア自律を促すことができます。
キャリア自律については、こちらのコラムでセミナーのレポートとして掲載しています。
【コラム】キャリア自律施策の展開~なぜキャリア自律が進まないのか~
迅速な意思決定をする
VUCA時代への対応方法としては、意思決定と行動を早める「OODA(ウーダ)ループ」という思考法が有名です。OODA(ウーダ)とは、Observe(観察)、Orient(適応)、Decide(意思決定)、Act(行動)の4つのキーワードの頭文字を取ったもので、これらの過程を繰り返す(ループする)ことで、迅速で健全な意思決定が可能になるというフレームワークです。
よく比較されるPDCAサイクルと比較すると、PDCAサイクルでは、行動の前に計画が置かれ、実行したことを評価・改善するのに対し、OODAループでは自らが置かれている環境を観察し、状況判断することを繰り返します。OODAはPDCAと比較すると、取り巻く環境の変化に応じてスピーディーに行われるため、変化の激しいVUCA時代に適した思考法だと考えられています。組織の意思決定を速めるフレームワークとして、取り入れてみるとよいでしょう。
VUCA時代に必要なOODAループとは
VUCA時代に適した思考法として近年大きな注目を集めているのが、優れた状況対応力を有する「OODA(ウーダ)ループ」です。
OODAループとは
OODA(ウーダ)ループは、情報を収集するObserve(観察)、情報をもとに状況を把握・予測するOrient(適応)、最適な取り組みを選択するDecide(意思決定)、選択した取り組みを実行するAct(行動)という4つのプロセスからなる思考法です。
これらの一連のプロセスを繰り返し実行(ループ)することで、実態が容易に把握できない課題や、条件が絶えず移り変わる課題にも的確かつ迅速に対処することが可能となります。
OODAループが必要とされる背景
OODAループが注目されている背景には、計画通りに物事が進まないVUCA時代に対応した、より臨機応変な思考法へのニーズの高まりがあります。VUCA時代ではどれだけ準備を重ねても予期せぬトラブルに見舞われる可能性があるため、状況を現場で即座に判断し、スピーディーに動ける実践的な考え方が必要とされているのです。
PDCAサイクルとの違い
OODAループとよく比較されるPDCAサイクルとの違いは、優先するプロセスにあります。PDCAサイクルはPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つのプロセスで構成されており、行動の結果を検証して次に生かすことを重視した思考法です。
一方で、OODAループは行動の内容を検証するよりも、現在置かれている状況を判断することに重きを置いています。そのため、PDCAサイクルは長年の課題に腰を据えて取り組む場合に、OODAループは突発的な課題に素早く対応する場合に有効な思考法といえます。
PDCAサイクルについては、こちらでも解説しています。
PDCAサイクルとは? 運用方法や活用メリット、PDCAサイクルが古いといわれる理由
VUCA時代のまとめ
正解がなく先を見通せないVUCA時代においては、決まったやり方に固執するのではなく、現状に絶えず向き合い、柔軟に工夫を重ねていく能力や姿勢が必要とされます。
なかでも、少ない情報から自分なりに仮説を立て、検証を重ねて結論・主張の精度を高めていく思考法や思考習慣は、VUCA時代を生き抜くうえで特に重要となるスキルです。下記の研修を通じて、今のうちから着実に身につけていくことをお薦めします。
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