導入事例
製造現場にキャリア自律を広める「技能系キャリア研修」を3年で全社展開
株式会社デンソー
- 公開日:2026/04/06
- 更新日:2026/04/06
事例概要
背景・課題
・人と組織のビジョン「PROGRESS」を策定。人事改革に取り組み、社員のキャリア自律を推進してきた
・技能系職種は、自立・自律的にキャリアを考えるのが難しいのが現状
・社員の自己成長や今後の事業成長のために、「技能系キャリア研修」の開発を開始
検討プロセス・実行施策
・技能系職場にキャリア自律を広めるための鍵は「基本の型」を作ること
・もう1つのポイントは「上司」にキャリアを深く理解してもらうこと
・部下向け研修は、上司が自ら部下にキャリアを教えるプログラムに設計、研修後は「キャリアデザイン面談」も実施
成果・今後の取り組み
・2023年度以降、技能系の「キャリア行動」ポイントは毎年上昇を続けており、特に上司のポイントの急上昇からは、上司たちのキャリア理解が進んだことが分かる
・上司・部下が互いのキャリアに対する理解を深めたことで、係長や班長が中堅社員のキャリア相談に乗っている姿をよく見かけるようになった
・今後は、より若手の社員への研修実施を検討している
背景・課題
今後の事業成長には、技能系社員も「キャリア自律」を通じて自己成長することが欠かせない
天野:私たちデンソーは人と組織のビジョン「PROGRESS」を掲げ、人事改革に取り組んできました(図表1)。社員には「情熱で自己新記録に挑むプロ」になってもらいたいという想いを込め、そのための本質課題を「自立・自律」と定めました。そして、キャリア研修やキャリアデザイン面談などを強化し、社員の「キャリア自律」を推進してきました。
<図表1>人と組織のビジョン「PROGRESS」

出典:リクルートマネジメントソリューションズ「会社のパーパスと従業員のキャリア自律 デンソー|個人の成長と幸せ 会社の大義と発展 両者統合を目指す」
事務系・技術系社員(事技系社員)は、以前からキャリア研修などを受けており、キャリアという考え方に馴染みがありました。ところが、製造現場で働く技能系社員向けのキャリア研修は存在しておらず、彼らのなかには、そもそもキャリアという概念をよく知らない者も多くいました。そこで2021年から、PROGRESSの策定と並行して「技能系キャリア研修」の開発を始めたのです。
生産現場は品質確保や標準化が極めて重要であり、そのためには上意下達が欠かせません。逆説的に、技能系はそもそも自立・自律的にキャリアを考えるのが難しい面があるといえます。しかし、今後の事業成長には、技能系社員もキャリア自律を通じて一人ひとりが自己成長することが欠かせません。そのため、キャリア研修を導入しようと考えました。

100年に一度の大変革期には、さまざまなことが起こりえます。例えば今後は、技能系社員でも事業ポートフォリオの転換によって異動になることが十分に考えられます。そのような時代には、技能系社員にも自分で将来を考えて行動変容したり、環境変化に適合して能動的に対応したりしてもらう必要があるのです。
検討プロセス・実行施策
技能系職場にキャリア自律を広めるための鍵は「基本の型」を作ること
新美:今回の施策の流れを大きく説明すると、2021年度に検討を始め、社内外のヒアリングや計画立案などを行いました。2022年度に研修プログラムを作り上げ、7職場でトライアルを実施してプログラムを改善しました。そのうえで2023年度から2025年度の3年間で、技能系職場で働く約1万人の社員に対して「技能系キャリア研修」を実施しました。また、研修とセットで、上司・部下がキャリアについて定期的に話し合う「キャリアデザイン面談」を導入しました。
天野:私たちは2022年から、技能系キャリア研修に関するコンサルティングと施策実行をリクルートマネジメントソリューションズにお願いしてきました。同社はキャリア自律に関する知見が豊富で、議論や相談の相手、施策実行のパートナーとして頼りになりました。
技能系職場にキャリア自律を広めるための鍵は、「基本の型」を作ることにありました。製造現場では標準化が進んでおり、何ごともステップや手順が厳密に決められているため、同じように型があると技能系社員が動きやすくなると考えたのです。そのため、コンサルタントの協力のもと、キャリア研修のステップや手順を1つずつしっかりと作りこんでいきました。

新美:実際、7職場のトライアルでは、基本の型が効果を発揮しました。やはりステップと手順を用意した方が伝わりやすいことが証明されたのです。私たちはトライアルで試行錯誤しながら、2023年度以降の本番に向けて型の完成度を高めていきました。また、トライアルのなかでオペレーションなども固まっていきました。
もう1つのポイントは「上司」にキャリアを深く理解してもらうこと
天野:技能系キャリア研修のもう1つのポイントは、「上司」にキャリアについて深く理解してもらうことでした。技能系社員は部下だけでなく、上司もキャリアについては初心者です。技能系職場は上意下達が基本のため、上司が部下に伝える形を取ることが大切です。特に、キャリアデザイン面談をリードしてメンバーのキャリア自律を促すのは上司なので、上司がキャリアに詳しくならない限り、キャリア自律は決してうまくいきません。もっといえば、まずは室・工場長レベルがキャリアデザインにポジティブな考えを持つことが、キャリア自律を広めるための第一歩なのです。
そこで私たちは、室・工場長、課長、係長、班長を対象とする「上司向け研修」を行ってから「部下向け研修」を実施する型を作りました(図表2)。上司向け研修は、理解編・体験編・実践編をオンラインで3回実施し、理解編でキャリア理解を深め、体験編で自身の今後のキャリアプランを考え、実践編で部下のキャリアを支援する方法を習得してもらいました。
新美:また、上司向け研修では、「組織のWill(欲求、価値観)・Can(強み、経験)・Must(方針)」を再考し、部下に伝わりやすく改善してほしいとお願いしました。なぜなら、組織のWill・Can・Mustが明確にならないと、社員が自分のWill・Can・Mustを考え、今後のキャリアを描くことはできないからです。
<図表2>技能系キャリア研修の流れ

画像提供:株式会社デンソー
部下向け研修は、上司が自身のキャリアプランを開示しながら、部下にキャリアを教えるプログラムに
新美:「部下向け研修(キャリアキャンプ)」は、中堅社員(S格)を対象に実施しました。若手社員(J格・T格)はスキルを身につける段階であり、中堅社員はより自律的に考え行動することを求められるからです。
部下向け研修は、「対面とオンラインのハイブリッド方式」で実施しました。受講者たちには職場内や職場近くにある会議室に集まってもらい、中堅社員とその上司で同じテーブルを囲みながら受講してもらいました。全体的な講義やファシリテーションは、リクルートマネジメントソリューションズの講師がオンライン画面を通して行いました。そして、受講者たちが自らのキャリアを考える時間には、上司がサブファシリテーターとなり、自身のキャリアプランを部下に開示しながら、自らの言葉でキャリアについて部下に教えるプログラムにしました。

天野:さらに部下向け研修の後で、初めての「キャリアデザイン面談」を行ってもらう流れにしました。中堅社員たちは、部下向け研修で作ったキャリアデザインシートを面談までに完成させて、それをもとに上司とキャリアについて話し合ったのです。今後、彼らには定期的にキャリアデザイン面談を実施してもらいます。
私たちは、以上の上司向け研修、部下向け研修、キャリアデザイン面談を1セットにして(図表2)、3年間実施してきました。当然ながら毎年、受講者の感想などをもとに改善を重ねました。2024年度には「聴覚障がい者コース」も実施しました。以上の取り組みによって、キャリア研修未受講だった中堅社員(S格)の全技能系社員がキャリア研修を受講し、キャリアデザイン面談を受けました。
成果・今後の取り組み
技能系社員の「キャリア行動」のポイントが上昇。キャリア意識は明確に高まっている
天野:デンソーでは、毎年実施する職場力調査のなかに「キャリア行動」に関する設問を設けています。技能系キャリア研修を始めた2023年度以降、技能系の「キャリア行動」ポイントは毎年上昇を続けています。特に上司だけで比較すると、技能系の「キャリア行動」ポイントが急上昇し、事務系・技術系社員(事技系社員)のポイントを上回りました。私たちはこれらのデータを研修成果の1つと捉えており、後者は上司のキャリア理解が進んだ何よりの証拠と考えています。

新美:私たちの実感でも、上司側を中心にキャリア意識は明確に高まっています。例えば、現場のキーパーソンである係長や班長が、中堅社員のキャリア相談に乗っている姿をよく見かけるようになりました。また、社内のキャリア相談室からは、最近技能系社員のキャリア相談が増えているという声が届いており、これもキャリア意識が高まった証拠の1つと考えています。
それから、部下向け研修で上司がサブファシリテーターを務めたことによって、上司・部下がお互いのキャリアプランをよく知ることができ、結果的にキャリアデザイン面談がやりやすくなったという声を多く耳にしています。上司向け研修、部下向け研修のどちらも、効果的なプログラム設計ができたと感じています。
天野:2025年度までに対象の社員は全員受講し、一連の大規模キャリア研修は完遂しました。今後は、新任管理職と新任中堅社員(S格)に絞ってキャリア研修を継続します。ただ、現場からは若手社員(J格)たちにもキャリア研修を実施してほしいという声が多く届いており、現在若手社員(J格)向け研修を検討しています。これからも、このように必要に応じて、技能系社員のキャリア自律をサポートする施策を実施していきます。
ソリューションプランナーの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
営業統括部営業1部東海グループ
ソリューションプランナー
關山 朋広
デンソー様は、これまで未着手だった技能系社員2万人に対して、大規模なキャリア自律推進施策を実行されました。
事業転換という大きな変革のなかで、すべてのデンソー社員に成長してもらい、輝き続けてもらうために——その覚悟のもと、「PROGRESS」という人・組織のビジョンを掲げ、この困難な取り組みに挑まれた決断こそが、この施策の最大の成功要因だと感じています。組織が本気でビジョン実現に向き合う姿勢は、必ず現場に伝わるのだと確信しています。
施策の企画・実行にあたっては、技能系社員ならではの働き方や職場文化を意識しながら、お客様と何度も議論を重ねました。その結果、「現場に確実にメッセージが届き」「意識と行動が変わる」取り組みを実現できたと確信しています。
本事例は、日本の製造業各社様にとって、キャリア自律推進の重要な羅針盤となると考えています。デンソー様のさらなる進化に向けて、今後も多面的にご支援してまいります。
エグゼクティブコンサルタントの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
コンサルティング部
エグゼクティブコンサルタント
山本りえ
デンソー様では人と組織のビジョン「PROGRESS」の実現に向け、技能系職場という難度の高い領域でキャリア自律の取り組みに挑戦されました。事技系とは異なる工夫が求められる環境下で、現場に徹底的に寄り添い、改善を重ねながら約3カ年で1万人規模のプロジェクトを完遂。確かな成果を生み出されています。
成功の鍵は4つ。①キャリア自律の必要性理解(上司の意識改革)、②誰もが実践できる明確な「型」の確立、③各職場の実態に即した支援体制・ツール整備、④毎年のPDCAによる継続的改善です。
私たちは全体構想から企画、実行、改善まで伴走しましたが、デンソースピリット「先進、信頼、総智・総力」を体現する取り組みに深く感銘を受けました。単なる制度導入ではなく、技能系社員一人ひとりが「やりたいこと」を上司に相談し、挑戦を支援される文化づくり。社員皆さんがやりがいを感じ、成長する姿を、今後も共につくり続けたいと思います。
取材日:2025/12/26
企業紹介

株式会社デンソー
先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカー。スローガンである「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい。」を実現するため、「電動化」「先進安全/自動運転」「コネクティッド」に注力し、新しいモビリティの価値を提供すると共に、「非車載事業」として、FA(ファクトリー・オートメーション)や農業の工業化に取り組み、社会・産業界の生産性向上に貢献している。
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