STEP

導入事例

女性管理職を“つくる”のではなく“生まれる”仕組み——主体性を育むワーキンググループの実践

株式会社アドヴィックス

株式会社アドヴィックス様のTOP画像
  • 公開日:2025/11/10
  • 更新日:2025/11/10

事例概要

icon

背景・課題

これまでも女性活躍推進の取り組みは行ってきましたが、2021年に本格的に検討し始めました。その時私たちは、会社や人事が主導する押しつけの女性活躍ではなく、女性従業員たちが各自の「Will(やりたいこと)」にチャレンジしてもらいたい、そこに障害があれば取り除きたいと考えました。女性管理職比率目標を掲げつつも、彼女たちの活躍の結果として高まるのがよいと考えており、それに必要な施策なども彼女たち自身に考えて動いてもらいたいという想いから、女性活躍ワーキンググループを立ち上げることにしました。

詳細はこちら

icon

検討プロセス・実行施策

ワーキンググループ「きらり」は、2022年にスタートしました。参加メンバーは管理職の少し手前の女性従業員を中心に毎年各部門から1名が選ばれます。目的は「参加メンバーの人脈形成とキャリア支援」と「会社や職場のダイバーシティ推進策の提案」の2つです。人脈形成に関しては、きらりOGを交えた交流会などで語り合い、つながりをつくってもらいます。キャリア支援では、SPI3 for Employees等も使いながら自己理解を高め、自分らしいキャリアを会社で実現する方法を具体的に検討してもらっています。ダイバーシティ推進は自分たちで施策を考え、経営層に提言をプレゼンする場を設けています。

詳細はこちら

icon

成果・今後の取り組み

参加者からはおおむね好評で、「自分のキャリアについて考えられてよかった」という声が特に多いです。現在、きらり第1期生から2名の女性管理職が生まれており、女性海外出向者も誕生しました。
経営層への提言のプレゼンテーションは毎回内容が入念に練られており、発表にも熱が込められているため、役員会が盛り上がります。

詳細はこちら

背景・課題

ダイバーシティ推進の1歩目として、女性従業員たちには「Will(やりたいこと)」にチャレンジしてもらいたかった

諏訪様の画像

諏訪:私たちアドヴィックスは、アイシングループの成長領域であるブレーキ事業を担う会社です。今回は、私たちの女性活躍ワーキンググループ「きらり」を紹介しますが、その始まりのきっかけは2021年に遡ります。

木村:2021年に政府が策定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」に基づき、私たちも女性管理職比率の目標をKPIの1つとして掲げることになりました。

まず行ったのは、社内アンケートや管理職候補となり得る女性社員へのインタビューです。その結果、女性管理職が少ないためにロールモデルが不足していること、上司が良かれと思って女性従業員に負荷を与えないようにしがちであること、女性活躍のために職場環境や施策を充実させる余地があることなどが分かり、課題が明確になってきました。

諏訪:私たち人事はまず、ダイバーシティ推進の入り口として、女性従業員たちの多様性に着目しました。実態として、育児・家事の役割分担の割合が大きいこともあり、男性とは比べものにならないほど、各々のバックグラウンドや職業観が異なります。それを踏まえたうえで、自分の「Will(やりたいこと)」にチャレンジしてもらい、そのポテンシャルを最大限に発揮してもらいたい、そして職場できらりと輝く存在になってもらいたい、と願っていました。そこで、どうしたら彼女たちのWillを後押しできるのかを模索し始めたのです。女性管理職比率は、彼女たちが主体的に活躍した結果として高まるのがよいと考えました。

木村の言うとおり、女性活躍に向けて、女性管理職のロールモデルづくり、上司の意識改革、環境・施策づくりなどは確かに必要でした。ただ、それらを人事主体で行うのではなく、できるだけ女性従業員たちの目線で、本当に必要なことから「細くとも長く続く」活動であるべきと考えました。とにかくやらされ感のある活動にしたくない、そんな思いで当社の女性活躍推進活動は始まりました。

検討プロセス・実行施策

2022年に「きらり」をスタート。意欲の高いメンバーが集まった

諏訪:女性活躍ワーキンググループ「きらり」のコンサルティングは、リクルートマネジメントソリューションズにサポートしてもらうことにしました。同社のコンサルタントには、従業員満足度調査でのご支援を通じて、当社の人材に関する課題や他社との違いなどを知っていただいていたからです。さらに、アドヴィックスや親会社であるアイシンのことを熟知しており、ダイバーシティ推進の経験が豊富で、他社事例や社会全体の変化の流れにも精通していたので、同社に支援してもらえれば安心と考えました。

木村様と諏訪様の画像

木村:私たちは、コンサルタントの支援のもとで、2022年に「きらり」をスタートしました。参加メンバーは係長クラスなど、管理職の少し手前の女性従業員のなかから選抜しました。今も基本的に同じ基準で選んでいます。

特に1期メンバーは、何をする場なのかまだ誰も知らなかったため、人事から上司・本人の両方に趣旨を詳しく伝えたうえで参加してもらいました。結果的に第1期から意欲の高いメンバーが集まり、現在のきらりOG会長も1期メンバーです。

諏訪:第1期の第1回のときに、参加者たちに「女性管理職の優先枠はうちには向かないと思う」と説明したところ、「私たちもそんな枠は望んでいません」という返事が返ってきたことをよく覚えています。この価値観に触れたとき、良い1年になるかもしれないと感じました。実際、良い1年になりました。

また、彼女たちが最初に「なぜ女性だけが集められたのですか?」と不思議がっていたのも良い反応だと思いました。「女性活躍はダイバーシティ推進の1つにすぎません。皆さんと女性活躍をすすめることで、会社を変えていってほしいのです」と説明したら、彼女たちはよく理解してくれました。

きらりの目的は「人脈形成とキャリア支援」と「ダイバーシティ推進」の2つ

木村:図表1は、2025年の第4期「きらり」の1年間の流れです。この図表にもありますが、きらりの目的は「横同士の人脈形成」と「個々人のキャリア支援」と「ダイバーシティ推進につながる施策提案」の2つです。

<図表1>「きらり」の1年間の流れ

「きらり」の1年間の流れ

人脈形成

当社女性社員の声として最も多かったのは「ロールモデルが近くにいない」ことでした。スタッフ職(総合職)の女性比率が全社で9.2%、部署によっては数%のところもあり、そもそも参考にしたり助言をもらえたりする先輩女性が近くにいないことが、キャリア思考が育ちにくい要因でした。そのため、きらり同士のきずな作りはもちろんですが、きらりOGを交えた女性サロンや、アイシングループ全体の女性交流会を実施し、社内外の女性同士で語り合い、つながりをつくってもらおうと企画しました。

2025年は、他社との女性交流会も開催しました。女性活躍のためには、こうして女性同士が多様につながることが極めて大切だと考えています。こうした交流のなかで、自分なりのロールモデルも見つけてもらいたいと考えています。

キャリア支援

参加者はコンサルタントの「キャリア講義」を受講し、これまでのキャリアを棚卸しします。SPI3 for Employees等も使いながら自己理解を深め、自分らしいキャリアを会社で実現する方法を具体的に検討します。

「きらり」ワーキング4期生の様子

「きらり」WKGの様子

特に女性は出産・育児などのライフイベントに影響されることも多いです。自身のキャリアを考えるだけでなく、悩みについてお互いに語り合い、考えを参考にすることで、自分のキャリアについての考えをブラッシュアップすることができます。

ダイバーシティ推進

自組織に必要なダイバーシティ施策を考え、1年の終わりに、経営層に向けて提言をプレゼンテーションしてもらいます。準備は大変で、メンバー自身も緊張しますが、その分得られるものも大きいようです。その結果、提言にとどまらず、自分たちで考えた施策の一部を自ら運営し、さらに自組織でも実践してくれるメンバーが増えています。

成果・今後の取り組み

きらり第1期生から、2名の女性管理職と海外出向者が誕生

木村:参加メンバー第1期生からは、参加後に「やってよかった!」という声が多く聞かれました。最初は少し後ろ向きだったメンバーも、最後には「頭の中が整理できた」「後輩にも引き継ぎたい」と前向きな感想を話してくれました。特に多かったのは「自分のキャリアについて考えるきっかけになった」という声で、女性従業員のキャリア形成の重要性を改めて感じています。
この記事の最後には、参加者のリアルな声も紹介していますので、ぜひご覧ください。

諏訪:実際に、第1期生から2名の女性管理職が誕生し、海外出向を経験したメンバーも出てきました。彼女たちは、すでに後輩たちのロールモデルとして活躍してくれており、これは非常に心強い成果です。これまで女性活躍の課題の一つは「身近なロールモデルが少ないこと」でしたが、きらりを通じてその壁を少しずつ乗り越えられていると感じます。

また、卒業生が自発的にOG会を運営してくれていることも、継続的なつながりを生む大きな一歩です。女性管理職比率も少しずつですが、着実に上昇しています。

木村:定量的な成果も出ています。従業員意識調査では、「女性が活躍できているか?」「性別に関係なく仕事が任されているか?」という項目のスコアが、4年間で3.9から4.2〜4.4へと上昇しました。これは、キャリア面談制度の導入や、マネジメント研修による上司の意識改革などの取り組みの成果でもありますが、きらりの影響も大きいと感じています。

諏訪:さらに、きらり主催の女性サロン(昼休憩などを利用した自由参加の交流会)も大きな意味を持っています。以前は、出産や育児を初めて経験する女性従業員や今後のキャリアについて悩む人にとって、気軽に相談できる相手が少ない状況でした。サロンを通じて、同じ立場の仲間とつながり安心して話せる場ができたことは、働き続けるうえでの支えになっていると思います。

きらり1~4期メンバーの交流会の様子
きらり1~4期メンバーの交流会の様子

木村:今では、きらりOG会を中心に、相談できる相手が何人もいる環境ができています。このつながりが、女性従業員にとって「不安を解消する場」や「一歩踏み出す勇気の源」になっていると感じています。

木村:さらに、きらりOG会の活躍は年々広がっていて、2025年には他社との女性交流会を開催しました。それだけでなく、新卒採用の場面では、きらりOGが女性インターンシップ学生との交流会を自主的に企画・運営してくれています。こうした動きは、次世代の女性たちにとっても大きな刺激になっていると思います。

きらりの提言から始まる、社内の組織変革

木村:きらりでは毎期、参加者自身が「女性が、ひいては従業員皆がもっと働きやすくするにはどうしたらいいか?」という視点で話し合い、自分たちの組織に必要な施策を考えてもらっています。まずは、自分たちでできることから実践してみる。そのうえで、必要に応じてOG会に展開したり、人事が全社に広げたりする流れをつくっています。

諏訪:提言のプレゼンテーションは役員会で行うのですが、毎回とても盛り上がります。参加者のプレゼンが上手で、内容も前向きかつ具体的なので、役員たちも真剣に聞いてくれます。「今年のきらりの提言、楽しみにしているんだ」とおっしゃる役員も多いです。

一方で、参加者にとっても、経営層に自分たちの想いやアイデアを直接伝えられる機会は貴重です。真剣に耳を傾けてくれる役員の姿を見て、達成感や自信につながっていると思います。

きらりメンバーと社長との座談会の様子
きらりメンバーと社長との座談会の様子

木村:きらりの提言が、経営層の行動につながることもあります。たとえば、第3期メンバーが「社長は社内メディアでさまざまな発信をしていますが、ダイバーシティについても発信していただけませんか?」とお願いしたところ、秋山晃社長がその声に応え、すぐに社内メディアでダイバーシティについて語ってくださいました。このように、きらりは社内に働きかけ、変化を生み出す力を持っています。

諏訪:最近では、生産技能職の現場でも女性活躍を推進するワーキンググループが立ち上がりました。工場の反応は非常に前向きで、むしろ本社以上にモチベーションが高いと感じることもしばしばです。

月2回、工場長や副工場長も参加し、女性従業員がキャリアや働き方について話し合う場を設けています。生産技能職には夜勤など、女性にとって課題となる面もありますが、一方でキャリア目標を考えやすいというメリットもあります。今後はこの分野でも、女性活躍の取り組みをさらに強化していきたいと考えています。

icon

「きらり」OG会の声

「きらり」参加者

・本業が忙しく、きらりの参加前は乗り気ではありませんでした。ですが、きらりの講義で聞いた「キャリアを考えることは、生き方を考えることだ!」という言葉に衝撃を受け、自分のキャリアについてよく考えるようになりました。今は管理職として、日々、部下の3年後のキャリアを考えながら対話しています。先日の他社との交流会からも刺激を受け、やる気になりました。

・きらりに参加する皆さんは前向きな人が多く、交流会・OG会などで情報交換できることを魅力に感じています。そうした場で皆に相談すると、いつもチャレンジに向けて後押ししてくれるのも嬉しいです。また、皆と話すうちに、この会社には本当にいろいろな状況の女性が働いていることが分かりました。きらりがなければ知ることは難しかったと思います。

・私はもともとこういう場に興味があるタイプではなく、上司に薦められて参加したのですが、今は参加してよかったと思っています。きらりには、誰かの前向きな言葉が広まり、思ってもみなかった形で波及する好循環があります。その積み重ねで、皆がこれまで以上に明るく楽しく働けるようになってきており、もっとそうなればよいと思います。現在はグループリーダーとして、きらりでの学びを部下に伝えており、今後は「こうなりたい」と思う人たちをサポートする役割に就きたいです。

・きらりでは、自分のキャリアについてよく考えることができました。周囲の皆さんの反応を見て、私は自分で思っていたよりもやりたいことがあるタイプなのだと気づき、やりたいことの解像度が上がりました。きらりで初めて会社のキャリア設計とプライベートの人生設計をマッチングさせたのですが、これも大きな気づきにつながりました。きらりには前向きな女性がたくさん集まっていて、彼女たちと触れ合うことが日々の活力になっています。

・きらりに参加して、育児やプライベートを言い訳にしてはダメなのだ、と気づくことができました。正直、育児と仕事の両立は本当に大変なのですが、そうしたときも自分のキャリアについて考えた方がよいことがよく分かりました。本当に「キャリアは人生」なのです。きらりにはガッツがあって明るい人がたくさん集まっていて、いつも皆さんから刺激をもらっています。

icon

コンサルタントの声

山本の顔写真

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
コンサルティング部
エグゼクティブコンサルタント
山本りえ

アドヴィックス様は、DE&Iを推進するにあたり、マイノリティのなかでもマジョリティに位置する「女性」にまずは着目して取り組まれてきました。あらためてダイバーシティを考えるとき、同じ女性であっても職種・職場環境・キャリア志向・価値観・家族環境等、置かれている状況はさまざまであり、「個を生かす」ことを大切に進めてこられました。

ポイントは、意欲や能力があるにもかかわらず活躍できていない人を阻害している壁を取り除くこと、そして仲間をつくり、自ら組織を変えていくことです。その取り組みを通じて、参加した「きらり」のメンバーが自らダイバーシティのビジョンを描き、課題を設定し、経営層に提言して組織を動かしていく経験を積むことで、管理職に必要な視野や視点を習得していくことを目指されています。

今年で「きらり」は4期生となり、OGから管理職が誕生したり、海外で活躍される方が生まれたり、また、ご自身が主体となって部全体の変革を推進したりと、さまざまな場面で活躍されています。私自身も、きらりメンバーの活躍に毎回エネルギーをもらっています。

取材日:2025/08/21

icon

企業紹介

株式会社アドヴィックス様のロゴ

株式会社アドヴィックス

2001年に設立され、アイシングループの成長領域であるブレーキ事業を担当。グローバルに開発、製造、営業、販売拠点を展開している。世界一お客様に喜ばれるブレーキ屋集団を目指し、未来への挑戦により、持続的成長を続ける。

SHARE

関連する
無料セミナー

Online seminar

サービスを
ご検討中のお客様へ

電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください

SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ
0120-314-855

受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)

facebook
x