STEP

課題

後輩指導・育成力の向上

中堅・リーダー層の能力開発

課題解決のポイント

リーダー育成という位置付けで、意識とスキルの両方を高める

後輩の指導・育成は中堅社員の重要な役割の1つですが、今の中堅社員にとっては担うことが難しい状況といえます。その背景には、(1)仕事・職場の要因、(2)指導される側の要因、(3)指導する側の要因が挙げられます。

(1)仕事・職場の要因

仕事と職場を取り巻く環境は従来と大きく変わりました。複雑かつ不確実な環境変化にさらされ、競争が激しくなるなかで、仕事はどんどん高難度化・高速化しています。そのなかから、新人・若手の育成に適したサイズや難易度の仕事を見つけるのは簡単ではありません。また、業績圧力が厳しく、職場では上司も含めた全員が自分の仕事に手一杯で、指導・育成に意識が向きにくい状態にあります。誰も正解が分からない状況のなかで、一つひとつの仕事の内容やレベルを新人・若手に分かるように細分化し、指導していくことは並大抵のことではありません。

(2)指導される側の要因

(1)で見たような仕事・職場環境においては、指導される新人・若手社員の側が積極的に周囲に働きかけ、自律的に学んでいくことが求められます。しかし、昨今の新人・若手社員は周囲と協働しながら自発的に動き、自ら困難に立ち向かうことが苦手なタイプが多いようです。新入社員が苦手だと感じていることを調査したところ、「【自発】受け身にならず、自分から動こうとする」「【試行】失敗や否定を恐れず、思い切ってやってみようとする」「【協働】自分だけで抱え込まず、周囲の力を借り、活かそうとする」ことが上位にランクインしました(図表参照)。「自ら考えて周囲に働きかける」という、成長に不可欠な行動を苦手とする若手や新入社員が多いということです。何でも進んでトライしてみる、分からないことがあればすぐに聞いてみるというという行動に壁があるため、若手や新入社員自身も困ってしまう場面が多く、各企業における人材開発においても課題とされることが多くあります。

不安・苦手意識があるけど大事だな。意識的に取り組みたいと思うスタンスにチェックを入れてください。 スタンス

リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2022」(N=525)

(3)指導する側の要因

指導・育成を任される中堅社員は、主に就職氷河期が続いた2000年代の入社者です。彼らの多くは、同じ部署に年の近い先輩や後輩がほとんどいないために、新人・若手時代に手厚い指導を受けられず、後輩の指導経験も特にないまま現在に至っています。「入社以来、ずっと部署で一番の若手」という人も少なくありません。そのため、後輩指導のイメージが持てず、自分のわずかな経験則を頼りに指導しようとしてうまくいかず、困惑するというケースが見られます。

中堅社員が育成した経験も育成された経験も乏しく、後輩指導のイメージがもてない場合、まず育成の基本的な考え方や原則をしっかり学ぶ必要があります。また、OJTに際しては、教える相手の特性をよく知り、相手にとってどのようなアプローチが効果的かを意識して、自分の経験則だけに頼らない指導・育成の方法を身につけていく必要があります。

このことは、中堅社員にとって、物理的にも精神的にも大変なことです。そのため、中堅社員自身が、後輩指導をすることは自分のためにもなると意味付けて取り組めるようにする工夫が大切です。新人・若手社員を育てるスキルは、目の前の新人・若手のためだけでなく、この先、自分がプロジェクトマネジメントやラインマネジメントを担っていく上で極めて重要であり、目の前の新人・若手の育成は、その力を身につける絶好の機会であるというメッセージを、会社として打ち出すことが重要といえます。

施策事例

事例1広告・情報サービス関連企業

1年かけて意識変革を行い、学び合いのネットワークを構築

背景
  • 事業成長に伴い採用を拡大したが、職場環境が厳しいために新人・若手の離職や伸び悩みなどの問題が深刻化していた
  • 中堅社員は、手厚い指導を受けずに独力で成長した人が多く、自分の経験則が通用しない新人・若手の育成を諦める人も出ていた
施策
  • 経営層が社員に対し、新人・若手社員の離職や伸び悩みの現状を伝え、事業上の危機に直面していることを全社で共有する場をもった
  • 育成担当となる中堅社員とその上司を対象に研修を行い、1年間にフォローアップのワークショップを複数回開催、その間はWEB上で好事例の共有を行った
  • 今の新人・若手を育てられなければ、仮に事業上の危機を乗り切れたとしても、今後、自分たちがマネジメントを担ったときに立ち行かなくなるという意識が、中堅社員に芽生えた
  • ワークショップの回数を重ねるごとに、育てるのを諦めかけていた新人・若手にもう一度関わろうとする中堅社員が増え、結果的に、多くの新人・若手の成果があがり始めた
  • 育成担当者同士が普段から相談し合えるネットワークを作り、現場が育成の自走を始めた

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