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調査レポート

ニューノーマル時代の新入社員の定着・早期立ち上がりに向けて

新入社員意識調査2022

  • 公開日:2022/07/04
  • 更新日:2024/05/16
新入社員意識調査2022

新入社員に対し、「自分の世代とは違いすぎて接し方が分からない」「どうしたら活躍してもらえるだろう」などと、苦戦している声をよく聞きます。どのようにしたら効果的に関わり、いきいき仕事をしてもらえるでしょうか。今回は、弊社が2022年度の新入社員を対象に実施した、以下2つの意識調査の結果から、「新入社員の特徴」と「新入社員を生かす」という視点での考察を行いました。

■ 調査1
本記事で主に述べている調査は、2022年3月24日~4月21日に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の当該期間での受講者525名(従業員数300名未満企業比率:67.2%)に、上司や職場に期待すること、期待や不安などに関する質問について、回答いただいたものです。

■ 調査2
補足する調査として、2021年12月12日~2022年5月6日に弊社の新入社員向けのeラーニングサービスで「ビジネスマナー」や「ビジネスパーソンの基本行動とスタンス」の受講者1672名(従業員数300名未満企業比率:15.8%)に対して、仕事をするうえで重視するキーワード、スタンスに対する意識について回答いただいたものです。


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これまでの新入社員意識調査レポートDLはこちらから
VUCA × Z世代新人育成のニューノーマルを考える「2021年新入社員意識調査」
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周囲と互いに助け合い、良好な関係を築ける職場を望む
上司には、多様性と個性を尊重したコミュニケーションを求める
他者貢献への関心も高い新入社員 長期的視野で強みを引き出す支援が重要
不確実性が高いなかで、新入社員の特徴がますます有益になる 「新入社員を生かす」ことについて考える
新入社員の可能性を引き出すポイントは、 「承認のコミュニケーション」×「はじめの一歩のフォロー」
最後に  違いがある人との協働は人間としての器を広げる絶好の機会

周囲と互いに助け合い、良好な関係を築ける職場を望む

まずは、働く環境で望むことをテーマとして扱います。

<図表1>働いていくうえで大切にしたいこと

Q:あなたが社会人として働いていくうえで大切にしたいことは何ですか?(最大3つまでの複数選択/pt=ポイント)

<図表1>働いていくうえで大切にしたいこと

この質問では、新入社員が社会人として働いていくうえで大切にしたいことを聞いています。結果は、「周囲(職場・顧客)との良好な関係を築くこと」(45.0%)、「元気にいきいきと働き続けること」(33.9%)の選択率が過去最高となりました。一方、「何があってもあきらめずにやりきること」(13.9%)は10年前と比較して、9.4ポイントも減少しました。

<図表2>働きたい職場の特徴

Q:あなたはどのような特徴を持つ職場で働きたいですか?(最大3つまでの複数選択/pt=ポイント)

<図表2>働きたい職場の特徴

職場に関する質問では、どのような特徴を持つ職場で働きたいかを聞いています。「お互いに助けあう」が調査開始以来トップの69.7%となっています。10年前と比較して20.6ポイントも上昇し、選択率は7割に達する勢いです。一方で、「ルール・決め事が明確」は過去最低の8.6%となり、選択率が10%を切りました。

新入社員が働く環境で望むことの特徴としては、周囲と良好な関係を築いたり、お互いに助けあったりするなど、他者との関係性への関心が高まっている傾向がみられます。

これらの関心の高まりは、コロナ禍により環境が変わるなかで、対面とリモート両側面から生じる懸念が影響していると推測できます。2022年度の新入社員は、コロナ対策緩和が徐々に進むなかでの入社となり、コミュニケーションの重要性を感じている可能性があります。一方で、リモート環境で関係性の希薄化が進み、孤独を感じている背景から、他者とのつながりを求めるケースもあると考えられます。

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上司には、多様性と個性を尊重したコミュニケーションを求める

次に、上司に望むことをテーマとして扱います。

<図表3>上司に期待すること

Q:あなたが上司に期待することは何ですか?(最大3つまでの複数選択/pt=ポイント)

<図表3>上司に期待すること

この質問では、上司に期待することは何かについて聞いています。「相手の意見や考え方に耳を傾けること」(54.1%)が過去最高となりました。一方、「仕事がバリバリできること」(9.5%)が過去最低となりました。

厳しく指導する上司よりも、相手の意見や考え方に耳を傾けたり、よいこと・よい仕事をほめたりする上司を求める傾向にあります。

相手の意見や考え方に耳を傾ける上司を望む背景としては、新入社員が、価値観の多様化が謳われる社会で育った世代であることから、個性や違いに受容的で丁寧に耳を傾けるコミュニケーションを求めることが考えられます。

この傾向は、決め事を実行する印象が強いルールやマナーへの関心の低下としても表れています。例えば、図表2の「どのような特徴を持つ職場で働きたいか」を聞いた質問では、「ルール・決め事が明確」は過去最低の8.6%の選択率(ここでは紹介していませんが)となりました。

このような特徴を踏まえた新入社員との関わり方としては、例えば、会社の方針をトップダウン型で実行させるのではなく、新入社員のWILL(※)やPURPOSE(※)などに紐づける形で方針を伝え、本人の納得感を醸成し、能動的に実行してもらうことが重要だと考えます。

そして、よいこと・よい仕事をほめる上司を望む背景としては、新入社員がSNSを巧みに駆使し、他者から「いいね」をもらえる状況にあることから、承認欲求が強く、かつ低評価をされることへの不安があると予想できます。

(※)WILL:自分が実現したいこと
(※)PURPOSE:自分の存在意義や志

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他者貢献への関心も高い新入社員 長期的視野で強みを引き出す支援が重要

さらに、仕事で重視したいこと・スタンスに関連するテーマについて見ていきます。

<図表4>仕事をするうえで重視すること

Q:あなたが仕事をするうえで重視することは何ですか? 当てはまるものに最大2つまでチェックを入れてください。(n=2,394/2つまで複数選択)

<図表4>仕事をするうえで重視すること

この質問では、新入社員が、仕事をするうえで重視することについて聞いています。

トップ2は「貢献」(31.9%)と「成長」(28.4%)で、「競争」(1.4%)は過去最低となっています。

<図表5>仕事をするうえで得意なスタンス・苦手意識のあるスタンス

<図表5>仕事をするうえで得意なスタンス・苦手意識のあるスタンス

この質問では、新入社員が、仕事をするうえで得意なスタンス(「得意だな」「強みとしてさらに生かしたい」と思うスタンス)・苦手意識のあるスタンス(「不安・苦手意識があるけど大事だな」「意識的に取り組みたい」と思うスタンス)について聞いています。

得意なスタンスのトップ2は「相手基準」(35.0%)と「協働」(31.7%)でした。また、不安・苦手意識があるけど大事、意識して取り組みたいスタンスのトップ2は「自発」(31.6%)と「試行」(26.4%)でした。

結果を見ると、新入社員が、自己成長のみならず、貢献や協働、相手基準などへの関心が高いことが見受けられます。この背景としては、ボランティア・地域活性・SDGsなどに代表されるような社会貢献活動が世の中に浸透した影響があると想定されます。

しかしながら、「協働」や「相手基準」は、「自発」などと比較し、目立った行動としては表れにくい傾向にあります。そのため、新入社員の強みを早期に見極めようとするのではなく、長期的な視点で関わるスタンスが求められます。また、新入社員の特徴や志向が生きる仕事を任せたり、本人に合った仕事の仕方を提案したりするなどの、新入社員の強みを発揮できる支援をすることも有効だと考えます。

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不確実性が高いなかで、新入社員の特徴がますます有益になる 「新入社員を生かす」ことについて考える

不確実性が高まって何が起きるか予想不可能であったり、デジタル化が急速に進んだりする現代社会において、新入社員が持つ、多様性を受け入れる柔軟さや協働する力、コンテンツ創造力やデジタルスキルなどの特徴は、企業にとってますます有益になっているといえます。また、人手不足などが大きな問題としてあげられる近年、企業にとって、人材を大切にし、個人に力を発揮してもらう取り組みは必須ともいえます。

しかし、新入社員に対し、「自分の世代とは違いすぎどう接すればいいのか分からない」などと、苦戦している声をよく聞きます。

“違い”は、ある意味、面倒で厄介なものであり、本音を言えば「向き合いたくない」と思うことも多いのではと推測します。

 “世代の違い”に対する抵抗感を乗り越えて、新入社員を生かすにはどうすればよいのでしょうか。

新入社員をリアルに想像するために、1つの特徴を事例として考えていきましょう。

「SNSに慣れ親しんでいる」という特徴から、新入社員について考えてみます。

新入社員世代は、LINE、TikTok、Instagram、Twitter、Facebookなど、さまざまなSNSに触れ、なかには1つのアプリケーションで、本名のアカウント、鍵付きのアカウント、趣味のアカウントなどのように複数のアカウントを運用している人もいます。アプリケーション上ではリアルタイムに「いいね」が飛び交い、投稿を起点にした肯定的なメッセージのやり取りも頻繁に発生しています。

SNSイメージ

新入社員は、「いいね」をもらえる日常に慣れているため、なじみのない否定への恐れが高まっていると想定されます。かつ、幼い頃から自分の知りたいことを入力すれば瞬時に情報を得られるインターネット社会で育ったデジタルネイティブであるため、深く考えたり人に聞いたりすることに時間を使わず、手軽に正解を求める傾向もあります。そのため、何が「いいね」につながるのかが不確かな正解のない環境や、「いいね」をもらう自信が持てない環境下で、主体的に何かを始めたり動いたりすることを苦手とする傾向があるのも事実です。

また、炎上しないように、空気を読み、悪目立ちしない発信を意識しているため、心理的安全性がない場面での発信に不慣れという特徴も見られます。

このような苦手意識というのは簡単に払拭できるものではなく、長期的視野で慣れさせ、育てていく意識が必要でしょう。

一方、新入社員の特徴をさらに見ていくと、生かせる側面があることにも気がつきます。

例えば、新入社員世代は、“映(ば)える”ものを生み出し続け、なかにはバズらせる(※)ことに成功し、若者の間だけでなく世代を超えてコンテンツを有名にさせたケースも多く見受けられます。この事象は、新入社員世代の発想の豊かさや柔軟さ、クリエイティビティや美的感性の高さを物語っているといえます。

また、SNSによって、全世界の鮮度良い情報に触れられるようになりました。現在では、SNS内の機能進化も相まって、翻訳機能・絵文字で他国・他言語の人と交流することも容易になりました。

こうしたSNSやデジタルの進化は、国境を越えた発信への共感や、多種多様なコミュニティ・運動への参加を可能にしました。かつ、遠くの地で起こったことも、SNSに参加する一個人の生の声や動画に触れることで、より身近に感じられるようになりました。

そのような経験が、グローバルな視野、柔軟な発想力、多様な価値観につながっていると考えられます。

(※)バズる:投稿や記事が爆発的に拡散されること

ご紹介したのは、たった1つの「SNSに慣れ親しんでいる」という特徴に注目した事例でしたが、特徴を紐解いてみるとさまざまな側面が見えてくることに気づきます。一見、強化し、育てていく必要のある側面ばかりに感じるかもしれませんが、理解を進めていくと組織の力につながる側面も多いことに気がつきます。問題や課題ばかりに着目せずに、すでに持っている特性・強みを発揮してもらうような関わり方を意識することで、新入社員も自分の力を発揮しやすくなるのではないでしょうか。つまり、新入社員の特徴を、育てる側面と生かす側面の両側面を見ることが、「新入社員を生かす」スタンスとしては大切だといえるでしょう。

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新入社員の可能性を引き出すポイントは、 「承認のコミュニケーション」×「はじめの一歩のフォロー」

ここまで、肯定されるか不安が残る環境で自ら主張することを躊躇ったり、周囲の様子を確認しながら慎重に行動したりする新入社員の特徴を述べてきました。それでは、そのような新入社員に対して実際どのように接すればいいのかについて考えていきます。

ここでは、2つのポイントをご紹介します。

1つ目は、「承認のコミュニケーション」です。

新入社員を理解し、強みや小さな変化を承認していくコミュニケーションを図り、心理的安全性を高めていく必要があります。

コミュニケーション

具体的手法としては、下記などが考えられます。

・「いいね」や「なるほど」など、肯定的な反応で承認や共感をはじめに示す
・業務の話題だけではなく、本人の人となりや興味関心もとりあげ、その人そのものへの関心を示す
・入社理由や今後どんなことをやりたいかなど本人のWILLに焦点を当て、コアとなる価値観を承認したうえで、WILLにつながる業務を依頼する

2つ目は、「はじめの一歩のフォロー」です。

新入社員の意欲が高まる瞬間を捉え、行動を促すコミュニケーションを取ったり、初めてのトライを傍で伴走したりするなど、はじめの一歩に対するフォローを意識して行っていく必要があります。

はじめの一歩

具体的手法としては、下記などが考えられます。

・行動が起こる兆しを捉え、行動を促す声掛けや壁打ちミーティングなどの提案をする
・行動を成功に導くため、必要な情報を提供したり、得意な人を紹介したりする
・定期ミーティングなどでは「何かある?」とオープンクエスチョンのみではなく、タスク状況を見ながら具体的な質問もしていく

最後に  違いがある人との協働は人間としての器を広げる絶好の機会

今回、新入社員に対する調査をもとに「新入社員を生かす」というテーマで話を進めてまいりました。つまるところ、“新入社員”や“先輩”などと境界線を引かず、組織に属するメンバー同士が一個人として向き合い、個性を生かし合うことこそ、最も望ましい状態だと考えます。そのためには、お互いから学び、生かそうとするスタンスが大切な要素となるのではないでしょうか。

ダイバーシティ

自分とは違う考えを持つ人と関わるとなれば、意見の衝突や不快の感情が生じることもあるでしょう。しかし、それを「この人は自分にはないものを持っている」「この人から学ぼう」とチャンスと捉えて向き合うことで、他者を理解する力がついたり、新たなものの見方や考え方を獲得できたりします。つまり、違いがある人との協働は、単なるビジネススキル向上にとどまらず、人間としての器を広げる絶好の機会だといえます。

この出会いから、何を学べるでしょうか?

この人と向き合うことは、どんな意味をもたらしてくれるでしょうか?

組織にとっても、個人にとっても、春の新たな出会いが、少しでも価値あるものになりますことを、心から祈っています。

出会いイメージ

執筆者

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研究員

武石 美有紀

2014年大学在学中に個人事業開始。 2016年リクルートキャリア(現リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。現在は、リクルートマネジメントソリューションズ にて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。

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