“変化の時代”を生きるビジネスパーソンに必要な学びとは? 公開型研修サービスをつくる3名による座談会【前編】。社員研修・社員教育のリクルートマネジメントスクール
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“変化の時代”を生きるビジネスパーソンに必要な学びとは? 公開型研修サービスをつくる3名による座談会【前編】

リクルートマネジメントスクールの公開型研修サービスのコース開発者と講師が、「めまぐるしい変化の時代にふさわしい学びとは」や「公開型研修サービスの優位性」、「まさに今、注目が高まっているコース」などのテーマで語り合いました。これから公開型研修サービスを導入しようと考えている人事の方、どんなコースを受講したらいいか迷っている方は、ぜひお読みください。新しい時代の学びのヒントがきっとみつかります。

■座談会メンバー
●トレーナー・講師 山田 義一(やまだ よしかず)
銀行・メーカー・外資系コンサルティング会社を経て、人事コンサルタント・講師として活躍。

●コース開発者 五十嵐 理恵(いがらし りえ) 
●コース開発者 渡部 数満(わたなべ かずま)
リクルートマネジメントスクールにて企画、商品開発、サービス開発、事業開発を行う。

A.今の仕事に役立つことだけやっていたら、将来、大変なことになるかもしれない(渡部)

山田:今、世の中で最も成長している会社の一つは、Googleだと思います。Googleには「ラーニングマニア」という言葉があり、社員は次から次へと新しいテーマについて、マニア的に学んでいるそうです。

私は人事コンサルタントを22年やってきましたが、成果主義からグローバル人事、ダイバーシティ、働き方改革…という具合に、その都度新しいテーマを仕込んできました。昔は1年に一つ仕込めばよかったけれど、今は四半期、もしくは毎月のペースです。先ほどのGoogleがいい例で、移り変わる時代のなかで一つのところにステイしていたら、仕事にならなくなりつつあります。

渡部:僕が学生だった頃、Googleはありませんでした。でも今は、世界中でGoogleのサービスが使われています。新しい仕事が生まれた一方で、なくなっていく仕事も当然あるわけで、今の仕事に役立つことだけやっていたら、将来、大変なことになるかもしれない。もちろん、今の仕事に役立つ学びは必要ですが、個人的にはもっと自分の知的好奇心に素直になって、大人になっても何歳になっても、新しいことをどんどん吸収することが大切なのではないかと思います。

子供の頃って好奇心に素直じゃないですか。たとえばクワガタなどの昆虫に夢中になったら、人から教えられなくてもどんどん知識を吸収できる。でも、社会人になると学びの動機が好奇心と違うものになったりしますよね。

五十嵐:私も同感で、必要から解放された自由な学びもあっていいし、学ぶことをもっと身近なもの、日常的なものに捉えてもらえればと思っています。興味があることにアンテナを張って、気になるテーマを掘り下げたり、そこから新しいテーマに繋がって新しい知を獲得する・・・というサイクルが回ればいいですね。人生100年時代を見据えて、ワークとライフの定義も、組織と個人の関係性も変わりつつあります。そのなかで、自分でテーマを置いて、主体的・能動的に学んでいく…これからはそんな学びの世界観に変わっていくのではないでしょうか。ものすごい勢いで世の中が変わっていくなかで、私たちは学びが変わる転換点にいるのだと実感しています。

A.研修は旅行のようなもの。本やインターネットとは桁違いの気づきを得られる(山田)

山田:世の中のほとんどの知識は大型書店に行けば手に入ります。それでも、なぜお金を払って、研修で学ぶのか。同じ問題意識の人たちが集まると、触発されるからです。新たな気づきを含め、五感をくすぐる刺激がたくさん入ってきます。

五十嵐:同じ問題意識、課題感を抱えた人たちが集まると、圧倒的な「場の力」が生まれます。ほかの受講者が見せるリアクションや、自分にはない視点からの意見、その場に来たことで新たに湧く疑問や興味関心など、吸収できることは色々あります。

渡部:公開型研修には、異業種交流的な意味合いもあります。会社も業界も違うけれど、同じ悩みを持った人たちが集い、話し合ったりする面もあるんです。それがすごく刺激になるし、勇気づけにもなる。会社の上司にも相談できない悩みを、研修という非日常の場で、フラットに話すことができ、課題の解決策を持ち帰ることができる…そういう力があるのが、研修の特徴だと思います。

山田:私は研修の場は旅行と似ていると思います。たとえば、海外旅行に行ったとき、空気も言語も街並みも違うから、五感が刺激されて、自分の脳が普段の5倍、10倍のスピードで回転している感覚になる。研修も同じで、職場から離れ、講師がいて異業種の受講者がいる場で学び、話すことによって五感が研ぎ澄まされるのです。本やインターネットで学んだことと全く違う、桁違いの気づきを得られると思います。

五十嵐:限られた時間という緊張感と、講師がいて、多種多様な受講者と一緒に学ぶライブな場がある……、それだけでも随分変わりますよね。

渡部:研修という非日常的な空間で、これまで使っていなかった脳の領域に刻まれるというか…一つや二つは必ず、仕事や人生に役立つお土産を持って帰ることができると思います。

A. 働く人の課題を考えるのが大前提。自己実現などセルフの領域にも入っていきたい(五十嵐)

五十嵐:当然ですが、研修のコースをつくるとき念頭にあるのは、組織で働く人たちの役に立つこと。働く人たちが直面する課題を考えるのが大前提です。大きく言えば、仕事とは「課題解決をすること」ですから、「考える力を養う」とか、「コミュニケーション力を養う」とか、課題解決に必要なプロセスを分解して、優先順位をつけて、内容を検討しています。今だと、ロジカルシンキングなど思考力を高めるものや、コミュニケーションなど対人対応に関わるものが人気ですね。

渡部:顕在的なニーズとしては、仕事の進め方や、マネジメントに関するものが目立ちます。ただ、今後、先行き不透明な時代に求められるのは、新しいものを生み出すクリエイトに関するものや、仕事だけではなく人生を豊かにするものになると考えています。

五十嵐:自己研鑽、自己開発などセルフの領域にも入っていきたいですね。仕事のセオリーだけじゃなく、例えば、歴史やアートからの気づき・学びを得るなど、広がりを持たせていきたい。今後、個人と組織のあり方が多様化し、ワークとライフの垣根が曖昧になっていく中で、多様な場面に合わせた学びと、それを統合・活用するための視界や力を養うことは、組織にとっても個人にとっても総合的なメリットが大きいと思います。そういうことを考えて、新しい学びの種を育てています。

渡部:クリエイト領域でいくと、アート&ロジックというコースを最近リリースしたのですが、これも非常に引き合いがありました。私たちが考えている以上に、世の中の反応が大きかったという印象です。ロジックだけでは出せない答えが、右脳も一緒に働かせることでクリエイティブな問題解決につなげられるかもしれない。答えの見えない時代だからこそ、アート的な考え方を取り入れることに関心を持っている人が多いのかもしれないですね。

五十嵐:今まで受講したものには満足しているけれど、その上で「ほかに何かありませんか?」と聞かれることもあります。人事の方たちが、従来の研修の枠組みを越える、新しい何かを求めていて、その切り口の一例が、アートだったのかもしれませんね。

A.「なるほど!そういうことか!」 経験と理論を結び「自論」へと昇華する(山田)

山田:私はトレーナーとして研修の場を見ていて、大体、受講生は3パターン分けることができると考えています。テーマはなんでもいいですが、たとえば人材育成に関して、ほとんど経験則でやってきて、理論を持っていない人をAタイプ(上写真の左上)としましょう。もう一つは本などで勉強して理論は知っているのだけれど、頭のなかにあるだけで実践が乏しいBタイプ(上写真右下)。そして、もう一つは経験も理論もないCタイプ(上写真左下)です。

Aが研修を通じて自らの経験を自論(自分の考え、理論)に結び付けること、またはBの理論に具体的な事例紹介や、ワークショップを通じて「その手があったか」という実践に通じるヒントを与えて自論に昇華させること、これが僕の得意分野です。

五十嵐:受講者にとっては、足りなかったパズルのピースがはまって、理論と実践が結び付いて自論になることで「わかった!」となるのですね。

山田:なぜ自論が必要なのかというと、これまでは仕事のやり方もニーズも短期間で、それほど大きくは変わっていなかったですよ。それが、今はものすごいスピードで変化していますよね。東京23区の景色もガラリと変わって、昔の地図を持っていても迷子になるかもしれない。そんなときでも、コンパスがあれば、進むべき方角はわかります。街が再開発されて建物がなくなっていても、コンパスと地図があれば目的地にたどり着ける。そのコンパスに当たるものが、自論なんですよね。

渡部:ただ、若い人たちは、コンパスを持たされても、最初はどこに行っていいかわからないかもしれない。それに、途中で立ち止まることなく、最短距離で学びたがる傾向があります。

五十嵐:今の若い人たちは無駄の少ない中で生きているから、最短で行きたがるのかもしれないですね。

渡部:答えのない時代に向かっていくなかで、ゴールまで一直線っていうのは難しいと思います。遠回りになるかもしれないけど、無駄なことも経験すべき。こっちは違った、こっちも違った…となったとしても、最終的に向かう方向がわかったらいい。学びに効率を求めるのではなく、行ったり来たりすることがあってもいいと思います。特に若いうちは。