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調査レポート

人事評価と職場における感謝・称賛に関する実態調査

働く意欲を支える人事評価と職場における感謝・称賛の風土

読了時間:10

  • 公開日:2026/08/26
  • 更新日:2026/08/26
働く意欲を支える人事評価と職場における感謝・称賛の風土

本調査では、働く意欲を支える要因の1つとして、人事評価・処遇制度と、職場における感謝・称賛の風土に着目した。結果を見ると、人事制度は重要視されている一方で、満足度は必ずしも高くない。評価理由の説明が十分になされていない人では、ワーク・エンゲージメントが低い傾向が見られた。また、職場では日常的な感謝の言葉は一定程度交わされているものの、目立ちにくい貢献まで気づいてもらえていると感じる人は3割弱にとどまる。職場における感謝・称賛を認知しているほど、ワーク・エンゲージメントや就業継続意向は高く、バーンアウトや離職意向は低い傾向が見られた。

調査概要
3割の人は評価が低いことでモチベーションが下がる
人事評価制度は、どのように受け止められているのか
日常の貢献は、職場でどのように受け止められているか
おわりに

調査概要

日々の仕事は多岐にわたる。売上や達成率のように、数値や成果指標に表れやすい貢献もあれば、同僚への支援、チームの雰囲気づくりのように、目立ちにくい貢献もある。成果として見えやすい仕事だけでなく、周囲の仕事を支えたり、職場が円滑に動くように整えたりする仕事も、組織を支える重要な貢献である。

こうした多様な仕事や貢献は、企業や職場のなかでどのように見られ、認められているのだろうか。企業では、人事評価制度を通じて成果や行動を評価し、処遇や育成につなげる取り組みが行われている。また、近年では、表彰制度やサンクスカード、ピアボーナス、上司・同僚からの感謝・称賛を伝える仕組みなど、日常の貢献を見つけ、伝えるための工夫も見られる。

一方で、働く人の側から見ると、自分の仕事が十分に見られている、ふさわしく評価されている、日々の努力や工夫が認められていると感じられているのだろうか。評価制度が整っていることと、本人が「自分の貢献が認められている」と感じることは、必ずしも同じではない。特に、数値や成果指標に表れにくい貢献は、組織にとって重要だとしても、制度や日常の職場関係のなかで見過ごされてしまい、働く意欲の低下につながる可能性がある。

そこで本調査では、働く意欲と人事評価との関係を検討することを目的として、職場で評価されるという経験を、人事評価制度と日常的な職場での感謝・称賛の両面から捉えた。従業員規模300名以上の企業に勤める正社員を対象に、仕事をする上でのモチベーション低下要因、人事制度への満足度、評価面談の経験、職場における感謝・称賛の状況などについて尋ねた。年代・勤務先企業の属性で均等に回収を行っている(図表1)。

<図表1>調査概要「人事評価と職場における感謝・称賛に関する実態調査」

3割の人は評価が低いことでモチベーションが下がる

まず、調査の背景として、働く意欲と評価の関係を確認した(図表2)。モチベーション低下要因の上位に挙がったのは、「給与が上がる見通しがないこと」36.3%、「給与が低いこと」34.8%であった。収入は、仕事を続ける上での基礎的な条件であり、給与水準や今後の処遇見通しの悪さは、モチベーションを下げる大きな要因であることが分かった。

<図表2>モチベーション低下要因

一方で、モチベーションを下げる要因は給与だけではない。「評価が低いこと」は29.3%、「見えにくい貢献が認められないこと」は26.8%、「公正に評価されていないこと」は25.3%、「行った仕事にふさわしい評価を得られないこと」は24.4%であった。評価が低いことに加えて、見えにくい貢献が認められないことや、評価の公正さ・妥当性に納得できないことも、モチベーションを削ぐ要因になっている。

人事評価制度は、どのように受け止められているのか

人事制度と一口にいっても多様な側面があるが、本調査では、それぞれについてどの程度重要視しているか尋ねた。「重要である」「とても重要である」の合計を見ると、賃金制度は75.9%、評価制度は62.2%、昇進・昇格制度は51.5%であった(図表3)。制度別に見ると、最も高いのは賃金制度であり、次いで評価制度、昇進・昇格制度が続く。仕事を続ける上で、賃金制度が最も重視されている一方、評価制度の重要度も「重要である」「とても重要である」の合計は6割を超えており、働く人にとって重要な制度として位置づけられていた。

<図表3>人事制度の重要度

一方で、満足度は重要度ほど高くない。「満足している」「とても満足している」に限って見ると、賃金制度は29.6%、評価制度は23.2%、昇進・昇格制度は24.4%であった(図表4)。人事制度は重要なものとして受け止められている一方で、強い満足を示す人は限られている。

<図表4>人事制度の満足度

評価制度は、賃金や昇進・昇格を決めるための仕組みであるだけでなく、企業が何を重視しているのかを従業員に伝えるメッセージでもある。何が評価されるのか。どのような行動が望ましいとされているのか。成果だけでなく、努力や工夫、支援、協働も考慮するのか。評価制度には、企業が従業員に期待するあり方が反映されている。実際に、人事評価制度の特徴について尋ねると、現在の評価制度は、個人間の競争や個人成果だけを重視するものとして受け止められているわけではなかった(図表5)。全体として、いずれか一方に大きく偏る項目は多くなかった。比較的差が大きかったのは、「協調を促している/競争を促している」であり、「協調を促している」「どちらかといえば協調を促している」を合わせた割合は64.9%であった。現在の評価制度は、協調を促すものとして受け止められる傾向が見られたものの、それ以外の項目では認識が一方向に偏っているわけではないことが分かる。評価制度は、組織への貢献や取り組み方を重視するものとしても、報酬や昇進、相対的な判断と結びつくものとしても受け止められていた。

<図表5>人事評価制度の特徴

人事評価制度の特徴

次に、人事評価において、回答者の勤務先企業が重視していると思う要素と、本人が納得するために重視されることが望ましいと思う要素を比較する(図表6)。

<図表6>人事評価について重視されている項目と重視されることが望ましい項目

回答者の勤務先企業が重視していると思う要素では、「評価基準が明確であること」が34.8%で最も高く、「評価結果が処遇に適切に反映されていること」(29.9%)、「チームへの貢献が見られていること」(28.4%)、「評価理由が説明されていること」(26.5%)が続いた。現在の評価制度において、評価基準の明確さや処遇への反映、チームへの貢献、評価理由の説明などが比較的重視されていると認識している。

一方、本人が納得するために重要視されることが望ましいと思う要素では、「評価基準が明確であること」が37.5%、「評価結果が処遇に適切に反映されていること」が34.1%、「評価者によるばらつきが小さいこと」が30.5%、「評価理由が説明されていること」と「直接評価につながらないが、重要な仕事も見られていること」がそれぞれ29.0%であった。

両者を比較すると、現在の会社が重視していると思う要素と、本人が望ましいと思う要素には、共通点とずれの両方が見られる。共通して上位に挙がっているのは、「評価基準が明確であること」や「評価結果が処遇に適切に反映されていること」である。評価制度に対しては、何を基準に評価されるのかが分かること、また評価結果が処遇に反映されることが、現在の認識としても、望ましさとしても重視されている。一方で、望ましいと思う割合が、現在の会社が重視していると思う割合を上回る項目もある。ギャップが大きいのは、「評価者によるばらつきが小さいこと」で+8.9ポイント、「直接評価につながらないが、重要な仕事も見られていること」で+8.3ポイントであった。

評価基準の明確さや処遇への反映は、現在の会社が重視していると思う要素としても、本人が望ましいと思う要素としても上位に挙がっている。その上で、働く人は、評価者によって判断がばらつかないこと、直接成果に結びつきにくい重要な仕事も見られることも求めている。

次に、評価制度に対する期待が満たされているかどうかによって、ワーク・エンゲージメントに違いがあるのかを確認した(図表7)。

<図表7>ワーク・エンゲージメントの平均

ここでは、各項目について、「納得するために望ましい」と「現在お勤めの会社の人事評価で重視されている」を選択している人を充足群とした。これに対して、「望ましい」を選択しているが、「現在重視されている」は選択していない人を未充足群とした。その上で、それぞれの群のワーク・エンゲージメント(「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」「仕事に熱心に取り組んでいる」「仕事をしていると、つい夢中になってしまう」をそれぞれ5件法で聴取し、その平均をとった)を比較した。グラフは、得点差の降順で項目を掲載している。

その結果、多くの項目で、未充足群よりも充足群の方がワーク・エンゲージメントは高い傾向にあった。特に差が大きかったのは、「評価理由が説明されていること」である。この項目の充足群では、ワーク・エンゲージメント平均が3.46であったのに対し、未充足群では2.48であり、0.98ポイントの差が見られた。

制度として評価を行っていても、本人が評価の理由を理解できなければ、仕事の意欲にはつながりにくいと見られる。逆に、評価理由が説明され、期待や役割について話し合う機会があれば、本人の貢献を確認でき、今後の成長や役割につながる可能性も高まるだろう。

さらに、評価制度そのものに対する考え方に加えて、働く人が自分自身の直近の評価をどのように感じているのかを確認する(図表8)。直近の人事評価に対する満足度を見ても、「とても満足している」「満足している」「やや満足している」を合わせた満足計は53.0%であった。一方で、「あまり満足していない」「満足していない」「まったく満足していない」を合わせると47.0%となり、直近の評価に満足していない層も半数近くにのぼる。

<図表8>人事評価などの満足度

満足・不満足の理由を自由記述から確認すると(図表9)、満足している理由としては、「自己評価と概ね一致している」「妥当な評価が得られている」といった評価への納得感に加え、「昇給した」「賞与が比較的良かった」「昇級できた」といった処遇への反映が挙げられていた。また、「上司と定期的に話し合うことができている」「成長について評価してくれている」といった、上司からの承認やフィードバックも満足につながっていた。

<図表9>直近の自身の人事評価に対する満足・不満足の理由

直近の自身の人事評価に対する満足・不満足の理由

一方で、不満足の理由も多く記載が見られた。特に、「努力・成果が報われない」に関連した回答が目立った。「どれだけ頑張っても人事評価に反映されていない」「目に見える成果でのみ評価される」「細々とした自己努力が承認されない」といったものである。また、「何が評価されているか不明」「評価の基準の違いが分からない」「表面上は整っているが問題は運用」といった、評価基準の不透明さや制度運用への不信も挙げられていた。

日常の貢献は、職場でどのように受け止められているか

ここまで、評価制度について詳しく見てきたが、職場には、正式な目標や成果指標には表れにくい貢献がある。例えば、同僚の相談に乗ること、トラブルを未然に防ぐこと、業務の進め方を改善すること、周囲の仕事を支えること、チームの雰囲気を整えることなどである。

こうした貢献を拾う接点として、感謝・称賛がある。感謝・称賛は、評価制度の代替ではないが、評価制度では拾いきれない日常の貢献を可視化するための重要な接点になり得る。「あなたは、仕事上の成果や貢献について、会社や職場の人から感謝や称賛を伝えられたいと思いますか」という設問に対して、「とてもそう思う」「ややそう思う」と回答した人の割合は47.3%であり、約半数が仕事上の成果や貢献について感謝や称賛を伝えられたいと考えていた(図表10)。

<図表10>仕事上の成果や貢献について、感謝や称賛を伝えられたいと思うか

その理由を自由記述から確認すると(図表11)、感謝や称賛を伝えられたい理由としては、モチベーションややる気につながる、やりがいや嬉しさを感じるといった回答が見られた。加えて、自分の成果や貢献が周囲にどう受け止められているかを確認できる、周りが見てくれていることを実感できるといった回答もあった。感謝や称賛は、単に気持ちを高めるものとしてだけでなく、日常の仕事に対するフィードバックや承認の役割ももっていると考えられる。また、「やって当たり前」の雰囲気をなくしたいという回答からは、感謝や称賛が、日々の貢献を見えるものにし、職場のなかで共有する意味をもつこともうかがえる。

<図表11>感謝・称賛を伝えられたい・伝えられたくない理由

感謝・称賛を伝えられたい・伝えられたくない理由

一方で、感謝や称賛を伝えられたいと思わない理由としては、金銭や処遇で返してほしいという回答が見られた。また、他者から褒められるために働いているわけではない、自分が納得していればよいといった、自己基準や役割遂行を重視する回答もあった。さらに、人前で表彰されたくない、無理に形で表面化されたくない、プレッシャーに感じるといった回答からは、感謝や称賛が常に肯定的に受け止められるわけではないことも示唆される。

次に、職場における感謝・称賛の状況を見た(図表12)。「日常的に感謝の言葉が交わされている」のあてはまる・どちらかといえばあてはまるの計は56.7%であり、職場のなかで感謝の言葉そのものは一定程度交わされていることがうかがえる。一方で、「良い仕事や成果がきちんと認められている」は同41.8%、「互いの貢献や良い取り組みが共有されている」は同39.6%、「成果だけでなく、努力や工夫も認められている」は同38.4%にとどまった。さらに、「目立ちにくい貢献にも気づいてもらえる」は同27.7%であった。

<図表12>職場における感謝・称賛の状況

職場における感謝・称賛の状況

日常的な感謝の言葉はある一方、必ずしも仕事や貢献への具体的な承認があるわけではないことが分かった。

そして、感謝・称賛の制度の導入状況についても確認した(図表13)。導入率が最も高かったのは「永年勤続表彰や休暇付与など、長く勤務したことに対する報奨」で39.6%、次いで「社員の成果や貢献を称える表彰」が30.5%であった。一方、「社員同士で感謝や称賛を伝え合う仕組み」は14.9%、「経営層から社員に対して直接感謝や称賛を伝える機会」は10.7%、「成果や貢献に対して、挑戦的な仕事や役割が与えられる制度」は9.5%、「研修や育成機会が優先的に与えられる制度」は8.5%にとどまった。

<図表13>感謝・称賛制度の導入状況

感謝・称賛制度の導入状況

ここから見えてくるのは、感謝・称賛の仕組みが、永年勤続表彰や成果表彰のような節目型・表彰型に偏っている可能性である。こうした制度も重要であるが、日常の努力や工夫、支援、協働を拾い上げる仕組みや、称賛を次の役割・成長機会につなげる仕組みは、まだ十分に広がっていないようだ。

感謝・称賛の制度・仕組みとその効果について尋ねた自由記述を見ると(図表なし)、「従業員同士で感謝を伝え合うことで、チームとしての成果が上がって、働きやすくなりました」や「特に制度はないが上司から感謝されたり、褒められたりすればモチベーションアップになる」といった、褒められることでモチベーションにつながるという回答や、「一対一で話ができることで、良かった点を教えてくれたことがモチベーションにつながった」といった、対話を通してモチベーションが上がったという回答が見られたことからも、日常の業務を感謝・称賛することで、働く意欲につながることが分かる。

実際に、職場における感謝・称賛の実感が高い群(図表12の職場における感謝・称賛に関する6項目の平均が4点以上の群を高い群、それ以外を低い群とした)では、ワーク・エンゲージメント平均が3.74、バーンアウト平均が2.71、離職意向平均が2.77、就業継続意向平均が4.20であった。一方、感謝・称賛の実感が低い群では、ワーク・エンゲージメント平均が2.77、バーンアウト平均が3.43、離職意向平均が3.51、就業継続意向平均が2.90であった(図表14)。感謝・称賛の実感は、職場の雰囲気の良さを示すだけでなく、仕事に前向きに関わることや職場で働き続けたいと思うことと関係していると考えられる。また、日々の貢献が認められていると感じられることは、仕事による消耗感や離職意向を和らげる可能性もある。

<図表14>感謝・称賛の実感別に見たワーク・エンゲージメントなど

おわりに

本調査では、働く意欲を支える要因として、人事評価制度と職場における感謝・称賛に着目した。結果を見ると、人事制度は重要なものとして受け止められている一方で、満足度は必ずしも高くなかった。また、人事評価に関して本人が望ましいと考える要素が実際に満たされている人ほど、ワーク・エンゲージメントが高い傾向が見られた。職場における感謝・称賛については、日常的な感謝の言葉は一定程度交わされている一方で、努力や工夫、目立ちにくい貢献まで認められていると感じている人は限られていた。さらに、職場における感謝・称賛の実感が高い人ほど、ワーク・エンゲージメントや就業継続意向が高く、バーンアウトや離職意向が低い傾向が見られた。評価制度は、成果や行動を処遇や育成につなげる上で重要な仕組みである。ただし、職場には、成果として表れやすい仕事だけでなく、同僚を支えること、問題を未然に防ぐこと、業務を整えること、挑戦を支えることなど、日常のなかで生まれる貢献もある。こうした貢献は、制度だけでは拾いきれない場合があるだろう。

だからこそ、評価制度を通じて貢献を処遇や育成につなげることと、職場における感謝・称賛を通じて日常の貢献を見えるものにすることの両方が重要である。成果に応じて報いることと、日常の貢献を認め合うことは対立しない。その両方を通じて、働く人が自分の仕事や貢献が認められていると感じられる職場を作ることが、働く意欲を支える上で重要である。

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.83 特集1「モチベーションを支える評価・報酬のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
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技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
研究員

久米 光仁

2021年に東京大学大学院経済学研究科を修了後、2022年に株式会社リクルート入社。労働市場におけるリサーチコンテンツの企画立案、社外への発信業務に携わる。2025年に株式会社リクルートマネジメントソリューションズ転籍。専門は女性労働・仕事と家庭の両立・共働き家庭におけるキャリア形成。

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