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THEME マネジメント/リーダーシップ

特集ベンチャー企業向け特別セミナー実施レポート

組織リーダー・マネジャーが成長する仕掛けとは何か

組織リーダー・マネジャーが成長する仕掛けとは何か

先般、テレワーク緊急実態調査の結果を踏まえ、コロナ禍によるテレワークの推進にともなう非対面・非集合環境での就業が進むなか、そうした環境でも協働による成果を生み出し続けるには、職務設計や人事諸制度を見直しながら、マネジメント自体も直接支援型マネジメントから自律支援型マネジメントへ転換していくことが求められるのではないかという考察した。また、グループ内のリクルートワークス研究所においても、「リモート・マネジメントモデル」を考察したコラムを展開している。
昨今、あらためてマネジメントのあり方に注目が集まるなか、ベンチャー企業におけるリーダー・マネジャーが成長するための仕掛けづくりについて、弊社コンサルタントである天野が講師として登壇し、オンラインセミナーを開催したため、その内容を改めてご紹介したい。

これからの時代におけるマネジメントのあり方

日本でも、ベンチャー企業が新しい事業を創り上げる大きなチャンスが到来しています。コロナ禍への対応の影響で、デジタル化が大きく前進し、「2025年くらいにはこういう形になるだろう」と思われていた働き方や業務形態が、一気に現実のものになってきました。直近の事業環境は厳しい状況ではありますが、ここからどう伸ばしていくか、「大きなチャンスがめぐってきた」と考えている経営者もいらっしゃいます。このような状況のなかで、マネジメントに焦点を合わせると、「正解がない環境下、変化に強い組織マネジメントの巧拙が成果を左右する」と考えています。

多くのベンチャー企業は、事業環境や戦略に関しては非常によく練られていて、斬新であり、従来にないアプローチで、良い戦略をお持ちの企業が多いと感じています。ただ、練られた戦略を持ちながら、A社とB社で差が出るポイントを見てみると、マネジメントの要因が大きいと思われます。具体的には、戦略の実現度合いや実行スピードが、組織力によって大きく差がつくようです。組織力を上げるためのマネジメント体制の構築、これが最終的な競争優位性にもつながっていくだろうと考えており、マネジメント強化にスポットがあたっていると認識しています。

図表1 正解がないなか、変化に強い組織マネジメントが成長を左右する

マネジメント不全が引き起こす問題

多くの経営層が抱える課題があります。リソースが限られるなか、現場の事業推進スピードを上げるために、部長クラスを経営層が兼任せざるを得ない状況だが、一方で同じか、それ以上に重要な、中長期を見据えた経営のシナリオを集中して考える時間が取れていないというケースです。

その原因は、第1に部長クラスの人員数がポストと比して、物理的に足りないという点、第2に経営層が現状の部長陣に任せられないという点があります。任せられない理由は、部長陣が、経営から言われたことをそのまま現場に下ろしてしまい、組織の目指すところが短期業績の達成に偏りすぎてしまうためです。部長がこのような状態である場合、もう一段下のレイヤーであるマネジャー層も、プレイングマネジャー化します。短期業績を上げること、つまり、現状のアジェンダの対応スピードを上げるという点では、当然ながらマネジャー自身が最も得意であるため、プレイヤー化していくというケースです。

この場合、マネジャー自身がタスクをこなしているため、自分のなかでの優先順位付けはできているものの、現場メンバーの視点では、意思決定の基準が見えづらく、場当たり的に見えることもあります。

また、いくら優秀なプレイヤーであるマネジャーでも専門外の分野を兼務していると、適切な判断ができなかったり、業務を止めてしまったりすることさえあり得ます。
さらに、マネジャーが短期業績を重視するあまり、パフォーマンスが高いメンバーにばかり仕事が集中し、なかなか組織全体の力が上がらず、チーム全体が疲弊していきます。そして、徐々に職場で報告、意見、提言をしなくなったり、長時間労働でコンディションが低下したりしながら、最終的にメンバーが短期間で離職……ここで初めて問題が顕在化します。

組織サーベイを実施した際、「達成感が得られない」と「成長実感が得られない」というコメントが一定数あったり、これらに関連する指標が悪化していたりすると、「マネジメントラインに何か起こっている」「この組織は危ないのではないか」と考えられます。

ちなみに、弊社グループ内の研究機関であるリクルートワークス研究所が、マネジャーの業務におけるプレイング業務の比率と業績の関係を調査しています。その調査によれば、プレイング業務の比率が4割を超えるとチームの業績が下がっていく傾向にあります。

図表2 プレイング業務の割合とチーム成果の関係

上記に加え、昨今はコロナ禍のテレワーク推進により、非対面・非集合の就業環境下、メンバーのマネジメントは従来に比して工数負荷がかかる状況になっています。基本的に非同期の状況で、仕事の進捗管理をしなければいけないからです。
オフィス就業時は、同じ空間を同じ時間共有しているので「調子どう?」などと顔を見てコミュニケーションを取れていたことができない。常に、メールやチャットでコミュニケーションを取る必要があります。

また、オンライン会議になるので、移動時間の削減などで効率化されてはいるものの、主に画面上でのやり取りとなるため、些細な相談や他愛ない雑談がしづらくなっています。特にまだ信頼関係ができていない若手メンバーからすると仕事がしづらくなり、マネジャーからしてもメンバーのコンディションサポートの難度が高まっています。

コミュニケーションの工数がかかると共に、これまで五感で得られていた情報がテキストや音声情報のみとなり、あらゆる判断が難しいと感じています。そして、最小単位でのコミュニケーションになりやすいため、チームワークを高めるためには、意図的にさまざまな施策を企画する必要があります。オンライン飲み会や雑談会などの工夫を耳にしますが、これも含めてマネジャーの仕事だとすると仕事が増加していく一方です。

組織マネジメントが、共創型から管理型へ戻っていないか?

こうした環境下において、経験の浅いマネジャーほど、意図せずマイクロマネジメントに戻りつつあるのではないかと懸念しています。

VUCAの時代、現場でのお客様の変化や競合の変化を素早くキャッチし、アジャイル型の仕事の進め方が適しているとすると、本来は個人に権限を委譲し、さまざまな考え方を吸い上げて形にしていく、共創型のマネジメントが求められます。しかし、短期成果の圧力に加えて、テレワーク環境下でコントロールを強化する方向に進み、気がつけば、管理型マネジメントを推進しているケースもあるように見受けられます。

入社2〜3年目の若年層は、特に不安を抱えているようです。自分は同期と比べて十分に成長できているのだろうか、他の人はもっと働いているのではないかなど、オフィスにいれば自然に入ってくる情報が遮断されているためです。セルフマネジメントができればよいのですが、若年層のメンバーは、自律的に業務やメンタルをコントロールするスキルがまだ身についておらず、気がつくとネガティブになってしまう。それを予防しようとして、タスクを細かくモニタリングする……となりがちで、それが意図せぬマイクロマネジメントにつながっていきます。

こうした外部環境下だからこそ、あらためて自社はどのような組織マネジメントを志向していくべきかを明確にし、それをマネジメントレイヤー全体で共有しながら、意思を持ってマネジメントを進化させていく必要性があります。では、その際に何がポイントとなるのでしょうか。

図表3 組織マネジメントが、共創型から管理型へ戻っていないか?

マネジメント強化の3つのポイント

ポイントを3つご紹介します。
1つ目は、「マネジメントに求められる役割の言語化」です。よく「マネジメント層が機能していない」というお悩みを耳にします。具体的には、「メンバーの離職増加の要因がマネジャー」「メンバーによる業績のバラつきが大きい」「短期業績には貢献できるが、中長期の目標を描けない」など、同じ企業・組織でも、人により異なる見解があるでしょう。

社長と役員、人事部長の3人で討議しているときでさえ、各自が頭に描いている「マネジャーがどのような状態になったら嬉しいのか」が定まっていないことがあります。どのような状態を目指すのかが上位レイヤーで定まっていなければ、現場マネジャー側の役割認識が人によって異なるのは当然です。そのため、まずは「マネジメントに求められる役割の言語化」から始めます。

その上で、マネジャーの評価ウエイトにも反映します。評価とは経営からのメッセージです。どのような観点で評価をするのかということは、その会社にとって今何が大事か、何を重視しているのかを伝えているのと同じです。

2つ目は、「業績と育成のマネジメントサイクルのあるべき型と現状を視える化しつつ、質の改善を行うこと」です。組織目的に対し、業績・育成の管理サイクルを計画し、その遂行を担うのがマネジャーの役割ですが、それを現場任せになっていないでしょうか。

例えば、メンバーが若年層の場合、指標やアジェンダの視える化と、業績・人の管理サイクルの回し方の共通フォーマットの導入を通じて、型を身に着けつつ、現状を視える化し、そのギャップを見ることができる状態を整えるのも1つの方法です。これにより、同じ部門のメンバー同士、どの程度アウトプットの差があるのか、縦のつながりを意識できているのかなどが明確になります。同じフォーマットで各人の成果を見合わせたとき、自分問題と対策が、具体的に認知できるようになります。

そうすると、各個人の課題に応じたマネジメント育成施策が展開できるようになります。なお、本人の強みやキャリアなどによって学ぶべきテーマは異なるため、まずはそれらを明確にし、伸ばすべき能力を認知させることこそ、マネジメント育成施策では一番重要となります。

3つ目が、「会議運営のファシリテーションや1on1におけるコーチングノウハウの装着」です。これも2つ目と同様に、個人により課題は異なるため、その認知が重要な点は同様です。

図表4 マネジメントサポートの仕組みづくり 認識の統一・知識・スキルの磨き込み

ベンチャー企業の場合、ゼロからミドルマネジメント強化の仕組みをつくっていくケースが多いので、上記を具体化するプロセスを通じて、マネジメントで何が問題なのか、どの層のレベル差がクリティカルなのかを、経営側と討議しながら的を絞ります。すると、マネジャー自身も課題を認知しやすくなるため、自律的に内省が促され、組織内の各階層で改善が進むと考えています。

※以下は当日の質疑応答の内容

Q.業績管理と育成の望ましい時間バランスについて教えてください。
A.業績管理と育成の各サイクルの図の中央に、同時実現とあります。具体的には、組織目的や戦略設計を踏まえて仕事のアサインをする際に、個人の育成目標を含めてコミュニケーションすることで、仕事の意味付けをすること。もしくは、KPI管理をする際に、メンバーの能力向上のために丁寧にフィードバックすることが同時実現です。業績管理と育成のマネジメントサイクルを分けて考えてしまうと、優先順位の問題から、育成の時間が取れなくなります。リモート環境下でマネジャーの負荷が高まっている状態ではなおさらです。業績管理のサイクルに育成要素をどう織り込むかを常に考えながら、マネジメントの工夫をしていくことが重要です。

Q.メンバー評価をするうえでのポイントはありますか?
A.評価における一番の問題は、マネジャーとメンバーの間で、目標設定について合意できるか、さらにいえば、目標に対してどのような評価軸を置くのかについて合意できているかという点です。定量的な目標は分かりやすいのですが、定性的な目標においても、評価軸の合意ができていると、メンバーも努力の方向が分かります。しかしこれを事前に合意せずに評価を迎えると、途端にコミュニケーションの難度が上がるため、目標設定の前段階からの合意形成が肝心です。

Q.管理職に対して、内製でもできる支援策としてどのような取り組みが有効でしょうか?
A.まずはマネジャーが、今何に困っているかを事前アンケート確認し、そのテーマについて相互討議することをおすすめします。成長目標と仕事の意味付けの方法、業績管理と育成の同時実現の工夫、1on1の内容などが、お悩みとしてよく挙がります。複数回の場を用意し、相互討議によって得られたノウハウを次回までに実践し、その結果を次の討議会でシェアするというサイクルを回していくとよいでしょう。実践を通じて経験学習をする人や、他者事例を聞くことで内省する人もいます。こうした機会を定期的に設けるだけでも、マネジャー間の相互学習が進みます。

私たちは、「日本を変えるベンチャーが事業に全力で向き合える環境づくり」というテーマに、組織や人の側面からチャレンジしているチームです。お困りのことがあれば、まずは気軽にお声けください。本日はありがとうございました。
 

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