【事業成長期のHRMを考える】vol.2 HRBP勉強会レポート 「組織の発展モデル」から組織課題の焦点を発見する

本連載は、事業成長期にある企業組織のHRMのあり方を、ベンチャー企業の経営者やHR責任者の方々と議論した記録をお伝えするものです。
前回(vol.1)では、「創業期のリクルートの組織作り」を題材に、拡大しても熱量を失わない組織作りについて、ベンチャー企業の経営者・事業責任者とともに議論を深めた様子をお伝えしました。

vol.2以降は、全5回にわたってベンチャー企業のHRBP・HR責任者の方々との学びのコミュニティにおける、勉強会の内容の一部をレポート形式でお伝えします。
今回(Vol.2)のレポートでは、弊社の「Organization Transition Model―組織の発展モデル」をご紹介しながら、自社の組織課題の焦点を発見していただく勉強会の内容と様子を簡単にご紹介します。

急激な事業成長のなか、人材の熱量・才能を最大限に引き出し、事業成長を力強く推し進める人・組織づくりのために何ができるのか。
読者の方々のヒントにつながれば幸いです。

ご参加企業(敬称略)
ウェルスナビ / エアークローゼット / エウレカ / ゲームエイト / スタークス / ツクルバ / ディー・エヌ・エー / 電通デジタル / FABRIC TOKYO / VOYAGE GROUP / マネーフォワード / MUGENUP / ユナイトアンドグロウ / リーズンホワイ / ロコガイド

ナビゲーター
リクルートマネジメントソリューションズ HRテクノロジー事業開発部
野崎日土志・荒井理江・藤江嘉彦・奥野康太郎


組織の発展モデルを知る

野崎:事業成長期のHRMを考える勉強会の第1回は、参加していただいた皆さんに、自社の人・組織課題を確認していただくことが主なテーマです。
そのために使うのは、ラリー・E・グレイナーの5段階企業成長モデルをベースにして当社が開発した「組織の発展モデル(Organization Transition Model)」です(図表1)。

※組織の発展モデルについては、こちらの記事でより詳しく説明しているのでご参照ください

簡単に説明しますと、企業組織を「創業ステージ」「拡大化ステージ」「公式化ステージ」「最適化ステージ」の4つの発展ステージに分けるモデルです。グレイナーも論じているように、規模が大きくなるにしたがって、組織はステージを変えていくという考え方です。

荒井:ここで気をつけなくてはならないのは、各ステージには「ひずみ」が生まれることです。例えば、「(1)創業ステージ」は志を同じくする仲間同士が事業を立ち上げ、企業組織を形成する段階です。システムは未整備であるものの、暗黙のうちに方向性が共有されており、製品・サービス開発と市場での生き残りに全精力が傾けられます。しかし、規模が大きくなっていくにしたがって「リーダーや少人数での経営の限界」というひずみに直面します。このひずみを乗り越えるには、経営者の考えを共有する仕組みをつくるなどの手を打っていく必要があるわけです。

組織の発展モデルは、組織発展の段階に合わせて組織マネジメントを成熟させていくために、自社にとっていま最も必要な打ち手は何かを見出し、適切な対策を取っていく素材にしてもらいたいという思いがあります。

自社組織の「特徴」と「ひずみ」を確認する

荒井:私たちは、組織の発展モデルを活用して自社の組織の特徴とひずみを確認するために、組織を捉える10の観点を整理しています(図表2)。

簡単なアンケート項目に回答することで、この10の観点それぞれの発展段階が見えてきます。

ここでは、典型的な3つのパターンを紹介します(図表3)。

赤い帯は、回答者(経営者や人事など)が、自社がどの発展ステージにいると思うかを回答した結果、折れ線グラフは、10の観点それぞれがどのステージにあるかを個別に表示した結果です。

左のグラフは、経営者・人事として自社が「公式化」ステージにあると認識し、実際に組織の各機能を捉える10の観点においても、ほとんどが「公式化」の列にありますので、比較的組織の各機能がバランスよく「公式化」に最適化されていることが分かります。
真ん中は、回答者は「公式化」ステージにあると感じていますが、10の観点においては、その状況にバラツキが大きくなっている組織の例です。特に、いまだに「創業」ステージにあるポイント(業務機能内のPDCAなど)については、組織規模が一定程度拡大化している「公式化」ステージにおいて、早期に最適化する必要がありそうです。
右は、経営層や人事は自社が「公式化」ステージにあると思っているが、組織の実態としては10の観点のほとんどが「拡大化」ステージにある企業の例です。なお、全体的にいえば、高業績企業の方が観点ごとのバラツキが少なく、各組織特徴がうまく最適化されている傾向があります。

野崎:では、自社組織の特徴とひずみを確認してみましょう。その上で、1組数名のグループになって、自社の課題についてざっくばらんに共有・議論する時間としたいと思います。

ひずみを乗り越えるための知恵を対話・共有する

野崎:各グループの対話の内容を簡単にシェアしましょう。各グループを担当したナビゲーターより、シェアをお願いします。

奥野:非常に悩ましかったのが、代表の考えや人となりを社内にどう浸透させていくかということですね。これまでは自然と伝わっている部分が大きかったが、規模が大きくなればそうはいかない。

さらに、ミドルマネジメント層の選抜や育成・評価については非常に盛り上がりました。
組織拡大に沿って、プレイングマネジャーから専業マネジャーへの切り替えをいつどのように行えばよいか、マネジャーの適性をどのように見極め、そして育成・評価をどのように行っていくべきか。マネジメントとスペシャリストの評価軸を分けるべきか否か、といったことは、議論を深めたいポイントです。

荒井:確かに、ミドルマネジャーについては事前アンケートにおいても、多くの企業がさらなる発展を目指したいと回答していました。まさに、第2回はミドルマネジャーの育成がテーマです。次回、ぜひ議論を深めてみたいです。

藤江:こちらのチームも、ミドルマネジャーの育成が大きな論点の1つでした。また、エンジニアやデザイナーなどの専門職にどうカルチャーを浸透させていけばよいか。また、後半は人事の成果・成功をどう測ればよいのかが話題の中心でしたね。その流れで、HRBPと制度運用・労務などのバランスをどう取ったらよいのかという話もありました。

野崎:ありがとうございました。議論は尽きませんが、ここで、組織のひずみを予測して手を打ったA社のエピソードを少し紹介できればと思います。
●A社事例荒井:A社は当時従業員30名ほどで、事業が急拡大していました。A社の創業者が「組織マネジメントに先行投資したい」という強い考えを持っており、ご相談をいただきました。そこでA社の発展ステージをチェックしたところ、「部門間の横連携やコミュニケーションがないこと」「人事制度、特に人事評価・報酬のルールがないこと」「マネジャーとマネジャー候補の次世代リーダーが圧倒的に不足していること」が、大きなひずみとして浮かび上がってきました。また、社員が急速に増えるなか、職場内の認識のズレも目に見えてきていました。「業務機能の分担」が「公式化」ステージに進みつつあり、業務そのものはうまく回っている一方で、「人事制度全体」「中間管理職」「部門間のコミュニケーション」「職場内のコミュニケーション」などは、いまだ「創業」ステージにとどまっていたのです。

そこで、同社では「人事制度全体」「中間管理職」「部門間のコミュニケーション」「職場内のコミュニケーション」を中心に手を打っていくことにしました。
初年度、まずは経営ボード全員で、マネジメントチームが何を大事に事業上の判断をしていくべきかをすり合わせることから始めました。また、等級・評価・報酬といった最低限の人事制度を整えながら、全社員を巻き込み、自社のValueを言葉にしていく取り組みにも着手。自分たちが何を大事に思って働いているのかを、社員全員で考えていったのです。古参社員が、最近入社したメンバーたちに会社の創業エピソードを共有していくなど、日々の仕事の背景にある思いがあふれ出す時間でした。

2年目以降は、マネジャー候補段階から経営合宿に参画させるなど、次世代マネジャーを実践的に育成する仕組みを構築。また、シニアマネジメント層に対しては、経営者が自らハンズオンで事業上の判断基準をレビューし、指導しています。人事制度では、その運用が丁寧に行われるように、1on1の仕組みを整えるなど、上司とマネジメントラインとのコミュニケーションの活性化に力をいれています。

大きく変革を実現した同社ですが、全体を通じて重要だったのは、経営層が社員に、組織に本気になるところを見せることだったように思います。

野崎:ここまでのお話も踏まえ、あらためて、場に投げかけてみたい質問などがある方はいらっしゃいますか。

参加者Aさん:発展ステージや人事課題に関して、人事マネジャーは経営者にどこまでどうやって働きかけたらよいのでしょうか。

野崎:確かに難しいところですね。この問いに対して、持論やご意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。

参加者Bさん:私が考えるに、A社のような経営者は決して多くありません。経営者は本質的に、人事課題にはさほど関心を持たないのが普通だ、という気持ちでいるぐらいの方が自然なように思います。ですから、まずは経営者の方々に、人事・組織課題に興味を持ってもらうことから始めていくのが現実的ではないかと思うのです。

野崎:おっしゃるとおりだと思います。では、そのために何ができるでしょう。

Bさん:ランチでも何でもよいので、経営者と人事マネジャーが接する場を定期的に持ち、コミュニケーションの頻度を保つことが重要ではないでしょうか。

参加者Cさん:また、人事関連のアポイントに在席してもらったり、研修合宿などをオブザーブしてもらったりして、人事に関する意思決定プロセスに関わってもらうのもよいでしょう。そうやって経営者に人事課題の重要性を深く理解してもらうことが、物事を前に進める上で極めて大切なことだと思います。

荒井:確かに、リーダー研修に社長をお呼びしてオブザーブいただくといった取り組みをされるHRの方もいらっしゃいますね。「こんなにリーダーが成長しつつあることに、自分が一番気づいていなかった……」と、反省される責任者の方もいらっしゃいます。まずは、経営と同じ現実を見て、共に課題設定をしていくことが第一歩といえるのでしょう。今回のOrganization Transition Modelも、必ずしも完璧なツールではありませんが、そのきっかけの1つになればと思います。

野崎:いかに経営を巻き込むのか。このテーマだけでもかなり議論ができそうですが、ちょうど時間が来てしまいました。ひとまず本日は終了とさせていただきます。お忙しいなか、ご参加いただき誠にありがとうございました。次回はミドルマネジャー、およびシニアマネジャーの成長をどう促すか?について議論します。次回もぜひご参加ください。

次回予告:vol.3 組織のリーダー・マネジャーが成長する仕組みをつくる
参考記事組織の「ひずみ」は、人事に解消できるか?
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