IT Management Journey vol.2 採用した人材が活躍するための
「採用」「配属」「適応支援」とは?

伸び盛りのIT・ネット系企業の人事の方々は、同じような悩みや課題をもっているのではないか。それなら、悩みを打ち明け合い、解決策を共有するとよいのではないか。こうした仮説のもと、私たちは2016年8月からIT・ネット系企業と共に人・組織を考える研究会“IT Management Journey”をスタートしました。毎回、参加する人事の皆さんが気になっているテーマについて話し合っています。本記事では、その内容の一部をご紹介します。


大量採用したが定着しない、というひずみを乗り越える

事業が急拡大するとともに、大量の人材を採用しなければなりません。しかし、いくら大量の人材を採用しても、社内で活躍しない・辞めてしまう・・・・・・という状況になってしまうと意味がありません。そこで、今回は「採用した人材が活躍するために、採用、初期配属で何を留意すべきか、また適応支援のためにどのような取り組みを行っているか」について、意見交換を行いました。

〈今回の参加者〉 ※五十音順
青柳智士さん(株式会社VOYAGE GROUP 取締役CCO・新規領域事業兼人事部門管轄)
大日方誠さん(株式会社アカツキ 組織・人事グループ グループマネジャー)
久佐野悠さん(株式会社アイスタイル ヒューマンリソース部 部長)
谷本洋さん(株式会社モバイルファクトリー 執行役員 兼 計数管理部 部長 ※2016年9月より人事部門を兼任)
坪谷邦生さん(株式会社アカツキ 組織・人事グループ 人事企画室長)
服部穂住さん(株式会社マネーフォワード 社長室 人事部長)

〈ゲスト〉
向坂真弓さん(株式会社サイバーエージェント 人材科学センター)
横田綾子さん(株式会社リクルートキャリア  コンサルティンググループ マネジャー)

〈弊社メンバー〉
荒井理江(組織行動研究所 主任研究員)
奥野康太郎(ソリューションプランナー マネジャー)
齋藤悠介(コンサルティング部 マネジャー) ※今回のファシリテーター

〈会場〉
リクルートマネジメントソリューションズ本社

採用は科学にするべきか?

齋藤:まず「採用」についての意見を伺えればと思います。

横田:最初に私から、簡単に視点をご提供したいと思います。私たちリクルートキャリアはさまざまな企業の採用・配属・適応支援のお手伝いをしていますが、特に新卒採用の場合、変わりにくく開発が難しい「性格」と「知的能力」を見極めることをお勧めするケースが多いです。

向坂:サイバーエージェントの新卒採用は、カルチャーマッチを重視しています。具体的には、カルチャーフィットしている従業員で採用チームを結成し、彼らが一緒に働きたいと思う学生を採用していくんです。10数年、このやり方を続けてきました。採用チームに選ばれることはステータスになっていて、選ばれると皆さん頑張りますね。

坪谷:アカツキもカルチャーフィット重視です。以前、どうしてもスキルマッチになった時期があったのですが、それではやはりうまくいかず、現在は「アカツキハート」と呼ばれる会社哲学にフィットする学生を採用しています。

大日方:アカツキでは、社員紹介に力を入れています。社員紹介の方は総じて求めている水準を超えており、カルチャーにフィットした人材を採用できることが多いんです。今、中途入社者のだいたい30%は社員紹介です。これを100%にすることが理想だと思っています。社員紹介を増やす上で重要なのは、制度設計や日々の啓蒙活動だけでなく、本質的には会社の信頼感だと考えています。「自分が自信をもって良いと思える会社に、大事な友達を呼びたい」というのが、社員紹介に協力してくれる従業員の想いですから、その気持ちに応える必要があります。

久佐野:まさに今、アイスタイルでは、「どんな会社でありたいか」という、大切にしたい価値観を言葉に落としたところです。出てきた言葉は「共創の精神」でした。今は、共創のカルチャーに合った「活躍する人材」の要件定義を進めようとしています。

齋藤:なぜ、カルチャーフィットが大事なのでしょうか。

久佐野:コスメのクチコミサイトというサービスがイメージとしては分かりやすく先に立ってしまいますが、アイスタイルが目指す世界観はあくまでも「生活者中心の市場の創造」とビジョンは広く高く掲げています。その実現に向けた事業は可変だからこそ、ビジョンとカルチャーに合った人材の採用が大切だと考えています。
青柳:VOYAGE GROUPも、多事業を展開し、さらに変化もし続けていますから、個別事業よりもカルチャーへの共感が採用にとって非常に重要なポイントです。それに、カルチャーの色を強く出すことで他社と差別化していくこともできる。
ただし、職種によってカルチャーフィットとスキルフィットのウェイトを変えています。総合職はカルチャーフィットを重視していますが、エンジニア職はスキルフィットの重視度を高めています。

※組織文化の明確化によって離職率低下を実現したVOYAGE GROUPのストーリーはこちらでも一部ご紹介中です


齋藤:カルチャーにフィットする人材をどのように見抜くべきでしょうか?

大日方:そもそも面接などの限られた時間で見抜くことは困難であると考えています。ただ、アセスメントツールを効果的に使うことにより、識別の精度はあげられると思っているのですが、皆さんはどうしていますか?

向坂:サイバーエージェントはアナログですね。人は簡単には測定できないものだという感覚があり、人を分類して、レッテルを貼ってしまうことに抵抗感のある経営層がいます。
大日方:人は簡単には理解できないというのは賛成ですが、一方では人の目に頼りすぎることも危険であると思います。以前、組織行動研究所 研究員の今城さんが「面接者の価値観が面接評価に影響する」というお話をされていました。人はどうしてもバイアスをかけてしまうので、アナログで進めてしまうと、自分に似た人を採用しがちなんです。その点、私はインターンやアセスメントツールを併用したほうが、客観的、科学的に判断できると考えています。

青柳:私は、一人の面接官が面接で相手のすべてを見抜くのはそもそも無理だと思っています。そのため、面接の回数を増やし、1人の学生には10人、20人の従業員に会ってもらうようにしています。各面接者がVOYAGE GROUPのカルチャーに紐づいた仕事経験を語り、すり合わせていくのです。

齋藤:誰が最終的な意思決定をしているのですか?

青柳:最終的な意思決定は私が行いますが、担当人事もコミットします。彼らは入社後3年間、その従業員のフォローをすることになっていますから、そこで責任を負えるかどうかが大事な判断基準になります。
横田:リクルートキャリアでは、「全社員採用」を進めています。個人の持ち味を大切にするカルチャーの会社だからこそ、面接には1時間程度時間をかけて、相手の持ち味にしっかりと耳を傾けるようにしています。

齋藤:なるほど。カルチャーへのマッチは、アセスメントなども補助資料にしつつも、カルチャーを体現する社員たちとのコミュニケーションを通じてすり合わせていくことは欠かせないようです。

どう配属するのがよいのか?

齋藤:では、「配属」についてはいかがでしょうか。

横田:配属についても、少しだけ視点の提供をしたいと思います。配属を考える際は、受け入れ側の特性を明確にした上で、本人特性とのマッチングを行うことが重要です。具体的には、MUST(組織の要請)をベースに置きつつ、CAN(本人のポテンシャル「職務/組織の適応力」)とWILL(本人の志向)を予測し、フィットしているかを踏まえ配属検討を行います。
ある企業で実際に支援したケースでは、上司のマネジメントスタイルを4つのタイプに分類し、配属時の組み合わせの参考としたり、配置後のマネジメント上の注意点として意識していただくといった取り組みを行いました。

大日方:配属に興味があります。私は、人事業務のうち、「採用」と「配属」が組織のパフォーマンスを決める上で特に重要と考えています。また、採用コンサルタントは数多くいますけど、配属コンサルタントはいません。それだけ配置が難しいからだと思うのですが、それだけに配属コンサルティングは面白いのではないかと感じています。今、私たちは「ストレングスファインダー」を用いることで、各個人の資質と業務のパフォーマンスに相関性を見出すことができるか、データを溜めている最中です。これが完成すれば、配属を科学できるかもしれません。

青柳:VOYAGE GROUPは、先ほども言ったように「ミスマッチはどうしても起こる」という考え方なので、ポジティブな逃げ道を作っています。具体的には、本人が希望して異動できる、「グローイングパス」という制度で、入社1年経つと無条件で権利が発生します。受け入れ先の上長がOKなら希望する部署に異動できるというもので、あえて気軽に使えるようにしています。

荒井:限られた時間で一人ひとりの強みや個性を理解することに限界があることを前提にして、配属のベストマッチができなかったときのことをあらかじめ想定したデザインがポイントになるのですね。

中途入社者はどこまで即戦力か?

齋藤:「適応支援」についてはどのように考えているかに、議論を移しましょう。「オン・ボーディング(立ち上がり)」について、私から少しだけ頭出しをします。1つご紹介したい観点は、「組織適応」と「仕事適応」です。特に中途入社者にいえることですが、スキルマッチングで十分に仕事適応している人材を採用した際、その後に組織適応できず、孤立したり、辞職したりするケースがよく見られます。やはり組織適応を経てからパフォーマンスを発揮するのが一般的で、新卒採用者が好まれるのもそこに理由があるのだろうと思います(図表03)。

奥野:中途入社者が不適応を起こしやすいというのはよく分かりますね。リクルートマネジメントソリューションズでは中途入社者のフォローは手厚く行っています。中途入社者研修を行い、入社半年後まで定期的に面談の場を設け、さらに入社1年後に360度研修を実施しています。面談では中途入社同期組に人事が加わって、互いに「今どういう壁にぶつかっているか?」などを話し合うのです。
服部:マネーフォワードでは入社者は上長と毎月の面談を行い、入社1カ月で人事面談、入社3カ月後に上長の上長と面談し、入社1カ月後と半年後には座談会形式で社長ともコミュニケーションをとる場を設けています。最近、特にキーになると感じているのは「上長の上長」です。上長の上長が面談すると、上長がヒアリングできていなかったことが分かったりするのです。

大日方:私たちも、中途入社の方とは入社1カ月後・2カ月後・3カ月後に面談をしています。素直な方が多くて、皆さん正直に想いを語ってくれます。ですから、面談のなかで良い話が減り、ネガティブな話が増えていくと、職場に適応していない可能性が高い、ということが分かります。そうするとフォローができますから、やはり定期面談は必要ですね。

青柳:VOYAGE GROUPでは「運動会」を行っていますが、これは組織適応を高める上で有効だと思いますね。カルチャーフィットの低いエンジニアが、「意外に面白かった」といった感想を残したりすることが多いんです。

服部:確かに、マネーフォワードでも「社員総会」を組織適応アップの場として使っています。必ずお取引先や提携先の方など社外の方をお呼びして、自由に当社への期待やサービスの感想をお話しいただくようなコンテンツも設けています。自分たちの事業がどんな形で役に立っているかががよく分かり、刺激を受ける社員が多いと感じています。

齋藤:なるほど。弊社でも、組織適応を促す取り組みについて企業数社にヒアリングをしたことがあるのですが、組織の価値観を明示し、それを体感・共有できるような取り組みを行っていました(図表04)。

可愛い新卒採用者には旅をさせる?

齋藤:新卒採用者の適応についてはどう考えていますか。

久佐野:まさに今、新卒採用者の教育プログラムを見直しているところです。これから4年で社員数を1500人にすることを前提に、今のうちに仕組み化を進めておきたいと思っています。特に気にしているのは、「自分たちの視点でプログラムを考えていないか?」ということ。今の若者の特性や環境を捉えることが大事だと思っています。

彼らが学生時代から就職活動に至るまでにどのような経験をしてきたのか、社会人になるにあたってどのような心持ちなのかを想像し、最初に人事で受け持つタイミングでどのようなマインドセットをすべきなのか深く掘り下げて設計しようとしています。今ある状況を楽しみながら、チャンスや環境を自分で作り出していく力をつけられないだろうかと模索している最中です。
坪谷:「チャンスを自ら作り出す力」をつけてほしいという気持ちは、よく分かります。アカツキも今、新人の主体性を伸ばす方針に変わりつつあります。研修プログラムを会社から大量に準備した時点で新人が「機会は与えてもらえる」ものだと感じてしまうのではないか。今でもエンジニア職は、与えられた課題をクリアできない限り、配属されない仕組みになっていますが、来期からはエンジニアだけでなく、全員に配属先や仕事を自分で見つけてもらう仕組みにしようかと検討中です。

久佐野:お膳立てしすぎると主体性が芽生えないというのは、確かにそうかもしれませんね。

大日方:ただし、アカツキは、打たれ強くて、主張が強く、人とのつながりを大事にする熱い新人が多いため、こういった取り組みができるのだと思っています。その意味で、一般的な若者とは違うのかもしれません。ただ、自由度が高い環境ではあるので、当たり前のことを当たり前にやろうという教育は意識して行っています。

青柳:VOYAGE GROUPもプログラムはまったく用意していません。その代わり、何が評価されるのかをしっかりと伝えるようにしています。新人たちも評価基準が分かれば、自分で変わろうとしていくものだと感じています。

向坂:サイバーエージェントの場合、新人研修はどんどん短くなっており、ついに現在は5営業日になりました。行っているのはほとんどグループワークです。現場に出て行く心積もりだけを養って送り出しています。もちろん、技術者は別に1カ月程度、技術研修を行っていますけどね。

谷本:現場の負担が大きいのではないですか?

向坂:そうですね。マナーの基準などもバラバラになってしまうかもしれません。ただ、マナーなどは結局、現場で身についていくものですから。
谷本:試行錯誤中ではありますが、モバイルファクトリーは逆で、以前に比べると配属前の研修は長くなってきています。現場に教えている時間がないので、研修で技術をしっかりと身につけてもらおうという流れになっているのです。

奥野:現場にどの程度負担してもらうのか? というのは悩ましい問いです。

向坂:新人研修が短い代わりに、今年から私たちは「ナナメン制度」というものを始めました。トレーナー以外に「斜め上の先輩」、つまり自分の部署以外の先輩がつき、相談できるという制度です。活躍している若手に話を聞くと、自分の部署以外の先輩に相談しているという者が多かったことからヒントを得て始めました。ナナメンは、新人が内定者のときからアサインし、月1回、人事に状況を報告してもらっています。ナナメンは新人をフォローしつつ、自部署にスカウトしてもいい。さらに、頑張った人は表彰されたりもします。

齋藤:新人の適性や状態によって、打つ施策も変わってくるのですね。また、主体性を引き出すためには、単に放置するのではなく、彼らの頑張りをしっかり見守る体制を作ることが重要そうです。
そろそろ時間になりました。今回も示唆に富んだ対話になったと思います。ありがとうございました。

おわりに――オープンセッションを開催

採用した人材が活躍するための「採用・配属・適応支援」の議論、いかがでしたか。次回は「評価と処遇」をテーマに議論した内容をお届けしたいと考えています。組織に適応し、スムーズに立ち上がった社員が、生き生きとやりがいを感じ、成長できるような評価や処遇をどう考えたらよいのかを対話する予定です。

参考記事
RMS Message 39号 特集「適応」のメカニズムを探る

成長企業の組織・人材マネジメント


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