- 公開日:2026/07/13
- 更新日:2026/07/13
「以前はもっと積極的だったのに、最近チャレンジしなくなった」
「仕事はきちんとこなしているが、それ以上を求めようとしない」
中堅社員を抱える職場で、こうした声を耳にすることが増えています。シリーズ第1回では若手の「焦り」と早期離職を取り上げましたが、若手の離職問題を乗り越えた先にも、別の課題が待っています。中堅社員の停滞は組織の成長を静かに、しかし確実に蝕んでいます。
では、なぜ優秀だったはずの中堅社員が「動かなくなる」のか。その答えは、中堅社員特有のキャリア発達課題のなかに隠れています。
- 人事のためのキャリア支援実践ガイド|年代別課題から考える、社員が自律的に動く組織のつくり方
- 第2回 なぜ優秀だった中堅社員が「動かなくなる」のか? 停滞の正体とキャリア支援
- 人事のためのキャリア支援実践ガイド|年代別課題から考える、社員が自律的に動く組織のつくり方
- 第1回 入社3年目までの離職はなぜ起きるのか? 若手のキャリア支援の重要性
- 目次
- 中堅社員が直面する「二極化」という現実
- 「停滞」の正体は、展望不安と機会の見えなさ
- 「将来を描かせる」支援が中堅に効かない理由
- 中堅社員に特有の課題:「人間関係の固定化」
- 研修で「機会を見つける目」を育てるために
- 中堅社員のキャリア支援、貴社はどこまでできていますか?
中堅社員が直面する「二極化」という現実
人事担当者に中堅社員の状況を伺うと、こんな声が返ってきます。
「優秀な層はどんどん転職していく。残った層は安定志向で、なかなか動いてくれない」
これは多くの企業で共通して起きている「中堅社員の二極化」です。チャレンジする層とチャレンジしない層の間に溝が生まれ、組織としての底上げが難しくなっています。
弊社のキャリア開発志向に関する調査では、「キャリアを開発するためであれば今の会社にこだわらない」に「とても当てはまる」または「やや当てはまる」と回答した中堅社員の合計が37.0%となる一方、「どちらともいえない」が36.0%と最も多い層を占めています(図表1)。
図表1

つまり、中堅社員の多くは「このままでいい」とも「変わりたい」とも決めかねている、揺れている状態にあるのです。
ここで重要なのが、キャリア研究の知見です。堀内・岡田(2009)の研究では、キャリア自律行動が高まると組織へのコミットメント・パフォーマンス・職場適応がいずれも向上することが示されています。さらに「組織への目的愛着」が高い社員では、キャリア自律行動が高まっても転職意向はむしろ低下することも明らかになっています。
キャリア自律の支援は離職を促すどころか、組織への愛着を深める可能性がある——この事実は、揺れている中堅社員層にこそ支援が必要である理由を示しています。
「停滞」の正体は、展望不安と機会の見えなさ
中堅社員が動かなくなる理由は、怠慢でも意欲の低下でもありません。多くの場合、その背景には「展望不安」があります。
中堅社員向けのキャリア研修に携わるとこういった声を聞きます。
- 「管理職になりたいわけではないけれど、このままでいいのかも分からない」
- 「強みといわれても、何が強みなのか自分では分からない」
- 「日々の仕事をこなすだけで、気づいたら何年も経っていた」
目の前の業務に没頭するうちに、自分のキャリアを俯瞰する機会を失ってしまう——これが中堅社員の停滞の正体です。
キャリア研究においても、この構造は明らかにされています。堀内・岡田(2016)では、キャリア自律を促進する心理的要因として最も重要なのは「職業的自己イメージの明確さ」と「主体的キャリア形成意欲」であり、「キャリアの自己責任自覚」だけを強調してもキャリア自律行動は促進されにくいことが示されています。(図表2)
図表2

つまり、「自分のキャリアは自分で考えろ」と言うだけでは、中堅社員は動かないのです。得意なことややりたいことの明確なイメージと、自身のキャリアを良いものにしたいという関心の強さこそが、キャリア形成の心理的資源になります。そしてそれらは、目の前の仕事や職場での経験によって育まれるものです。
弊社の調査でも、中堅社員の成長経験として最も多く挙げられたのは「モチベーションの維持が難しい環境下で耐えきる」経験でした。続いて「多様な価値観の人と仕事をする」「自分なりの問題意識に基づき目標を定め、行動する」が続きます。成長のきっかけは日常の仕事のなかにあるにもかかわらず、それを「成長経験」として意味づけられていない中堅社員が多いのです。
「将来を描かせる」支援が中堅に効かない理由
第1回の若手編でもお伝えしたように、キャリア支援でよくある失敗は「将来のビジョンを描かせる」ことに注力しすぎることです。この傾向は、中堅社員においてはさらに顕著になります。
若手の場合は「まだ将来が分からない」という壁がありましたが、中堅社員の場合はそれに加えて「ある程度やってきたからこそ、理想と現実のギャップが見えすぎてしまう」という壁が生まれます。高い目標を描くほど、今の自分との距離に気が遠くなってしまうのです。
ここでも有効なのは、フォアキャスティングのアプローチです。将来から逆算するのではなく、今の仕事や環境のなかに機会を見つけ、現在を起点として積み上げていく。この思考の転換が、中堅社員が「今の自分にできること」を再発見するきっかけになります。

その出発点となるのが強みの棚卸しです。日々の仕事を通じて積み上げてきたスキル・知識・スタンスを丁寧に言語化することで、「自分には何もない」という思い込みが崩れ始めます。他者からのフィードバックを通じて強みを分解していくと、自分では当たり前だと思っていたことが実は大きな強みだったと気づく中堅社員は少なくありません。
キャリア・コンピテンシー研究(Akkermans et al., 2013)でも、持続可能なキャリア形成に必要な力として「仕事における情熱と才能を自覚すること」が挙げられています。自分が「なぜその仕事をするのか」を知ることが、キャリアを能動的・探索的に形成していく出発点になるのです。
中堅社員に特有の課題:「人間関係の固定化」
若手編では、周囲からの支援やフィードバックを得ることの重要性をお伝えしました。中堅社員においても人間関係資本は重要ですが、課題の性質が異なります。若手が「人間関係をどう築くか」に悩むのに対し、中堅社員は「人間関係がすでに固定化してしまっている」という問題に直面します。
成長を促す経験の20%は「周囲の関係者との経験」から生まれるとされています(70:20:10の法則)。しかし中堅社員になると、同じ部署・同じチームの「強いつながり」のなかだけで仕事をするようになりがちです。新たな視点や機会が得られにくくなり、これが停滞の一因となります。
キャリア研究においても、組織内外のコミュニティへの参加や他者との関わりがキャリア形成に有効であることが示されています。特に重要なのが「弱いつながり(ウィークタイズ)」の活用です。普段接点の少ない社内の他部署、社外の知人、異業種の人との交流こそが、中堅社員のキャリアに新しい風を吹き込みます。
さらに、キャリア・アダプタビリティ(キャリア適応力)の観点からも示唆があります。将来のキャリアへの関心・好奇心・自己決定の習慣を持つ人ほど、仕事におけるパフォーマンスや組織への愛着が高く、離職意向が低いことが確認されています(Rudolph et al., 2017)。そしてこの適応力は、経験や学習や環境によって開発可能なものです。意識的に「弱いつながり」を広げる行動が、キャリア適応力を育てる実践になります。
揺れ動いている中堅社員こそ、キャリア支援施策が必要なのです。
ではどういったポイントがあるのか、をご紹介します。
研修で「機会を見つける目」を育てるために
中堅社員のキャリア支援において、研修が果たすべき役割は3つあります。
① 経験を「成長」として意味づける
Will・Can・Mustのフレームでこれまでの変化を振り返る手法は若手編でもご紹介しましたが、中堅社員においてはより長い経験の蓄積を棚卸しする作業になります。「気づかないうちに自分は成長していた」という実感の回復が、展望不安の解消と前向きな行動の起点になります。
② 強みを他者の視点で深掘りする
自己評価だけでは見えにくい強みも、参加者同士のインタビューとフィードバックを通じて解像度が上がります。「自分では当たり前だと思っていたことが強みだった」という気づきは、中堅社員が自信を取り戻す重要な転換点になります。
③ 日常のなかに「機会」を見つける視点を持つ
第1回でもご紹介した「計画された偶発性理論」(クランボルツ)が示すように、キャリアの変化は偶然の出来事がきっかけになることが多くあります。好奇心・忍耐・柔軟性・楽観主義・リスクテイキングの姿勢で目の前の出来事を学びの機会に変えることが、中堅社員の停滞を打破する鍵です。
研修の設計としては、若手版と同様に事前課題・集合研修・職場実践の3フェーズが有効です。ただし中堅向けでは、集合研修において参加者同士の対話による相互フィードバックをより重視した設計になります。自分の強みや展望を言語化し、他者の反応を通じてさらに深めていく——この相互学習のプロセスが、中堅社員の内側にある「動く理由」を引き出します。
中堅社員のキャリア支援、貴社はどこまでできていますか?
- 中堅社員が自身の強みを言語化できる機会を、組織として提供できているか
- 日常業務の外に目を向けるきっかけを、意図的につくれているか
- 「動かない中堅」を個人の問題として片付けず、組織として支援できているか
中堅社員は業務を一人前にこなせるようになった分、「あとは本人に任せれば大丈夫」と思われがちです。しかし、キャリア自律は放っておいて育つものではありません。 むしろ、業務に慣れたこの時期だからこそ、組織が意図的に関わり、キャリアを考える機会を提供することが不可欠なのです。
キャリア研究が一貫して示しているのは、キャリア自律は個人の意欲だけでは実現しないということです。組織や上司の支援があってこそ個人のキャリア自律は機能し、その効果が組織に還元されます。「社員のキャリアは本人の問題」と切り離してしまうと、支援の機会を失うだけでなく、組織全体のパフォーマンス低下を招くリスクがあります。
リクルートマネジメントソリューションズでは、中堅社員の展望不安の解消とキャリア自律促進を目的とした「中堅社員向けキャリア研修」を提供しています。中堅社員に合わせた、強みの棚卸し・人間関係資本の見直し・具体的なキャリアアクションの設定まで、対話を中心とした1日間の集合研修で実現します。事前課題・集合研修・職場実践の3フェーズ設計で、研修が「やりっぱなし」にならない仕組みも整えています。
また、受講者の上司向けに「メンバーのキャリア支援のためのリソース集」もご用意しており、研修効果を職場全体に広げる仕組みも整えています。
「自社の中堅支援を見直したい」「具体的なプログラム内容を聞いてみたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
▶中堅社員向けキャリア研修の詳細・お問い合わせはこちら
※本記事は、リクルートマネジメントソリューションズの調査・研究および堀内・岡田(2009, 2016)、Akkermans et al.(2013)、Rudolph et al.(2017)等のキャリア研究の知見を参考にしています。
- 人事のためのキャリア支援実践ガイド|年代別課題から考える、社員が自律的に動く組織のつくり方
- 第2回 なぜ優秀だった中堅社員が「動かなくなる」のか? 停滞の正体とキャリア支援
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