- 公開日:2026/07/06
- 更新日:2026/07/06
キャリア自律は、社員任せにしても組織任せにしても機能しません。本シリーズでは、人事が「何をすべきか」を年代別の課題から具体的にキャリアコンサルタントの視点で解き明かし、明日から使える支援のヒントをお届けします。
第1回目は、入社3年目までの若手社員についてです。
「丁寧に育ててきたつもりなのに、なぜ辞めてしまうのか」
若手社員の離職に直面した人事担当者から、こうした声をよく耳にします。採用・育成にかけたコストだけでなく、職場の士気や残ったメンバーへの影響を考えると、早期離職は企業にとって深刻な問題です。
では、若手はなぜ辞めるのか。その答えは、近年の若手のキャリアや仕事への向き合い方に関係があります。
- 目次
- 退職理由の「表」と「裏」
- 若手の"焦り"はなぜ生まれるのか
- 人事が見落としがちな「入社1年目の壁」
- 「今の仕事の捉え直し」が離職防止の鍵になる
- 研修で「行動」まで変えるために必要なこと
- 若手のキャリア支援、貴社はどこまでできていますか?
退職理由の「表」と「裏」
リクルートマネジメントソリューションズが2023年に実施した「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(対象:社会人1〜3年目、435名)によると、自己都合退職の理由として上位に挙がったのは「労働環境・条件がよくない」(25.0%)、「給与水準に満足できない」(18.4%)でした。
一見すると「条件面の問題」に見えますが、注目すべきは別のデータです。退職には至っていないものの「辞めたいと思ったことがある」と回答した若手は58.8%にのぼり(図表1)、その理由の1位は「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)でした。
図表1:退職を想起した経験
Q.これまで、会社を辞めたいと思ったことがありますか?
※「退職経験」で過去3年に自己都合退職したことが「ない」と回答した人にお伺いしています。

つまり、実際に辞める理由と、辞めたくなる理由は異なります。退職の引き金は条件面であっても、その前段階では「この仕事に意味があるのか」という内面的な問いが積み重なっているのです。
さらに見逃せないのが、現職にとどまっている若手の意識です。「辞めずに働き続けている理由」として最も多かった回答は「転職も検討しているが、リスクもあると感じる」(21.3%)でした。つまり、在籍している若手のなかにも、転職を視野に入れながら働いているケースが相当数存在するということです。今いる若手が「安心して働き続けたい」と思っているとは限らない——この現実を、人事として直視する必要があります。
若手の"焦り"はなぜ生まれるのか
若手のキャリア研修の場でよく聞く言葉があります。
- 「同期はもっと裁量のある仕事をしているのに、自分はまだこんな仕事をしている」
- 「3年いるのに、自分が成長しているのかよく分からない」
- 「この会社で今後、どう成長していけるのか分からない」
この"焦り"の正体は、限られた視野のなかでの自己評価です。SNSで同級生や自分と同じ年代の若者の活躍を目にするなど、若手は常に「他者のキャリア」と自分を比較できる環境にいます。また、転職情報も容易に手に入る現代、若手の60.0%が「今の会社を辞めた場合、次の選択肢が見つかる」と回答しており、転職へのハードルは以前より格段に下がっています。その理由として最も多かったのが「条件に高望みはしておらず、どこかは見つかると思う」(44.1%)という回答です(図表2)。転職は"人生の一大決断"ではなく、若手にとってすでに現実的な選択肢の1つになっているのです。
図表2:転職できると思う理由
Q.次の選択肢(転職・起業など)が見つかると思う理由として、あてはまるものを最大2つまでお選びください。

焦りを感じた若手が「社内に自分の可能性はあるのか」を確認できないまま時間が経つと、転職という選択肢がリアルなものになっていきます。問題は辞める瞬間ではなく、焦りを感じ始めた時点にすでに生じているのです。
人事が見落としがちな「入社1年目の壁」
同調査で若手が入社1年目に感じた壁として最も多かった回答は、「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からないことが多かった」(27.1%)でした。次いで「与えられた仕事の意味ややりがいが感じられず、やる気が出なかった」(21.1%)が続きます(図表3)。
図表3:入社後1年目の壁
Q.(新入社員の)入社1年目では、どのような悩みや壁がありましたか。あてはまるものを最大3つまで選んでください。

ここに、支援のヒントがあります。今の若手が求めているのは「正解を教えてくれる上司」だけではありません。同調査によると、悩みを話しやすい上司・先輩像として「普段から自分の人間性や価値観を認めてくれていると感じる人」(25.5%)、「押し付けがましくなく、自分の話や気持ちを受け止めてくれると感じる人」(24.8%)も選択率が上位になっています。
図表4:悩みを話しやすい上司・先輩像
Q.上司や周囲の人について、どんな人だと、自分のダメなところや悩みなど何でも話しやすいですか。あてはまるものを最大2つまでお選びください。

若手が求めているのは、答えではなく「自分を見てくれている」という実感なのです。
だからこそ、若手が自分自身のキャリアについて安心して考え、対話できる機会を企業が意図的につくることが重要です。その一つが、若手向けのキャリア支援施策です。多くの企業が取り入れていますが、その実態は今の若者たちの現状に合ったものになっているのでしょうか。
ではどういったポイントがあるのか、をご紹介します。
この視点はキャリア支援の設計にも直結します。研修の場で一方的に知識をインプットするだけでは、若手の内面にある焦りや疑問には届きません。同世代の受講者との対話を通じた相互学習こそが、自分のキャリア観を見つめ直すきっかけになります。
「今の仕事の捉え直し」が離職防止の鍵になる
若手のキャリア支援でよくある失敗は、「将来のビジョンを描かせる」ことに注力しすぎることです。
理想の未来から逆算するバックキャスティングの思考法は、ビジョンが明確な人には有効ですが、社会人経験の浅い若手には「まだ将来なんて分からない」という壁になりがちです。
有効なのはフォアキャスティングのアプローチ、現在を起点に、今持っているスキルや経験・環境を生かしながら、できることを少しずつ積み上げて未来を切り拓いていく思考法です。
つまり「今の仕事や環境のなかに、成長の機会を見つける」視点への転換です。現在の業務・職場・人間関係を"キャリアの資本"として捉え直すことで、焦りは「今できることを積み上げよう」という主体的な行動へと変わっていきます。
具体的には、Will(したいこと)・Can(できること)・Must(周囲の期待)のフレームで自分のこれまでを振り返ることが有効です。入社時と現在を比べると、できることや視野は確実に広がっています。この変化に自分で気づくことが、自己効力感の回復につながります。
また、キャリアの資本として見落とされがちなのが人間関係資本です。尊敬できる上司・先輩と一緒に働いた経験は、キャリア上で非常に重要だった経験の1位に挙げられています(柏木仁『キャリア論研究』文眞堂.2016)。周囲からのフィードバックや支援を積極的に得ていく姿勢は、若手のキャリア形成を大きく加速させます。
さらに、「計画された偶発性理論」(スタンフォード大学クランボルツ教授らのキャリア理論)によれば、キャリアの8割は予期しない出来事や偶然の出会いで決まるとされています。「まず小さな行動を起こすこと」が、新たなキャリアの可能性を開く第一歩になるのです。リクルートワークス研究所の調査でも、スモールステップ(小さな行動)を起こした若手ほど、キャリア観が充実し仕事へのエンゲージメントが高まることが示されています。
研修で「行動」まで変えるために必要なこと
キャリア支援の研修設計において重要なのは、「知識のインプットで終わらせないこと」です。
若手が転職サイトに目を向け始めるのは、「この会社で自分は成長できるのか」という問いに答えが見つからないときです。逆にいえば、入社3年目という早い段階で「社内にも成長の機会がある」と気づくことができれば、その視線は外ではなく内に向かいます。
そのために研修が果たすべき役割は、3つあります。
まとめると
① 自分の成長に気づかせる
Will・Can・Mustのフレームで入社以来の変化を振り返ることで、「気づかないうちに自分は成長していた」という実感を取り戻します。この自己効力感の回復が、前向きな行動の起点になります。
② 会社のなかに機会があることを知る
社内にある学びの機会・人脈・制度に目を向けるきっかけをつくります。「社内にも自分の思い描くキャリアにつながる道はあるかもしれない」という気づきは、実際に研修を受けた若手社員からも聞かれる声です。
③ 小さな行動を起こすことの意味を理解する
キャリアの変化は、大きな決断よりも日常の小さな行動の積み重ねから生まれます。「まずこれをやってみよう」というスモールステップを自分で設定できるようになることが、研修の最終的なゴールです。
この3つが機能することで、若手は外の転職市場ではなく、今いる職場のなかに可能性を見出し始めます。キャリア研修は単なる離職防止の施策ではなく、若手が今後自律的に成長の角度を高めるための重要な機会です。「この会社で頑張りたい」と思えるきっかけをつくる場なのです。
若手のキャリア支援、貴社はどこまでできていますか?
- 若手が「仕事の意味」を感じられる機会を、組織として提供できているか
- 上司が若手のキャリアを支援できるスキルを持っているか
- 研修が「やりっぱなし」になっておらず、日常の行動変容につながっているか
これらの問いに自信を持って「できている」と答えられる企業は、まだ多くありません。
リクルートマネジメントソリューションズでは、若手社員の早期離職防止・キャリア自律促進を目的とした「若手社員向けキャリア研修」を提供しています。フォアキャスティングのアプローチを軸に、事前課題・集合研修・職場実践の3フェーズで、知識のインプットで終わらず行動につながることを重視した設計です。また、受講者の上司向けに「メンバーのキャリア支援のためのリソース集」もご用意しており、研修効果を職場全体に広げる仕組みも整えています。
「自社の若手支援を見直したい」「具体的なプログラム内容を聞いてみたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※本記事の調査データは「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(リクルートマネジメントソリューションズ、2023年3月実施、対象:社会人1〜3年目 435名)を出典としています。
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