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未来を創るマネージャーのリアルボイス

Case4. 率直なフィードバックも“約束”があれば怖くない。freeeのCHROが語る現場マネジメントのノウハウ

読了時間:10

  • 公開日:2026/04/20
  • 更新日:2026/04/20
Case4. 率直なフィードバックも“約束”があれば怖くない。freeeのCHROが語る現場マネジメントのノウハウ

近年、多様な価値観を持ったメンバー構成、少子高齢化による人手不足の深刻化、コンプライアンスに対する意識の高まりなどにより、マネジメントの難度が上がっています。

そのような環境のなかで、業績達成はもちろん、最適な業務アサインや、メンバーの意欲を引き出しながらの業務遂行など、多くの役割を担わねばならず、マネージャー層の負担が増えているといわれています。また、人事の方からはマネージャーになりたい若手が少ないというお悩みをうかがうことも。

しかし弊社の調査(※)では、マネージャー昇進後に、メンバーの成果や成長などをやりがいに感じているマネージャーが多いことが分かっています。つまり、部下から見ると大変さばかりが目にとまり、やりがいがなかなか伝わりづらい、という側面があるのかもしれません。

本連載では、組織の要としてさまざまな企業でマネージャーとして活躍している方々に、やりがいや思い、工夫されていることなどについてお話をうかがい、ご紹介していきます。
第4回となる今回は、フリー株式会社 専務執行役員CHROの川西 康之さんにお話をうかがいました。今まさにマネージャーとして悩まれている方や、将来マネジメントを担っていくかもしれない若手の方の参考になれば幸いです。

マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年

本シリーズ記事一覧
未来を創るマネージャーのリアルボイス
Case4. 率直なフィードバックも“約束”があれば怖くない。freeeのCHROが語る現場マネジメントのノウハウ
未来を創るマネージャーのリアルボイス
Case3. どこにいても、チームとつながる。本部長のマネジメント術
未来を創るマネージャーのリアルボイス
Case2. 若手育成を支えたのは、“横のつながり”──メンバーが育つ現場のつくり方
未来を創るマネージャーのリアルボイス
Case1. 社会人3年目で挑戦。手探りのマネジメントを支えた“環境”の力
会社経営とビジネスの統括役を経て、人事の最高責任者へ
1on1ではあえて率直に。ストレートなフィードバックを受け止めてもらうコツ
相手に言葉が響かない時は、マネージャーとしての責任感を一旦横に置く
マネジメントは再現性のないアート。だからこそ面白い

会社経営とビジネスの統括役を経て、人事の最高責任者へ

――はじめに、川西さんがマネジメントに携わるようになったきっかけを教えてください。

マネジメントにフォーカスしたいと思ったことは、実はないんです。その時々で「必要だ」と自分なりに考えたことや、周りから求められたことを一生懸命やってきた結果、今があるというイメージが近いでしょうか。

私は在学中にWEBマーケティング会社を立ち上げまして、自分や友人の会社の経営に10年以上携わりました。その後、組織の経営に必要な知見をさらに広げていきたいという思いから、2016年にフリー株式会社へ入社し、現在に至ります。代理店の開拓営業を起点にマネジメントも担い、マーケティングやブランディングといった、自社内のものづくりに関わる領域以外は一通り経験しました。

——そしてビジネス全体を統括するポジションを経て、2024年からは採用や人事、財務、法務といったコーポレート側をまとめる専務執行役員CHRO(最高人事責任者)としてご活躍されています。ビジネス側からコーポレート側にシフトされたきっかけは何だったのでしょうか?

これは持論ですが、優れた競争力と成長性を兼ね備えた会社は、組織の土台そのものが強いという共通点があると思っています。事業やものづくりだけが強いのではなく、社員が日々過ごす組織というプラットフォームも強いのです。弊社の「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを実現していくためにも、コーポレートの強化は欠かせないと感じていました。そういった経緯もあり、2024年からチャレンジさせてもらっている次第です。

思い返すと、私自身が純粋なプレイヤーとして働いたのは、弊社に入社してからの半年間だけでした。会社経営とマネジメントは、キャリアのなかでも長く続けてきた領域といえるかもしれません。

1on1ではあえて率直に。ストレートなフィードバックを受け止めてもらうコツ

——1日のスケジュールを拝見しましたが、ご多忙ななかでメンバーの方々との1on1も行われています。川西さんは著書『freee 成長しまくる組織のつくりかた』(大和書房, 2025)のなかで、フリー株式会社の1on1について「容赦なし」と表現されていましたね。

そうですね。社員全員が成長し続けていくために、フィードバックは建前ではなく本音で伝えます。弊社のカルチャーにおいても、1on1は率直であることが大事だという考え方があるのです。もちろん、本音とは時に厳しくもあるものなので、フィードバックを受けた瞬間はへこんでしまうこともあるかもしれませんし、私も入社当時は衝撃を受けました。

ただ、1on1の目的は相手を打ち負かすことではなくて、「ありのままの評価を一旦受け止めて、成長や変化をしてほしいと思っているけど、どう?」というボールを投げ合いたいだけなのです。お互いの信頼関係があってこそできるフィードバックではありますが、率直に評価を伝えることによって、「自分は誰にも評価されていないのではないか?」という疑心暗鬼にも陥りにくくなると感じています。

——若いマネージャーの場合、部下との関係性やモチベーションに配慮するあまり、なかなかストレートなフィードバックができないこともあるかと思います。そういった方には、どうアドバイスされますか?

難しいですよね。本音と建前が当たり前のように存在する組織の場合、自分だけ本音でフィードバックするのは非常にハードルが高いです。「率直に伝えることは皆にとって良いことだ」という共通認識がなければ、一朝一夕で土台をつくることも難しいでしょう。

ただ、マネジメントをしているメンバーに約束をすることはできます。例えば、「私は率直に伝えることが大事だと思っているからそうするし、君も本音で伝えてほしい」と開示することが大事です。「役員も含めた社員全員に対して、いきなり率直になることはできないけれど、このチーム内のコミュニケーションにおいては率直であろう」というような、ミニマムな約束でかまいません。チームのスタンスとして、自分はこうしたいと思っている。こういうサポートをしたいと思っている。厳しくしたいのではなく、成長を支えたいと思っている……。こういった約束ごとをきちんと明示し、理解してもらうことから始めると良いのではないでしょうか。

そして約束をしたら、守りましょう。言っていることとやっていることが違う、矛盾のある状態をつくってしまうのが、マネジメントでも組織づくりでも一番信頼を失うことだと感じています。

相手に言葉が響かない時は、マネージャーとしての責任感を一旦横に置く

——川西さんは組織づくりも含めて幅広いマネジメントに携わっていらっしゃいますが、これまでの経験を踏まえて、なお大変だと感じるのはどのような時でしょうか?

マネジメントをしていて大変だと感じるのは、何を言っても相手に刺さった気がしない時です。お互いが思っていることの共有や摺り合わせが、いつまで経っても空回りしている感覚といいますか……。特にメンバーがマネージャーに対して「お手並み拝見」という距離感を保っている時や、「自分は他の会社で、または他のチームでずっとこうやってきた」というスタンスを崩さない時などは、何を伝えても響きにくい印象があります。周囲からも「どうなっているの?」と声を掛けられたりしますし、マネージャーとして介在価値が感じられない瞬間といえるかもしれません。

——そのような状況になった場合、お互いの認識のズレを直していく方法はあるのでしょうか。

ズレの直し方はケースバイケースですが、私が意識しているのは、「自分はマネージャーだからしっかりしなければいけない」という責任感をとりあえず横に置いて、相手に問題を開示することです。

例えば、信頼関係が十分に築けていないと感じた時は、率直にそう伝えます。「私はあなたと信頼関係を築けていない気がする。お互いに信用できていないなら、それは一体何が原因だろう。どうすればいいと思う?」と、踏み込んで言語化するようにしています。このままだとお互いに良い仕事ができないので、どうしたらいいのかを一緒に考えたい、と投げかけるイメージです。

マネージャーになると「責任者だから」といった意識が働いて、自分がしっかりできていないことを隠そうとしてしまったり、議論のボールを投げられなくなったりすることもあります。するとメンバーも、マネージャーからボールが飛んでこないなかで、「自分はあまり評価されていないのではないか」「役に立てていないのではないか」と勝手に想像してしまうことも多いのです。こういったお互いの疑心暗鬼が、マネジメントにおいて一番無意味で、生産性が下がりやすい状態だと思っています。

だからこそお互いに噛み合わない時は、マネージャーやメンバーといった立場を一旦置き、「私とあなたの問題を一緒に解決しよう」と、アジェンダ化することが大事なのではないでしょうか。

マネジメントは再現性のないアート。だからこそ面白い

——マネジメントには大変な面もあるかと思いますが、「それでもマネジメントは面白い」と感じる瞬間を教えてください。

マネジメントは「何をしたか」にフォーカスされがちですが、私が面白いと感じるのはメンバーとの化学反応、ケミストリーの部分です。似たようなアプローチをしてもメンバーが違えば結果が変わりますし、同じようなインパクトは二度と生まれません。

そういう意味で、私はマネジメントを「再現性のないもの」、ある種のアートのようなものだと思っています。その場でしか起きないケミストリーに立ち会えることや、ビジネスのインパクトを一緒につくり上げていけること自体が、私の思う「マネジメントの楽しさ」であり、やりがいです。

——そういったケミストリーが生まれる背景には、メンバーの方々から「こんなことをやってみませんか?」というムーブメントが伝播していくような、御社の自律的な組織づくりも追い風になっていそうです。そういったムーブメントを生むために、現場のマネージャーにできることはあるのでしょうか?

一番大切なことは、マネージャーが自分の言葉で語ることに尽きます。例えば、会社として「売上100億円を達成しなければいけない」という目標があったとして、「会社が売上100億円を目指しているから、私たちのチームは売上10億円だ。よし10億円売るぞ!」とマネージャーが言っても、なかなかメンバーは本気で頑張れないでしょう。「やれと言われたからやる」という流れでは、「ボーナスはいくら?」といったように、報酬に意識がいってしまうことすらあるかもしれません。

ではどうすればチームのモチベーションが上がるのかというと、チームの皆で「なぜその仕事を自分たちがやるのか」を考えることが大事です。売上100億円という数字にどんな意味や目的があり、自分たちのチームの役割は何なのか。そういった「なぜ」を突き詰めていくと、「自分たちが目指すべき目標は10億円じゃなくて15億円だ」と、腹落ちする新しい目標が出てくることもあります。「自分たちなりにやる理由」を語れるようになると、やらされ仕事ではなくなるのです。だからこそマネージャー自身が、まず「その仕事をやるべき理由」を、自分の言葉で話せるようになることが大事なのではないでしょうか。

——最後に、これからマネージャーになる方にアドバイスをお願いします。

最初は気負うこともあるかと思いますが、「マネージャーになったぞ!」と、肩肘を張らないように心掛けてみてほしいと思います。マネージャーは部下を持つ立場ですが、偉くなったわけではなくて、役割が変わっただけだと捉えてみてください。マネジメントは共創、共に何かを生み出していく営みであって、お互いの関係性に本来、上下はありません。

実際に私も「部下」の下という言葉が気になって、社内ではほとんど使わないのです。マネージャーとメンバーの役割の違いを、必要以上に「上下」にしてしまわないこと。自分の役割が変わっただけという前提から入りながら、仲間とのケミストリーを大切にしてみてください。

――本日はありがとうございました。


リクルートマネジメントソリューションズではマネージャー育成を支援するサービスをご用意しています。
ぜひ貴社のマネージャー育成にお役立てください。

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