連載・コラム
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第4回 新入社員早期戦力化のポイントは「価値観」と「やる気スイッチ」の違いにあり
- 公開日:2026/02/09
- 更新日:2026/02/09
本連載では、新卒入社者・キャリア入社者・異動者などに対する「オンボーディング(早期の戦力化を促進し、定着を支援するプロセス)」に関して、組織内で起こりがちな課題を解決するヒントを紹介しています。
第4回はオンボーディング施策のなかでも、「新入社員」の早期戦力化において重要となる「一人ひとりの違いの見極め」と、新入社員全員に共通する「オンボーディングの3ステップ」を紹介します。
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第4回 新入社員早期戦力化のポイントは「価値観」と「やる気スイッチ」の違いにあり
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第3回 キャリア入社者の支援には「上司と人事」による面談が有効
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第2回 「本人主語+企業主語」で不安を払拭してやる気の好循環へ
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第1回 新たに組織に加わった人材が直面する「3つの壁」と「6つの症状」
- 目次
- (1)新入社員の「成長サイクルの回り方」は人によってさまざま
- (2)価値観もやる気スイッチも全員異なる、それが新入社員の複雑さ
- (3)「やる気が高まりつづける好循環サイクル」の実現は共通の課題
- (4)「自己変革重視」と「自分らしさ重視」の2つのタイプに注目
- (5)大事にしていることを踏まえて「らしさの発揮」を後押し
- (6)効果的に働きかけを行い、早期戦力化を図る3ステップ
(1)新入社員の「成長サイクルの回り方」は人によってさまざま
一見するとスタートラインが同じに思えるため、どうしてもまとめて扱われがちな新卒入社の新人たちですが、実際にはその成長サイクルは一人ひとりまったく異なります。新入社員のオンボーディングでは、そうした個人の特性の違いをいかに把握するかが重要となります。
下図は、ある企業に入社した新入社員4名の、ある時点での周囲からの評価と本人の心理的な状態を可視化したものです。この4名の評価とメンタリティの組み合わせにはそれぞれに大きな違いが見られ、成長サイクルの回り方も異なっています。

注: メンタリティの5段階:1.窮々、2.悶々、3.淡々、4.懸命、5.充実
例えば【結果指標】を見ると、Aさんは周囲からの評価は5点満点中の2点、本人のメンタリティも5段階中の最下位の「窮々」といずれも低い状態です。また、Aさんは【本人の心理面の健全さ】も数値が低い項目が多く、成長実感をもてていません。一方でDさんは、周囲からの評価は5点、メンタリティも最も高い「充実」の段階にあり、成長実感も4点とほぼすべての項目で満点に近い値を出しています。
とはいえ、この2人はあくまで分かりやすいケースであり、必ずしもそうしたパターンばかりというわけではありません。Bさん、Cさんのケースも見ていきましょう。
Bさんは周囲からの評価は5と高いものの、本人の精神状態は「窮々」と厳しい状態にあります。つまり、Bさん自身は「自分らしさを発揮できていない」「周囲の期待に応えられていない」と認識しているにもかかわらず、周囲からは「十分に活躍できている」と評価されています。本人の自己評価と周囲の評価にギャップがあるのです。
逆に、Cさんは自分自身では最良の評価である「充実」の段階にあると感じているものの、周囲の評価は1と低い状態にあります。とはいえ【心理面の問題箇所】にあるように、Cさんも「周囲の期待に応えられていない」という事実は認識しています。それでも、主観的には自分らしさを発揮できており、学びも得られているため、本人としては満足しているのでしょう。
実際の新入社員に多いのは、こうしたBさんやCさんのような複雑なパターンです。さらに新入社員の場合、本人のメンタリティや成長実感は時間と共に大きく変化していきます。新入社員のオンボーディングが難しい理由はそこにあるのです。
(2)価値観もやる気スイッチも全員異なる、それが新入社員の複雑さ
先の4名の違いをもう少し詳しく見てみましょう。以下の図が表すのは、それぞれの【価値観】と【やる気スイッチ】の違いです。

弊社では、価値観に関して「自己成長を重視するか/組織貢献を重視するか」と「自分らしさを重視するか/自己変革を重視するか」という2つの価値観の軸に着目しています。これらの軸は、どちらの傾向がどのくらい強いかといったバランスを可視化するため、それぞれの項目で合計10点になるように点数が表示されます。
また、やる気スイッチ(モチベーションを生む要因)に関しては、私たちが独自に設定した「モチベーション・リソース」という指標を用いて計測しています。モチベーション・リソースには「統率・挑戦・創造・専門性・貢献・親和・安定・金銭・承認・注目」の10個の項目があり、それぞれ1~10点で表示されます。この点数が高いほど、その項目が本人にとってより重要なモチベーション・リソースであることを示しています。

これらの点を踏まえてあらためて4人の結果を見ていくと、いずれの項目も全員まったく異なるということが分かります。新入社員のオンボーディングに取り組むうえでは、まずはこのように一人ひとりが違った価値観やメンタリティを有していることを理解する必要があります。
(3)「やる気が高まりつづける好循環サイクル」の実現は共通の課題
ここまで紹介してきたように、新入社員は一人ひとり異なる特性を抱えているものの、実は新入社員自身にとって「望ましい状態」は全員同じといえます。それは本連載の第2回・第3回でも紹介した、「やる気が高まりつづける好循環サイクル」を回せている状態です。
つまり新入社員のオンボーディングでは、本人と周囲が協力し、この「やる気が高まりつづける好循環サイクル」を実現することが1つの共通目標となります。

この図の後にくる大手3社のアンケート調査も、この構造でデータを取っています。自分らしさを発揮する。学び自分に良い変化が起きる。それがぐるぐる回ると成長実感につながる。その土台には心理的安全性が大事という図です。
昨今、私たちは新入社員のオンボーディングに関して悩みを抱える多くの企業から相談をいただきます。そうした企業へ実際にヒアリングをしてみると、実態に多少の差はあるものの、どの企業もある程度共通する問題を抱えていることが分かります。
なかでも多く見られるのが、入社後早期に離職する社員の増加といった「早期離職」の問題と、事業成長や育成コスト圧縮にともない求められる「早期戦力化」の問題です。とはいえ、配属される現場にオンボーディングを一任すると、現場によって定着・戦力化のスピードに大きな差が出てしまいます。
そこで多くの企業の人事担当者は、現場のマネジャーに新入社員の客観的な情報を提供し、効果的なマネジメントを支援しています。また、新人・若手社員全体の傾向を分析し、その結果をもとに採用活動やオンボーディングの仕組みの改善・見直しを図ろうと試みています。
とはいえ、こうした取り組みも重要ではありますが、対象となる社員本人に対する視点が欠けていると、好循環サイクルを効果的に促進できずに無理やズレが生じてしまいかねません。そのため、どんな施策を実施する場合でも、新入社員のオンボーディングにあたっては「一人ひとりの『やる気が高まりつづける好循環サイクル』を回すには何をすべきか」という視点から考えることが大切です。
次の図は、ある大手企業3社においてオンボーディング対象となっている、入社2~4年目の社員を対象にしたアンケート調査の結果です。各項目の得点は、心理状態を5件法(「5.あてはまる」「4.どちらかといえばあてはまる」「3.どちらともいえない」「2.どちらかというとあてはまらない」「1.あてはまらない」)で評価したものです。上司評価は高・中・低と3段階に分け、高群と低群間で統計的に有意差がある項目には印(**:1%水準、*:5%水準)を付けています。

このデータからは、「らしさを発揮」→「期待に応える」→「経験から学ぶ」→「次に生かす」という成長サイクルを感じている人、そして「成長実感」を得ている人は周囲からの評価も高い傾向にあることが分かります。新人・若手のオンボーディングを成功させて能力を伸ばすうえでは、やはり成長サイクル(=好循環サイクル)を回すことが有効なのです。
(4)「自己変革重視」と「自分らしさ重視」の2つのタイプに注目
新入社員一人ひとりをよく観察し、それぞれに適したオンボーディングを実施する、というのは言葉にするのは簡単でも現実では簡単ではありません。そのためここからは、適切なアプローチを見極めるためのいくつかのヒントを紹介します。
まず注目したいのは「自己変革重視」と「自分らしさ重視」という価値観のタイプの違いです。これは言い換えれば、その社員が「自分を変えていきたい」と思っているのか、「今の自分をそのまま生かしたい」と思っているのかの違いでもあります。
「自己変革重視」タイプは、「仕事を通じて自分を理想の姿へと変えていくこと」を成長と捉える人材です。このタイプは自分らしさを発揮することよりも、なりたい状態を先に決めたうえで、その実現に向けて突き進むことを優先します。こうした価値観は従来の日本企業では当たり前のものと考えられており、周囲もそれを後押しする傾向にありました。
対して「自分らしさ重視」タイプは、何よりも「自分らしさ」の発揮を第一に考える人材です。昨今増えつつあるこの価値観では、業務や成長の仕方においてもまず自分らしさが重視され、思うように自分らしさを発揮できているか否かが仕事や組織への適応にも大きな影響を及ぼします。
新入社員にはこれら両方のタイプがいるため、オンボーディングにあたっては対象の社員が「どちらを重視しているか」を早い段階で把握することが重要となります。「自己変革重視」タイプの人材は、最初に自身のなりたい将来像を聞き出し、その実現に向けて改善した方が良いポイントを追って伝える、という順序で導いていくことが効果的でしょう。
一方で、「自分らしさ重視」タイプに対しては、いきなり目指すべき姿を示すのではなく、まずは本人の強みや課題を理解するところからスタートすることが大切です。そのうえで、強みは生かしつつ、弱みは時に肩代わりしながら積極的に支えていくと良い結果が期待できます。
(5)大事にしていることを踏まえて「らしさの発揮」を後押し
その他には、先ほど紹介した「統率・挑戦・創造・専門性・貢献・親和・安定・金銭・承認・注目」の10のモチベーション・リソースなどにも目を向けるとより効果的です。
一人ひとりが大事にしていることを踏まえて背中を押すと、意欲が高まるだけでなく本人の「らしさの発揮」にもつながり、さらなる学びを促進することにもなります。これは新入社員に限らず、オンボーディングの大事なポイントの1つです。
また、新入社員一人ひとりのやる気スイッチの違いに注目し、各々が担うミッションに「意味付け」をしてあげるのも有効でしょう。具体的には、「貢献できること」「挑戦的な側面」「新人ならではの視点での創造」などの付加価値を与えるとよりスムーズなオンボーディングにつながるはずです。
(6)効果的に働きかけを行い、早期戦力化を図る3ステップ
最後に、新入社員のオンボーディングにおいて、どの人材にもある程度共通で効果を発揮する3ステップを紹介します。

第1ステップでは、対象となる人材に「意図的に用意されたサイクル」を回してもらいます。まずは周囲から用意された環境や手順で仕事に取り組んでもらうのです。また、仕事中に生じる小さな成功・失敗や出来事に周囲が意味付けを行うことで、並行して本人のやる気スイッチも押していきます。
このとき重要となるのが、「自己変革重視」と「自分らしさ重視」のどちらのタイプか、どのモチベーション・リソースを重視するのかといった一人ひとりの特性の違いに注目することです。10のモチベーション・リソースを活用すれば、1つの仕事も切り口を変えてさまざまな語り方が可能となります。
例えば「注目」を大事にしたいタイプの人材には、周囲が事あるごとに関心を示し、適切なタイミングで支援をすると良いでしょう。また、「貢献」が大事なタイプであれば、自身の仕事が顧客や周囲にもたらす価値や、社会への貢献性などを繰り返し伝えるのが効果的です。
また、自己変革重視か、自分らしさ重視かといった価値観の違いによっても、成長に向けて効果的な取り組みの内容や方法は変わります。こちらも併せて意識してみましょう。
続いて第2ステップでは、「自分らしく働く経験サイクル」を周囲の力を借りながら回して積み重ねてもらいます。新入社員にとっては、徐々に自分なりのやり方で職務に取り組みはじめるフェーズです。
その際、周囲には本人に積極的に関与し、声がけを行っていくことが求められます。また、第1ステップと同様に成果や出来事に意味付けをしたり、やる気スイッチを押したりすることで、経験サイクルを回すテンポや回転数も上げられるとなお良いでしょう。
そして第3ステップは、いよいよ本人が主体的に「自分らしく働く経験サイクル」を回す段階となります。ここでは周囲は主に見守りつつ、必要に応じて支援を行えば問題ありません。
なぜならこの段階では、仕事に意味付けをしたり、やる気スイッチを押したりといったことは本人ができるようになっていくからです。そうして新入社員は徐々に独り立ちしていくのです。
上記の3ステップの各タイミングで適切に働きかけを行えば、新入社員の早期戦力化に大きな効果が期待できます。ぜひ試してみてください。
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執筆者

技術開発統括部
コンサルティング部
エグゼクティブコンサルタント
竹内 淳一
1993 年、株式会社リクルート入社。人事部門での採用リーダーを経て、2003 年から「データを活用し個を生かし組織を強くする」をテーマに、採用から入社後の適応・定着・活躍までを一貫して取り組むコンサルティングに従事。組織マネジャー・プロジェクトマネジャーとしてコンサルティングや営業、サービス開発を行い、2011 年より現職。現在は特に「人材ポートフォリオとリソースフローの最適化」を軸に、製造・サービス・IT業界などの大手企業を中心に支援。
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