連載・コラム
やる気(内発的動機)を引き出す1on1の工夫
1on1で「メンバーのコンディション把握」「やる気(内発的動機)の促進」を行うには
- 公開日:2025/10/06
- 更新日:2025/10/06

コロナ禍によるリモートワークの広がりなどを契機に、多くの企業で1on1を導入するようになりました。実際に弊社が行った1on1ミーティングに関する実態調査では、企業の約7割がすでに1on1を導入済みです。
1on1を実施している企業の多くが「効果を実感している」と回答している一方で、「単なる雑談で終わってしまう」「最初は熱心に取り組んだが継続できない」といった課題の声も聞かれます。
働き手の価値観や働き方が多様化し、変化のスピードが加速する現代において、1on1を効果的に活用できれば、組織が抱えるさまざまな人材・組織課題の解決につながる強力なツールとなり得ます。
本記事では、1on1の目的としてよく挙げられる「メンバーのコンディション把握」や「やる気(内発的動機)の促進」に焦点を当て、一人ひとりの内側から湧き上がるやる気(内発的動機)を引き出す方法について解説していきます。
1on1実施における目的の変化
昨今、多くの管理職から「最近の若手はやる気がない」という声が聞かれます。しかし、本当に“やる気がない”のでしょうか。
実際には、やる気やモチベーションは「ある・ない」で単純に判断できるものではなく、その人が置かれた環境や、日常的にどのような対話ができているかによって、メンバーのモチベーションは大きく左右されるといえます。
もともと1on1は、「自ら考え行動できる社員を育てたい(=自律の促進)」「社員のやる気を促進したい」「上司と部下の信頼関係を築きたい」といった目的で導入されるケースが多くありました。
しかし最近では、価値観や働き方の多様化を背景に、「一人ひとりに合った関わり方を探る」「メンバーの心理的な状態を把握する」「若手社員が職場にスムーズに馴染めるように支援する」など、新たな目的が加わりつつあります。
導入率が高まっている1on1の本質は「話すこと」ではなく、「目の前の相手に真摯に向き合うこと」です。とくに「この人、やる気がなさそうだ」と感じられるメンバーにこそ、安心して思いや考えを話せる時間と関係性をつくることが、上司に求められる役割であり、1on1の持つ大きな意義といえます。

指示待ちに見えるのは、話しづらい環境が原因かもしれない
「このメンバー、なんだかやる気がないな」と感じたことがある人もいるでしょう。しかし一見主体性がないように見えたり、指示待ちだと感じたりするメンバーも、話してみると自分の考えがしっかりあるケースは多いです。
メンバーの考えや気持ちが見えにくいのは「どうせ話しても否定される」「聞いてもらえないだろうな」といった過去の経験に基づく判断や、普段の上司との会話が進捗報告や業務相談ばかりという環境が影響しているのかもしれません。だからこそ、上司には「まず受け止める姿勢」が求められます。
多くのメンバーは、「無能に見られたくない」「こんなことを気にしているなんて思われたくない」と感じて、つい話すのをためらってしまうものです。一方で「上司が自分に期待してくれている」「信頼してくれている」と伝われば、「実はちょっと不安で……」と本音や感情を話せるようになるでしょう。

上司がメンバーを見るときに、「仕事ができる・できない」といった評価の目線だけでなく、「この人にはどんな可能性があるのだろう」「どんな仕事が得意なのかな」といった前向きな視点で関わるのを意識すると、メンバーもより話しやすくなるかもしれません。
「この人はちゃんと自分のことを見てくれているな」「自分のことを理解しようとしてくれているな」と感じられることで、少しずつ本音も話せるようになるはずです。
1on1で“伝え合う関係”を築くヒント
1on1を実施する際は、「ただ聞く」だけでなく、「意図を持って聴く」「相手の立場に立って受け止める」といった姿勢がとても大切です。こうした関わり方が信頼関係をつくり、メンバーの本音や考えを引き出す鍵になります。
とはいえ、メンバーの価値観が自分とまったく違うと「どう話したらいいのか分からない……」と戸惑う上司も少なくありません。そのような際は、相手の考えを深く知ろうとする問いかけが効果的です。
「どうしてそう思ったの?」「それをやった理由って何だったの?」といった問いを通じて、相手への理解を深めるだけでなく、メンバー自身も自分の内面と向き合えるようになるでしょう。
また、上司が聴く態勢を整える一方で、メンバー側も「上司と自分の価値観は違っていて当たり前」「黙っていたら気持ちは伝わらない」「上司だって1on1に慣れていないかもしれない」といった前提を持っておくことが大切です。上司と部下ともにお互いに歩み寄る気持ちが、1on1をより良い時間にしていくはずです。

そして、1on1をさらに有効な時間にしていくためには、上司とメンバーともにその目的を理解し、お互いに共有しておくことが大切です。目的を共有することでメンバー自身が「フィードバックを受けるだけでなく、自分のことを話してもよいのだ」と感じます。メンバーが積極的に言葉を発していける雰囲気づくりを意識するとよいでしょう。
このようにお互いを理解して対話しやすい関係が構築できてくると、これまで「やる気が見えない」と感じていた状態が変化していきます。少しずつメンバーの考えや感情が言葉になり、その人らしさが見えてくるようになるでしょう。1on1は、そのような変化を生み出す場でもあるのです。
内側から湧くやる気にそっと寄り添うのが1on1
「1on1の場を通じて、メンバーにモチベーションを上げてもらいたい」と考える人もいるでしょう。しかし、1on1はメンバーを叱咤激励して「やる気を注入する場」ではありません。
1on1の場で大切なのは、メンバーがもともと持っている感情や考え、エネルギーを、安心して表に出せるような場をつくることです。それが結果的にコンディションのケアや、内側から湧き出るやる気(=内発的動機)を支えることにつながります。
また、上司として「メンバーの本音や考えを引き出さなきゃいけない」と力みすぎる必要もありません。大切なのは、メンバーに対して「この人には力がある」と信じて見守り、必要に応じて問いかけることです。そして、問いかけたあとは焦らずにメンバーの行動を待つとよいでしょう。
やる気の源は、いつだって本人のなかにあります。その前提に立って1on1という場をより丁寧に育てていけば、メンバーの意欲も自然と変化していくでしょう。
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執筆者

営業統括部
営業3部
ソリューションプランナー
保坂 絵里
ネットワークデバイスの製造会社での営業を経て、2018年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。人・組織課題のソリューションプランナーとして顧客接点を担い、大手・中堅企業の人・組織課題の解決を支援。最近では、コーチングサービスを提供する部門にてコーチングやマネジメントに関するコミュニケーション領域のサービス提供支援も行っている。
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