連載・コラム
キャリア自律は1on1から始まる
“なんとなくの不安”を話せる関係が、キャリア自律の第一歩になる
- 公開日:2025/10/06
- 更新日:2025/10/06

皆さんは、1on1をどのようなものだと考えているでしょうか。定期的に30分〜1時間程度の面談を行い、部下の状況を把握するものだと考えている人も多いでしょう。ほかには休日の過ごし方や趣味など、プライベートな話をする場だと考えている人もいるかもしれません。実際に1on1は、職場内での重要なコミュニケーションツールとして活用されるケースが多いです。
しかし昨今は、単なる情報共有や雑談の場にとどまらず、個々の成長を支援する重要なマネジメントコミュニケーションツールへと変化しつつあります。働き方や価値観が多様化する中で、メンバー一人ひとりの個を生かすマネジメントが求められており、そこで1on1が役立っているのです。1on1を活用することで、例えば部下との信頼関係構築や自律支援、モチベーションの向上といった効果が期待できます。本記事では、そんな1on1を「キャリア自律」の視点からどう生かせるのかを考えていきます。
- 目次
- キャリア自律が求められる時代に1on1が果たすべき役割
- 人に焦点を当てる対話のあり方
- キャリアが見えないときこそ、1on1の価値がある
- 1on1を深めるために対話で意識したい3つのポイント
- おわりに――1on1の対話で根付いていくキャリア自律の風土
キャリア自律が求められる時代に1on1が果たすべき役割
最近、「キャリア自律」という言葉をよく耳にするようになりました。終身雇用や年功序列といった仕組みが見直されるなかで、社員自身に「これからのキャリアをどう描いていくか」を自分で考え、選んでいく力が求められているためです。
とはいえ、実際は「自分が何をやりたいのか分からない」「今のままでいいのかモヤモヤしている」といった声も多いのが現状です。「キャリアのことを自分1人で考えなければいけない」というプレッシャーを感じている人も少なくありません。
こうした時代の変化のなかで、あらためて注目されているのが「1on1での上司との対話」です。ただの業務報告の場ではなく、「自分はこれからどうなりたいのか」「何に関心があり、どんな強みを持っているのか」といったキャリアに関する深い話をする時間として、その重要性は年々高まっています。
人に焦点を当てる対話のあり方
リクルートマネジメントソリューションズでは、「1on1では“人”に焦点を当てて対話する」ことが重要であると考えています。例えば仕事の進捗や成果について話すのは「業務の会話」です。それに対して、その仕事をどのように受け止めたか、どんなふうに感じたか、そこからどんな学びがあったかを聴くのが「人にフォーカスした対話」です。

例えば、「どんなときにやりがいを感じた?」「どんな人に憧れる?」といった質問を投げかけることで、相手のなかにある価値観や判断基準が見えてきます。
これらは、自分のキャリアをどの方向に進めるかを考えるうえで、とても大事なヒントになります。1on1で何度も出てくる言葉やエピソードは、やがて本人の意思決定を後押しする道しるべとなっていくでしょう。
キャリアが見えないときこそ、1on1の価値がある
1on1でキャリアの話をするといっても、メンバーは「何を話せばいいのか分からない……」という“もやもや”を抱えているケースがあります。また、明確なキャリアイメージがなく、上司に何から話したらよいか分からないと思うメンバーも多いでしょう。
そのようなとき、上司として大切なのはメンバーが抱えている“もやもや”に付き合う姿勢です。1on1を通して「今の自分に何が起きているのか」を一緒に探っていくプロセスそのものが、メンバーの自律性を育てる土台になっていきます。
メンバーの言葉にしきれない気持ちに耳を傾けることが、信頼関係を築く第一歩となるでしょう。

1on1を深めるために対話で意識したい3つのポイント
1on1で上司が意識したい3つの視点は、以下のとおりです。
1. まずは、話を聴くところから
アドバイスをする前に、まずは部下の話をじっくり聴きましょう。うなずいたり、共感したりすることで、部下が「自分の話をきちんと聴いてくれている」と感じることが大切です。
2. 問いかけが「質の鍵」
部下に「どうしたい?」と聴くよりも、「どのような姿でありたいか」と問いかけましょう。相手にあらためて考えてもらうことで、思考がぐっと深まります。
3. 変化を一緒にたどる
数カ月前と今で、何が変わったのか? どのようなことに関心が出てきたのか? など、対話を通じて、一緒にその変化を振り返ってみましょう。本人も気づいていなかった成長の跡が見えてくるかもしれません。
おわりに――1on1の対話で根付いていくキャリア自律の風土
昨今のAIの発展により「20年後には今ある仕事の3分の1がなくなる可能性がある」と耳にしたことがある人もいるでしょう。新しい事業の柱をつくり、変化に備えたいと考えるケースも多いかもしれません。実際に、多くの企業で何かしらの変化を模索している傾向にあります。
変化のために「ジョブ型制度への切り替え」「ノーレイティング」「キャリア自律を促す制度づくり」など、社内の制度を見直している企業も増えてきました。しかしこれらの制度は、いずれも「上司がメンバーのことをどれだけ知っているか」により、うまくいくかどうかが左右されます。
上司がメンバーを理解するために必要なのが「人に焦点を当てた対話」です。そのために、1on1を活用することをおすすめします。
例えば……
- これまでどのような仕事をしてきたか
- 今の仕事にどんなことを感じているか
- 何にやりがいを感じているのか
- 将来、どのような仕事をしていきたいと思っているのか
このような話は、普段の業務のなかではなかなかできないものです。だからこそ、1on1の場を活用する必要があります。メンバーを知ろうとする上司の小さなアクションが、会社全体の大きな変革を支える土台になるでしょう。
キャリアというものは1人で考え続けるよりも、信頼できる誰かと話すことでようやく見えてくるものです。1on1のなかでメンバー自身も気づいていなかった想いや可能性が言葉になる瞬間があり、その瞬間こそ上司にとっても大きな気づきになるケースが多いのです。
キャリア自律を「制度でなんとかする」だけでなく、1on1を通じたリアルな対話のなかで会社の文化として根付かせていく。そのような取り組みこそが、これからの組織に求められているのではないでしょうか。
キャリア自律を促す1on1に関連する研修はこちら
効果的な1on1を現場で実践する管理職向け1on1スキル研修
伝わるフィードバックへの転換を図る管理職向けフィードバック研修
部下との対話型マネジメントを実現する管理職向けコーチング研修
執筆者

営業統括部
営業3部
ソリューションプランナー
保坂 絵里
ネットワークデバイスの製造会社での営業を経て、2018年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。人・組織課題のソリューションプランナーとして顧客接点を担い、大手・中堅企業の人・組織課題の解決を支援。最近では、コーチングサービスを提供する部門にてコーチングやマネジメントに関するコミュニケーション領域のサービス提供支援も行っている。
おすすめコラム
Column
関連する
無料セミナー
Online seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- お役立ち情報
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ・資料請求
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)