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真の顧客満足は、いかにして提供できるか

サービスの時代を生き抜く

  • 公開日:2008/02/08
  • 更新日:2024/05/16
サービスの時代を生き抜く

モノのコモディティ化が急速に進む現在、サービス抜きには価値を提供できない時代になっています。こうした中で、顧客満足を提供し、顧客の心を惹きつける魅力的な企業になっていくには何が必要なのか。今回のコラムは、顧客接点を持つ企業向けの戦略推進研修プログラム「SQ(サービス・クエスト)」の開発にかかわり、研修機会も豊富なトレーナーが語り手です。

営業、販売、サービス部門・・・あらゆる顧客接点への問題意識が、開発のきっかけ。
食品会社と大手百貨店・・・徹底した「顧客視点」が成功の共通項。
サービスはこれからの企業と日本が成長していくためのカギを握っている

営業、販売、サービス部門・・・あらゆる顧客接点への問題意識が、開発のきっかけ。

SQは15年ほど前に開発したサービス向上のためのスキル研修がベースになっています。当時、私はトレーナーになったばかりで主に流通やサービス業界の研修を担当していたのですが、顧客接点である販売やサービス部門が低く見られていることに大きな違和感を感じていました。
例えばファッション系の企業ですと、アトリエを頂点にして経営企画・管理などのスタッフ系があり、一番下が販売というようなヒエラルキーが存在し、販売部門もそうした組織風土に不満を感じていました。
「これはおかしい。価値を最終的に提供するのは販売じゃないか」と。その頃はまだCSという言葉もあまり知られていませんでしたが、研修を通して顧客接点の重要性と活性化を訴えていきました。その後バリューチェーンという考え方を導入し、経営・事業戦略を踏まえた全体的なサービスマネジメントの視点でプログラムを再構築したものが現在のSQです。

営業、販売、サービス部門・・・あらゆる顧客接点への問題意識が、開発のきっかけ。

SQの特徴は、徹底した顧客視点。そして【顧客】【顧客価値】【サービスコンセプト】【従業員】【システム】という5つの視点を取り入れていることです。研修の場面ではまずその企業にとっての顧客は誰か、顧客価値とは何かを定義することから始めます。次にそれを、サービスの考え方、スタッフの行動や基本姿勢、システムのあり方という3つのトライアングルの観点から見つめ、課題点を明確にして解決のための実践策を探っていきます。さらに、そこで描いた仮説を“真実の瞬間”に照らし合わせて、顧客視点に立ったものであるかを確認し、顧客接点の場で活用できるようにしていきます。今ではCSや顧客価値という言葉は当たり前になりましたが、このような視点を持った研修はまだないと思っています。

食品会社と大手百貨店・・・徹底した「顧客視点」が成功の共通項。

SQは基本的に2日間ですが、研修で得られたことが組織全体に浸透するまでお付き合いして行くケースも多くあります。
その中の一社、食品会社A社は、創業者の魂として顧客視点に立った理念を持ち、非常にわかりやすいバリューチェーンを構築していました。
しかしながらトップマネジメントは現状のCS活動に満足せず、競合より圧倒的な優位性を持つ顧客価値(製品・サービスとも)を提供したいと考えました。SQははじめ現場の店長を対象に行いましたが、そこでの成果が専務をトップとした横断的なプロジェクトチームに引き継がれました。
そのチームが中心となってサービスコンセプトを作り変えて、行動指針とともに去年(2007年)1月に社内で発表。その後アッパーマネジメント層に再度研修を行い、1年をかけて現場のパートタイムの従業員まで含めて浸透させていきました。
結果、現場は大きく変わりました。権限は店長に大幅に移譲され、前線は店長を中心に常にサービスコンセプトの反芻が行われ、顧客価値が常にブラッシュアップされるような状態になっています。バリューチェーンも生き生きと機能するようになり、すべての部門がサービスコンセプトに基づきお客様を意識して活動できるようになってきています。

食品会社と大手百貨店・・・徹底した「顧客視点」が成功の共通項。

4年目のお付き合いとなる大手百貨店B社の場合、「そもそも顧客価値とは何か?」という根本を考えることからスタートしました。
百貨店業界は過去10年間ダウントレンドにありますが、同社もいかに顧客価値を落とさず組織改革・業務改革できるかという課題に直面していました。「売上が落ちているのは、価値が落ちていること。売上でネジを巻くのではなく、圧倒的な価値を提供することでしか突破ははかれない。」 こうした考え方を共有し、SQの5つの視点から現状を点検して、どう改善できるかを分析。現場の目標管理につなげていきました。
プロジェクトはまだ進行中ですが、サービスコンセプト、真実の瞬間といった言葉が組織内に定着し、人に寄りかかっていたサービス品質がシステムで補完できるような仕組みにしたりと、顧客満足と効率化の両立へ向けて成果は実を結びつつあります。

サービスはこれからの企業と日本が成長していくためのカギを握っている

すべての企業はサービスがあって顧客価値が成り立つと考えられています。営業・販売・サービス部門などの顧客接点を持つ企業にとってはますます大変な時代になっていくでしょう。大きなテーマの一つは、ますます「高品位サービスを求めるお客様」への満足度の向上と、「筋肉質な経営体質」をいかにしたら同時に実現していけるか。
病院、介護施設といった日本の将来にかかわる、業界・業種でいかにサービス品質を上げていくかという社会的な問題もあります。雇用形態の多様化が進む中、顧客接点で働く人材の仕事や企業へのロイヤリティをいかに高められるか。
人材集めに苦労し、かつ入れ替わりが激しい現状をどのように魅力的なものに変えていけるか。これらもマネジメント課題としてさらに大きなものになっていくでしょう。
SQだけをとってみても、企業課題はまだたくさんあります。
例えば、顧客価値を提供するサービストライアングルの中で、システムはまだ問題だらけです。私は電車通勤をしていますが、駅の券売機の不親切なこと。いつも年配の方が困っています。月末や年末に銀行に行くとうんざりさせられます。どうしてあんなにお客様を並ばせて平気なのでしょう。

顧客視点が忘れられ、企業視点で考え、作られているために起こっていることではないでしょうか。バリューチェーンは顧客価値提供システムなんだと考えれば、まだまだ解決していかなければことは山ほどあるはずです。
そしてサービス部門を持つ企業が生き残っていくには、これらの課題に正面から取り組み、顧客価値を高めて行く以外にない。こういった意識を持った企業や組織のために、できる限りの力を尽くしたいと思っています。

執筆者

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人材開発トレーナー 米国CCE, Inc. GCDF-Japan キャリアカウンセラー

園田 珠子

1945年生まれ。大手生命保険会社本社勤務を経て1974年に各種学校に転職。書籍出版・教本編集・カリキュラム開発などに携わりながら、ファッションショープロデュース(構成・演出等)で国内外公演なども手がける。1990年に退職するまで、主任、係長を経て開発部責任者として教育開発・企画開発業務を統括するマネジメントを担当。1991年、リクルート(現 リクルートマネジメントソリューションズ)トレーナーとなり、現在に至る。百貨店・アパレル・宝飾・ホテル・スーパーなどのサービス業界をはじめ幅広い企業を担当。2003年キャリアカウンセリング協会GCDFキャリアカウンセラー養成講座のインストラクターになる。現在、企業内教育トレーナーとキャリアカウンセラー養成インストラクターを務める。

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