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組織長になることへの抵抗感を取り除く BIPROGY

志を追求するココツイ人財 組織長も多様化を

  • 公開日:2025/04/21
  • 更新日:2025/04/21
志を追求するココツイ人財 組織長も多様化を

数年前にパーパス経営という言葉が流行り、多くの企業が取り入れた。一段落すると、各自のパーパスや志を追求する企業が現れた。BIPROGYもその1社である。同社は組織長(管理職)の役割の明確化にも取り組んできた。その人事改革の一端をお届けしよう。
BIPROGY株式会社 人的資本マネジメント部長 川端絵美氏にお話を伺った。

「自律型人財」から「志追求型人財」へ
組織長でも強みを生かし弱みは周囲に補完してもらえばいい

「自律型人財」から「志追求型人財」へ

2022年、日本ユニシスから社名変更した日本有数のシステムインテグレーター、BIPROGY。2024年、同年から26年にかけての人財(人材)戦略において、グループ全社員に「志追求型人財」になってほしいというメッセージを発した。人的資本マネジメント部長の川端絵美氏が話す。「長年、自律型人財という言葉を使ってきたのですが、社内に浸透していないという感覚がありました。自律は会社から促されるものではなく、『こんなことをやってみたい』『こんな人になりたい』といった、自分なりの目標や思い、つまり志こそが、自らを動かす原動力になるのではないかと考えました」

志というと、堅い感じがするが……。「大層なことでなくていいんです。例えば、よき親でありたい、ある技術を極めたい、お客様の役に立ちたい、など、自分にとって大事であり納得できるものであればいい、と社員には伝えています。その志を言語化した上で、私はこのために働いている、だからここにいるということを腹落ちした状態で、ワクワクしながら働く。そういう社員が増えることが当社の価値創出、ひいてはPurposeの実現につながると考えています。『志』という単語の堅いイメージを少し崩すために、『ココツイ人財』と愛称を付けており、社員に気軽に口にしてほしいと思っています」

各自、言語化できたら、それを追求していく。そこで鍵を握るのが上司だ。「今後の組織長(係長層、課長層、部長層、事業部長層の4職位)には、部下の志追求をサポートし、成長を後押しできる役割を担ってほしい。現に2024年度の人事制度改定により、組織長のコンピテンシーとして、(部下の)成長の支援、決断力、変革力の3つを挙げています。一方、初級組織長の昇格要件に志に関することは入れておらず、先の3つの潜在力も見ていく方向で来年度の改編を目指しています。また、組織長自身にこそココツイ人財になってほしいと思っています」

2024年11月、全社向けの説明会をオンライン開催したところ、4400名(単体)のうち、約1000名が参加した。「想像以上の参加率で、驚きました。それだけ大きな期待感があるのではないかと」

その背景にあると川端氏が考えるのがビジネスモデルの変革である。「前社長の時代から、SI(システムインテグレーション)事業で培ったアセットを生かし、社会課題を解決する企業への変革を掲げ、取り組んできました。社名変更もその流れです。

2024年4月に開始した現経営方針においても、現在のSI事業に加えて、新たな収益基盤となる成長事業の両輪で事業拡大を図ることを掲げています。ビジネスを変えていく上で、自分たちはどう変わるべきか、会社は自分たちに何を期待しているのか?社員はそういった問いに対する答えを求めており、それが強い興味関心につながったのではないでしょうか」

ただ、実現するには現場の混乱も予想できる。個人としてやりたいことと、会社がやってほしいことのギャップが生まれる可能性があるからだ。「社内でも同様の指摘がありましたが、組織のミッションと個人の志は本当に無関係なのか、あるいは、今すぐに叶えるのは難しいとしても、1年後には可能だというように、組織内、または上司が部下と愚直に対話をしていくしかないのではないかと思います。正解はなくても最適解は求められるはずです」

ココツイ人財を社内に打ちだすと、1人のエンジニアが、自分の志が言語化される生成AIツールの開発を申し出てくれた。「嬉しかったですね。志とは無縁のタイプの社員が試行したら、『遊ぶように働く』という言葉が出てきて、本人も結構しっくりきていたと。このAIを新年度には導入したい」

組織長でも強みを生かし弱みは周囲に補完してもらえばいい

川端氏は、2023年まで人的資本マネジメント部傘下の組織開発室長で、この3年間、価値創出のドライバーとなる組織長のパフォーマンス向上に取り組んできた。具体的には階層ごとの役割を各自がきちんと認識し、発揮していくことである。「その背景には、以前に比べマネジメント層の階層が深くなり、各階層の役割が曖昧になったという事情がありました。それによって、部長になっても課長の仕事をやりつづけるといった弊害や、本来部長層が意思決定すべき事柄についても、その上位層に判断を委ねがちになる事象も起きていました」

3年間の成果はどうなったか。「各階層の役割に沿った行動変容は、まだ定量的には把握できていません。ただ1つ言えるのは、ユアタイム(同社における1on1施策の名称)の励行も手伝って、エンゲージメントサーベイにおいてもメンバー層の組織長に対する信頼度は非常に高くなっています」

昨今、組織長になることは不人気で、割に合わないという若手が多いが、BIPROGYではどうだろうか。「役割の曖昧化もその一端だと思いますが、コンプライアンスやダイバーシティへの配慮などが求められ、組織長の役割が拡大する現象は当社にもあてはまり、なることへの抵抗感はあると感じます。ただ、数年前から、組織単位で向こう5年の組織長登用計画を作り、計画的に育成を進めてもらっていますので、組織長のなり手不足が喫緊の課題にはなっていません」

そうした抵抗感を取り除くために、2020年から始めたのが組織長一歩手前の候補者向け研修だ。そこでは現役の組織長に、マネジメントの楽しさはもちろん、苦労話も披露してもらう。「何人かの意見を聞くなかで、自分にもできそうなマネジメントスタイルを発見できた、という声も聞かれます」

研修の最後に、「組織長になる気が高まったか」というアンケートをとると、8割が肯定するという。「一方で、組織長たるものこうあるべしという型にはめたいわけではなく、誰しも強みと弱みがあり、強みを生かし、弱みは周囲に補完してもらいましょう、というメッセージも発しています。私は当社に来る前、コーチング会社に在籍し、さまざまな業種や階層のリーダーのコーチングを行ってきました。一見するといわゆるリーダータイプではない人でも意外にうまくやっている例を実際に数多く見てきました。当社の社員には自分らしい組織長像を見つけてもらいたい」

強み・弱み論が発展すると、例えば、半年単位で組織長が変わるというやり方も考えられる。「私も似たようなことを妄想したことがあります。メンバーみんなが一度はどこかで組織長を経験するというやり方があってもいい。当事者になってみないと、その立場や気持ちが分からないからです。メンバーはうちの組織長はこうだからと言い訳しがちですが、なってみたら、なかなか難しい立場に置かれていることが分かるでしょう。逆に組織長からメンバーに戻ると、フォロワーシップのあり方が変わるはずです」

【text:荻野 進介 photo:平山 諭】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.77 特集2「管理職候補者不足の時代にどう適応していくか」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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