企業事例
マネジャーが本来の役割に集中できる組織 セールスフォース・ドットコム
社員の意識を統一し働きがいを高めれば最小の管理で済む
- 公開日:2020/07/20
- 更新日:2024/06/07

2020年版の日本における「働きがいのある会社」ランキング(大規模部門)で、2年連続で1位を獲得したのが、顧客管理ソフト大手のセールスフォース・ドットコムである。 同社ではミドル・マネジャーがどんな働きをしているのか。株式会社セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 人事本部長 鈴木雅則氏にお話を伺った。
価値観浸透の徹底 年2回の意識調査と毎年の認定試験
そもそも働きがいの高さの背景には何があるのか。常務執行役員人事本部長の鈴木雅則氏は「特別なことをやっているわけではない」と口を開いた。「目標管理が徹底され、達成したら、高い報酬が得られる。一方で、社員やお客様、社会を含め、1つの家族として考える文化――ハワイ語でオハナといいます――が根付き、お互い協力し合う風土が醸成されている。経営が業務と人、両方の側面にきっちり配慮していることが大きいと思います」
ただ、それは経営の「王道」であって、同じように実践している企業は多いはずだ。そう告げると、鈴木氏は他社にはないユニークな点として以下3つを挙げた。
1つは、価値観浸透の徹底である。同社は「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」の4つをコアバリューとし、入社時はもちろん、年2回実施される社員意識調査でもその体現度をチェックされる。
それだけではない。「全世界5万人の社員が会社の概要や目指す姿を、社外で同じように説明できなければ、という考えの下、全社員が毎年、専用の認定試験(コーポレート・ピッチ・サーティフィケーション)に合格しなければなりません。そこではバリューの話も大きなウェイトを占めています」
情報の透明性を徹底 意識調査も目標設定も閲覧可能
もう1つは情報の透明性だ。5名以上の部下をもつマネジャーは先の社員意識調査を自由に閲覧できる。また、年2回、シニアリーダーが集まり、目標や戦略を共有する会合が開かれるのだが、その模様はライブストリーミングを使って全社員が視聴し、質問できるようになっている。時差で視聴不能の場合には録画で後日視聴可能だ。
個人の目標設定の内容もオープンになっている。それは「Vision(ビジョン)」「Values(価値)」「Methods(方法)「」Obstacles(障害)」「Measures(基準)」の5つからなり、「V2MOM」と呼ばれる。「経営陣が全社版を作成し、確定したら、部門からチームに伝達され、個々人がそれぞれのV2MOMを作成します。他の社員のそれも閲覧でき、時には意見を述べることもできます」
鈴木氏が3つめに挙げたのが、社会貢献活動に熱心なことだ。同社には、創業以来、「1-1-1(ワンワンワン)モデル」と呼ばれるルールがある。製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を非営利組織などが行う社会貢献活動の支援に使うべし、というものだ。「年7日間のボランティア休暇という制度があり、よく使われています。SDGsの流れもあって、社会と企業は別物ではなく、今や一体化しつつある。社会貢献活動に熱心な企業に所属しているという意識は、社員の働きがいにプラスの影響を与えているはずです」
自分たちの組織が重んじていること(価値観)が明確で、上司や部下、あるいは経営陣がどんな動きをしているのかが手にとるように分かり(情報の透明性)、しかも、自分たちの活動が単なる金儲けではなく、社会につながっていること(社会貢献)がよく認識できているというわけだ。「さらにオハナ(家族)という言葉のおかげもあって、困ったときはお互い助け合うという文化がしっかり根付いている。社内SNSに困りごとを書くと、すぐに誰かが手を差し伸べてくれます」
付け加えると、同社は現在伸び盛りで業績は好調、CEOのマーク・ベニオフ氏はカリスマ的な魅力をもったリーダーだというのだから、「働きがい」を感じない社員の方が少ないだろう。
マネジャーも一般社員も本来の役割に集中できる
こうした組織にあって、マネジャーはどんな働きをしているのか。
鈴木氏によれば、先の「社会貢献活動に熱心」という文脈から導き出される、各自の仕事の意義や意味を、社会という目線から語ることができる「視野の高さ」が要求されるほかは、業績と人の管理という通常のマネジャー業務と異なった仕事が期待されているわけではないという。
そして、こう続けた。「他社との違いといえば、マネジャー、一般社員の区別なく、本来の役割に集中することができていることかもしれません」
それを支えているものが2つある。
まずは組織のデザインだ。例えば、マーケティング、内勤営業、外勤営業、カスタマーサポートと、営業プロセスにおける役割が明確に分かれている。さらに人事とは別に、営業系の教育を専門に行うセールス・イネーブルメントという組織がある。営業サポートから始まり、座学の研修、ベスト事例の共有、個別のコーチングまで行う。他社ならマネジャーが担っているだろう役割を、この組織が全面的に支援しているのだ。従業員に成功してほしいと考え、仕事に集中できるような組織的な投資やサポートが整えられている。「ゼロとはいいませんが、マネジャーでありながら顧客案件ももつプレイングマネジャーの比率も低いはずです」
もう1つはテクノロジーの活用である。「経費精算はネット上で簡単にできます」。手間ばかり要する紙の報告書類もない。先の社内SNSもマネジャーの負担を軽減させている。「マネジャーがわざわざ出向かなくても、メンバー同士が自発的に助け合っているのです。もちろん、SNSを介さず、初めからリアルな場面で悩み相談がなされることもよくあります」
社員の意識を統一し、働きがいを高めること。経営が本気でそこに向かえば、日々のマネジメントの必要性は減じ、マネジャーも本来の仕事に集中できる。この事例はそのことを示している。
【text:荻野進介】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.58 特集1「マネジャーの役割再考『あれもこれも』からの脱却」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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