導入事例
「第三の創業」期に、これから担う仕事・役割に報いる新人事制度を導入
日本ガイシ株式会社

- 公開日:2024/12/26
- 更新日:2024/12/26
事例概要

背景・課題
2025年4月から、すべての基幹職を対象に新人事制度を導入します。導入背景の1つに2021年に打ち出した「NGKグループビジョン」があります。未来に向けた挑戦を喚起する起爆剤として、「これから担う仕事・役割に報いる人事制度」に変革する必要がありました。もう1つの導入背景には、「シニア活躍プロジェクト」を通して、58歳以上の基幹職にあたる“専任職”のさらなる活躍のために、役割や期待の明確化が必要だと分かったことがありました。

検討プロセス・実行施策
新人事制度を作るにあたっては、一般的に表現されるジョブ型雇用をNGKの仕組みや文化にどのように接続するかをよく考えました。特に重視したのは、「各ポスト・ポジションに必要な知識・スキル」を明示することです。また、役職者としてマネジメントに専念する等級、専門性発揮に特化する等級、専門性発揮と組織リードの両方が求められる等級の3つを作り、複線化したことも大きな変化でした。

成果・今後の取り組み
2024年4月から、先行して専任職に新人事制度を導入しました。基幹職全体には2025年4月から導入予定です。2024年度は「まず走ってみる1年間」です。2024年11月からは、新制度を使いこなしてもらうための「役職者研修」を実施しています。人材統括部には「現場を信じて任せたい」という強い想いがあり、各事業本部トップや役職者たちが新制度を主体的に活用することを何より期待しています。
背景・課題
2つの導入背景「NGKグループビジョン」と「シニア活躍プロジェクト」

野崎:日本ガイシ(以下、NGK)は、電力を支える「がいし」で培ったセラミック技術をコアテクノロジーとして、自動車の内燃機関向け製品や、カーボンニュートラル、デジタル社会などのさまざまな分野で新たな価値創造の挑戦を続ける集団です。
私たちは2024年度から、基幹職(一般的にいえば管理職)のうち、58歳以上にあたる専任職を対象に新人事制度を先行導入しました。同制度を2025年度からすべての基幹職に適用します。この人事制度改定の背景には、2つの大きな流れがあります。1つは、2021年に打ち出した「NGKグループビジョン」です。
同グループビジョンでは、2050年の社会を想像し、バックキャスト思考で2021年を「第三の創業」と位置づけました。現在の主要事業である内燃機関向け事業を大事にしながら、一方で今後の成長分野であるカーボンニュートラルとデジタル社会に注力し、2050年に向けて中長期的に事業転換を図っていくと意思決定し、宣言したのです。そのためには、「良き人材の確保と育成」に向けて、人事もさまざまな面で変革を進める必要がありました。
基幹職に対する新人事制度の導入も、その変革の一環です。これまでは、過去の貢献によって処遇を決める人事制度でした。しかし、その制度のままでは「未来に向けて頑張っていこう!」というビジョンの趣旨が伝わりにくい状況にありました。未来に向けて挑戦を喚起し、カーボンニュートラルやデジタル社会関連の新規事業に全社一丸となってチャレンジするためには、「これから担う仕事・役割に報いる人事制度」に変革する必要があったのです。
山田:もう1つの流れは、シニア活躍プロジェクトです。私たちは2017年に65歳定年制を導入したのですが、基幹職の場合は、58歳到達時に専任職という呼称に変わって役職定年をむかえ、処遇が下がり、以降も60歳、63歳で段階的に処遇が下がる制度です。既に2020年頃から、この専任職の能力を生かしきれていないことが人事課題の1つになっていました。
今後、この年代の従業員はさらに増える見込みです。第三の創業を成功させるには、彼らの能力をより一層引き出し、モチベーションを高め、活躍してもらうことが必須でした。
そこで2021年、リクルートマネジメントソリューションズの力を借りて、シニア活躍プロジェクトを開始しました。現役の専任職にアンケートやインタビュー、ワークショップを実施し、多角的に“ホンネ”を探りました。その結果、「会社や組織からどのような役割を与えられ、どのような期待をされているかがよく分からない」と感じており、それが活躍の足かせになっている専任職が多くいることが判明したのです。
より一層の活躍を引き出すためには、役割と期待の明確化が必要だと分かりました。これは実際には専任職に限定される課題ではなく、その後の全基幹職に対する新人事制度の導入を大きく後押しするものでした。
野崎:このようにお話しすると、スムーズに話がまとまったように聞こえるかもしれませんが、実際は行ったり来たりしながら、徐々に考えを整理し、言語化していきました。決して簡単に決まったわけではなく、新人事制度の骨格も、最初からあったわけではありませんでした。
検討プロセス・実行施策
「マネジメント等級」「エキスパート等級」「シニアプロフェッショナル等級」の3つに複線化

野崎:「新人事制度」の方向性には、いわゆるジョブ型雇用と近い部分もあったため、制度を作るにあたっては、まずは私たち自身が、読書や勉強会を通してジョブ型雇用について学びました。その結果、「アメリカと日本の社会の仕組みの違い」がポイントだということが分かりました。
アメリカの雇用方式(ジョブ型雇用)も、日本式のメンバーシップ型雇用も、どちらも両国の社会の仕組みや文化に基づいて自然にできあがったものです。そのため、ジョブ型雇用はそのままではどうしても日本企業にフィットしません。そこで私たちはジョブ型雇用を日本社会の仕組み、NGKの文化にどのように接続するかをよく考えました。
その際、特に重視したのは「各ポスト・ポジションに必要な知識・スキル」を明示することでした。なぜなら、私たちは新人事制度を通して、従業員一人ひとりに、キャリアアップに向けて努力するモチベーションを高めてもらいたいと願っているからです。そのためにも、私たちは1000以上ある基幹職の全ポスト・ポジションのジョブディスクリプションを作り、必要な知識・スキルを明記しようとしています。
山田:新人事制度のもう1つの特徴は、基幹職の等級を3種類に複線化することです。役職者としてマネジメントに専念する「マネジメント等級」、専門性発揮に特化する「エキスパート等級」、専門性発揮と組織リードの両方を担う「シニアプロフェッショナル等級」の3つを作ることで、多様な人材が自身の持ち味を存分に発揮してもらう機会を創出する狙いがあります。
これまでのNGKでは、基本的に全役職者がプレイングマネージャーでした。新人事制度ではこれを大きく変えることとなります。マネジメント等級には組織の長として、戦略策定の具体化やピープルマネジメントなど、マネジメントに注力することで、組織成果の最大化に寄与していただくことを期待しています。
エキスパート等級には、極めて高度な専門家として「専門性」の発揮に集中してもらうことを期待しています。今後私たちが新たな技術、専門性を外部から獲得するためにも、こうした等級の設置が必要だからです。
シニアプロフェッショナル等級には、役職者でない立場から、専門性発揮や組織リードを担っていただくことを期待しています。実は、これまでの制度では、役職者を経験しないとその上の資格になかなか昇格できない仕組みになっていました。研究開発部門を中心に、その仕組みに対する不満の声が一定数挙がっていたのです。
そこで今回、私たちは、研究者・専門家が役職者を経験せずにキャリアアップしていけるパスを用意しました。こうしてNGKらしいジョブ型が徐々に形になってきました。
経営層・各事業部・現場と対話を重ね、新人事制度を磨いた

山田:私たちは新人事制度を作る過程で、社内のさまざまな人たちとの対話を重視しました。経営層とは、2カ月に一度のペースで継続的に対話しました。各事業本部の本部長・事業部長や参謀役である事業本部の企画部メンバーとも話し合いを重ねました。
また、社内の部長陣には、ジョブディスクリプション作りや、等級の判定トライアルなどにも協力してもらいました。
さらに、現場の部長やグループマネージャーとのワークショップも実施し、忌憚なく意見してもらいました。現場の彼らは、私たちとは違う角度からの有益な指摘をいくつももたらしてくれました。私たちは、これらの対話をもとに何度も制度の内容を考え直し、新人事制度を磨いていきました。
また、リクルートマネジメントソリューションズには、2021年のシニア活躍プロジェクトから継続的に支援してもらいました。ワークショップやインタビューを一緒になって実施し、事実を丁寧に掴み取ってくれる姿勢に好感を持ちました。私たちの資料を深く読み込み、積極的に意見してくれる点にも感謝しています。加えて日本社会や企業の動向に詳しく、コンサルティング事例も豊富で、ジョブ型人事制度などに関する最新情報を数多く教えてもらいました。
2024年10月現在までに、リクルートマネジメントソリューションズと弊社人事は、100回以上の定例会を設けました。定例会以外で電話やメールで相談に乗ってもらうこともよくありました。途中で検討案がひっくり返るようなことがあっても、その都度「こうしてはどうでしょうか?」と粘り強く提案してくれる、大変心強い存在です。
野崎:私たちは、一緒にフィールドでプレイしてくれるパートナーを求めていました。リクルートマネジメントソリューションズはまさにそのタイプで、大事な局面で何度も適切なパスを出してくれました。
成果・今後の取り組み
2024年度は先行して専任職に導入、「まず走ってみる1年間」に

山田:2024年4月から、専任職に限定して新人事制度を先行導入しました。基幹職全体には、2025年4月から導入予定です。2024年度は、専任職やその上司と一緒になって「まず走ってみる1年間」と捉えています。
ジョブディスクリプション作りも、点数づけや評価も、全員が初経験ですから、実際にやってみないと分からないことがたくさんあります。実際、先行導入ではじめて見えてきたことが数多くあり、現在はこの経験を生かし、全ての基幹職への導入に向けて改善している最中です。
また、2024年11月から、新制度を使いこなしてもらうための「マネジメント研修」を実施しています。新制度の説明から始め、組織戦略をどのようにジョブディスクリプションに具体化していけばよいのか、部下をどのようにアサインすればよいのか、といったことを実践的に学んでもらう場です。事業部長・統括部長から始めて、最終的には部長・グループマネージャーまで、役職者全員に受講してもらう予定です。
こうした研修に加え、インナーコミュニケーションの強化によって、社内に制度の浸透を図ることも構想しています。できるだけ早い段階で社員の理解・納得を得ることが、とても重要だと考えています。
それから、今後は社外向けのコミュニケーションを促進して、キャリア採用の強化にも繋げていきたいと考えています。新人事制度は、社外の方々にとっても活躍の機会を増やす制度になると信じています。
さらに「HRBP」の新設も検討しています。新人事制度を最大限に活用するためには、事業を先導する事業部長や役職者たちに活用をリードしてもらう必要があります。その際、人事と現場をつなぐキーパーソンとしてHRBPが必要だろうと考えています。現在、1本部にHRBPをトライアル導入し、どのような形がベストなのかを模索している最中です。
野崎:私たち人材統括部には、「現場を信じて任せたい」という強い想いがあります。各事業本部トップや役職者たちが、新人事制度を自分ごととして捉え、主体的に活用し、これまで以上に部下のアサインや育成に注力することを何より期待しているのです。マネジメントに専念する基幹職を新設するのは、そのためでもあります。もちろん、人材統括部はさまざまな施策を通して現場を強力にサポートしていきます。
2024年の今、私たちはこうして2050年を見据えた人事変革の第一歩を踏み出しました。これからが本番です。

コンサルタントの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
コンサルタント 渡邊 温美
自社にフィットしたジョブ型人材マネジメントを模索中の企業様にとって、NGK様の取り組みは学びが多いのではないでしょうか。
新人事制度の最大の特徴は、戦略に基づく職務設計というジョブ型の思想を前提としつつも、人材を最大限に生かすための「工夫のしどころ」「柔軟性」を可能な限り確保した点です。この制度を運用するためには、一定のマネジメント負荷と巧みさを必要とします。ビジョン実現に向けて、自社の多様な人材を生かしながら変革を遂げていくのだという、本気の覚悟があったからこそのご決断だと捉えています。
導入プロセスの特徴は「対話・学び・作り・磨く」を同時並行で進めている点です。本件は、正解が見えないなか、速やかに着実に人組織や文化を変えていく取り組みです。事業環境の変化速度が増すなかでも、「対話・学び・作り・磨く」ことを同時並行で進められるのは、経営層にとっても、従業員にとっても心強い人事ではないでしょうか。
ビジョン実現に向けたNGK様の挑戦はこれからも続きます。ここまで「パートナー」として共に知恵を絞り、汗を流す機会をいただけたことに心の底から感謝しつつ、引き続き弊社の総力を結集した実効的なご支援ができれば幸いです。

ソリューションプランナーの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューションプランナー 山崎 亮
事業ポートフォリオ転換に向け、従業員一人ひとりに「ビジョン実現のために挑戦してほしい」と考える企業様は少なくありません。一方で「従業員の挑戦を促す」には、より精緻に未来のあるべき姿を描き職務設計に落とし込むこと、メンバーへより高い要望を求めることなど、さまざまな試練も生じます。
そんな葛藤を乗り越えるべく、現場への丁寧なヒアリングや100回以上にわたる人事との定例会など、現場・人事・弊社でのすり合わせを綿密に行い続けました。その結果、中長期で実現したい軸をぶらさず、現場での運用も考慮して完成した本制度は、NGK様らしいものになったと感じています。
制度の本格運用、ビジョン実現に向け、今後も共にPDCAサイクルを回し続けられる存在であり続けられるよう、励んでいきます。
取材日:2024/10/18

企業紹介

日本ガイシ株式会社
日本ガイシを中心としたNGKグループは、独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献することを目指し、モビリティ、エネルギー、IoT、産業などのビジネス領域で活動。独自のセラミック技術を生かした製品やサービスの提供を通じて、地球環境への負荷低減、スマート社会への貢献、電力の安定供給など、より快適な社会の発展に向けて新たな価値創造に挑戦している。
関連するサービス
Service
関連する
無料オンラインセミナー
Online seminar
関連する無料動画セミナー
Movie seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- お役立ち情報
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ・資料請求
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)