導入事例
ミッションを核とする人事制度へ転換し、社員の活躍の幅をさらに広げる「職掌区分の廃止」を実行
丸紅株式会社

- 公開日:2024/10/21
- 更新日:2024/10/21
事例概要

背景・課題
丸紅では2018年に、丸紅グループの在り姿として「Global crossvalue platform」を定めました。
2019年から開始した中期経営戦略GC2021のグループ人財戦略では、この「在り姿」を実現していくうえで、人財戦略の基本となる概念であり、変革の方向性を示すものとして「丸紅人財エコシステム」を掲げ、その実現に向けた抜本的な人事制度の見直しを開始しました。その伴走役として、最新の人事トレンドを理解し、適切なアドバイスをいただける外部パートナーが必要でした。

検討プロセス・実行施策
人事制度のコアとなる概念や制度設計について、経営会議で10回以上議論を行い、2020年から人事制度改革を実行しました。なかでも、コンピテンシーを踏まえた職能資格制度からミッションレーティングへの転換は大きな変革でした。先に導入した管理職層のミッションレーティングの定着状況を踏まえ、次のステップとして、2024年7月に従来の総合職・一般職という区分をなくす「職掌制度の改定」と「ミッションレーティングの対象層拡大」を行いました。

成果・今後の取り組み
今後の課題の1つは、「職掌改定とミッションレーティングの定着」です。そのために非管理職や上長向けを中心としたフォローアップ施策を実施したいと考えています。社員一人ひとりがこれまでの職掌にとらわれずに、より大きなミッションに挑戦することで、各組織の戦略実行力の向上を目指します。そのために、個人のキャリア・オーナーシップを高める施策やマネジメント層への支援拡充も重視していきます。
背景・課題
「在り姿」を目指すための人事制度改革には、外部パートナーが必要だった

福永:今回紹介する「職掌制度の改定」を含む一連の人事制度改革のきっかけは2017年頃にさかのぼります。「変化の激しい社会や環境下で新たな価値創造が求められるなか、商品縦割りによる集団思考が強く同質性が高い組織文化が根強くあり、今変革をしなければ環境変化に対応できず、10年先も生き残ることができない」という強い危機感を抱いていました。
そこでまず2018年に、これから目指すべき丸紅グループの在り姿として「Global crossvalue platform」を定めました。丸紅グループを1つのプラットフォームとして捉え、グループの強み、社内外の知、一人ひとりの夢と夢、志と志、さまざまなものを縦横無尽にクロスさせて新たな価値を創造することを掲げています。
2019年からは新たな中期経営戦略GC2021をスタートし、そのなかのグループ人財戦略で、「在り姿」を実現するための基本となる概念であり、変革の方向性を示すものとして「丸紅人財エコシステム」を掲げました。多様なバックグラウンドを持つマーケットバリューの高い人財が丸紅グループに集い、活き活きと活動し、会社・組織を越えて行き交い・つながり、多様な価値観や知を掛け合わせることで、新たな価値創造にチャレンジし続ける、そうした魅力あふれるエコシステムを創ることを目指しています。
エコシステムの実現に向けて、抜本的な「人事制度改革」に着手することを決めました。そのためには、世のなかのトレンドを踏まえつつ、当社の課題を理解し、未来の成長に向けた人事制度の在り方を共に議論いただける外部パートナーが必要でした。そのパートナーとして、私たちはリクルートマネジメントソリューションズを選んだのです。
検討プロセス・実行施策
「ミッションレーティング」を中核とした人事制度改革がスムーズに進み、「職掌制度の改定」に踏み切った

福永:2019年の1年間、人事制度改革に向けて、毎月、経営会議で議論を行いました。処遇・タレントマネジメント・働く環境など、人事にまつわるほぼすべてのテーマについて、ゼロベースで議論し、制度に落とし込みました。
なかには賛否の分かれる内容もありましたが、社長をはじめとする経営陣と人事部が方向性を合わせながら、議論を深めていくことで、経営戦略とアラインした人事制度改革につながったと思います。この議論をリードしながら、詳細な制度設計を同時並行で進めていくにあたって、リクルートマネジメントソリューションズのコンサルタントの支援は欠かせませんでした。
当時の私たちは、当社の課題や状況と社外における人財にまつわるトレンドの両方を深く理解したうえで、今の当社に最も必要な制度は何かについて、さまざまな気づきを与えてくれる相談相手を必要としていました。リクルートマネジメントソリューションズはこれ以上ない適任者でした。
1年間の議論を経て、私たちは2020年から人事制度改革を実行しました。人財戦略会議「タレントマネジメントコミッティ」の設立、配属先決め型採用(Career Vision採用)の導入、社内人財公募制度・ジョブマッチングシステムの拡充、テレワークの拡充など、多種多様な施策を始めました。組織横断の連携を促進するための報酬制度「クロスバリューコイン」は、独自の試みとして話題になりました。転勤を伴わない「総合職掌 エリア限定コース」も導入しました。
この人事制度改革の基本方針として、一人ひとりが担う「ミッション」が、「組織の戦略実行」と「人財の成長」の根幹であり何より重要であることをまず示しました。コンピテンシーによる職能資格制度から、ミッションの大きさにより資格・報酬を毎年洗い替える「ミッションレーティング」への転換は、この改革の大きなポイントでもありました。本人も組織も、これまでの意識を変えていくことには時間が必要と考え、2020年度にトライアルを行い、2021年度から管理職層への正式導入に踏み切りました。
管理職層へのミッションレーティングの定着は想定よりも早く進みました。過去の評価を引きずることなく、これから何をするかで処遇を決めることで、将来に向けたチャレンジを後押しする機運も醸成できたと感じました。何をどこまでやるか、上司と本人がしっかり話し合い、ミッションを決めることが重要、という意識は管理職のみならず、全社に広がっていきました。
そこで、次のステップとして、総合職・一般職という区分を廃止する「職掌制度の改定」を実行することに決めました。同時に、ミッションレーティングの対象者を非管理職へも広げることにしました。
この間も、私たちはリクルートマネジメントソリューションズのコンサルタントに継続的に支援してもらいました。単に相談に乗ってもらうだけでなく、ミッションレーティングのトライアルや職掌改定に向けた各組織へのヒアリング、制度定着に向けた取り組みなど、さまざまな形でサポートしてもらいました。きめ細かなコンサルティングがあったからこそ、制度改定を前に進めることができたと感じています。
階層別ワークショップを実施し、職掌改定とミッションレーティングを浸透させていく

北越:2024年7月、職掌区分をなくす職掌制度の改定と、ミッションレーティングの非管理職層への拡大を行いました。この改定にあたって、2023年度に、部長・課長・総合職非管理職層・一般職の4層に分けて「階層別ワークショップ」を実施しました。
並行して、2023年にはミッションレーティングのトライアルを実施し、2024年度からの正式導入にいたりました。
職掌改定にあたって、大きな変化が伴う非管理職層の理解を得ることに尽力しました。今回の取り組みを前向きに受け止め、少しずつでもより大きなミッションへ挑戦しようと意識を変えてもらうことが重要と考えたからです。これまで実務を担ってきた一般職からは、「担当業務をすべて変えねばならないのか」といった意見や、若手総合職からは「異動やアサインメントによって昇格が遅れるのではないか」など、さまざまな不安・懸念の声もありました。
そうした不安の声に対して、改定の目的は「職掌による制約をなくして、個人の経験・実力・キャリア志向に基づき、一人ひとりがより大きなミッションに挑戦し続けることで、社員の成長を推進するものである」と、人事部からの発信・従業員組合との対話・上長からの説明など、さまざまな手法で伝えていきました。
また、改定を進めるなかでは、一人ひとりにミッションや自分のキャリアをあらためて考えてもらう機会を提供することも必要だと考えました。ワークショップでは、改定内容について説明するのみならず、過去の自分の経験やスキルを棚卸しして、これからどのようなチャレンジをするのかを自ら考え、一歩を踏み出してもらうプログラムを用意しました。ワークでは、他部署の社員同士が互いのキャリア・考えを開示し合うことで、新たな気づきを得られたとのポジティブな反応もあり、今後の理解浸透施策にも生かしていきたいと考えています。
さらに部長・課長向けには、職掌改定後に、どのようなアサインメントが重要になっていくのか、また管下従業員のキャリア志向と、組織の戦略実行を踏まえたマネジメントにおいて、どのような難しさや留意点があるか、実践につなげてもらうワークショップを実施しました。いずれのワークショップにおいても、全体の企画、対象者へのアナウンス、事前配付資料・動画作成など、リクルートマネジメントソリューションズにリードしていただきながら、ワークショップを成功させることができました。ワークショップの対象者によって、留意すべきポイントが異なりますが、コンサルタントの方のみならず、講師の方にもその意識をしっかり持っていただいたことが、ワークショップの満足度を高めることにつながったと思います。
福永:各ワークショップでは、なるべく異なる部署のメンバーで議論するよう設計しました。実際、ワークショップは毎回おおいに盛り上がり、「自分の経験やスキルなどに対しポジティブな意見を多くもらい、今後のキャリアや業務に自信が持てた」という感想も見られました。
成果・今後の取り組み
職掌改定とミッションレーティングを定着させながら、次のステージへ向かう

福永:職掌改定とミッションレーティングの対象者拡大は、まだ2024年7月にスタートしたばかりですから、成果や反響が分かるのはこれからです(※取材時は2024年7月)。ただ、特に職掌改定のインパクトは大きく、着実に意識や風土の変化が起きていることを実感しています。
この変化を風化させることなく、社員一人ひとりが成長・活躍の機会を自ら創り、つかみ取ることができる人財へ、一層成長していくことを願っています。
北越:今後の課題の1つは、「職掌改定とミッションレーティングの定着」です。そのためにフォローアップ施策を継続的に実施したいと考えています。例えば、自身のキャリアを考える、キャリア・オーナーシップの確立を促す施策の提供も重要と考えています。一方で、レーティングの実施・管下従業員のキャリア自律への支援など、さらにマネジメントの負担が増している管理職層をどのようにサポートするかも大きな課題の1つです。
福永:当社は2025年度から新たな中期経営戦略を打ち出します。私たち人事も、職掌改定とミッションレーティングを定着させながら、次のステージへ向かう時期を迎えており、今まさに新たな取り組みを企画している最中です。

コンサルタントの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
シニアコンサルタント
井関 隆明
丸紅様とは、組織の枠を超えた主体的な協働を促すための施策として、クロスケット、クロスバリューコインの検討を支援したのをきっかけに、その後数年間にわたって人財マネジメントに関するさまざまなテーマについて協働させていただきました。
事業戦略に連動した人財戦略として、「丸紅人財エコシステム」を描かれ、常にその「在り姿」を起点として議論することを大事にされていた姿勢が特に印象に残っています。
人事制度の基軸をミッションに置き換えることや、長らく総合職・一般職に分かれていた職掌の壁を取り払うことなど、近年にない大きな改革を進めてこられた丸紅様。なかでも、経営層と人事部との間で「在り姿」を中心に置いた議論が丁寧に重ねられ、また「人が最大かつ唯一の経営資源」であるとし、どうすれば社員の皆さんの可能性を最大限に広げ、社員と会社が共に成長できるのかを大事にされていたと感じています。
弊社も「個と組織を生かす」をスローガンとしていることもあり、丸紅様が大事にされていることに強いシンパシーを感じながらお手伝いができたと自負しております。

ソリューションプランナーの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューションプランナー
奥尾 泰平
丸紅様の取り組みで印象的だったのは、常に「在り姿」に照らして人事制度改革の議論を深め、さらに社内浸透に向けたフォローアップ施策まで取り組んでいることでした。
日頃よりディスカッションさせていただくなかでも、「管理職はこのような実態に直面している」「社員たちもこんな思いを抱いている」といった、現場の現状を常に踏まえておりました。そのうえで、どのように進めていくと「在り姿」を実現できるのか、どうすれば社内にメッセージを伝えられるのかを考えることを、重視していたように感じます。
2024年7月から職掌改定が実行されて、まさに変革期を迎えている丸紅様のさらなる発展に寄与できるよう、今後も全力で支援させていただきたいと思っております。
取材日:2024/07/03

企業紹介

丸紅株式会社
丸紅及び連結子会社は、国内外のネットワークを通じて、ライフスタイル、情報ソリューション、食料、アグリ事業、フォレストプロダクツ、化学品、金属、エネルギー、電力、インフラプロジェクト、航空・船舶、金融・リース・不動産、建機・産機・モビリティ、次世代事業開発、次世代コーポレートディベロップメント、その他の広範な分野において、輸出入(外国間取引を含む)及び国内取引の他、各種サービス業務、内外事業投資や資源開発等の事業活動を多角的に展開している。
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