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インタビュー

社会を変えるリーダー

株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 CEO 春田 真氏

読了時間:8

  • 公開日:2026/08/03
  • 更新日:2026/08/03
株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 CEO 春田真氏

大企業出身者は転職したところで大企業でしか勤まらない。ましてや起業というリスクに挑む人は稀だといわれる。ところがどうして例外はいる。AI(人工知能)プロダクトとサービスを売り物にしたエクサウィザーズを率いる春田真氏がそうだ。銀行から社員20名足らずのネットベンチャーに移って上場を実現させ、40代半ばになって自らの会社を立ち上げた。独自のAI論と共にキャリアの軌跡を語ってもらった。

領域を限定しない社会課題の解決をAIで
社会人1年目、お金の価値を痛感
インターネットの面白さに出合う

領域を限定しない社会課題の解決をAIで

AI単体はもちろん、生成AI、AIエージェント、AX(AIトランスフォーメーション)と、AIという言葉を目にしない日はない。AIを事業基盤の中心に据えた企業も数多く生まれているが、代表的企業の1つがエクサウィザーズだ。2016年創業、東京・港区に本社があり、社員数は約600名。2025年3月期、創業以来初の黒字を達成した。

ミッションとして「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」を掲げる同社の社長、春田氏が話す。「高齢者のケアや少子化、行政や企業の効率化など、AIが対応できる課題はたくさんあり、私たちも取り組んでいるのですが、エクサウィザーズはあえて具体化せず、社会課題と大きく括っています。会社自体を1つの場と捉え、そこを使って、さまざまな課題をビジネスとして解決したいという人材に集まってほしい」

課題解決の領域を限定しないことは事業の性格上も好都合だという。「今もそうですが、創業当時はなおのことAIが効果を発揮できる領域がまったく不明でした。結果、領域を絞らず、多くのお客様とさまざまな課題と向き合うなかで、個別の課題を汎用的な課題に変え、それを解決するプロダクトやサービスを作っていきました。そこから生まれたのが、現場の課題解決から得た学びをすばやくプロダクトへ昇華し、横展開する当社独自の『AIぐるぐるモデル』という事業モデルです」

現在、収益の中心となっているのが企業のDX化の支援事業である。「生産性向上や労働力不足という課題に直面し、仕事の効率化を進めざるを得ない企業が多くなっています。私たちは介護や医療領域でのAI開発・活用も行っていますが、ニーズの大きさという面ではDX化支援の方が圧倒的に大きくなっています」

春田氏いわく、AIが普及していくと、「人がやらなければいけない仕事とは何か」「その仕事は本当に必要か」という問題に向き合わざるを得ない。「どんな仕事を、どのように行ったら、もっと楽になり、できることが増えるかという発想が重要になるでしょう。それに加えて、自分の仕事の領域を広げるという考え方も不可欠です。その点はアメリカに一日の長がある。仕事の領域を広げられないと仕事がなくなるというのが彼らの常識になりつつあります」

AI普及の先にどんな未来が待っているのだろうか。「正直、分かりません。私たちはAIの普及が加速するという前提で、AIを最高のパートナーとするAIドリブン経営を行っていますから、同じ見方をする人や組織と仕事を進めたい。そもそも、どんな企業もこの波に乗れないと不利益を被るはずです。私たち自身も含め、こうしたテクノロジーに対応するための社員教育は必須だと思います」

社会人1年目、お金の価値を痛感

春田氏の出身地は奈良県奈良市で、地元の中学校、公立高校を経て京都大学法学部に進んだ。1992年3月に大学を卒業し、4月から住友銀行(現三井住友銀行)に入った。「当時は学生の売り手市場でした。そのなかで私は積極的に、自宅の電話にかかってきた大学のOBと会って話を聞かせてもらっていました。学生時代から株式投資をやっていたので、そのうち、金融に興味が絞られてきたんです。どうせ行くなら厳しいところに行きたかったのと、すでに亡くなっていた父親の勤務先でもあったことから、住友銀行に決めました」

配属は京都の支店で、バブルの好影響を受けていた店舗だった。1992年といえばバブル崩壊の翌年。その影響を目の当たりにしたのは、窓口業務の補助を経て、同年10月、同支店の融資課に配属され、ローン担当になってからだった。

ローン残高が巨額な上に、住宅、カードローン含め、延滞金が山のように積み上がっていた。朝から電話をして入金の督促をしながら、通常のローン業務もあり、来店するお客様に対応した。その一方で、不動産売却の案件処理もあった。「お金が絡む話なので、間違いは許されません。ただ、お金がないことがいかに大変なことか、人生におけるお金の影響がいかに大きいかを学びました。社会人の最初にそれを学ばせてもらったのは非常に大きい」

その後、同支店で外回りの営業を担当する。「住友銀行の営業はとても厳しいんです。預金額に関する高い目標数値があって、それを懸命にクリアしていくと、翌期にはそれより高い目標数値が課される。その繰り返しです。しかも、個人だけではなく、支店の目標数値もあり、チームの目標が達成されないと評価されませんでした。この京都の3年間で私は社会人として生きていく大切な基礎を叩き込まれました。肉体的、精神的につらいことでも、めげずに取り組んでいると、耐性がついてきます。細かいことを気にせず、すぐに次のことを考えられる図太さも体得できました」

入社4年目の1995年夏、東京本部の証券企画部への転勤が決まった。最初の仕事は、金融規制緩和の流れのなか、今後、銀行が取り組む新規事業に関し、大蔵省(現財務省)あての申し入れなどを行うことだった。当時、他の都市銀行も仕事相手であった。各銀行の担当者が集まった場で議論された内容を社内に持ち帰り、関係部署から意見を聴取し、それらのまとめを再び提議し、各行の代表が大蔵省に申し入れをする仕組みだ。

投資信託の銀行窓口での販売(投信窓販)が解禁されたのが1998年12月だが、春田氏も住友銀行でのスタートに一枚噛んでいる。

インターネットの面白さに出合う

そうした矢先、春田氏はインターネットに出合う。「これは面白い、と思いました。インターネットバンキングについては住友銀行は他行に比べ、いち早く取り組んでいましたが、ネットを通じて金融商品を売るのは相当先だと思っていました」

1999年11月、新興企業向け株式市場の東証マザーズが創設され、若手を中心とした起業熱が上昇し、ベンチャー企業が次々に生まれていた。「銀行にいてもインターネットを事業にできるまでに時間がかかるはず。新しいベンチャーの世界に入ってみるのも楽しそうだと思ったのです。かといってすぐに起業を考えたわけではありません。銀行1年目で社会の厳しさを痛感し、お金や人をゼロから集める大変さが身に染みていました。だとしたら、一度ベンチャーで働いてみてから起業を検討してみてもいいのでは、と思ったのです」

転職先として選んだのは、南場智子氏率いる、ネットオークションサービスを開始したばかりのディー・エヌ・エーだった。入社は2000年2月で、社員数は20名に満たない小さな会社だった。上場を控えた公開準備室長という肩書だった。

入社2年目に実行した資金調達が苦しかったと春田氏。「いわゆるITバブルの崩壊直後で、南場さんつながりで各社のトップが投資の話を聞いてはくれるものの、現場同士の話になるとうまくいかない。お金を出してもらうための企画を考えても、どれも実らない。最終的に現場の人には最初にこう聞くようになりました。『上からこんな話が来ていると思いますが、本当に出資してもらえますか』と。そこから得た教訓として、双方にとって無駄な時間をなくすため、他者からの問いかけにはすぐに返事をすることを心がけています」

そのディー・エヌ・エーでは取締役会長にまでなるが、2015年6月に退任、エクサウィザーズの前身であるエクサインテリジェンスを2016年2月に立ち上げた。「2000年に銀行を飛び出した理由がインターネットだったのと同じ図式でした。AIが面白そうで、今後の技術の中心になるはずだと思ったからです。新しいテクノロジーが元々好きです。それも自分で探求し続けるタイプではなく、できる人、興味がある人を集めてやってみる。枠組づくりに関心があります」

そんな春田氏に座右の銘を聞くと、「そういうものはないが、言いたいことならある」と答え、続けた。「住友銀行のときもディー・エヌ・エーのときも、雇われているという感覚はまったくありませんでした。環境や人に恵まれ、自分のやりたいようにやらせてもらってきた感じです。特に銀行では、本部で仕事ができたことが大きかった。若い自分が企画したことであっても、機関決定されると銀行の全支店が決まった方向に一斉に動く。大企業の凄みがそこにあるんです。ディー・エヌ・エー時代も積極的に多くの大企業と提携しましたが、その際に銀行で培った力が大いに役立ちました。今やっていることが、今いる場所で成果を出すことが将来につながる。特に若い人には生き方や仕事のあり方を自分で決められる人生を送ってほしい。大変だけれど、面白いよと」

【text:荻野進介 photo:山﨑祥和】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.82 連載「Message from TOP 社会を変えるリーダー」より転載・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE
春田 真(はるたまこと)氏
株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 CEO

1992年京都大学法学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。2000年ディー・エヌ・エー入社。2011年12月横浜DeNAベイスターズのオーナーに就任。2016年2月エクサインテリジェンス(現エクサウィザーズ)設立。2017年10月代表取締役会長、2018年11月取締役会長、2023年4月より現職。

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