- 公開日:2026/03/26
- 更新日:2026/03/26
私たちリクルートマネジメントソリューションズは、60年以上にわたり人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を生かし、働く皆さんの意識・特性と、企業の人事施策の効果性を多面的に捉えるチャレンジをしています。昨年、企業の人材マネジメントの現状を把握し、今後の実践的なヒントを得ることを目的に「人材マネジメント調査2025」を実施。383社のアンケート結果から、事業推進に向けた「人材の最適化」を測っていくためには、採用による「人材獲得」と育成による「活躍支援」に加えて、「流動化」に取り組むことが重要であることを報告しました。
今回は、事業ポートフォリオの転換に合わせた人材の「流動」について掘り下げるべく、新たに335社から得たアンケート結果をもとに、施策や人事管理制度の有効な運用を検討していきます。
- 目次
- 調査の構造
- 調査結果① 水平異動による人材充足が特に課題か
- 調査結果② 「垂直充足把握」ができている企業は、人材を充足できている傾向
- 調査結果③ 職種によっては、「水平充足把握」ができていても充足が難しい
- 調査結果④ 「社内公募制度」はすべての階層の充足に有効か
- 調査結果⑤ 人事権の所在と社内公募制度の活用が水平異動実現に影響しているか
調査の構造
今回の調査では、事業ポートフォリオの転換にともなう人材の「流動化」に注目し、主に7領域における各社の取り組みを尋ねました(図表1)。
「成果」としては、社内登用によるマネジメント層の充足や、戦略的ポジションへの人材シフトの状況を確認しました。加えて、流動化を支える要因として、ポジション・人材の可視化、人材管理の方針と仕組み、実際の制度運用(登用・処遇・公募など)を確認しました。
これらをふまえ、どのような制度・運用が人材の流動性を高め得るのかを明らかにすることを目的としています。
<図表1>調査の構造

調査結果① 水平異動による人材充足が特に課題か
本調査では、流動化を垂直と水平の両軸で捉え、それぞれの結果指標として図表2の6項目を据えました。まず、垂直の結果指標として、各階層において社内登用による人材の充足状況を確認しました。その結果、課長・マネジャー層については「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した企業が約7割にのぼりました。経営層においても、同様の肯定回答が約6割を占めました。一方、水平の結果指標として、社内異動・登用によって不足している事業や機能の人材が充足できているか、そして事業や機能間での人材のリソースシフトがうまくいっているかを確認したところ、両指標ともに肯定回答は1~2割前後という結果でした。
なお、人材のリソースシフトとは、企業が抱える人材というリソースを、事業戦略や組織目標に合わせて戦略的に異動することを指します。一般的な人事異動と異なり、多くの場合、事業単位で大規模に人材を動かす点が特徴です。したがって、否定回答(「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」)を示した企業には、リソースシフトを必要としながら実現できていない企業と、現状ではリソースシフトを必要としていない企業の双方が含まれているであろうことにはご留意ください。
<図表2>結果変数の回答分布

調査結果② 「垂直充足把握」ができている企業は、人材を充足できている傾向
それでは、必要なポジションへの人員配置には、何が寄与するのでしょうか。前提として、そのポジションに人が必要である、ということが把握できていなければ、適正な配置は難しいのではないでしょうか。
この点を確認するために、垂直の人材充足について、「社内登用により、経営層からミドルマネジメントまで、マネジメント職務を担える人材の充足・未充足状況を把握できている」(以下、「垂直充足把握」)という項目とのクロス集計を行いました(図表3)。
すると、どの階層についても、「垂直充足把握」ができている企業ほど、人材を充足できている傾向にありました。ただし、全体の約7割が充足できていると回答していた課長・マネジャー層については、垂直充足把握ができていない企業であっても、半数以上が「充足できている」という結果が出ました。
しかし、「現状、必要な人材が充足できているから問題ない」とは言い切れない点には注意が必要です。昨今、管理職候補者の不足が、さまざまな企業において課題となっています。弊社調査においても、昇進・昇格に関連する問題意識として、「現在感じている問題」の2位に「管理職になりたくないという人が多い」(28.5%)、3位に「将来の管理職候補者が不足している」(26.1%)が挙げられました。また、「今後高まりそうだと感じる問題」の1位にも、「管理職になりたくないという人が多い」(28.5%)が挙げられています。
現時点で各階層の人材が充足していたとしても、中長期的な視点で見れば、次世代の候補者層を把握しておくことが重要です。例えば、将来的な部長層を担うであろう課長・マネジャー層の状況を把握しておくことで、採用や育成などの打ち手につなげていくことが可能になります。つまり、次世代も見据えた垂直充足把握が、持続的な組織運営の基盤になるといえるでしょう。
<図表3>垂直充足把握×垂直登用による人材充足のクロス集計

調査結果③ 職種によっては、「水平充足把握」ができていても充足が難しい
続いて、水平の人材充足について、「事業や機能、部署などの単位で、人材の充足・未充足の状況が把握できている」(以下、「水平充足把握」)という項目とのクロス集計を行いました(図表4)。水平の人材充足の確認にあたっては、特に人材確保に苦戦する企業が多い事業企画職・DX職・グローバルポジションに注目しました。
その結果、事業企画職については、水平充足把握ができている(「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」)場合、人材を充足できている傾向がみられました。他方、DX職・グローバルポジションにおいては、水平充足把握ができている場合であっても、人材を充足できていない状況がうかがえました。
特にDX職については、日本企業の多くがDX推進に取り組んでいるものの、人材が十分に充足されていません。経済産業省(2023)*1によると、企業がDXを推進するうえで必要なデジタル人材の確保・育成が十分ではなく、都市部やIT企業に人材が偏在しているのです。企業での社内教育や社会全体でのリスキリングなど、根強い育成が必要であると考えられます。
<図表4>水平充足把握×水平異動による人材充足のクロス集計

調査結果④ 「社内公募制度」はすべての階層の充足に有効か
ここまでで、垂直・水平の充足把握による、各ポジションの充足の程度の違いを確認しました。そして、把握することで一定の充足が叶うポジションもあれば、そうでないポジションもあると推察されました。時代と共に変わりゆく企業の戦略を実行するためには、その時々で垂直、水平双方で必要なポジションが充足されている状態が望ましいことはいうまでもありません。それでは、流動化による人材の充足を実現するためには、リソースシフトを実現するには、何が効果的なのでしょうか。
まずは、「人事管理の仕組み」に着目し、各制度の導入有無によって垂直の充足スコアにどのような差が生じるかを確認しました(図表5)。分析で取り上げた制度は以下のとおりです。
社内公募制度:社員が社内の別ポジションに自ら応募できる制度
サクセッションプラン:後継者育成計画。組織上重要なポジションの後継者の見極め、配置、育成
人材プール制度:職位や専門性に応じて、将来の候補人材をリスト化し、計画的に活用する制度
評価調整会議:主に昇格や処遇の適正化を目的とし、複数部署間で評価のばらつきを調整する会議
分析の結果、階層によって違いが見られました。
経営層では、「人材プール制度」および「社内公募制度」を導入している企業の方が、非導入企業と比べて充足スコアが有意に高い傾向にありました。ただし、サクセッションプランについては、10%水準の有意傾向にとどまりました。サクセッションプランは多くの場合、経営層の後継者選抜を目的に実施されるため、やや意外な結果といえますが、本調査では、「経営層の登用は、基準となる要件に照らして行われている」「経営層の登用は、登用を意思決定する人の考えで行われている」という2項目について、後者の方が肯定回答率が高いという結果も出ていました。他の階層では前者の方が高かったため、経営層に特有の傾向であるといえます。つまり、経営層の登用は、他の階層とは異なり、「鶴の一声」で決めることがあるがゆえに、サクセッションプランの有無が充足に影響しない場合も少なくないのだと考えられます。
一方、事業部長・本部長層では「人材プール制度」「社内公募制度」「サクセッションプラン」、部長層では「社内公募制度」「サクセッションプラン」が有意差を示していました。 さらに、課長・マネジャー層も含めたすべての階層で共通していたのは、「社内公募制度」は導入群の方が有意に充足スコアが高い、つまり人材を充足できている傾向にあったことです。自律的なキャリア選択を可能にするこの制度は、企業全体の人材配置の柔軟性を高める有効な手段といえるでしょう。また、社内公募制度によって直接的に当該ポストが埋まらなかったとしても、異なる部署や職種での経験が将来の登用につながる可能性があります。管理職はさまざまな異なる役割を果たすことが想定されており、異動はこれらの役割を学ぶことを促す(Mintzberg, 1973)*2といわれているためです。これらをふまえると、中長期的な影響も含めて、結果的に有意差が出ているのかもしれません。
一方、「評価調整会議」に有意差がみられなかったことは、運用の難しさが表れているものと推察できます。例えば、部署間での正規分布を目的とする評価調整が形骸化し、実際の成果や仕事ぶりを十分に反映しないまま処理されてしまう可能性があります。その結果、人員配置に有効な情報が得られず、制度が機能しづらくなっているのかもしれません。
<図表5>「人事管理の仕組み」導入有無による垂直登用実現スコアの違い

次に、水平の充足についても、「人事管理の仕組み」の観点から確認しました(図表6)。なお、図表5と同様の社内公募制度に加えて、以下の2つの制度も分析の対象としました。
自己申告制度:キャリア希望や職務異動希望などを定期的に人事部門に申告する制度
社内副業制度:所属部署以外の業務に一部従事することでスキルやネットワークを広げる制度
まず、「社内異動・登用により、不足している事業や機能の人材が充足できている」(以下、「水平異動実現」)については、社内公募制度および社内副業制度の導入有無で、群間の有意差がみられました。また、「事業や機能間での人材のリソースシフトがうまくいっている」(以下、「リソースシフト実現」)については、社内公募制度のみ群間の有意差がみられ、導入群の方が実現スコアが高い傾向にありました。この結果から、社内公募制度の導入が社内の人材流動の促進に効果的である可能性があらためて示されたといえます。社員が自発的に異動を希望できる仕組みは、企業全体の人材配置の柔軟性を高め、結果としてポジション充足に寄与していると考えられます。
また、社内副業制度についても、関心のある部署の兼務を通じて、今後のキャリアのイメージを具体化しやすくなります。その結果として、実際の異動後の適応やパフォーマンス向上にもつながりやすく、社内異動の増加に寄与している可能性があります。
<図表6>「人事管理の仕組み」導入有無による水平異動・リソースシフト実現スコアの違い

調査結果⑤ 人事権の所在と社内公募制度の活用が水平異動実現に影響しているか
最後に、「人事管理の運用状況」によって、充足スコアにどのような差が生じるかを確認しました(図表7)。
異動や登用に関する人事権の所在については、企業によって、人事部門が主導する場合もあれば、現場主導で行われる場合もあり、その運用には大きな差があるといわれています。そこで、「管理職の異動や登用の人事権は、人事が持っている」という項目に対する回答をもとに、「あてはまる群」(「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」)/「どちらともいえない群」(「どちらともいえない」)/「あてはまらない群」(「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」)の3群に分け、それぞれの水平異動実現スコアを比較しました。
その結果、管理職・非管理職のいずれにおいても、「どちらともいえない群」の水平異動実現スコアが最も高く、「あてはまらない群」との群間に有意差がみられました。また、「あてはまる群」と「あてはまらない群」の間にも統計的な有意差がありました。「あてはまる群」と「どちらともいえない群」の間には有意差がみられなかったため、やや解釈が複雑ですが、少なくとも異動や登用に関する人事権が人事部門にない場合、水平異動は実現していない傾向にあるといえそうです。
<図表7>「人事管理の運用状況」3群による水平異動実現スコアの違い①

そして、先ほどの分析で有効性が示唆された「社内公募制度」については、「制度はあるがほとんど活用されていない」という声もしばしば聞かれます。そこで今回は、制度の導入有無だけでなく、実際の活用状況による違いも確認しました。「社内公募制度が活用されている」に対する回答によって同様の3群に分け、それぞれの水平異動実現スコアを比較したところ、「あてはまる群」の水平異動実現スコアが最も高く、「あてはまらない群」との群間に有意差がみられました。また、「どちらともいえない群」と「あてはまらない群」の間には、10%水準の有意傾向が確認できました。
したがって、社内公募制度が活用されている方が、水平異動は実現している傾向にあるといえます。すなわち、制度の導入だけでなく、実際に運用・活用されているかどうかが、人材流動の実現に影響する可能性が示唆されているのです。
<図表8>「人事管理の運用状況」3群による水平異動実現スコアの違い②

「人事管理の運用状況」に関するこれらの結果は、多くの方々にとって想定内かもしれません。一方で、「それをやれば人材の流動は進むのだろうけれど、どうすれば実現できるのかが分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。後編では、まさにその問いに焦点を合わせて、深掘りしていきます。
*1 https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230807001/20230807001-b-1.pdf
*2 Mintzberg, H.(1973)The Nature of Managerial Work, Harper Collins Publishers Inc.
調査概要
調査名 | 企業内人材の流動化調査 |
|---|---|
調査目的 | 企業内での人材流動化をより進めるための実践的なヒントを共有するべく、人材管理や異動・配置の仕組み・運用を確認し、「流動化」に向けた促進要因となる人材マネジメントの方法を明かにする。 |
調査対象 | 各企業の人事責任者、または担当者 |
調査方法 | インターネット上でのフォーム回答による |
項目数 | 51問 |
実施時期 | 2025年12月1日~12日 |
有効回答数 | 335社 |
回答者の属性 | 建設・不動産・住宅メーカー9.6%、自動車・精密機器12.8%、素材・エネルギー8.4%、食品・医薬品6.6%、その他製造業11.3%、商社4.8%、金融・保険8.1%、通信・情報処理・ソフトウェアサービス11.0%、流通・小売5.4%、運輸・交通5.7%、その他サービス12.8%、水産・農林0.6%、官公庁・団体0.6%、その他2.4% |
従業員規模:1~500人未満23.0%、500~700人未満8.4%、700~3,000人未満30.1%、3,000~5,000人未満13.1%、5,000~10,000人未満13.7%、10,000人以上11.6% | |
備考 | %は小数点第2位で四捨五入されているため、文中・表中の数値を足し上げた値と合計の数値などが一致しない場合もあります |
執筆者

技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
研究員
大庭 りり子
民間企業および国立大学法人にて、人事・経営管理・研究推進業務等に従事。2023年より現職。機関誌『RMS Message』企画・編集および、各種調査・分析、転職活動/異動経験に関する研究を行っている。
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