調査レポート
新規学卒新入社員の成長実感に関する調査
「人と比べるな」は正しいアドバイス? ―社会的比較から読み解く新入社員の心理-
読了時間:10分
- 公開日:2026/03/23
- 更新日:2026/03/23
前回のレポートでは、新規学卒新入社員(以下、「新入社員」)の成長実感を軸に分析を行い、成長を実感していない人は転職意向が高いこと、配属後の環境や経験が新入社員の成長実感に関連することを報告しました。具体的には、メンターやOJTリーダーの有無が成長実感と関連しており、また、フィードバックの量や、自身の仕事が組織にどのように貢献しているかを説明されているかどうかによって、成長実感の程度が異なることが分かりました。さらに、配属先の職務特性も成長実感に影響を与える可能性が確認されました。なお、職種によって職務特性と成長実感の関係性(どういった仕事の特徴が成長実感を促進し得るのか)が異なる可能性も示唆されました。
今回のレポートでは、前回と同様に入社後約1年が経過した新入社員を対象に行った調査のデータを用いて、新入社員の心理状態について、「社会的比較」という概念を切り口に検討していきます。そして、前回のレポートで明らかになったこともふまえ、職務満足には何が寄与するのかを確認します。
- 目次
- 「人と比べる」「その際にネガティブな感情を抱く」新入社員は多い
- ネガティブな感情を伴う比較は心理的に悪影響を与える可能性がある一方、
社会的比較志向性が前向きな感覚や主体的な行動を後押ししている可能性もある - 「人と比べること=悪いこと」とは限らない
「人と比べる」「その際にネガティブな感情を抱く」新入社員は多い
「人と比べるな」というフレーズは、さまざまな文脈において、世間一般でしばしば耳にします。新入社員を励ますために、そういった声掛けをする方もいるのではないでしょうか。たしかに、「自分は他者と比べて成果を出せていないのではないか」「周囲から評価されていないのではないか」……と考えて苦しむよりも、まずは目の前の仕事に集中するべきだ、という考えは合理的に思われます。比較対象は、他社に就職した学生時代の同級生や、年次の近い先輩などいろいろなケースがあると考えられますが、代表的な対象として、同期社員が挙げられます。日本においては、新卒一括採用が主流であることから、同年度に入社した新入社員たちは「同期」として扱われ、集合研修や、場合によっては寮生活などを通じて連帯意識を育んでいきます。その結果として、他の同期社員と自分とを比べる、ということが生じるのは、ごく自然なことといえるでしょう。
こうした「人と比べる」ことは、社会心理学において「社会的比較」と呼ばれ、「自分と他者とを比較することの総称」と定義されています(Festinger, 1954)。この概念は、大学生以下を対象とした研究で多く取り上げられてきましたが、日本の企業における同期という概念は、学校組織の文脈を引き継いだものであると指摘されていることから(Sekiguchi & Ikeda, 2025)、新入社員の心理を理解するうえでも、手がかりとなり得る視点だと考えられます。そこで本調査では、「社会的比較感情」および「社会的比較志向性」に関する確認をしました。
最初に、社会的比較をした際に抱く感情である社会的比較感情について、外山(2006)を参考に、両側尺度の1項目にて簡易に確認を行いました。具体的には、「自分と同期社員を比較することに関して、あなたの考えはAとBのどちらに近いですか。【A】仕事の成果を比較して、もっと頑張ろうとやる気が出てくることがある【B】仕事の成果を比較して、自分はだめだと思って落ち込むことがある」と示し、「A」「ややA」「どちらともいえない」「ややB」「B」の5段階でたずねました(図表1)。結果としては、ポジティブな社会的比較感情であるA(「A」「ややA」)が29.0%、ネガティブな社会的比較感情であるB(「B」「ややB」)が42.4%と、自分と同期社員を比較する際、ネガティブな感情を抱く新入社員が相対的に多いことが分かりました。
※なお、社会的比較感情尺度(外山, 2006)は意欲感情(「もっと頑張ろう」など)、憧憬感情(「相手のようになりたい」など)、卑下感情(「落ち込む」など)、憤慨感情(「相手がにくらしい」など)の4つの下位尺度計18項目5段階から構成されており、本調査においては簡易な確認であることをご留意ください。
<図表1>社会的比較感情
自分と同期社員を比較することに関して、あなたの考えはAとBのどちらに近いですか。
<単一回答/n=379/%>

次に、自分と他者とを比較する傾向の個人差である社会的比較志向性について、社会的比較志向性尺度(Gibbons & Buunk, 1999)の邦訳(大久保ら, 2015)のうち、新入社員の状況と親和性が高いと考えた能力比較項目を用い(逆転項目を除く)、「あてはまる」(≒比較する傾向)~「あてはまらない」(≒比較しない傾向)の5段階でたずねました(図表2)。すると、いずれの項目においても、約半数~60%程度が肯定回答(「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」)であり、社会的比較志向性が高い新入社員が相対的に多いという結果でした。また、「自分のやり方が他人と比べてどうなっているのか、かなり注意を払っている」の肯定回答率がもっとも高く、結果だけではなくプロセスに関しても比較しているという傾向がうかがえました。この点は、育成やフィードバックのあり方を考えるうえでも、参考になるのではないでしょうか。例えば、先輩が若手だった時のやり方について共有することや、結果だけでなくプロセスについても褒めることなどが、新入社員の心に響く可能性があると考えられます。
<図表2>社会的比較志向性の各項目
以下の項目はあなたにどれくらいあてはまると感じますか。
<単一回答/n=379/%>

ネガティブな感情を伴う比較は心理的に悪影響を与える可能性がある一方、
社会的比較志向性が前向きな感覚や主体的な行動を後押ししている可能性もある
それでは、「人と比べる傾向が強い」こと、そして「人と比べる際にネガティブな感情を抱く」ことは、悪い影響を及ぼしているのでしょうか。これを確認するため、まずは、社会的比較感情の種類によって、新入社員の心理状態に違いがあるのかを検討しました。具体的には、ポジティブな社会的比較感情(「もっと頑張ろう」)を抱く傾向にある「ポジティブ感情群」(「A」「ややA」)/ネガティブな社会的比較感情(「自分はだめだ」)を抱く傾向にある「ネガティブ感情群」(「B」「ややB」)/「どちらともいえない群」(「どちらともいえない」)の3群で、各変数の違いを確認しました(図表3)。
各変数としては、前回のレポートで重要性が確認できた「貢献感」「成長実感」、そして結果指標としていた「転職意向」のほか、若年就労者の職務満足に対して効果のある変数(星, 2016)とされている「プロアクティブ行動」(「個人が自分自身や環境に影響を及ぼすような先見的な行動であり、未来志向で変革志向の行動」<Grant & Ashford, 2008/尾形, 2016>)の下位尺度である以下の4点(尾形, 2016)を選びました。
- 革新行動:古いやり方などに固執せず、積極的に新しいアイディアを提案したり、実行したりする行動のこと
- ネットワーク構築/活用行動:組織内の他者と広い関係性を構築し、そのネットワークから得られた情報を仕事に活かす行動のこと
- ポジティブフレーミング行動:ネガティブな現状をポジティブに捉え行動すること
- フィードバック探索行動:自分自身の仕事や役割に対するフィードバックを上司や同僚、仕事それ自体から積極的に求め、そこから仕事や会社に関する多様な情報を得て、内省する行動のこと
その結果、転職意向以外のすべての変数において、ポジティブ感情群がネガティブ感情群と比べて統計的に有意に高い得点を示しました。つまり、ポジティブな社会的比較感情を抱く傾向にある新入社員の方が、ネガティブな社会的比較感情を抱く傾向にある新入社員よりも、貢献感や成長実感を抱きながら働けており、また、さまざまな主体的行動ができているということです。一方で、転職意向については、群間で統計的に有意な差はみられませんでした。
<図表3>「社会的比較感情」3群による各変数の違い

続いて、社会的比較志向性の高低群(尺度得点を中央値で分割)による各変数の違いを確認しました(図表4)。その結果、ポジティブフレーミング行動を除くすべての変数で統計的な有意差があり、いずれも社会的比較志向性高群の方が高得点でした。
すなわち、社会的比較志向性が高い新入社員の方が、貢献感や成長実感を抱きながら働けており、また、多くの主体的行動ができている可能性が示されました。これは「人と比べるな」というアドバイスとはある種矛盾する、興味深い結果ではないでしょうか。加えて、社会的比較志向性については転職意向にも統計的な有意差がみられ、こちらも高群の方が高得点でした。
<図表4>「社会的比較志向性」高低群による心理変数の違い

なお、「社会的比較感情」3群と「社会的比較志向性」高低群の2要因の分散分析を行ったところ、成長実感(F(2, 373)=3.588, p=.029)、ポジティブフレーミング行動(F(2, 373)=3.024, p=.050)、フィードバック探索行動(F(2, 373)=3.664, p=.027)において交互作用が有意でした。
また、成長実感は、どちらともいえない群およびネガティブ感情群において社会的比較志向性の単純主効果が有意でしたが(ps < .05)、ポジティブ感情群では有意ではありませんでした。ポジティブフレーミング行動では、ネガティブ感情群においてのみ社会的比較志向性の単純主効果が有意でした(p = .041)。フィードバック探索行動では、どちらともいえない群およびネガティブ感情群において社会的比較志向性の単純主効果が有意でした(ps < .001)。
一方、貢献感、転職意向、革新行動、ネットワーク構築/活用行動については交互作用は有意ではありませんでした(Fs(2, 373) = 0.863–2.465, ps = .086–.423)。主効果については、革新行動およびネットワーク構築/活用行動では社会的比較志向性と社会的比較感情の両方が有意であり(ps < .01)、貢献感では社会的比較感情のみが有意でした(p < .001)。一方、転職意向ではいずれの主効果も有意ではありませんでした。
これらの結果は、社会的比較志向性が新入社員の心理や行動に及ぼす影響は、比較する際の感情によって異なる可能性を示唆しています。ネガティブな感情を伴う比較は心理的に悪影響を与える可能性があるものの、社会的比較志向性そのものは、前向きな感覚や主体的な行動を後押ししている可能性があるのです。
さまざまな方向の因果が考えられますが、他者との比較によって「負けたくない」といった感情が芽生え、行動の原動力となることや、その結果として貢献感や成長実感が高まる可能性も考えられます。ただし、比較が落ち込みにつながる側面もあるがゆえに、転職意向が高まるのかもしれません。
「人と比べること=悪いこと」とは限らない
前回のレポートでも総括したように、新入社員に喜びを感じ、前向きに過ごしてもらうためのヒントを得ることが、本調査のねらいでした。前回は成長実感を結果指標として用いましたが、今回は、その成長実感をも含めて、ここまでで確認してきたさまざまな指標が、総じて、新入社員が前向きに働くことに寄与しているのかどうかを確認するために、職務満足を結果指標とした分析を最後に報告します。
まず、各変数間の相関係数を確認したところ(図表5)、貢献感(r = .63)や成長実感(r = .52)をはじめとして、すべての変数と有意な相関がみられました。なお、社会的比較感情は「A」=1~「B」=5の5件法でたずねているため、負の相関(r =-.51)であったことは、すなわちネガティブな社会的比較感情を抱く傾向にあるほど、職務満足が低い傾向にあったことを示しています。
<図表5>各変数間の相関係数

職務満足との相関係数が過度に高い変数はなかったことをふまえ、職務満足を従属変数とした階層的重回帰分析を行いました。
まず、統制変数(年齢・性別)および社会的比較志向性・社会的比較感情を投入しました(Step1)。その結果、説明力は調整済みR²=.286であり、回帰モデルは有意でした(p<.001、以下同様)。そして、社会的比較感情が有意に負の影響を示しました(β=-.475, p<.001)。
次に、プロアクティブ行動(革新行動~フィードバック探索行動)を追加しました(Step2)。説明力は調整済みR²=.419となりました。追加で投入した変数のうち、ネットワーク構築/活用行動およびフィードバック探索行動が有意な正の影響を示しました(それぞれβ=.207, p<.001;β=.208, p<.001)。
最後に、貢献感・成長実感を追加しました(Step3)。説明力は調整済みR²=.506まで向上しました(図表6)。貢献感(β=.270, p<.001)および成長実感(β=.230, p<.001)は、いずれも有意な正の影響を示していました。なお、社会的比較志向性はStep1では有意な正の影響を示しましたが(β=.134, p=0.002)、Step2・3では非有意でした。
総括すると、ネガティブな社会的比較感情を抱くことが職務満足を下げ、貢献感・成長実感といったポジティブな感覚やネットワーク構築/活用行動・フィードバック探索行動が職務満足を高めることが示されました。前回のレポートでは、上司や先輩からたくさんフィードバックがもらえる仕事だと成長実感が高い傾向にあると報告しました。今回の結果と併せて考えると、やはり、自らフィードバックを含む情報や、それを与えてくれる関係性をつかみにいくことが、働くことの満足度を高めることにつながるのでしょう。もちろん、それが自発的にできる新入社員ばかりではありませんが、上司や先輩に「自分の仕事がどのように組織や同僚に貢献しているのか」を説明してもらっている人の成長実感は高い傾向にある、という結果が前回のレポートで示されています。貢献感についても、同様の傾向です。つまり、積極性に欠ける新入社員であっても、上司や先輩の働きかけ次第で、十分に貢献感・成長実感をもち、結果として高い職務満足を感じながら働くことは可能であると考えられます。
ここで注目したいのは、社会的比較志向性が職務満足に対して有意な影響を示さなかったという点です。すなわち、「人と比べる傾向があるかどうか」は、職務満足には直接的な影響を与えないと解釈できます。群別の分析からも示唆されたように、やはり、「人と比べること=悪いこと」とは限らないのだといえましょう。
<図表6>職務満足を従属変数とした重回帰分析 <n=379>

本稿では、社会的比較という概念を軸に、新入社員の心理について考察を行いました。多くの場合、横並びでスタートする新入社員は、比較の機会が多く、羨望や嫉妬が生じやすいと考えられます。無意識に人と比べてしまう自分に悩む新入社員もいれば、そのような新入社員にどう手を差し伸べていいか分からず困る上司や先輩もいるかもしれません。どちらの立場においても、社会的比較志向性や、社会的比較の際に抱く感情が与える影響の違いを理解することが大切です。特に上司や先輩は、「人と比べること」自体をむやみにやめさせようとするのではなく、それを前向きに生かす関わりこそが求められているといえましょう。
<調査概要>新規学卒新入社員の成長実感に関する調査

<参考文献>
Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human relations, 7(2), 117-140.
Grant, A. M., & Ashford, S. J. (2008). The dynamics of proactivity at work. Research in organizational behavior, 28, 3-34.
Sekiguchi, T., & Ikeda, M. (2025). The Informal Structure of Senpai (Seniors), Kohai (Juniors), and Doki (Peers) in Japanese Organizations. Encyclopedia, 5(2), 49.
尾形真実哉. (2016). 若年就業者の組織適応を促進するプロアクティブ行動と先行要因に関する実証研究. 経営行動科学, 29(2_3), 77-102.
星かおり. (2016). 若年就労者の仕事満足に対するプロアクティブ行動の効果についての検討. パーソナリティ研究, 25(2), 123-134.
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執筆者

技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
研究員
大庭 りり子
民間企業および国立大学法人にて、人事・経営管理・研究推進業務等に従事。2023年より現職。機関誌『RMS Message』企画・編集および、各種調査・分析、転職活動/異動経験に関する研究を行っている。
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