新人育成OJT実践のポイント 職場ぐるみで新人を育成する

この数年、企業が新卒採用者数を増やしたことに伴い、弊社には新卒の育成担当に関する相談が多く寄せられています。中でも「育成担当はつけたものの、現場で機能していない」「育成担当制度を作ったけれど、現場で運用できずに形骸化してしまった」「育成担当からの文句や愚痴が多く、前向きに取り組んでもらえない」といった問合せが多くなっています。

企業人の能力のうち70%以上は「職場での経験」、すなわちOJT(On the Job Training)を通じて開発されると言われています。新人育成においても、職場で仕事を通じて育てていくことは極めて重要なことと考えられます。そこで今回は、多くの企業で今になってなぜ『OJTリーダー制度』が見直されているのかといった現状と、これからの新人育成のあり方について考えていきたいと思います。
※ここでは、育成担当・メンター等の新人の育成担当をOJTリーダーと呼びます。


新人と職場を取り巻く現状

■新人の採用難易度の高まりと早期離職の増加

ご存知のとおり、近年の求人総数はバブル期を超え、求人倍率は2倍を超えています。さらに、大学卒業後に進学する割合が増加していることや、この年代の人口そのものが減少していることを考えると、優秀な人材の獲得競争は熾烈な状態にあると言えます。
人材の流動化が進む中で、『第二新卒』という言葉も生まれました。いまや大卒者の3人に1人は3年以内に離職するという実態があります。これから活躍してもらいたいと思うこの時期に新人・若手が離職してしまうのは残念なことでもありますし、経営的なリスクであるとも言えます。この傾向には、若手の仕事観の変化も大きく影響しています。「自分自身が意義を感じられる仕事か」「その仕事を通じて成長できていると感じられるか」「入社後の教育体系や職場での新人の支援体制が整っているか」を重要視する学生が増え、入社後の体制をきちんとつくり上げることが企業にとっての採用ブランドにも繋がっています。

このように、多くの企業にとって優秀な人材獲得と定着は困難を極めています。それは企業が大事にしたい価値観を継承することを難しくさせ、ひいては企業の成長に大きな影響を与えることになります。

■新人に対する早期戦力化のプレッシャー

こういった新人の現状の中で、「できる限り早く戦力化してほしい」ということが今の新人への期待です。以前は、5年程度で一人前になってほしいという時間の中で、新人は新人にふさわしい仕事の役割を担い、一喜一憂しながら成功体験を積み重ねてじっくりと成長することができていました。しかし、今は3年で一人前、早い企業であれば1年で一人前になるという期待のもとに、失敗が許されない仕事をこなさなくてはならない状況にある新人が多く存在します。そのため、本人の資質や努力だけでは成果をなかなか上げられないという事態が起こっています。

■新人育成の協力を引き出しにくい職場の状況

しかしながら、職場の協力態勢は必ずしも十分ではありません。
「失われた10年」という言葉をよく耳にしますが、バブル崩壊以降、多くの企業が極端な成果主義にシフトし長期的な観点で人を育てることを怠り、さらには採用数を控えたため、そもそも人を育てる機会が減少してしまいました。そのため、現在のマネジャー層にあたる人はもちろんのこと、OJTリーダーに任命される20代後半から30代前半の若手・中堅社員の中には、育成された経験も育成した経験もほとんど持たずに、自分ひとりでがんばってきたと感じている人が多く存在します。育てられた経験のほとんどない人が初めての人材育成を手探りで行うことは難しく、「なぜ今になって自分が新人を育成しなくてはならないのか」という声が出ることもあります。OJTリーダーに任命されるのは、多くが現場の中核を担っている業務負荷の高い人たちです。そんな彼らが手間のかかる割に成果が見えづらい人材育成に仕事の優先順位を上げて取り組むには、相当の覚悟と自分自身による意味づけが必要となるでしょう。

さらに、職場の環境も新人育成を困難にしていると言えます。かつては、先輩社員は電話で顧客と話をし、手書きで企画書を作成していました。しかし、現在ではパソコンを使う頻度が高くなり、新人から見れば、先輩社員が何をして仕事の成果を上げているのかが見えにくい状況にあると言えます。また、業務が細切れであることが多く、先輩と一緒に同じ仕事を担う機会も減っているため、先輩社員を手本にして真似しながら学ぶことも難しくなっています。

各社の取り組み状況と起こりがちな問題

ここで、何社かのOJTリーダー制度における取り組みについてご紹介したいと思います。

上記3社に共通した職場の問題は、上司、職場メンバーが新人を育てることに対して、優先度を上げることができていないということでした。こうした状況は多くの企業で起こりがちであり、OJTリーダー制度自体は以前から存在していても、現場が本気にならないために形骸化しているという問題があります。また、OJTリーダー制度で取り組んだ内容と結果を見ると、以下のような問題がOJTリーダー制度の実行を困難にしていると言えます。

<企業で起こりがちな問題>
1.職場ごとにバラバラな育成をしている
・会社としての育成目標・成長プロセスが不明確である
・計画的な育成の仕組みがない
2.職場の育成に関するコミットが低い
・上司の育成への意識が低い
・職場メンバーの協力が得られない
・OJTリーダー自身がやらされ感で行っている
3.現場任せになっている
・育成に対して、経営陣のコミットが得られていない
・育成を評価対象に組み込むことができていない
・場で人を育成するという風土が失われている

OJTリーダー制度をうまく機能させるポイント

こうした状況下で、OJTリーダー制度をうまく機能させていくためには、大きく3つのポイントがあると考えます。

1.全社で一貫性のある育成を行う

そもそも新人育成は全社の取り組みとなります。そのため、各部署がバラバラな育成を行うのではなく、全社でどのように新人を育てていきたいのか、育成計画や育成方針が一致している必要があります。特に、新人の「育成目標」を明確にし、さらには職場の上司やOJTリーダーにとって目安となる「新人の成長プロセス」が明示されると、職場では取り組みやすくなります。

また、長丁場な取り組みでもあるため、具体的な実施計画やそれに伴う育成用計画シートも重要な役割を果たします。最初に実施計画を立てるだけでなく、節目でOJTリーダーや新人が振り返ることができる育成用計画シートが伴って初めて新人の成長度合いを確認でき、上司やOJTリーダーは計画的に育成を進めることができます。

2.職場ぐるみで育成を行う

OJTリーダー制度を運用すると、OJTリーダーに新人育成を任せっきりにしてしまう職場が多く見受けられます。しかし、上司には新人の育成責任があることはもちろん、OJTリーダーに任命される中堅社員の業務負荷も高いことや、新人と異なる業務を持っている場合もあります。そのため、あらためて上司の育成へのコミットを確認するとともに、上司からOJTリーダーに対して期待する役割をしっかりと伝えておくことがまず必要となります。さらには、上司が新人の育成目標や育成方針を職場メンバーと共有する機会を持ち、職場メンバーの協力を引き出すことも重要です。こうした土壌があって初めて、OJTリーダーは自分の役割を担う構えができ、主体的に取り組むことができます。

新人にとっても、意欲的に仕事に取り組むためには、まずその職場にいて安心できることが大切です。そう考えると、職場全体で新人育成をしていく場をつくることが大事であり、そういった職場を醸成していくための取り組みを上司やOJTリーダーが率先して行うことが期待されています。

3.OJTリーダーの実行を支援する体制を整える

会社(経営)が短期業績ばかりに目を向け、育成に関する優先順位が低いと、たとえ職場全体で新人育成を行っていこうとしても継続することは困難です。全社で推進していくという強い意思を経営陣が示すことで、現場は迷いなく前進することができます。そのためには、経営陣(特にトップ)を巻き込み、節目節目で考えを発信していただくことが大切です。また、人事制度にOJTリーダーの役割や報酬を盛り込むことや、人事評価に反映させていくことも有効です。最後に、現場で困った時に相談できる場が確保され、他のOJTリーダーたちと情報共有できる仕組みをつくっていく支援組織があることもOJTリーダーにとっては強い味方となります。

新人育成をきっかけとして職場の育成力を向上させる

OJTリーダー制度に対する取り組みは、新人の育成目標の実現をねらいとしているということは言うまでもありません。しかし、この取り組みはそれだけにとどまらず、OJTリーダー自身の成長を促す機会としても非常に有効です。新人の育成を通じて、OJTリーダーは自分のこれまでの仕事の仕方を棚卸しでき、人を通じて仕事の成果を上げていくことを身をもって学ぶことができます。この機会に意味を感じさせられるかどうかはまさしく上司の役割でもあり、ぜひ上司にも部下が人材育成を通じて成長する様を感じてもらいたいと考えます。

私たちは、この取り組みの継続そのものが、上司や職場メンバーの育成に関する知識・スキル・姿勢を習得することにつながり、職場全体の育成力向上を図ることができるきっかけになると考えています。新人育成という機会を、ぜひ職場メンバーが互いに関心を持ち、共に育て合う職場づくりを視野に入れた取り組みとしてとらえてみてはいかがでしょうか。

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