連載・コラム
新たなステージに挑戦する「菓子と機械のプロ集団」マスダックの経営者が、次世代経営リーダーを育成するためのCES【前編】
受け身だった次世代層が「自分たちが会社を変える」と語るまでになった
読了時間:10分
- 公開日:2026/09/14
- 更新日:2026/09/14
次世代経営リーダー育成は、多くの企業にとって重要な経営課題の1つであり続けています。なぜなら、次世代経営リーダー候補者たち(主に本部長・部長・課長層)の行動変容や意識変容を起こすことは簡単ではないからです。私たちリクルートマネジメントソリューションズは、コミュニケーションエンジニアリング・サービス(以降CES[セス])を通して、次世代経営リーダー育成に取り組んでいます。CESは、「コミュニケーション」という新しい視点と「実践」を意識したサービスで経営者育成の課題を解決します。
本記事で紹介するマスダックは、従業員300人規模の企業です。この規模の会社のなかにも、次世代経営リーダー育成の課題を抱える会社が少なくありません。マスダックの代表取締役社長・奥田信夫氏は、なぜ多数の選択肢のなかからCESを選んだのでしょうか。奥田氏と対象者たちはCESをどのように体験し、効果や変化を感じているのでしょうか。そしてCESの対象者たちの変化は、ビジネスにどういった影響をもたらしているのでしょうか。
弊社エグゼクティブコミュニケーションエンジニアの伊藤が、社長である奥田氏と、本取り組みの対象となったお2人にインタビューして伺ったお話を、前後編の2回に分けてお送りします。前編は奥田氏へのインタビューです。
●対談者紹介
奥田信夫氏
株式会社マスダック 代表取締役社長
伊藤智尚
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブコミュニケーションエンジニア
- 新たなステージに挑戦する「菓子と機械のプロ集団」マスダックの経営者が、次世代経営リーダーを育成するためのCES【後編】
- 「全社の事業戦略を構想し、戦略課題を決断、牽引する存在」へ
- 新たなステージに挑戦する「菓子と機械のプロ集団」マスダックの経営者が、次世代経営リーダーを育成するためのCES【前編】
- 受け身だった次世代層が「自分たちが会社を変える」と語るまでになった
- 目次
- 事業変革を一定程度実現し、次に考えたのは「次世代経営リーダー育成」
- 対象者の「実践」を重視し「長期間伴走」してくれる点が決め手
- CES中盤から、対象者たちが「自分主語」「全社視点」に変わった
- 序中盤で経営者視点を学び「経営者の決断を追体験したこと」が効果を発揮
- 戦略課題推進プロジェクトを対象者自ら立ち上げた
事業変革を一定程度実現し、次に考えたのは「次世代経営リーダー育成」
伊藤:最初に会社紹介をお願いします。

奥田:私たちマスダックは、1957年創業の「菓子と機械のプロフェッショナル集団」です。どら焼き、蒸しケーキ、型焼きケーキ、タルトなどの菓子製造機械・一貫製造ラインを開発提供する食品機械事業と、「東京ばな奈(※)『見ぃつけたっ』」をはじめとするお客様の菓子をOEMで受託製造する食品製造事業の2つを展開しており、両事業のシナジー効果を最大化することで事業競争の優位性を磨いてきました。お客様の菓子の商品・レシピ開発から、機械・ライン開発や菓子OEM製造まで、菓子の開発製造に関するソリューションをワンストップで提供できるのが、私たちの大きな特徴です。なお、従業員数は307人(2026年6月時点、パート・アルバイト除く)です。
※「東京ばな奈」は株式会社グレープストーン社の登録商標です。
伊藤:続いて、奥田さんがマスダックの経営に参画された経緯もぜひご紹介ください。
奥田:私は2020年10月にマスダックに入社し、2022年から代表取締役社長を務めています。ご存じのとおり、2020年にコロナ禍が始まりました。マスダックはお土産品の菓子を多く取り扱っていることもあり、コロナ禍には売上が急減し、未曽有の経営危機を迎えました。そのタイミングで、私は先代社長の増田文治から企業変革と経営人財育成を託され、社長に就任したのです。
伊藤:今回、私たちがCESを提供したのは2025年からですが、なぜそのタイミングで次世代経営リーダー育成に本腰を入れたのでしょうか?
奥田:私は危機であればあるほど燃えるタイプですから、入社後すぐに経営改革に乗り出しました。まずは緊急止血プロジェクト「WM(ホワイトマスダック)2021」を立ち上げ、2021年に赤字を脱却して黒字化を達成。また、翌2022年の社長就任後には中期経営計画を打ち出し、「フードマニュファクチャリングサービス」「機械・OEM・サービスの三位一体」「グローバル事業の拡大」の3つを基本戦略として2030年計画を策定しました。そのうえで「GM(グローイングマスダック)2025」プロジェクトを立ち上げて、本部長や部長たちに中期成長戦略を自ら立案・実行してもらったのです。
このような取り組みにと、市場環境が元に戻ったことも追い風となって、2024年には事業変革をある程度まで実現し、業績V字回復の目途が立ちました。そこで、次は次世代経営リーダー育成に本気で取り組もうと考えたのです。
対象者の「実践」を重視し「長期間伴走」してくれる点が決め手

伊藤:次世代経営リーダー育成のサービスはいくつもありますが、そのなかからなぜCESを選ばれたのでしょうか?
奥田:マスダックでは、実は私が入社する前にも次世代経営リーダー育成研修を実施していました。ところが、その研修で受講者たちがつくったのは、実現性の低い青写真の新規事業プランにすぎませんでした。「こういうことを実現できたら嬉しい」という事業アイディアを考える研修だったのです。言葉は厳しいですが、経営者から見ると「まるでお花畑のようだ」と感じ、このような研修では大きな効果は上がらないと考えました。
私が求めていたのは、次世代経営リーダー候補の本部長・部長・課長たちが、自ら手を挙げて主体的に事業変革に取り組むようになる研修サービス、そして本気で実行するための新規事業案を生み出すようになる研修サービスです。その視点でいくつかのサービスを調査し、最も好印象だったのがCESでした。
伊藤:具体的にCESのどのような点に魅力を感じたのでしょうか?
奥田:まず1つ目に、「事業戦略推進の実践」を重視したサービスが魅力的でした。なぜなら、弊社の次世代経営リーダー候補たちは実務型で、経営戦略や事業戦略の立案推進はこれまで先代社長に任せっきりだったからです。彼らは、指示されたことを真面目かつ一生懸命にやりきる力は高いのですが、自分の力で事業戦略を立案し実行した経験はほとんどありません。ですから、まずは主体的に事業戦略を作り上げ、自ら実行する経験を積んでもらう必要がありました。CESが「事業・経営リーダーは実践での決断・実行なくして育たない」という考えのもと、対象者たちの実践を支援してくれるサービスだと分かり、今のマスダックにフィットすると感じたのです。
2つ目に魅力的だったのは、「長期間伴走」してくれる点です。今お伝えしたとおり、私は次世代経営リーダー候補たちの主体性向上を求めておりました。それを一度きりの研修で実現できるとは思っていませんし、彼らの受け身体質を変えるためには、専門家に一定期間伴走してもらうことが欠かせないと考えています。CESはいくつかの研修セッションがあり、その間に適宜1on1が入る継続的なプログラム(図表1)だと知り、これなら本当に彼らが自ら考えて動ける人財になりそうだと感じました。
最後に「経営者との対話」を大切にしてくれる点も好印象でした。次世代経営リーダーを育てるためには、経営者の私自身のコミットが欠かせません。ですから、私と頻繁に話し合いながら研修サービスを進めてくれる専門家を求めていました。伊藤さんと何度か対話して、この人なら信頼して任せられると思ったのです。
〈図表1〉CES次世代経営リーダー育成の標準プログラム

CES中盤から、対象者たちが「自分主語」「全社視点」に変わった
伊藤:そうして19カ月間にわたるCES(社内名称は、ELT[エグゼクティブリーダートレーニング])がはじまり、最終的に対象者11人が卒業しました。その間、奥田さんは彼らの変化をどのように見ていましたか?

奥田:私はほぼすべてのセッションをオブザーブしましたから、彼らがどのような経験をして、どう変化したのかをよく知っています。CES以前は、多くの者が「会長/社長がこう言っていた」と会長/社長を主語として語るのが普通で、自部門の話ばかりしていました。つまり、彼らは会長/社長主語(=受け身体質)で自部門視点だったのです。
ところが、CES中盤から主語が変わり始めました。対象者全員が「自分はこう思う/考える」と自分主語で語るようになっていったのです。同時に自部門についての話が減り、皆がマスダック全体のことを考えながら議論するようになりました。そして最終的には、お互いに「自分たちが会社を変える」と語り合うまでになったのです。この「会長/社長主語→自分主語」「自部門視点→全社視点」の変化は劇的でした。
食品機械事業本部、食品製造事業本部、マネジメント統括本部の3部門の「サイロ化」は、以前からの組織課題でした。特に食品機械事業と食品製造事業のビジネスが異なるため、両部門間のコミュニケーションが少ないことが問題になっていたのです。ところが、今回のCES対象者たちの部門間の壁はほとんどなくなりました。CESを通じて全社視点で語り合うチームになったからです。彼らのコミュニケーションが活性化したことで、3部門のサイロ化も解消されつつあります。全部門の次世代経営リーダー候補たちがCESに集結したことが大きなメリットにつながりました。
冒頭でお話ししたとおり、「菓子と機械のプロフェッショナル集団」であることが私たちの強みであり、両事業のシナジー効果の最大化が事業成長には欠かせません。CES対象者たちが議論を重ねるなかで、そのことを再認識・再選択してサイロ化の解消とシナジー効果の最大化に向かってくれたことが嬉しかったです。この変化によって、彼らと私は初めて同じ視界で議論できるようになりました。
序中盤で経営者視点を学び「経営者の決断を追体験したこと」が効果を発揮

伊藤:CESでこのような変化が起きたのはなぜだと思いますか?
奥田:一言で言えば、経営者視点を得て、経営者の覚悟や本気度を深く理解したからだと思います。CESは、さまざまな角度から経営者視点を学び体感するプログラムでした。
例えば、「経営者と企業を見るメガネプログラム」では、理論的に経営者の“メガネ”をかけて、経営者視点とはどのようなものかを体感できます。特に同プログラムの「ケーススタディ」では、対象者たちがある企業の経営者になりきって、正解のない状況で退路を断って重要な決断を下すことを追体験できるのです。この追体験を通じて、彼らは経営者がどれほどの覚悟を持って決断しているかを肌で感じることができたようでした。
さらに、「自社戦略の構想・決断セッション」でマスダックの社史を追体験したことも大きな転換点です。もちろん、彼らは創業者の増田文彦、先代社長の増田文治のことを以前から知っています。しかし、この2人が経営者として、どのような状況で、どういった想いを持って、どういう決断をしたのかを経営者視点で追体験したことはありませんでした。この追体験を通して、彼らはこの2人の経営のあり方や迫力を深く感じ取ったのではないでしょうか。
序中盤のこのようなプログラムを経て、彼らは自分なりに「自分主語」と「経営者視点(全社視点)」の大切さを頭と身体の両面から理解し、当事者意識を高めて、主体的に変わっていったようです。ちなみに、CES全般にいえるのですが「模造紙に書く」といったアナログ的な手法がちりばめられている点も素晴らしいと感じました。こうしたアナログ体験がグループ討議に手触り感を醸し出し、深みのある議論や意見交換につながったように思えます。
戦略課題推進プロジェクトを対象者自ら立ち上げた
伊藤:まだCESが終わったばかりですが(取材時は2026年6月)、現時点でどのような成果が出ていますか?
奥田:今回のCES対象者全員が、全社視点・経営者視点に立って、それぞれ主体的に考えて行動を起こし始めました。例えば、ある戦略議論のなかで新技術への挑戦を言い出し、戦略課題推進プロジェクトを自ら立ち上げた者もいます。彼は、まさに私が望んでいたことに取り組んでくれています。
また、別の者たちは「3部門が力を合わせれば、このお客様にこんな新しいアプローチができるのではないか」といった議論を積み重ねてくれています。CES以前は、彼ら全員が基本的に待ちの姿勢、受け身の姿勢でした。それを考えると本当に大きな変化です。もちろん、真の事業・経営リーダーになるためにはさらなる実務経験や研鑽が必要ですが、それぞれが一段、二段と成長したことは確かです。
伊藤:最後に今後の展望を教えてください。

奥田:2026年6月、私たちマスダックはマブチモーターグループに参画しました。同グループのグローバル展開力やものづくり力は卓越しており、そのアセットを活用することで私たちは事業成長を加速できると考えています。しかしそのためには、私たちがうまく協業することが欠かせません。各部門がマブチモーターグループの皆さんに対して、自ら事業戦略を語り、積極的に行動を起こすことが強く求められるのです。
当然ながら、その最前線に立つのはCESの対象者たちです。つまり、彼らはCESの学びを実践し、真のリーダーとなる良い機会を得たわけです。今回の経験を生かし、しっかりと実践してもらいたいと思います。今後は、CESチームが中心となってマブチモーターグループの皆さんと力を合わせ、会社を変革してくれると信じています。
前編では、奥田社長の視点から見た、CES対象者の変化や、それを受けての展望などを伺いました。後編は実際にCESの対象となったお2人にインタビューした記事をお送りします。
CESのサービス紹介資料をご用意しています。
フォームから30秒でお申込みが完了しますので、
この機会に是非ダウンロードください。
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