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次世代経営人材が生まれづらい5つの構造的理由②

企業支援から見えた突破口

読了時間:4

  • 公開日:2026/08/17
  • 更新日:2026/08/17
企業支援から見えた突破口

前回は、制度・仕組みがあっても次世代経営人材が生まれない5つの構造的問題を解剖しました。本稿では、その根本原因に対する実践的な突破口を、企業支援の現場から得た知見とともに紹介します。

本シリーズ記事一覧
次世代経営人材が生まれづらい5つの構造的理由②
企業支援から見えた突破口
次世代経営人材が生まれづらい5つの構造的理由①
制度・仕組みあり、次世代経営人材不在
実践編——3つの論点を「打ち手」に落とし込む
要件定義の再考——「先々を見据えた要件」とは何か
弊社が提言する「全体視界」——5つのステップで経営継承を設計する

実践編——3つの論点を「打ち手」に落とし込む

前回明らかにした5つの構造的問題とは、①要件設定のズレ、②育成とサクセッションの分断、③候補者への非開示、④覚悟醸成の欠如、⑤そして論点そのものの誤りでした。このうち、①④⑤は、互いに深く連動しています。本パートでは、この3つに対する実践的な突破口を、弊社の支援現場から得た知見と共に解説します。

なぜ「ポストオフ・ポストオン」は進まないのか

ポストオフ・ポストオンが進まない背景には、現職者と次世代候補の双方に根深い障壁が存在します。現職者は役割喪失への不安から無意識に抵抗し、次世代候補は重責への自信のなさや「自分が候補だ」という認識すら持てないまま打診を受けます。こうした状況が生じる根本には、サクセッションが「人事の問題」として語られていることがあります。人事主導・全社一律の論点設定のもとでは、現職者の感情的抵抗は避けられず、次世代候補の覚悟も醸成されません。論点を「誰をポストオフするか」から「事業と経営を次代に引き継ぎ、さらに進化させるために何を誰に託すか」へと転換したとき、初めて関係者は共通のミッションに向き合う同志となります。

<図表1>ポストオフ・ポストオンが進まない現職者・候補者それぞれの障壁

突破口:「人事問題」から「経営・事業継承」への論点転換

A社(グローバル大手メーカー)の支援事例では、ポストオフ・ポストオンの議論が「人・組織面中心」の文脈に置かれている限り、現職者の抵抗と不安が先立ち、合意形成が困難であることが確認されました。しかし、論点を「事業側面中心」に転換——すなわち「誰をポストオフするか」ではなく、「事業・組織の断絶リスクを解消し、次代へ進化させるために何を引き継ぐか」——に置き換えたとき、関係者の向き合い方が根本的に変わり始めました。

<図表2>サクセッションを進めるための論点転換

覚悟」と「引き継ぎ」は、プログラムで補完できる

B社(大手メーカー)の事例は、この論点転換を「プログラム設計」として体現したものです。同社が導入した次世代経営者・リーダー育成のための支援サービス(CES)は、次世代経営候補者が、創業からの歴代経営者の意思決定場面を「追体験」し、重要局面での葛藤・判断を体感したうえで、目指す未来像を考える3日間のプログラムです。

「現在の事業の強さはどこから来ているか」「過去の経営者はどんな葛藤と判断で今の姿をつくったか」「自分たちは次の10年、どんな会社を目指すのか・どんな意思決定をするか」——この問いを自社の歴史と文脈のなかで体験することが、スキルを超えた「覚悟の醸成」につながります。

<図表3>プログラムの設計骨子

要件定義の再考——「先々を見据えた要件」とは何か

多くの企業のジョブディスクリプション(職務記述書)は、ミッション・役割・責任範囲といった「現在の職務」の記述にとどまっています。しかしサクセッションにおいて本当に必要なのは、「このポストが次の5年・10年で対峙すべき重要テーマ・アジェンダ」と「そのために必要な行動特性・性格特性・仕事観」です。

ポスト要件が「現在」しか見ていない場合、要件に基づく選抜も育成も的外れになります。「先々」を見据えた要件定義こそが、サクセッション全体の設計図となります。

<図表4>現在中心のジョブディスクリプションに将来観点の要件を追加

弊社が提言する「全体視界」——5つのステップで経営継承を設計する

サクセッションは「後継者リストの整備」で完結するものではありません。リストがあっても、要件が現在の経営者像を基準にしていれば、選ばれた人材は5年後・10年後の経営環境に対応できません。育成プログラムがあっても、候補者本人に告知されていなければ、当事者意識は生まれません。制度・仕組みは確かに整いつつあります。しかし、「次の経営を任せられる人材が育っている」と、自信を持って言える企業はいまだ少数です。

弊社はこの現実を踏まえ、サクセッションを「リスト管理」から「経営継承の設計」へと昇華させるための5つのステップを提言します。

STEP1:出発点は市場・事業戦略の変化を経営アジェンダとして言語化すること
STEP2:そこから逆算して「誰に何を引き継ぐか」の設計図となる要件を定義すること
STEP3:選抜・育成・配置の判断軸となる人材要件を整えること
STEP4:選抜をゴールとせず引き継ぎ・成長支援のためにデータを活用すること
STEP5:スキル習得を超えた「経営者としての覚悟と関係性」を体験として設計すること

この5つが有機的につながったとき、サクセッションは初めて「経営者を育て、引き継ぐ」という本来の機能を果たします。

<図表5>事業継承を成功させるための5ステップ

執筆者

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コンサルティング1部
コンサルティング2グループ
マネジャー

加茂 俊究

大手メーカーにて製品企画・生産企画等を担当し、新たな価値を生み出す人・組織づくりの醍醐味を味わう。現職では、意識調査・組織開発・人事制度設計・育成体系構築・研修設計運用を担当。企業変革支援や働き方改革プロジェクトにも従事。現在は、コンサルティング部隊のマネジメントを担いつつ、経営人材育成等のテーマをリード。

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