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次世代経営人材が生まれづらい5つの構造的理由①

制度・仕組みあり、次世代経営人材不在

読了時間:5

  • 公開日:2026/07/27
  • 更新日:2026/07/27
制度・仕組みあり、次世代経営人材不在

2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂から5年。後継者候補のリストアップ、アセスメント導入、選抜型育成プログラム。多くの企業が「制度・仕組み」の整備を急速に進めてきました。情報開示は広がり、制度は整いつつある。それでも「経営を任せられる人材が育っている」と自信を持って答えられる企業は、いまだ少数にとどまります。あらためて問いたいと思います。「経営を任せられる人材は、育っていますか?」

本稿では、制度・仕組みがあっても経営者が生まれない要因である5つの構造的問題を解剖し、実践的な突破口を提言します。

本シリーズ記事一覧
次世代経営人材が生まれづらい5つの構造的理由①
制度・仕組みあり、次世代経営人材不在
なぜ今、サクセッションが問われるのか
仕組みがあっても経営者が生まれづらい理由
まとめ:サクセッションの本質は「経営者を育て、引き継ぐこと」
次回に向けて

なぜ今、サクセッションが問われるのか

2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂は、日本企業の経営のあり方に大きな転換を迫るものでした。その背景には、長年にわたる日本企業の「稼ぐ力」の低下と、グローバル投資家からの経営透明性・資本効率に対する強い要請があります。2015年の初版制定以来、取締役会の独立性確保や情報開示の充実が求められてきましたが、2021年改訂ではさらに踏み込み、取締役会が単なる意思決定の承認機関にとどまらず、経営の監督・助言機能を実質的に果たすことが明確に求められるようになりました。特に注目されたのが、CEOをはじめとする経営幹部の選解任プロセスの透明化です。後継者計画(サクセッションプラン)の策定・運用が取締役会の重要な責務として位置づけられ、サクセッションはもはや人事部門だけの課題ではなく、取締役会が主体的に関与すべき経営課題として格上げされました。

仕組みがあっても経営者が生まれづらい理由

制度・仕組みはある。プログラムもある。だが、「次を任せられる経営者がいる」とは言えない。私たちはこの矛盾の背景に、5つの構造的問題があると考えています。①要件設定のズレ、②育成とサクセッションの分断、③候補者への非開示、④覚悟醸成の欠如、⑤そして論点そのものの誤りです。それぞれを順に見ていきましょう。

問題1. 次世代経営「要件」が、会社の未来を見据えた内容になっていない

多くの企業のサクセッション選抜は、「現在の経営者像」を基準に行われています。しかし、5年後・10年後に経営を担う人材に求められる要件は、今の経営環境におけるものとは大きく異なるかもしれません。将来の戦略・アジェンダが曖昧なまま要件を設定すれば、選抜も育成も的外れになります。「会社の未来を見据えた要件設定」と「本社・部門横断の連携」こそが、出発点として問い直されるべき問題です。

問題2. 育成プログラムとサクセッションが「別の話」になっている

次世代リーダー育成プログラムとサクセッションプランが、それぞれ独立して存在している企業は少なくありません。本社人事部門(企画・要員系)と人材開発部門の縦割りがその背景にあります。育成プログラムで高評価を得た人材が後継者候補に入らず、後継者候補に選ばれた人材に特別な育成機会が提供されない——こういった状態では、経営人材は生まれません。

問題3. 候補者が「知らない」まま育成されている

後継者候補リストに名前が載っていても、本人に告知されていないケースは驚くほど多いです。企業側の「期待を持たせてリスクが生じることへの懸念」は理解できます。しかし、自分が後継者候補であることを知らない人物が、経営者として自覚を持ち、主体的に成長することはありません。「伝えないコスト」の大きさにも目を向けて考えていきたいと思います。

問題4. スキルは育つが「覚悟」は育たない

研修・アセスメント・コーチングによる知識・スキル習得は充実してきました。しかし、私たちが数多くの企業、経営者・次世代リーダーと向き合ってきた経験から確信するのは、「経営者としての覚悟醸成」と「次世代経営チームとしての関係構築」は、通常の育成プログラムではカバーできないということです。覚悟は、人生の大きな転機における意思決定の回想および自己信頼、そしてそれらを分かち合える仲間との関係性のなかでしか生まれません。この領域こそ、次世代経営人材育成における最大の盲点です。

問題5. 「論点」が間違っている——人事問題から事業継承問題へ

そして、5つ目の問題が「論点設定のズレ」です。ポストオフ・ポストオンが進まない、育成に本気になれない、現職者が協力しない——こうした現象は多くの場合、サクセッションが「人事の問題」として語られていることに起因します。現職者は役割喪失への不安から抵抗し、次世代候補は重責への不安を抱え、人事部門は「誰をどうするか」という難題を1人で抱え込みます。

しかし、論点を「人事異動」から「事業と経営の引き継ぎ・進化」に転換したとき、関係者の向き合い方が根本的に変わります。「誰をポストオフするか」ではなく「事業を次代に継承し、さらに進化させるために、何を誰に引き継ぐか」——この問いに置き換えると、現職者も次世代候補も、共通のミッションに向き合う同志となります。これは実際の支援現場で繰り返し確認してきた、論点転換の力です。

<図表1>サクセッションが機能しない組織によく起こりがちなこと

まとめ:サクセッションの本質は「経営者を育て、引き継ぐこと」

制度・開示・リスト——これらはあくまで手段であり、目的ではありません。サクセッションの本質は、「次の経営者を育て、実際に経営を引き継ぎ、未来をつくっていくこと」です。

「先々を見据えた要件定義」「育成とサクセッションの接続」「候補者への明示的な伝達」「覚悟醸成と経営チームづくり」、そして「人事問題ではなく事業・経営継承という論点設定」——この5つが一本の線でつながったとき、初めて組織のなかに本物の次世代経営者が生まれます。

「やっているのに育っていない」を超える道は、大きな制度改革でも予算の追加でもありません。問いを立て直すことから始まります。

<図表2>実効性あるサクセッションマネジメントの全体像

次回に向けて

次回は、構造的問題のうち、互いに深く連動する3つ(要件設定・覚悟醸成・論点転換)を実践に落とし込む「全体視界」と具体的なアプローチを示します。

執筆者

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コンサルティング1部
コンサルティング2グループ
マネジャー

加茂 俊究

大手メーカーにて製品企画・生産企画等を担当し、新たな価値を生み出す人・組織づくりの醍醐味を味わう。現職では、意識調査・組織開発・人事制度設計・育成体系構築・研修設計運用を担当。企業変革支援や働き方改革プロジェクトにも従事。現在は、コンサルティング部隊のマネジメントを担いつつ、経営人材育成等のテーマをリード。

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