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組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント

第6回 「リソースシフト」の増加により、今後オンボーディングはますます重要になっていく

  • 公開日:2026/02/24
  • 更新日:2026/02/24
第6回 「リソースシフト」の増加により、今後オンボーディングはますます重要になっていく

本連載では、新卒入社者・キャリア入社者・異動者などに対する「オンボーディング(早期の戦力化を促進し、定着を支援するプロセス)」に関して、組織内で起こりがちな課題を解決するヒントを紹介しています。

最終回となる第6回では、現代のビジネスを取り巻く環境の変化を踏まえ、「これからのオンボーディング」について考えていきます。実は近年注目度が高まる「リソースシフト」においても、オンボーディングは重要な要素の1つとなっているのです。

本シリーズ記事一覧
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第6回 「リソースシフト」の増加により、今後オンボーディングはますます重要になっていく
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第5回 「異動者」も新入社員同様オンボーディングの「3つの壁と6つの症状」に直面する
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第4回 新入社員早期戦力化のポイントは「価値観」と「やる気スイッチ」の違いにあり
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第3回 キャリア入社者の支援には「上司と人事」による面談が有効
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第2回 「本人主語+企業主語」で不安を払拭してやる気の好循環へ
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第1回 新たに組織に加わった人材が直面する「3つの壁」と「6つの症状」
(1)事業環境の急速な変化が「リソースシフト」の必要性を高めている
(2)リソースシフトにはオンボーディング施策の充実が不可欠
(3)オンボーディングはリソースシフトのなかでも重要な「最終工程」
(4)若手異動者の前には特に多くの壁が立ちはだかる

(1)事業環境の急速な変化が「リソースシフト」の必要性を高めている

昨今、ビジネスシーンにおいて「リソースシフト」という言葉が注目を集めています。リソースシフトとは、「経営戦略上の理想を実現するためにどんな人材が必要か」を意図的・計画的に見直し、その必要な人材を時間・パワー・資金を投入して的確に調達・配置する取り組みを指します。言い換えるなら、「人的リソースを戦略的にシフトすること」と表現してもよいでしょう。

リソースシフトに関心が寄せられている理由としては、さまざまな業界で事業を取り巻く環境が急速に変化していることが挙げられます。なかでも分かりやすい例が、自動車業界です。例えば業界大手のホンダやデンソーは、統合報告書にリソースシフト(大規模な人材シフト)を掲げています。

ご存じのとおり、自動車業界は電気自動車(EV)のニーズ拡大などの影響を受け、現在「100年に1度の大改革期」を迎えています。この先電気自動車への移行や技術の発展がさらに進めば、部品点数は大幅に減少し、それにともない部署・部門の数や形態も大きく変化していくことでしょう。つまり自動車業界において、大規模な人材の異動はすでに不可避の課題となっています。

もちろん、こうした状況は自動車業界に限った話ではありません。規模の大小はあれど、いかなる業界・企業でもリソースシフトは必要になる可能性があります。リソースシフトの必要性を生む要因も、生成AIの発展やグローバル競争、テクノロジーの進歩、少子高齢化などいくらでも考えられます。また、新規事業を成長させる際や、技術革新を起こす際などにもリソースシフトは必要となるでしょう。国内外を問わず、この先企業にとってリソースシフトの重要性が高まっていくことが考えられます。

Honda
Hondaは、「総合モビリティカンパニー」としての進化を支えるため、電動化・知能化を軸とした事業変革を推進しています。その実現に向け、4つの主要テーマに沿ったリソースシフトを進め、組織体制の強化と人材戦略の最適化に取り組んでいます。

  • 人材マネジメントの強化と活性化:内発的動機を喚起し、多様な人材が融合する組織文化を構築。従業員エンゲージメントスコアを2031年までに60%以上に向上。
  • 事業戦略と連動した人材確保の推進:重点領域の人材充足率を2031年までに100%とする計画のもと、国内外の採用を強化し、適材適所の配置を実施。
  • 多様なキャリアパスの確立とリーダーシップ開発:管理職層の女性比率を2021年比で4倍に拡大する目標を設定し、ダイバーシティ推進とともにキャリア開発を強化。
  • 持続的な人材育成投資の拡充:事業変革を支える成長領域への人材投資をグルーバル水準まで引き上げ、継続的なスキル向上とリスキルを促進。

デンソー
デンソーは、カーボンニュートラルの実現と成長戦略に向け、電動化・自動運転などの先端技術領域に注力し、組織体制や人材戦略を強化しています。「人と組織の実現力」をキーワードに、戦略的な人材配置・育成・エンゲージメント向上などに取り組んでいます。

  • 人材ポートフォリオ変革:2030年に向け、ソフトウェア・電動化・エレクトロニクス分野の人材比率を拡大。従来のハードウェア中心の技術構成から、デジタル技術を生かした開発体制へシフト。
  • エンゲージメント向上とキャリア支援:組織の成長と個人のキャリア形成を両立するため、キャリア支援施策を強化。従業員の主体的なキャリア形成を促進し、エンゲージメントスコアの向上を目指す。
  • 大規模な人材シフトの推進:2025年度までに約4000人の人材を成長領域へシフトさせる計画を進行中。採用強化と社内公募を組み合わせ、重点領域への人材配置最適化を推進。

出典)各社の統合報告書をもとにリクルートマネジメントソリューションズにてまとめ

(2)リソースシフトにはオンボーディング施策の充実が不可欠

ここまで説明したとおり、リソースシフトは企業の競争力強化や事業戦略の実現において重要な施策です。多くの企業は今後、大小さまざまなリソースシフトに取り組んでいくことが予想されます。

しかし、リソースシフトのプロセスは決して単純ではなく、その過程でさまざまな問題が生じる可能性があります。これらの問題に向き合わず放置すると、リソースシフトは思うように進まなくなり、場合によっては頓挫してしまうかもしれません。

そんなリソースシフトの問題を解決する有効な取り組みの1つが、「オンボーディング施策の充実」です。もちろん、リソースシフトはオンボーディング施策だけで成功するわけではありません。しかしオンボーディング施策の不足は、リソースシフトが停滞・失敗する可能性を大きく高めます。

というのも、リソースシフトでは外部人材の新規採用を行うこともありますが、人材調達の方法としては内部人材の社内異動が多い傾向にあります。そして本連載第5回でも説明したとおり、異動者は新入社員と同じように新しい環境でのオンボーディングに苦労し、「3つの壁と6つの症状」に直面します。

特に、大規模なリソースシフトでは異動による人材調達もそれだけ大規模になります。そのため、従業員を異動させるだけで手いっぱいになり、異動後に適切なフォローをできていないといった事態に陥りがちです。こうした要因から、オンボーディング施策が不十分な企業では異動者が新たな部署・職種に十分に適応できず、リソースシフトがスムーズに進まない恐れがあるのです。

(3)オンボーディングはリソースシフトのなかでも重要な「最終工程」

オンボーディングの重要性について理解を深めるために、ここで一度リソースシフトのプロセスを確認しておきましょう。リソースシフトは、大きく3つのプロセスで構成されています。

最初の段階では、経営戦略の実現に必要な人材要件を明確化します(①)。次に、現状の人材構成やスキルセットを可視化して、理想と現状のギャップを明らかにします(②)。このとき、ギャップの分析は戦略的視点・財務的視点・業務的視点の3つの視点から行うことが大切です。

そして理想を実現すべく、採用・異動・オンボーディング・人材育成・キャリア開発などをシームレスに連動させながら、実際のリソースシフトを段階的に進めていくことになります(③)。

リソースシフトを円滑に進めるためには、これらの3つのプロセスに一貫性を持たせることが大切ですが、それは簡単なことではありません。特に、各プロセスでは「人材の状態の把握や可視化が不十分」「人材の見方がスキルに偏っている」「シフト対象者の選び方が属人的」「シフト対象者とシフト先のニーズの不一致」といった問題がよく発生します。

実は「人材を異動させただけで満足し、その後のフォロー(オンボーディング施策)が不足する」というのも、そうした数ある問題の1つといえます。しかし、オンボーディングはリソースシフトの最終工程にあたり、取り組みの成否を決める最も重要なプロセスです。そのため、軽視するとそれまでの取り組みすべてを無駄にしてしまう可能性があります。

例えば、オンボーディングが停滞し新しい環境や職務に適応できなければ、異動者は自らの能力を十分に発揮できません。十分な成果も残せず、キャリアの成長も止まってしまいます。

その結果、異動者の組織に対する信頼や業務へのコミットメントは弱まり、エンゲージメントが下がる可能性も高くなります。同時に仕事への意欲も下がるため、組織力の強化を目的とした異動だったはずが、逆に組織の状態を悪化させてしまう恐れすらあるのです。

このように考えていくと、オンボーディング施策の大切さが見えてきたのではないでしょうか。

(4)若手異動者の前には特に多くの壁が立ちはだかる

リソースシフトとは単に人を左から右へ異動させるだけのものではなく、「企業の成長戦略と個人の活躍・成長・キャリア形成を同時に実現させるプロセス」です。そしてその成功のためには、異動者に対する充実したオンボーディング施策の提供が重要であることもここまで述べてきたとおりです。

とはいえ、いくらオンボーディングに力を入れても取り組みが一過性だったり、部署や社員ごとにムラが生じていたりする場合にはリソースシフトの成功は望めません。だからこそ企業や組織には、急激な変化や多忙さのなかでも「人材を育成することの大事さ」を全員で共有し、「オンボーディングを大切にし、新たな仲間がスムーズに立ち上がり活躍することを重視する」という風土をつくっていくことが求められます。

以上で、全6回の連載を終わります。今後ますます重要性が高まっていくオンボーディングに取り組むうえで、この連載が少しでも助けになることを祈っています。


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ぜひ貴社のオンボーディング施策にお役立てください。

中途入社者研修
中途入社者受け入れ研修<上司向け>
中途入社者受け入れ研修<OJTリーダー向け>

執筆者

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技術開発統括部
コンサルティング部
エグゼクティブコンサルタント

竹内 淳一

1993 年、株式会社リクルート入社。人事部門での採用リーダーを経て、2003 年から「データを活用し個を生かし組織を強くする」をテーマに、採用から入社後の適応・定着・活躍までを一貫して取り組むコンサルティングに従事。組織マネジャー・プロジェクトマネジャーとしてコンサルティングや営業、サービス開発を行い、2011 年より現職。現在は特に「人材ポートフォリオとリソースフローの最適化」を軸に、製造・サービス・IT業界などの大手企業を中心に支援。

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