連載・コラム
組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
第5回 「異動者」も新入社員同様オンボーディングの「3つの壁と6つの症状」に直面する
- 公開日:2026/02/16
- 更新日:2026/02/16
本連載では、新卒入社者・キャリア入社者・異動者などに対する「オンボーディング(早期の戦力化を促進し、定着を支援するプロセス)」に関して、組織内で起こりがちな課題を解決するヒントを紹介しています。
第5回は、「異動者」のオンボーディングにおいて直面しやすい課題を解説します。新入社員と同様に、実は異動者もオンボーディングに際して「3つの壁と6つの症状」に直面することが分かっています。
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第5回 「異動者」も新入社員同様オンボーディングの「3つの壁と6つの症状」に直面する
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第4回 新入社員早期戦力化のポイントは「価値観」と「やる気スイッチ」の違いにあり
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第3回 キャリア入社者の支援には「上司と人事」による面談が有効
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第2回 「本人主語+企業主語」で不安を払拭してやる気の好循環へ
- 組織が抱えるオンボーディングの課題を乗り越えるヒント
- 第1回 新たに組織に加わった人材が直面する「3つの壁」と「6つの症状」
- 目次
- (1)「ベテラン社員なら異動はスムーズ」は誤った認識
- (2)中堅異動者は「キャリア・成長の壁」に直面しやすい
- (3)復職にともない異動した育児中の社員は「働き方の制約」も大きな壁に
- (4)若手異動者の前には特に多くの壁が立ちはだかる
- (5)異動者のオンボーディングのため、人事が支援できること
(1)「ベテラン社員なら異動はスムーズ」は誤った認識
すでに経験がある分、新入社員よりもハードルが低く見られがちな異動者のオンボーディングですが、実態はそれほど単純ではありません。そこで今回は「5人の異動者」のケースをもとに、異動者のオンボーディングが陥りやすい課題について考えていきます。
ベテラン社員AさんとBさんの事例
最初に紹介するのは、ベテラン社員のAさんとBさんの事例です。ベテラン社員ともなると、オンボーディングに問題を抱えていること自体を意外に感じる方も多いかもしれません。しかし、そうした「ベテラン社員なら異動はスムーズに進むだろう」という思い込みそのものが、実はオンボーディングにおいて大きな壁となっています。
というのも、多くの企業でベテラン異動者は即戦力とみなされ、「すぐに会社に貢献してほしい」「すぐに力を発揮してくれるはず」といった期待を向けられています。なかには、「お手並み拝見」とばかりにベテラン異動者を試そうとする人もいるでしょう。しかし本来、ベテラン異動者であってもオンボーディングには基本的に一定の期間が必要であり、マネジャーや周囲はむしろ積極的に支援を行うべきなのです。
ベテラン社員のAさんは、新しい部署へ異動した直後はなかなか成果を出せませんでした。初めて経験する業務ばかりで、誰に何を聞けばよいのか分からないため、自分らしく仕事を進められずに無理をしたことがあったそうです。加えて、業務では成果を焦るあまり、自分が過去に成功したパターンにすがりたくなったこともありました。「絶対に結果を出してやる」という強い思いの一方で、思うように仕事を進められず、精神的に苦しくなることもあったといいます。実は、これらはすべてベテラン異動者にとっては「あるある」であり、決して珍しいケースではありません。
同じくベテラン社員のBさんも、異動した当初は焦りを感じていたそうです。その理由は、異動先のベテラン社員の能力が非常に高く、優秀な若手社員も多いうえに、同期配属者が早くから活躍していたことにあります。また、これもベテラン異動者に多い事例ですが、異動先の同僚がなかなか踏み込んできてくれず、人間関係の構築にも苦労したといいます。このように、ベテラン異動者は慣れない環境で苦しんでいるにもかかわらず、周囲からはケアすべき対象として認識されないパターンもよく見られます。
ベテラン社員が異動時にぶつかる壁
以上の例からも分かるように、新たな部署への異動時にはベテラン社員も「職場風土の壁」や「キャリア・成長の壁」に直面することがあります。なかでも多くの人が感じる壁としては、「周囲のレベルに対して自分が影響力を発揮していけるかどうか」といった不安が挙げられます。ほかには、「即戦力としてすぐに活躍できない」といった、仕事の壁にぶつかるケースも珍しくありません。これらの壁を乗り越え、実力を存分に発揮してもらうためには、マネジャーや周囲のメンバーが異動者に積極的に支援を行いつつ、一方で任せるべきところは焦らずに信じて任せることが大切です。
実際に、Aさん、Bさんとも異動後1年目には周囲の支援を得てしっかりとスキルを身につけ、目の前の業務に集中できるようになりました。同時に人間関係も良好になり、2年目からは大活躍できたそうです。このように、周囲の支援を得て3つの壁を克服できれば、ベテラン異動者も本来の実力を発揮し、期待通りの活躍を実現できる可能性が高まります。

出典:第1回 新たに組織に加わった人材が直面する「3つの壁」と「6つの症状」
(2)中堅異動者は「キャリア・成長の壁」に直面しやすい
次に、中堅社員の異動者Cさんの事例を紹介します。中堅社員の場合は人によって異なる部分ではあるのですが、Cさんはオンボーディングに関する問題は比較的少なかったようです。というのも、社内の異動者は社外から来た人材とは異なり、自社の文化や仕事の進め方を踏まえて新しい環境に慣れていきます。そのため、異動先でも近い風土や文化を感じられ、問題が起こりにくい場合があるのです。
中堅社員Cさんの事例
Cさんの場合も、まさにそうしたケースでした。さらにCさんは、異動先のベテラン社員が親身に支えてくれたため、職場風土の壁を感じることも少なかったそうです。仕事に関しても、商品の複雑さや業務の進め方の違いから感覚をつかむまでに少し時間がかかりはしたものの、先輩社員のバックアップのおかげで仕事の壁を感じるほどではなかったといいます。
中堅社員が異動時にぶつかる壁
しかし、そんなCさんも「キャリア・成長の壁」にはぶつかってしまったようです。中堅社員であるCさんにとって、今回の異動のタイミングは元の部署では中堅社員からリーダーへの昇格が見えているタイミングでしたが、部署が変わったことで一旦昇格が遠のいてしまいました。Cさんによれば、異動直後はキャリアが振り出しに戻ったような感覚があったそうです。また、異動に対して「旧組織から戦力外通告を受けた」という気分になり、一時期は気持ちも落ち込んだとのことでした。
中堅社員は、活躍のスピードが上がる人とそうでない人の差が大きい階層といえます。そのタイミングで異動があり、あらためて適応を求められれば、成長に対する焦りが生まれるのは当然のことです。とはいえベテラン社員の場合と同様、マネジャーや周囲が積極的に支援し、本人が目の前の業務に集中できる環境が整えば、こうしたキャリア・成長の壁も多くの場合自然と解消していくはずです。
実際にCさんも、1年ほど自らの担当業務に集中することでずいぶんと仕事に慣れたようです。また、そのタイミングで自らのキャリアを再考し、マネジャーと対話したところ、新たなミッションを任せてもらえることになりました。異動により、結果的に大きな成長の機会が得られたといえます。

(3)復職にともない異動した育児中の社員は「働き方の制約」も大きな壁に
一方、復職にともない異動した育児中の社員Dさんの事例は、同じ中堅社員でもCさんとは状況が大きく異なります。
育児中の社員が異動時にぶつかる壁
育児中の社員がほかの人たちと大きく違うのは、働ける時間が短く、子どもの急病などで突発的な休みが発生してしまうことにあります。時間的な制約が大きいために、異動先の仕事の進め方に対する戸惑いが生まれやすく、能力は以前と同じでも「仕事の壁」が高くなりやすいのです。
さらに育児と仕事を両立している社員の場合、仕事の壁はそのほかの壁にも影響を与えます。例えば、思うように仕事に順応できないと、育児との両立という自らのあり方自体が「キャリア・成長の壁」になってしまいかねません。また、周囲から「仕事ができない」「頼りにならない」といったレッテルを貼られ、「職場風土の壁」も高くなってしまう恐れがあります。
育児中の社員Dさんの事例
Dさんも、最初のうちは限られた時間のなかでどう組織に貢献すべきかが分からずに悩んでいました。しかし、人事への相談を通じて「仕事と子育ての両立は自分で決めたこと」と、あらためて仕事に対する覚悟を決められたといいます。
そしてDさんは家族の協力のもと、時間を捻出してインプットを継続しました。並行して、これまでの経験を棚卸しし、「自分が組織に貢献できることは何か」という問いにも向き合い続けたそうです。その甲斐もあり、次第にDさんは短時間でも自らの価値を発揮し、自分なりの方法で組織に貢献できるようになっていきました。
また、Dさんの素晴らしかった点は、自分自身の価値を示すべく、仕事の成果を周囲に発信していったことです。その結果、周囲からの信頼は高まり、部署でも一目置かれるようになりました。こうしてDさんは仕事の壁だけでなく、キャリア・成長の壁や職場風土の壁までもクリアしていったのです。
このケースでも、Dさんにとって大きな励みとなったのは「人事やマネジャーが親身になって相談に乗ってくれたこと」でした。周囲のオンボーディング支援があれば、働き方に工夫が必要な子育て中の社員も自らの価値や能力を発揮しやすくなるでしょう

(4)若手異動者の前には特に多くの壁が立ちはだかる
最後に、若手異動者のEさんの事例を紹介します。まだ成長段階にある若手社員にとって、異動は急激な変化であり、「仕事の壁」や「職場風土の壁」に苦しむ人が少なくありません。
特に、慢性的に人材不足に悩まされている組織では、若手であろうと異動者はやはり即戦力だとみなされてしまいがちです。しかし、若手異動者も新たな担当業務に対して多くは未経験者や初心者であり、十分なスキルを持っていないケースが大半を占めています。
また、当然ながら、若手異動者のなかには新たな環境に馴染むのが苦手な人も多いです。そのため、マネジャーや周囲の人たち、人事からの丁寧なオンボーディング支援が特に必要となるでしょう。
若手社員Eさんの事例
Eさんの場合、異動先ではシステム構築の担当者として、企画スタッフのリーダーにいきなり抜擢されました。しかし、すべてが未経験なために最初は用語やスケジュール感、段取りの仕方なども把握していなかったEさんは業務をスタックさせてしまい、利益・工数・労力面で要求を満たせませんでした。
また、周囲のメンバーは決して冷たいわけではないものの、多忙な人が多いこともあり、協力的とはいえなかったそうです。そうして追い込まれてしまったEさんは、一度は心が折れそうになり、「担当を外れたい」と上司に伝えたといいます。
しかし、Eさんはそこで諦めませんでした。メンバーの助けのもと、目の前の仕事に逃げずに向き合った結果、どうにか最低限の目標を達成できました。そして2年目以降は、周囲と積極的に協力して視野を広げることで、さらに成果を高められるようになっていったそうです。
そのほか、Eさんは自分から周囲とコミュニケーションを取り、職場に馴染む努力をすることも忘れませんでした。こうした苦労を通して、Eさんは自分の得意・不得意が明確になり、将来のキャリアパスも見定めることができたといいます。

(5)異動者のオンボーディングのため、人事が支援できること
今回紹介した事例を踏まえると、本連載の第2回でご紹介をした「やる気が高まり続ける好循環サイクル」を回すためには、異動者も新卒や中途採用の場合と同じように考えることが大切であるといえます。
同時に、「やる気が高まり続ける好循環サイクル」の支援に向け、人事にできる施策は多岐にわたります。具体的には、次のような施策が効果的でしょう。
- マネジャーにオンボーディング支援の原理原則や事例を伝え、「誰しも異動当初は一定の壁がある」「異動者にもオンボーディング支援が必要である」と周知し、現場のオンボーディング支援を促す
- 異動者を受け入れるマネジャーなどに向け、客観的サポートやアドバイスを行うツールを提供する
- 異動者本人に対し、異動前・異動時・異動数カ月後などにメンタリングやコーチングを実施する(あるいはその仕組みをつくる)
繰り返しになりますが、オンボーディングにおいては異動者も「3つの壁と6つの症状」に直面し、多くの苦労を味わいます。つまりオンボーディング支援は、新入社員や中途入社者だけでなく異動者に対しても必要不可欠な取り組みなのです。
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また、リクルートマネジメントソリューションズでは中途入社者を支援するサービスをご用意しています。
ぜひ貴社のオンボーディング施策にお役立てください。
執筆者

技術開発統括部
コンサルティング部
エグゼクティブコンサルタント
竹内 淳一
1993 年、株式会社リクルート入社。人事部門での採用リーダーを経て、2003 年から「データを活用し個を生かし組織を強くする」をテーマに、採用から入社後の適応・定着・活躍までを一貫して取り組むコンサルティングに従事。組織マネジャー・プロジェクトマネジャーとしてコンサルティングや営業、サービス開発を行い、2011 年より現職。現在は特に「人材ポートフォリオとリソースフローの最適化」を軸に、製造・サービス・IT業界などの大手企業を中心に支援。
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