連載・コラム
未来を創るマネージャーのリアルボイス
Case2. 若手育成を支えたのは、“横のつながり”──メンバーが育つ現場のつくり方
- 公開日:2025/06/30
- 更新日:2025/06/30

近年、多様な価値観を持ったメンバー構成、少子高齢化による人手不足の深刻化、コンプライアンスに対する意識の高まりなどにより、マネジメントの難度が上がっています。
そのような環境のなかで、業績達成はもちろん、最適な業務アサインや、メンバーの意欲を引き出しながらの業務遂行など、多くの役割を担わねばならず、マネージャー層の負担が増えているといわれています。また、人事の方からはマネージャーになりたい若手が少ないというお悩みをうかがうことも。
しかし弊社の調査(※)では、マネージャー昇格後に、メンバーの成果や成長などをやりがいに感じているマネージャーが多いことが分かっています。つまり、部下から見ると大変さばかりが目にとまり、やりがいがなかなか伝わりづらい、という側面があるのかもしれません。
本連載では、組織の要としてさまざまな企業でマネージャーとして活躍している方々に、やりがいや思い、工夫されていることなどについてお話をうかがい、ご紹介していきます。
第2回となる今回は、株式会社D2C ID・プロデューサー兼マネージャーの工藤 乾一さんにお話をうかがいました。今まさにマネージャーとして悩まれている方や、将来マネジメントを担っていくかもしれない若手の方の参考になれば幸いです。
※ マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年
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- Case1. 社会人3年目で挑戦。手探りのマネジメントを支えた“環境”の力
- 目次
- きっかけは「部署の新設」。プロデューサーとして活躍しながら、部下の成長も支える立場へ
- 1on1は、「自分にはない視点」を吸収するチャンス
- 会社の「横のつながり」が、マネジメントとモチベーションの支えに
きっかけは「部署の新設」。プロデューサーとして活躍しながら、部下の成長も支える立場へ

――はじめに、工藤さんが所属されている「D2C ID」の事業内容について教えていただけますか?
弊社の事業内容を一言でいうと、「CX(顧客体験)の“企画実装屋”」です。プロデューサー、プランナー、ディレクター、デザイナーといった多様な人材がプロジェクトごとにチームを組み、クライアントに伴走しながら、デジタル・リアル両面のマーケティングを支えています。
親会社(株式会社D2C)がNTTドコモ・電通グループ・NTTアドの合弁会社なので、NTTグループや電通経由の案件も多く担当しています。私もNTTグループの地方支社と連携する形で、プロデューサーとして自治体の地方創生プロジェクトなどに関わってきました。
――工藤さんは現在、プロデューサー兼マネージャーとして活躍されているとのことですが、マネージャーになったきっかけは何だったのでしょうか。
現在所属している「ビジネスプロデュース部」の立ち上げに際して、マネジメントも担うようになったことがきっかけです。
実は、弊社では営業というポジションを置かずに、プロデューサーの人脈やグループ会社の販路からクライアントを獲得していく面がありました。ただ、今後も事業を広げていくうえで、自治体などの新しいパートナーを開拓していく必要性も感じていたのです。そこで、もともとチーフプロデューサーをやっていた私がいろいろな部署のメンバーを集める形で、営業もプロデュースも担う「ビジネスプロデュース部」を新設しました。自らマネジメントの道を選んだというよりは、部署の新設に合わせてマネジメントを任せてもらったというニュアンスが近いです。
――工藤さんの1日のスケジュールも見せていただきましたが、本当にお忙しそうです。御社のワークスタイルは出社とリモートのハイブリッド型とのことですが、工藤さんは毎日出社されているとか……?
そうですね。全社出社日は月曜のみですが、私は基本的に毎日出社しています。会社にいれば部下が来た時に自然と話せますし、部外のメンバーともコミュニケーションを取りやすくなりますから。
コロナ禍の頃に完全リモートを経験しましたが、当時は特定の人としかコミュニケーションを取らないようになってしまって……。「うちの会社はもっと大きいのに、つながりを生かせなくてもったいない」という気持ちがありました。仕事の面でも、横にいて温度感が分かる状態で喋る方が、イメージも伝わりやすいです。

マネージャーになってから密かに頑張っていることは、「毎日出社する」ことかもしれません。スムーズにコミュニケーションが取れるという意味でもメリットがありますし、部下も会社に顔を出してくれるようになりました。プレイングとマネジメントの両立は正直大変ですが、クライアントを任せればしっかり自走してくれる優秀な部下が揃っているので、その点は非常に恵まれていると感じています。
1on1は、「自分にはない視点」を吸収するチャンス
――工藤さんはクライアントワークと並行して、部下と毎週1on1をされているそうですね。話題づくりに悩まれるマネージャーも多い印象ですが、工藤さんはどのように進めていらっしゃるのでしょうか。
1on1ではオーソドックスに、私の方から話を振っています。部下もそれぞれプロデューサーとして案件を持っていますので、「何か行き詰まっていることはない?」「困っていることはない?」とヒアリングしていく形です。もし部下が悩んでいる様子だったら、弊社のディレクターやデザイナー、開発などにも声を掛けて、「チームでやってみようよ」と巻き込んでいくことも多いですね。
ただ、こういった確認は、できるだけ毎週月曜日の部会で済ませたいとも思っています。1on1では「案件の進みはどう?」と聞くのではなく、仕事以外の話をしたいからです。プライベートとまではいかなくても、部下の好きなことや、若い世代の新しい視点を知っていけたらと思っています。
弊社は中途採用がメインというのもあって、他社と比べると若手の人数が少ないです。だからこそ1on1も、自分にはない考え方を吸収できるチャンスだと捉えています。
といっても、話題について堅く考えるのではなくて、わりと何でも話します。もちろん部下から少しプライベートな話をしてくれることもありまして、他愛ない話題から「この部下は他の部署とも交流がありそうだ」「成長が早いと思っていたけど、横のつながりもどんどん生かしているのか」と、新しい気づきにつながることも多いです。
――何気ない会話から、相手への理解を深めていく。そんなスタンスがとても素敵だと感じました。若手は比較的少ないとのことですが、ベテランのマネジメントもされていますか?
ベテランの部下ももちろんいます。ただ、ベテランはそれぞれのキャリアのなかで一旦完成しているので、マネジメントで変えようとはしていません。むしろ、「あなたの一番いいところを伸ばしてほしい」というスタンスで関わっています。自分の良いところを伸ばしてもらいつつ、若手と融合していくことで、柔軟性が出てくれたらベストですね。

こういった背景から、あえてベテランと若手に組んでもらうことも多いです。ベテランだけでなく、若手にとっても得るものがあればと思っています。例えば、若手はデジタルに強いですし、発想も柔軟なのですが、クライアントに遠慮して意見を言えなくなってしまうケースもあります。ただ、クライアントが私達に求めているのは、新しい視点やアイデアとの出会いなのです。そういった対応はやはりベテランがうまいことも多いので、「こういったアイデアはどうでしょうか?」と提案していく方法を、横で見ながら学んでくれたら嬉しいですね。
会社の「横のつながり」が、マネジメントとモチベーションの支えに
――御社ではベテランだけではなく、若手も積極的に挑戦されている印象があります。経験豊富なメンバーが多いなかで、若い力を伸ばしていくコツはありますか?
コツではないかもしれませんが、やはり「皆で若手の企画を見る」という風土には、かなり助けられています。例えば、私の部署ではクライアント向けの企画書をよく作りますが、企画が通らなかった時は皆でフィードバックをするのがいつもの流れです。プロデューサーはもちろん、デザイナーやディレクターといったいろいろな視点から企画書を見て、「こうしたらいいのでは?」とアドバイスしていきます。
――通らなかった企画には光る部分と、もう少しブラッシュアップできそうな部分があるかと思いますが、どのような伝え方をされているのでしょうか。
「この企画はよくない」という言い方はせずに、「この企画が通らなかったのは、どうしてだろう?」という聞き方をしています。企画が通らなかった理由を一緒に考えたうえで、「もっとこうした方がいいかもしれない」と、視野を広げていくイメージです。
他の部署でも、若手が入った時は「企画筋トレ」というものをやっています。毎週ネタやトレンドを持ち寄って企画を出し合うという、シンプルなトレーニングです。この筋トレを繰り返すことで、自然と同僚や先輩とも喋れるようになります。
こうやって皆で若手に関わっていくことで、会社全体の力が引き上がっていく感じがしています。むしろ若手がどんどん成長して、私達の感覚にはない提案をクライアントに届けてくれることも多いです。マネージャーとしても、会社の力が育っていくことが素直に嬉しいですし、やりがいにもつながっています。

――若手の育成も含めて、社内の横のつながりをしっかり生かされている印象を受けました。
弊社には縦割りの部分もあるのですが、プロジェクトごとに部署を超えたチームを組んで現場に入るので、壁を感じにくい面はあるかもしれません。マネージャーとしても、横のつながりに助けられた面が大きいです。人が足りない時は他の部署が親身になってくれますし、キャリアチェンジした部下の育て方などについても、「皆どうやって教えているの?」と相談したりしています。
そういった横のつながりは大切にしつつも、「他の部署には負けないぞ」という気持ちもモチベーションになっています。弊社では、上期と下期に頑張った社員やチームに対してアワードが贈られるので、若い世代も日々の目標にしているみたいです。私も「うちの部署の子が受賞しますように」と、親心を持ったりしています。
――最後に、「マネージャーになったばかりの工藤さん」にアドバイスをするとしたら、どういったふうに声を掛けますか?
昔の自分に声を掛けるなら、「もっとうまくやりなさい」でしょうか。マネージャーになったばかりの頃は自分で抱え込みすぎていて、とにかく手離れが悪かったのを覚えています。プレイングとマネジメントの両立は結構忙しいので、だからこそ他に任せられることは任せていいのだと、今では思っています。「周りに頼れる部分は、手放しながら進めなさい」と伝えたいですね。
リクルートマネジメントソリューションズではマネージャー育成を支援するサービスをご用意しています。
ぜひ貴社のマネージャー育成にお役立てください。
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