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さあ、扉をひらこう。Jammin’2024 owner session report

社長直轄の「IHIアカデミー」で数多くの挑戦、越境、解き放ちを実現する〈オーナーインタビュー・IHI様〉

  • 公開日:2025/03/24
  • 更新日:2025/03/24
社長直轄の「IHIアカデミー」で数多くの挑戦、越境、解き放ちを実現する〈オーナーインタビュー・IHI様〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、6年目のJammin’2024が終了した。44社247名の次世代リーダーたちが全15コースに分かれ、「不」を基点に新価値を生み出すプロセスに取り組んだ。この44社は、どのような考えに基づき、何を期待して社員をJammin’に送り出しているのだろうか。今回はJammin’2023から社員派遣を始めたIHI様に、Jammin’活用の背景にある社長直轄の「IHIアカデミー」について、またJammin’の成果や効果について詳しく伺った。

  • インタビューしたのは
    関健治 氏:株式会社IHI IHIアカデミー アカデミー長
関氏の画像
IHIは「良い+強い」会社と個人の「成長+幸せ」の両立を目指す
2023年、変革人財を育成する「IHIアカデミー」を設立
Jammin’には「課題設定・挑戦・越境・実践」のすべてが含まれていた
Jammin’ では、私たちの狙った越境経験の効果が得られている
今後は将来の経営幹部候補への「キャリアデザイン管理」に力を入れる

IHIは「良い+強い」会社と個人の「成長+幸せ」の両立を目指す

――皆さんがJammin’を活用する背景には「IHIアカデミー」の存在があると伺っています。まずはIHIの自己紹介と共に、IHIアカデミーについて教えてください。

IHIグループは、過去・現在・未来にわたって、社会課題の解決に事業機会を見出す企業体です。造船からスタートした技術は、船に搭載する機械づくりから各種産業用の機械設備、プラントの製造・建設へと発展し、今では産業や社会の巨大なインフラストラクチャーづくりにまでおよんでいます。代表例を挙げると、世界初の20万トン級タンカー「出光丸」の建造(1966年)、世界最長の吊り橋「明石海峡大橋」の建設(1998年)、グリーンエネルギートランジションに貢献するJERA碧南火力発電所におけるアンモニア混焼に関する実証試験(2021年~)などに取り組んできました。グループ経営方針2023では「カーボンニュートラル」と「労働人口減少」をこれからの社会課題に据え、現在はそれらを解決する事業を多様に創出・推進しています。

2023年4月、私たちはグループ経営方針2023と同時に、「グループ人財戦略2023」を発表しました(図表1)。グループ人財戦略2023では、経営方針を達成するために、「良い+強い」会社と、個人の「成長+幸せ」の両立を将来の目指す姿として掲げました。そして、その実現に向けた人財と組織の具体的な姿を、「新たなリーダーシップ」「素早い自己変革能力」「従業員の成功/幸せ」「新たなパートナーシップ」の4つで表現して、変革への挑戦を評価する制度改革と風土醸成を推進しています。

さらに、2024年度にはIHIグループの従業員に共通する「求める発揮行動」と「求める人財像」を定めました。求める発揮行動とは、変革へ挑戦する組織風土を醸成するために必要な「①課題設定」「②挑戦」「③越境」「④実践」の4つの行動基準です。それに加えて、従来もこれからも変わらず従業員に求められるスキルやマインドである「⑤高い専門性」「⑥社会とお客さまのために」「⑦倫理観とコンプライアンス意識」の3つを合わせた計7つの項目を求める人財像としました(図表2)。私たちは、この7項目を評価にも紐づけ、従業員の意識レベルへの浸透も図っています。

<図表1>IHIグループ人財戦略2023

IHIグループ人財戦略2023

<図表2>IHIグループの「求める発揮行動」と「求める人財像」

IHIグループの「求める発揮行動」と「求める人財像」

2023年、変革人財を育成する「IHIアカデミー」を設立

こうした流れのなかで、私たちは2023年4月に社長直轄の「IHIアカデミー」を設立しました。ミッションは、変革をリードする「グローバルで活躍する経営・専門人財」を輩出するパイプラインとなり、事業の成長に貢献することです。「挑む、越える、解き放つ」をスローガンに掲げ、新たなリーダーシップを発揮する変革人財の育成に取り組んでいます。

IHIアカデミーでは、経営人財と高度専門人財の育成プログラムをいくつも用意しています(図表3)。そのうち経営人財育成は、社長自らが経営幹部候補を指名する「EP(Executive Program)」、部課長相当クラスの人財プールに限定公募をする「CLP(Change Leader Program)」、より若い層に限定公募をする「GP(Growth Program)」の3クラスに分けています。このように重層的にプログラムを用意したのは、経営職が専門職であり、その育成には専門スキルやマインドセットの段階的な習得・訓練と実践経験が欠かせないからです。こうしたプログラムによって、数多くの挑戦、越境、能力の解き放ちを実現したいと考えています。

なお、私はIHIグループでこれまで34年ほど働き、そのなかで3度の越境を経験しました。若手のときに3年ほどアメリカ現地法人で学びながらグローバル人事を経験。次に、2013~2016年にIHIが買収したIonbondのPMI(Post Merger Integration)担当としてスイス・チューリッヒに駐在し、2016~2021年には3社が合併したIHI機械システムの取締役企画管理部長として、経営管理と組織統合を推進しました。私自身、これらの越境と挑戦から多くのものを得てきました。Ionbond時代に世界中を飛び回って白熱した議論を重ねたり、組織開発でIHI機械システムの組織内の壁を低くするなどの組織風土改革に取り組んだりしたことが、私の血肉となっているのです。だからこそ、会社の後輩たちにも越境経験、挑戦経験をたくさん積んでほしいと願っています。また、そうした経験が皆の能力やマインドを解き放つことにつながると信じています。

<図表3>IHIアカデミーの全体像

IHIアカデミーの全体像

Jammin’には「課題設定・挑戦・越境・実践」のすべてが含まれていた

――そのIHIアカデミーが、なぜJammin’に人財を派遣しているのでしょうか?

Jammin’は、CLPプログラムの1つとしてIHIアカデミー初年度(2023年度)から採用し、Jammin’2023、Jammin’2024ともに、部課長相当クラスを5名ずつ派遣してきました。その理由を一言で言えば、Jammin’には、IHIグループの求める発揮行動「課題設定・挑戦・越境・実践」の4つすべてが含まれていたからです。

これら「課題設定や問題発見の能力、失敗を恐れずに挑戦する姿勢、越境して広い社会に足を踏み入れる経験、実践をやりきる力」は、全従業員に必要な要素として設定されていますが、特にアカデミーがターゲットとする、変革をリードする「グローバルで活躍する経営・専門人財」には、より高いレベルが求められます。

一方で、この4つの能力を身に付けるには、単に知識やスキルの習得だけではなく、実践経験も必須と考えました。そこで私たちは、IHIアカデミー設立時に社外のアクションラーニングプログラムを調査し、優れたプログラムをいくつか発見しました。その1つがJammin’です。Jammin’を受講すれば、課題設定・挑戦・越境・実践のすべてを学んで帰ってきてくれるだろう。私たちはその考えのもとで、Jammin’への人財派遣を決めました。

なお、Jammin’をはじめとするCLP・GPクラスの経営人財育成プログラムは、基本的に毎年見直される人財プールに登録されているメンバーへの公募制です。公募制を取り入れたのは、自分で手を挙げるプロセスを入れることで、自分主語で語れる人財、主体的に挑戦する人財を増やしたいからです。

▼昨年度のIHIアカデミーの参加者を集めたアルムナイイベントの様子

昨年度のIHIアカデミーの参加者を集めたアルムナイイベントの様子

Jammin’ では、私たちの狙った越境経験の効果が得られている

――Jammin’2023、Jammin’2024の受講者にどのような変化が起こっていますか? Jammin’の成果をどのように捉えていますか?

受講者の声を聞く限り、社外のアクションラーニングプログラムの全てでほぼねらいどおりの効果を得られています。特にJammin’受講者は変化の度合いが大きく、これまで以上に積極的に発言するようになったり、意識して自分に発破をかけたりするようになったメンバーが目立っています。

具体的に、受講者からは以下のような感想が寄せられています。

  • 最初のコミュニケーションで、相手に対していかにクオリティが高くて分かりやすいものをプレゼンテーションできるかが、リーダーシップにとって非常に大切だと学んだ。
  • 自分の人生のなかで直接体験できることは限られているが、Jammin’で多様なメンバーと接するなかで、相手に共感することで相手の体験を追体験できるとあらためて感じた。
  • 「共感なくして越境はない」と思っている。いかに相手の立場になりきれるか、例えばいかにユーザーの立場に100%なりきれるかが越境だと学んだ。それを実現する手段が共感ではないかと思う。
  • 今までは「優れた技術を用いた製品をいかにお客さまに提供するか」という考え方でいたが、Jammin’を受講した後は、180度視点を変えて「社会から求められるものは何か」と考えるようになった。
  • 自分が当たり前だと思っていた仕事のやり方が、実はよそでは当たり前ではないことに気づいた。IHIのやり方と他社のやり方を比較してみて、どういう考え方がマッチするのかを見つめ直す良い機会になった。
  • いつの間にか「こうあるべき」との固定観念を持ってしまっていたが、それにとらわれる必要はないと気づかされた。自分はまだまだ成長できるとも気づかされた。

他には「失敗経験を積めるのが嬉しい」という声もよく耳にします。私たちは、まさにこのような越境経験をしてほしかったのです。

関氏の画像

今後は将来の経営幹部候補への「キャリアデザイン管理」に力を入れる

――IHIアカデミーの現状と今後について教えてください。

私たちは、Jammin’を含めたIHIアカデミーの施策に手応えを感じています。誰よりもアカデミー受講者たちが面白がってくれており、どんどん盛り上がってきています。受講者たちの目の輝きや発言も変わってきました。自分で手を挙げて研修を受講するメンバーは、やはり本気度が違うのです。これからアカデミーが浸透していけば、IHIグループ全体の雰囲気や風土も変わっていくはずです。

今後、私たちは2025年度までに、600名の変革人財プールの構築を目指しています。そのために、プログラムの充実や、ターゲット層への啓蒙活動、グローバル展開の他、アカデミー受講者のポテンシャルを見極めや将来の経営幹部候補人財のキャリアデザイン管理、などを進めていきます。

特に、Jammin’受講者も含めた将来の経営幹部候補への「キャリアデザイン管理」がカギになると考えています。先にも述べたとおり、私たちは個人の成長において、単に知識やスキルの習得だけではなく、実践経験も必須と考えており、すでに社内の事業領域などをまたいだ「今までにない異動」の事例を増やしています。こうしたタフなアサインは、個人にとってまさしく挑戦であり、越境でもあり、求める発揮行動を促す重要な機会なのです。タフなアサインを用意するのは実務的にはかなり骨の折れる仕事なのですが、今後も力を入れていきます。

それから、社内に変革のムーブメントを起こすためにも、アカデミー内のネットワーク形成や学びの共有、職場実践事例の共有が大事だと考えています。今後は、過去受講者たちのアルムナイイベントやフォローセッションなどを増やし、アカデミーの影響をIHIグループ全体に波及させていきたいと考えています。

【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

 

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