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一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査 第2回

データから見る「70代以降も働きたい人」とは?

  • 公開日:2023/12/06
  • 更新日:2024/05/16
データから見る「70代以降も働きたい人」とは?

日本では、寿命が延びるとともに健康寿命も延びています。厚生労働省の2019年の調査では、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となりました。70歳を超えても元気に働ける人が増えています。それに合わせて、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの雇用確保が努力義務となりました。70代以降も働きやすい環境が整ってきているわけです。 しかし、個人が70代になったときに実際に働くかどうかと、働きたいと思うかどうかは別問題です。では、「70代以降も働きたい人」はいったいどのくらいいるのでしょうか。70代以降も働きたい人とそうでない人の間には、どのような違いがあるのでしょうか。昨今、注目されている「人的資本経営」の観点からも、多くの経営者が自社の従業員が何歳まで働こうと思っているのか、長く働こうと思っている従業員はどのような従業員か知りたいのではないでしょうか。 私たちリクルートマネジメントソリューションズは、60年以上にわたり人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を生かし、働く皆さんの意識・特性を多角的に捉えるチャレンジを始めました。このシリーズ記事では、その分析結果を広く公表し、個と組織を生かすポイントを多くの皆さんと一緒に考えたいと思います。 働く皆さんの意識・特性を捉えるために実施した、オンラインアンケート調査『一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査』の回答者3708名をベースとした分析結果を2回に分けてご紹介します。第2回は、「70代以降も働きたい人」についての分析結果です。

「70代以降も働きたい人」は全体の14.2%
今の仕事は自分の成長につながると思っている40代・50代は、70代以降も働きたい傾向がある
モチベーション・リソースが満たされているほど、長く働きたい傾向がある
長く働き続けることをより肯定的に選択できる社会にするために

「70代以降も働きたい人」は全体の14.2%

<図表1>「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」の回答結果

<図表1>「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」の回答結果

「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」という問いかけに対し、70歳以上と回答した方は全体の14.2%でした。極端に少ない印象はないかもしれませんが、やはり多くの方が60代までには引退するイメージを持っているようです。

しかし、年齢別に見てみると、どうでしょうか。図表2のとおり、最も若い20~24歳では、70歳以上まで働きたい人はたったの8.2%に過ぎませんでした。55~59歳でも、70歳以上まで働きたい人は16.7%で、65~69歳まで働きたい人(30.7%)を加えても半数に届きません。20代はもちろん50代でも、70代以降も働きたいと思う人は少数派なのです。

ただ、60代になると話は変わってきます。60~64歳では70歳以上も働きたい人の割合が25%を超え、65~69歳では59.7%に上昇します。60代になると、「まだまだ働ける」という実感、「もっと働きたい」という意欲、あるいは70代以降も働かなくてはならない金銭的な理由などが明確になってくるのではないか、と考えられます。

<図表2>年齢別の「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」の回答結果

<図表2>年齢別の「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」の回答結果

今の仕事は自分の成長につながると思っている40代・50代は、70代以降も働きたい傾向がある

とはいえ、回答者の年齢が上がるほど、働き続けたい年齢も上がることは、当然のように思われるかもしれません。また、今回の調査の対象は現在働いている人であり、すでに働いていない人は調査の対象にはなっていないので、「現在の年齢より長く働く」という回答になりやすい、という偏りもあります。

ですから、次は、同じ年代の中でも「70代以降も働きたい」と回答した人とそうでない人の違いを見てみましょう。内容は、図表3のような、仕事や会社に対する認識についてです。

<図表3>仕事や会社に対する認識に関する質問項目

<図表3>仕事や会社に対する認識に関する質問項目

今回は、図表3の質問について、「(従来、定年退職の年齢と認識されてきたであろう)60~64歳まで働きたいと考えている人と、就業確保の努力義務を超える70代以降も働きたいと考えている人の現状認知の差」を5歳刻みで調べました。

なお今回は、現実的に70代以降も働くことを考え始める40代・50代にフォーカスしました。

図表4は、質問結果の年代別まとめです。統計的に確からしい差が見られた項目を抜粋し、70歳以降も働きたいと考えている人が60~64歳まで働きたいと考えている人より多い場合は「プラス(+)」、少ない場合は「マイナス(-)」で表記しています。

<図表4>仕事や会社に対する認識に関する質問結果の年代別まとめ

<図表4>仕事や会社に対する認識に関する質問結果の年代別まとめ

40代・50代には共通点が1つありました。

・「今の仕事は自分の成長につながると思う」人は、70代以降も働きたい傾向がある。

つまり、成長への期待を持って働いている人は、70代以降も働きたいと考える人が多いことが明らかになりました。成長への期待と働く意欲には一定の関係があるようです。

成長への期待という年齢に関係のない共通の項目がある一方で、年代ごとに統計的に有意な差がある項目も見られました。

40代前半(40~44歳)の70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴

次の項目で得点が高い傾向がありました。

・今の仕事を通じて成長できている
・各部門に、経営資源(ヒト・モノ・カネ)が適切に配分されている
・各部門が、顧客への提供価値を高めるために積極的に協力し合っている
・従業員が必要な能力やスキルを身につけるための、制度や仕組みが整っている

一言で言えば、40代前半は「自分は良い職場環境で働いていると感じる人」が、70代以降も働こうと思いやすい傾向にありました。良い職場環境で働いている人は、その後もその職場環境で長く働きたいと思うのかもしれません。しかし現実的には、何十年も職場環境が一定ということは稀で、また年代によって職場に求めるものも変わってくることが一般的でしょう。また現実的には、何十年も同じ職場で働き続けるのは難しい方も多くいます。この年代は、まだ60代・70代になるまでに十分な猶予があり、70代になっても働くことにそれほどリアリティを感じていない方も多いのかもしれません。

40代後半(45~49歳)の70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴

次の項目で得点が高い傾向がありました。

・今の仕事は会社や職場の成長・発展につながると思う
・今の仕事は顧客や社会に価値を提供することにつながると思う

40代後半は、「会社・職場・顧客・社会への貢献感」が、70代以降も働こうとする意欲を高める要因になっています。ちょうど「中年の危機」といわれる年代で、自分のあり方などに悩む時期です。そのため、「貢献できている」実感がある人が、長い期間働こうと思えるのかもしれません。

50代前半(50~54歳)の70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴

次の項目で「得点が低い」傾向にありました。

・今の年収に満足している
・従業員が必要な能力やスキルを身につけるための、制度や仕組みが整っている

50代前半は、いよいよリアリティを持って定年や引退について考え始める年代です。そのとき今の年収に満足していたり、現職の制度・仕組みが整っていたりする場合、70代以降は働く必要がないのではないと思えるようです。

50代後半(55~59歳)の70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴

次の項目で得点が高い傾向がありました。

・今の仕事は会社や職場の成長・発展につながると思う
・この会社の理念やビジョンに共感している
・従業員が必要な能力やスキルを身につけるための、制度や仕組みが整っている

50代後半は、70歳になっても働くかどうかを現実的に考える年代です。能力やスキルを身につけるための制度・仕組みが整っている組織に在籍する人は、実際に70代以降も働けるイメージがつきやすいのではないかと考えられます。また、組織貢献実感や理念・ビジョンへの共感がある人は、その会社で長く働き続けたいと思えるのでしょう。

モチベーション・リソースが満たされているほど、長く働きたい傾向がある

ここまで、年代別の分析結果をお伝えしてきましたが、もちろん、同じ年齢の人であっても考え方は一人ひとり異なります。ですから、長く働き続ける意欲を高めるための施策に、画一的な正解は存在しません。社員の長く働き続ける意欲を向上させるためには、個人の特性に目を向ける必要があります。その点を踏まえて、最後に、第1回レポートで注目した「モチベーション・リソース」と「70代以降も働きたいと思う人」の関係を見てみましょう。なお、モチベーション・リソースとは、働く皆さんのモチベーションの源泉のことです。

第1回レポートでは、モチベーション・リソースにフィットした仕事に就くほど、仕事へのエンゲージメントが高まる可能性があるという示唆が得られました。そこで今回は、「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている人ほど、70代以降も働きたいと思っている」という仮説を立てました。この仮説を確認したいと思います。モチベーション・リソースとのフィット度合いは、フィット数で計算しています。なお、フィット数の定義については、第1回レポートを参照ください。

「(従来、定年退職の年齢と認識されてきたであろう)60~64歳まで働きたいと思っている人」と「70代以降も働きたいと思っている人」を比較した図表5では次のことが明らかになりました。

・45~49歳、50~54歳は、70代以降も働きたい人の方が「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている」という統計的に有意な結果が出た。
・55~59歳に関しては、統計的に有意とまではいえないが、やはり70代以降も働きたい人の方が「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている」という結果が出た。
・40~44歳に関しては、統計的に有意な差はなかった。

つまり、45~59歳は「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている人ほど、長く働きたいと思っている」という仮説がおおむね正しいと考えられます。モチベーション・リソースが満たされているほど、長く働きたい傾向があるのです。

<図表5>働き続けたい年齢とモチベーション・リソースへのフィット数

<図表5>働き続けたい年齢とモチベーション・リソースへのフィット数

長く働き続けることをより肯定的に選択できる社会にするために

いつまで働くかは個人の自由です。とはいえ、多くの社員が「長く働こう」という選択を肯定的にできることは、個人にとっても組織にとってもより良いことではないかと思います。

今回の調査から正確な因果を示すことはできませんでしたが、40代・50代に関していえば、70代以降も働こうと思っている人は、仕事における成長への期待が強い傾向が見られました。また45~59歳においては、モチベーション・リソースが満たされているほど、70代以降も働きたい意欲が高い傾向もありました。この2点については、70代以降も働き続ける人を増やすヒントになるでしょう。

例えば、仕事を通じて成長を促したり、本人がやりたい仕事に就きやすい制度を用意したりして、人事施策やマネジメントの工夫で「長く働き続けたい」という思いを育むことができる可能性があります。20代・30代だけでなく、40代・50代のミドル世代に対しても、このような手当てが必要なのではないでしょうか。

私たちリクルートマネジメントソリューションズも、さまざまな理由で働くなかで長く働き続けることをより肯定的に選択できる社会になるよう、「個と組織を生かす」プロ集団として、今の状態を楽しめたり、肯定的な見通しが持てたりする後押しをしていけたらと考えています。

調査概要

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