導入事例
エンゲージメント向上のために、調査による可視化と職場のワークショップで改善へ
京王電鉄株式会社
- 公開日:2023/09/25
- 更新日:2024/07/09
事例概要
背景・課題
私たち人事部は、中期経営計画に合わせて、「人財確保、人財育成、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、組織風土・組織構造、エンゲージメント」を新たな人財戦略の5本柱に決めました。2022年、この人財戦略に沿って、従業員満足度調査から従業員エンゲージメント調査への移行を意思決定しました。特に、失敗を許容する職場づくりを進めて、誰もがもっとイキイキと創造・挑戦でき、成長実感ややりがいを得やすくする必要がありました。
検討プロセス・実行施策
2022年12月に「エンゲージメント調査」(エンゲージメント・ドライブ)を実施し、調査結果を受けて、2023年3月に「部課長・現業長向けワークショップ」を行いました。私たちはエンゲージメント向上を目的としており、最初から調査とワークショップをセットで実施すると決めていました。準備段階では、社内にエンゲージメント向上の必要性を周知徹底しました。このとき経営トップのメッセージが後押しになりました。
成果・今後の取り組み
調査の回答率は98%と満足のいくものでした。調査スコアは全体的には想定内で、これまでぼんやりと見えていたものがクリアに可視化されました。部課長・現業長向けワークショップは、大変好評でした。参加者は自組織をより良い職場にするために調査結果を活用し積極的に話し合いをしました。ワークショップの最後に、各職場の部長が改善の打ち手を具体的に宣言したことで、その後の職場改善も進んでいます。
背景・課題
社員のさらなる活躍を促すためエンゲージメント向上を人財戦略の柱の1つに
荻原:私たちは以前から、3年に1度ほど、従業員満足度調査を行っていました。これは主に鉄道事業をはじめとした各職場の安全性を担保するための調査でした。それが従業員エンゲージメント調査へと変わった背景には、新型コロナウイルスの感染症拡大の影響があります。
ご存じのとおり、コロナ禍では鉄道移動の需要が大幅に減少しました。私たちは突然、事業の根幹が揺らぎ、ビジネスの再考を余儀なくされたのです。この事態を受けて、京王グループの2022中期経営計画は、核となる鉄道事業と共に、まちづくりへの注力、事業構造改革の推進、稼ぐ力の強化などを前面に出す内容になりました。
私たち人事部は中期経営計画に合わせて、「人財確保、人財育成、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、組織風土・組織構造、エンゲージメント」を新たな人財戦略の5本柱に決めました。2022年のはじめ、この人財戦略に沿って、従業員満足度調査から従業員エンゲージメント調査に移行することを意思決定したのです。
このとき経営サイドからは、「社員のさらなる活躍」という観点を軸にして人財戦略や人財施策を考えてほしい、と求められました。そこで大きな課題の1つとなったのが、「失敗を許容する風土」をどのようにつくるか、ということでした。なぜなら、鉄道事業は安全安心が最優先で、失敗=事故は絶対に起こしてはならないものだからです。私たちの職場には、「失敗してはいけない」という認識が鉄道事業以外の職場にも根づいていました。しかし、社員が新規事業開発などで未知のチャレンジに踏み出したり、新たなアイディアを生み出したりする際には、失敗を許容することが欠かせません。そうした風土づくりは、社員の活躍を促すだけでなく、成長実感ややりがいにもつながるはずです。
つまり、これからの京王グループは、鉄道事業の安全安心を引き続き最重視しながらも、一方で失敗を許容する職場づくりを進めて、多様な個人がもっとイキイキと創造・挑戦し、成長実感ややりがいを得やすくする必要があるのです。そのために、私たちは従業員エンゲージメント向上を人財戦略の柱の1本に定めたのです。
検討プロセス・実行施策
調査とワークショップをセットで実施すると最初から決めていた
富澤:エンゲージメント向上プロジェクトのパートナーにリクルートマネジメントソリューションズを選んだ理由は2つあります。1つは、「私たちの現場を熟知していたから」です。リクルートマネジメントソリューションズとは以前から付き合いがあり、本社部門だけでなく、現業部門の状況もよく把握してもらっていました。
私たちの本社部門と現業部門では、働き方や風土などがかなり異なります。ですから、両部門はエンゲージメントの現状や課題も相当違うだろうと事前に予測していました。私たちには、こうしたことを深く分かってもらえるパートナーが必要でした。
荻原:もう少し具体的に説明すると、現業部門は本社とは勤務体系が異なり、なかには泊まり勤務や深夜勤務がある社員もいます。働き方がまったく違う以上、現状も課題も施策も変わるのが自然です。本社部門と現業部門の一本化は難しいのです。私たちは、こうした事情をよく理解してもらえるパートナーを求めていました。その点、特にリクルートマネジメントソリューションズの奥田トレーナーは、まるで我が社のベテラン社員のように多くの従業員の人となりをよく知っており、心強かったです。
富澤:もう1つは、「調査とワークショップをセットでお願いできたから」です。先ほど荻原が話したとおり、私たちはエンゲージメント向上を目的としていますから、最初から調査とワークショップをセットで実施すると決めていました。むしろエンゲージメント調査の結果に一喜一憂するだけで終わるのが、最も良くないと考えていたのです。ですから、リクルートマネジメントソリューションズに両方をお任せできる点も魅力的でした。
荻原:そうして、私たちは2022年のはじめから準備を始め、2022年12月に「エンゲージメント調査」(エンゲージメント・ドライブ)を実施しました。次に調査結果を受けて、2023年3月に「部課長・現業長向けワークショップ」を行いました。
富澤:準備段階では、社内にエンゲージメント向上の必要性を周知徹底しました。私たちは2022年にエンゲージメントという概念をはじめて社内に打ち出しましたから、従業員の多くはエンゲージメントとは何かがそもそもよく分かっていませんでした。そこで、部課長・現業長レベルには、会議体などの席で一から丁寧に説明して回りました。また、全社員向けにはeラーニングプログラムを用意して、エンゲージメントの理解を求めました。
このとき、経営トップからメッセージをもらえたことが後押しになりました。経営トップはまず、エンゲージメント調査は、組織課題の深掘りをするためのものであると定義しました。そのうえで、調査の結果、会社が変えるべきことは制度改革などを行うから、職場で変えるべきことは各職場が改善の打ち手を打ってほしい、と呼びかけたのです。このメッセージによって、会社の本気度が社内に伝わったと感じています。
成果・今後の取り組み
部長たちがワークショップで改善の打ち手を宣言し、各職場で実行中
荻原:まずエンゲージメント調査の成果ですが、回答率は98%と満足のいくものでした。会社の本気度が社内に伝わった結果だと感じています。トータルエンゲージメントスコアは、一般的には良好といわれる数値が出ました。ただ詳しく見ていくと、京王電鉄の強み・弱みが明らかになり、会社・職場・仕事の各スコアにおいて改善点も見つかりました。事前の予想どおり、本社部門と現業部門の結果は大きく異なっていました。部分的には意外に感じた点もあったのですが、全体的にはおおむね想定内で、「これまでぼんやりと見えていたものが、調査によってクリアに可視化された」と感じています。
富澤:部課長・現業長向けワークショップは、結果から言えば、大変好評でした。なぜなら、これまでの京王電鉄には、各職場の部課長・現業長が自組織を良くするために話し合う機会がほとんどなかったからです。もちろん、業務の打ち合わせは日常的にしているのですが、組織改善のために話し合う文化が根づいていなかったのです。そのため、自組織のエンゲージメント調査結果を分析し、より良い職場づくりについて議論するワークショップは非常に盛り上がりました。
ワークショップが盛り上がっただけでなく、その後の職場改善も進んでいます。その最大の要因は、ワークショップの最後に、各職場の部長が改善の打ち手をいつまでに、誰が、何を、どのように実行するか、具体的に宣言したことにあります。部長が宣言した以上、各職場は責任を持って改善を進める必要があります。早速、1on1を始めたり、オフィス内にカフェスペースを作ったりしようという案も出てきました。しかも、カフェスペースの運営を若手社員がするのでは若手の負担が増えるだけだから、全員でやろうといったことも話し合っていました。私たち人事は、ワークショップでこうした話し合いが次々に起きたことを喜んでいます。また、私たちがヒアリングした限りでは、多くの一般社員がすでに職場の変化の兆しを感じ取っています。
職場改善はまだ始まったばかりですが、第一歩を踏み出すことはできました。今後、エンゲージメント調査は毎年行う予定です。部課長・現業長向けワークショップは、次回の開催を決めており、その後も各職場が改善に向けて自走できるようになるまで続けるつもりです。
荻原:付け加えると、会社側もエンゲージメント向上へ向けた改革を進めています。例えば、総合職の人財育成については、ゼネラリスト育成を全面に出していましたが、今後は専門性も重要な要素としていきます。本人・上司・人事の三者間で情報を共有する施策を新たに始め、社員一人ひとりのキャリア志向にできるだけマッチした配置・異動を実現しようとしています。社員のキャリアに関する想いを叶え、専門性を高めてもらうことは、エンゲージメント向上にもつながるはずです。
2023年3月期から、有価証券報告書に人的資本情報の開示が義務づけられました。エンゲージメントスコアの開示はまだ義務化されていませんが、京王電鉄では2023年3月期に、必須3項目(女性管理職比率・男女間賃金格差・男性育児休業取得率)に加えて、「トータルエンゲージメントスコア」と「職場の心理的安全性スコア」を独自に公開しました。これは、私たちがエンゲージメントを経営上の重要項目と定めた何よりの証拠です。私たちは今後も、エンゲージメントを高めるために動き続けます。
ソリューションプランナーの声
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューションプランナー 杉本 千霞子
(チーム京王電鉄様:写真左から杉本 千霞子、トレーナー 奥田 宏次、コンサルタント 水島 晶子)
鉄道業界は、コロナ禍によるダメージを最も受けた業界の1つといっても過言ではないと思います。
当然のように鉄道収入があり、都市のインフラとして機能してきたのに、これからはいかに移動需要を喚起するかを考えなければならないですし、鉄道以外の新規事業を軌道に乗せなければならない。
安泰と思って入社してきた社員に、この変革のなかで、いかにエンゲージメント高く働いてもらうか、チャレンジしてもらうか、が鍵となるタイミングでした。
ご支援させていただくなかで、人事部の皆様の活動について素晴らしいと感じたことが大きく分けて2つありました。
1つは、地道にエンゲージメントとは何か、なぜ高める必要があるのかを社内で理解・浸透させていく活動をしていただけたこと。この結果、高い回答率とワークショップの成功があったと考えます。2つ目は、調査を取って終わりにせず、経営と人事で取り組むべきことを具体化し、社内にオープンにしたこと。この結果、経営の本気度が伝わり、各職場のエンゲージメント向上に向けて部長主導の動きが醸成できました。
変革の入り口に立ったところだと思いますので、引き続き「チーム京王電鉄様」でご支援していきたいと考えております。
企業紹介
京王電鉄株式会社
京王グループは、運輸業、流通業、不動産業、レジャー・サービス業など大きく5つの事業グループから構成されており、従業員数は全体で約2万人になる。新宿からはじまる東京西部一帯を基盤に、そのスケールメリットとグループの総合力を生かした多角的な事業を展開し、地域社会の発展のために、沿線価値の向上に取り組んでいる。引き続き、沿線住民の皆様の要望に応え、より良いサービスの提供を目指していく。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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