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連載・コラム人事データ活用入門 第10回

複雑なメカニズムを解きほぐす「共分散構造分析」

執筆者情報
HR Analytics & Technology Lab
所長
入江 崇介

プロフィール

人と組織を取り巻くメカニズムは複雑です。例えば、「仕事でパフォーマンスをあげるためには、適切な職務行動を取る必要がある。また、そのとき所属しているチームが健全に機能している必要がある」「適切な職務行動を取ることが出来る確率は、性格特性によって異なる」「チームの機能状況は、チーム内でのビジョンの共有状況によって変化する」のように、さまざまなことが絡み合い、人や組織は機能しています。
このような複雑なメカニズムを解きほぐすために利用できる強力な手法が「共分散構造分析」です。

階層的な関係性を検証できる

では、共分散構造分析の特徴を確認していきたいと思います。1つ目の特徴は、図表1のように、階層的な関係性を検証できることです。

この他にも例えば、「従業員満足が顧客満足を高め、顧客満足が業績を高める」など、階層的な関係性を検証したいことは多々あると思います。もちろん、図表2のような関係性についても検証が出来ます。

複数に分かれる経路の関係性を検証できる

2つ目の特徴は、図表3のように複数に分かれる経路の関係性を検証できることです。

経営理念に基づいた行動を起こすには、「経営理念を理解し、経営理念に共感する」「経営理念に共感し、経営理念に基づいた行動を起こす」「経営理念を理解し、経営理念に基づいた行動を起こす」という3つの経路があると考えられるならば、共分散構造分析で図表3のような関係性の検証を行うことができます。

複数の変数の背後にある共通要因を仮定できる

3つ目の特徴は、図表4のように、複数の変数の背後にある共通要因を仮定し、そのもっともらしさを検証できることです。

例えば、「経営理念への共感」は、「経営理念を身近に感じる」「経営理念を実践したいと思う」「経営理念に貢献したいと思う」という3つの心理状態に共通するものであると考えられるのであれば、このような関係性の検証を行うことが出来ます。

共分散構造分析の実践例

これら3つの特徴を合わせた共分散構造分析の実践例が、図表5です。

こちらの分析で用いたデータは、公開情報から収集した「企業の業績(『業績総合指標』)」と、調査で取得した「企業の組織能力(『実行・変革力』『ビジョン共有力』『知の創出力』)」です。よって、「どのような組織能力が、企業の業績を高めているか」を表すモデルです。

確認できるのは、
・直接、「業績総合指標」を高めているのは、「実行・変革力」
・「実行・変革力」を高めているのが、「ビジョン共有力」と「知の創出力」
・「ビジョン共有力」は、「知の創出力」も高めている
ということです。詳しい分析内容などに興味のある方は、研究レポート「持続的成長企業の組織・人材マネジメントを探る 第2回」をご参照ください。

なお、図表中の数値は「標準化パス係数」というもので、相関係数のようにマイナス1からプラス1の間の値を取るものです。プラスの値であれば、「矢印の付け根にある変数が、矢印の先にある変数を高める」ことを示します。この値の絶対値の大きさによって、影響度の大きさを確認することが出来ます。

また、GFIやAGFI、またRMSEAという値は、検証したモデル全体のあてはまりを示すものです。GFIやAGFIは値が高い場合、RMSEAは値が低い場合に、あてはまりがよいと考えます。この値も見ながら、試行錯誤しながら仮説に照らしてあてはまりのよいモデルを確定していきます。

共分散構造分析は、これまで紹介した回帰分析や因子分析を融合したような手法で、非常に応用範囲が広いものです。残念ながら、Excelでは実施が出来ないため、IBM SPSS Amos(有料)やR(無料)などのソフトウェアを使う必要がありますが、関心のある方はぜひ利用に挑戦してみてください。

おわりに

今回の第10回をもって、本連載は終了いたします。約2年間、本連載をご覧いただきありがとうございます。

まだまだ、たくさんの分析手法がありますし、さまざまな分析手法を用いた「事例」もあります。これからも、折を見てそれらの情報について共有していこうと考えておりますので、ぜひご期待ください。

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