人事データ活用入門 第7回 「分散分析」で職種別の仕事満足度を比較する

執筆者情報
HR Analytics & Technology Lab
所長
入江 崇介

第6回でご紹介したt検定は、「2つ」のグループや時点の差を比較するための方法です。
今回は、「3つ以上」のグループや時点の差の比較をする際に用いる「分散分析」についてご紹介します。


分散分析とt検定の利用場面の違い

人事データの分析では、「職種別の仕事満足度の比較」「役職別の仕事満足度の比較」「月別の労働時間の比較」などを行う場合に、3つ以上のグループや時点の差に着目した分析を行うことも多くあります。また、「職種別の仕事満足度を、さらに役職別に比較」のように、複数の切り口を組み合わせて差の分析を行うこともあります。

このようなときに、グループ間や時点間の「差の有無」を確認するための方法が、「分散分析」です。t検定との比較は、図表1のとおりです。

なお、分散分析では、比較を行う際の切り口を「要因」といいます。よって、切り口が「職種別比較」のように1つであれば「一要因の分散分析」、「職種別かつ役職別比較」のように2つであれば「二要因の分散分析」といいます。それぞれ、「一元配置の分散分析」「二元配置の分散分析」といわれることもあります。
また、分散分析には、t検定同様、異なる複数のグループの差を比較する「対応のない分散分析」と、同一の人物・職場などの複数時点の差を比較する「対応のある分散分析」があります。

今回は、「職種別の仕事満足度の比較」というケースを例にして、「対応のない一要因の分散分析」についてご紹介します。

分散分析と多重比較をセットで用いる

では実際に、「営業職」「企画職」「スタッフ職」という「3つの職種別の仕事満足度の比較」の仕方をご説明します。

まず、3つの職種の比較をする場合、図表2のように、3つのパターンの「差」があります。

(1)〜(3)の差のうち「いずれか」が統計的に有意か、すなわち「どこかに、差があるか」を確認するのが「分散分析」です。

しかし、分散分析では、(1)〜(3)のうち「どこかに、差があるか」は分かっても、「どこの差が、統計的に有意か」、すなわち「どこに、差があるか」は分かりません。それを確認するためには、「多重比較」を行います。

このように、「3つ以上のグループの差の比較」の際には、図表3のようなステップで、分散分析と多重比較をセットで用います。

分散分析と多重比較のアウトプット例

次に、実際に分散分析と多重比較をした結果の例をご紹介します。なお、Excelの分析ツールでは、分散分析は行えるのですが、多重比較は行うことができません。そこで、今回はSASというソフトウェアを用いた分析結果になります。

まず、分散分析の結果は、図表4のとおりです。

このうち、Pr > Fの値が有意確率p値です。この値が小さいほど、「差があることが確からしい」ことを示します。t検定同様、0.05未満であれば差があると考えるのが一般的です。図表4の0.01という結果であれば、「職種別に差がある」と考え、多重比較を行います。なお、F値は、「Modelの平均平方(職種間のばらつき)÷Errorの平均平方(職種内のばらつき)」であるため、職種による差があるかないかを示す指標です。この値をもとに、p値が求められます。

続いて、多重比較の結果は、図表5です。

多重比較にはさまざまな方法がありますが、ここでは「シェッフェの方法」を用いています。有意な差があることを示す***がついているのは、企画職と営業職の差です(企画職−営業職、営業職−企画職)。よって、差があるのは、「企画職と営業職の間のみ」です。なお、「企画職−営業職」の平均の差がプラスであるため、企画職の方が仕事満足の得点が高いということも分かります。

ここまでの分析結果をまとめると、
 ・職種によって、仕事満足度に差がある
 ・仕事満足度の差があるのは企画職と営業職の間で、企画職のほうが仕事満足度が高い
と解釈できます。

次回は「対応のない二要因の分散分析」

今回は、「職種」という1つの切り口での差の比較を例に「一要因の分散分析」を紹介しました。しかし、差を比較する際には、「職種別かつ業績別の仕事満足度の差の比較」「職種別かつ月別の労働時間の差の比較」など、複数の切り口での分析に関心があることも少なくないと思います。分散分析は、冒頭でご紹介したように、このような場合でも用いることができます。よって、次回はそのような場合を想定して、「対応のない二要因の分散分析」をご紹介します。

・分散分析を利用した研究例はこちら
経営人材育成の効果に影響を及ぼす要因の検討

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