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THEME 理論/技術

連載・コラム人事データ活用入門 第9回

「因子分析」でアンケート項目のまとまりを発見する

執筆者情報
HR Analytics & Technology Lab
所長
入江 崇介

プロフィール

従業員の満足度や職場の活性度の把握を目的に、社内でアンケートを行っている企業は少なくありません。また、従業員の行動特徴を把握するために360度サーベイ(多面評価)を行っている企業もあるでしょう。

実施にあたっては、「職場に対する満足度を測る項目」「上司に対する満足度を測る項目」など、観点別に複数の項目を用意していることもあると思います。あるいは、もともと意図はしていなかったものの、結果的に共通項のある質問が複数含まれていることもあるかもしれません。

このようなアンケートやサーベイの質問項目同士の「まとまり」を発見する方法として、今回は「因子分析」を紹介します。

アンケート調査の例

例えば、「管理職のメンバーに対する育成行動」の実態を把握するために、社内で図表1のようなアンケートを実施したとします。

このとき、一つひとつの項目の平均値を算出し、「社内で実践されていること、されていないこと」を確認するというのは一つのアンケート結果の活用方法です。その際さらに、「関係が強い項目同士をまとめて、分かりやすく報告書にまとめよう」「質問項目が多いので、複数の項目をまとめて合成指標にして、全体の傾向を分かりやすく報告書にまとめよう」という関心をもたれるかもしれません。そのためには、「どの項目同士が類似しているのか」を確認する必要があります。その際に用いる方法が「因子分析」です。

因子分析のイメージ

因子分析は、アンケートの質問項目などで直接観測された複数の値(変数)の背後にある「因子」を探る試みです。因子とは、なんとも分かりにくい概念ですが、直接観測された複数の変数の背後にある、直接測定できない、潜在的な共通性のようなものです。図表2の例であれば、「日々の育成支援」「計画的育成」「off-JT活用」の3つが因子です。

それぞれの因子と関係性が強い項目は、近しいものと考えることができます。よって、図表2であれば、「質問項目1〜質問項目4は、『日々の育成支援』という概念で近しいと考えられる質問項目」となります。

「どの項目同士が類似しているのか」は、質問項目の意味内容から考えることもできますが、因子分析を行えば統計的に確認することができます。

因子分析の結果

では、因子分析を行うと、どのような結果が得られるのでしょうか。さまざまな分析結果が得られますが、今回は特に注目していただきたい、図表3の「因子負荷量行列」を紹介します。なお、分析にはSASというソフトウェアを用いました。

表内の数値が、「因子負荷量」です。それぞれの項目と因子との関係の強さを示すものです。この値が0.4以上であれば、「項目と因子の関係が強い」とする基準が比較的よく用いられます。図表3では、0.4以上の値に網がけをしています。

「それぞれの項目は、いずれか1つの因子と関係が強い」ということが表から読み取れると思います。実際に因子分析を行う際には、最初からこのような結果が得られるとは限らないので、項目と因子の関係を見ながら、納得感の高いまとまりになるまで、図表4のように試行錯誤を重ねることになります。具体的には、因子の数を増減したり(分析ソフトで指定することができます)、「複数の因子と関係が強い項目」を分析から除いたりします。

なお、それぞれの因子がどのような意味をもつものなのかは、分析者がその因子と結びつく項目の内容を見て考察します。例えば今回の、因子1と関係が強い項目は、メンバーに対するそのたびごとの育成支援行動と考えられるので、「日々の育成支援」と解釈しました。そして、因子2と関係が強い項目は、「計画的」というニュアンスのものが多いので、「計画的育成」と解釈しました。また、因子3と関係が強い項目は、研修・セミナーの活用という言葉を含むものなので、「off-JT活用」と解釈しました。

因子分析を行う効果

このように因子分析を行うことによって、「どの質問項目同士が近しいものなのか」「それぞれに共通することは、どのような内容・概念なのか」ということを考察することができます。実施したアンケートの構造を把握、吟味するために有効な分析です。また、それによって冒頭にお示ししたように、「意味的に近しい質問項目を、近くにまとめて報告書にし、報告を聞く人の理解を促す」「意味的に近しい質問項目を合成指標にして、目にする数値の数を絞って、全体の傾向をつかみやすくする」ことを、根拠を持って行うこともできます。アンケートやサーベイの内容を、正しく、かつ、分かりやすく理解することを支援してくれる分析といえます。Excelでは分析できないため、ハードルが高いとは思いますが、ぜひ、社内でアンケートやサーベイを実施した際には、「因子分析」を活用してみてください。

次回は、複数の変数の関係性を柔軟に確認することができる「共分散構造分析」をご紹介します。

・因子分析を利用した研究例はこちら
ホワイトカラーにおけるリフレクション尺度開発の試み

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