人事データ活用入門 第8回 「二要因の分散分析」で職種別・業績別の仕事満足度を比較する

執筆者情報
HR Analytics & Technology Lab
所長
入江 崇介

第7回に続き、今回も分散分析を取り上げます。
今回は、「職種別かつ業績別」のように、「2つの切り口」を同時に扱って差の比較を行う、「対応のない二要因の分散分析」についてご紹介します。


対応のない二要因の分散分析を行う意義

まず、第7回にご紹介した分散分析で用いる用語をおさらいします。

分散分析では、比較を行う際の切り口を「要因」といいます。よって、切り口が1つであれば「一要因の分散分析」、2つであれば「二要因の分散分析」といいます。

また、分散分析には、異なる複数のグループの差を比較する「対応のない分散分析」と、同一の人物・職場などの複数時点の差を比較する「対応のある分散分析」があります。

今回は、「『職種別かつ業績別』の仕事満足度の比較」というケースを例にして、「対応のない二要因の分散分析」についてご紹介します。

では、対応のない二要因の分散分析を行う意義は、どのようなものなのでしょうか。例えば、職種、業績、仕事満足度という3つのデータがある場合を考えてみてください。皆さんは、どのような分析を行うでしょうか?「職種別の仕事満足度の比較」「業績別の仕事満足度の比較」「『職種別かつ業績別』の仕事満足度の比較」と、それぞれの関心に応じた分析を行うと思います。

「職種別かつ業績別」のように、2つの切り口で差の分析を行うと、後の例にあるように、「組み合わせの効果」を確認できます。私は、これこそが対応のない二要因の分散分析を行う一番の意義だと感じています。

なお、分散分析では、「職種別」や「業績別」のように1つの切り口が単独で差の有無に与える影響を「主効果」「職種別かつ業績別」のように2つの切り口の組み合わせが差の有無に与える影響を「交互作用」といいます。つまり、「交互作用」を確認できることが、二要因の分散分析という手法で分析することの意義であると思います。

続いて、主効果と交互作用について、具体的なイメージの説明をします。

主効果と交互作用

図表1は、仕事満足度の得点が、職種(営業職・企画職)や業績(高業績群・低業績群)によってどのように異なるのかを見たグラフです。図表1−1から図表1−4をそれぞれご覧ください。

まず、図表1−1と1−2を見比べてみてください。直線の傾きと、実線・破線の間隔が異なることが分かります。これらの図の例で直線の傾きがあるということは、職種別に仕事満足度の差があることになります。また、実線と破線が離れているということは、業績別に仕事満足度の差があることになります。よって、職種、業績について、図表1−1はいずれにおいても「主効果がない」、図表1−2はいずれも「主効果がある」といえます。なお、両者とも、実線と破線の傾きは同一なので、業績と職種を組み合わせた効果はないため、「交互作用はない」ということになります。

では、「交互作用がある」とは、どのようなものでしょうか。1つの例は、図表1−3のように、職種によって業績別の差の大きさが異なる、すなわち直線の傾きが異なる場合です。図では、営業職よりも企画職において、より業績による仕事満足度の差が大きくなっています。

もう1つの例は、図表1−4のように、直線が交わっている場合です。図では、営業職では高業績群の仕事満足度が低く、企画職では高業績群の方が仕事満足度が高いというように、職種によって業績と仕事満足度の関係が逆転しています。

この他にもさまざまなバリエーションがありますが、「職種別と業績別」という2つの切り口を同時に用いて差を確認した際に、「組み合わせによる特別な差の傾向」が表れる場合、交互作用があるということになります。

「交互作用」を発見することは、実務上も大きな意味があります。例えば図表1−3のような場合、「高業績群の方が仕事満足度が高い」という傾向が企画職では大きく、営業職では小さいということが確認できれば、それは業績と連動したインセンティブの効果が営業職と企画職で異なることを意味するのかもしれません。このようなことを掘り下げることで、職種別に仕事満足度を高めるためのヒントを得ることができます。

対応のない二要因の分散分析の進め方

対応のない二要因の分散分析の進め方は、図表2のようにやや複雑です。

まず、後ほどご紹介する「分散分析表」を用いて、分散分析全体が統計的に有意であるか、すなわち職種、業績、またその組み合わせの効果によって、差が生じるかを確認します。その際、有意確率p値が有意水準である0.05を下回るかを確認します。分析全体が統計的に有意である場合、交互作用が統計的に有意であるかを確認します。

続いて、交互作用が有意な場合、「営業職だけを取り上げた場合に、業績別に仕事満足度の差があるか」のように、一方の要因を1つに固定(上記の例の場合、職種のうち営業職)した場合に、他方の要因(上記の場合、業績の高低)によって統計的に有意な効果が見られるかを確認します。このような分析を、「単純主効果」の分析といいます。

単純主効果の分析には、そのための特別な方法を用いることを勧める研究者もいれば、上述のように「営業職だけを取り上げた場合に、業績別に仕事満足度の差があるか」のようにデータを絞り込んだ一要因の分散分析を行う方法を用いることを勧める研究者もいます。後者の方が簡便なので、実務の上では、それでも十分かもしれません。

いずれの場合も、単純主効果が有意な場合は、その要因のなかで、「どこに差があるのか」を確認するための多重比較を行います。なお、多重比較については、第7回で説明していますので、そちらをご確認ください。

また、交互作用が有意でない場合でも、図表1−2で示したとおり、主効果がある場合があります。よって、交互作用が有意でない場合は、主効果が統計的に有意か否かを確認し、有意な場合は多重比較を行います。

なお、今回は、「分析全体の有意性を確認する」「交互作用を確認する」「主効果を確認する」に焦点を絞って、続いて実際のアウトプットを確認します。


対応のない二要因の分散分析のアウトプット例

では実際に、「営業職」「企画職」「スタッフ職」という3つの職種と、「高群」「中群」「低群」という3つの業績区分、両者を同時に用いて仕事満足度の差を確認した場合の分析例をご紹介します。なお、分析にはSASというソフトウェアを用いています。

分散分析の結果は、図表3のとおりです。

特に着目していただきたいのは、有意確率p値であるPr > Fの値です。この値が小さいほど、「差があることが確からしい」ことを示します。0.05未満であれば差があると考えるのが一般的です。

この分散分析表は、まずは上段の表から確認します。こちらは、「職種」「業績」という2つの主効果と「職種×業績(職種別かつ業績別)」という1つの交互作用を用いた分散分析全体で、仕事満足度の有意な差を見出しているかを示すものです。ここでのPr>Fの値が0.05未満であれば、主効果や交互作用について下段の表で個別に確認します。

実際に確認してみると、この例では、上段のPr > Fの値が0.05未満であるので、下段を見ると「職種×業績」の交互作用のPr > Fのみが0.05を下回っているので、交互作用のみが統計的に有意であることが確認できます。

よって、さらに「単純主効果」の分析を行うことになるのですが、ここでは割愛します。その代わりに、簡便な代替法ではありますが、図表4のような「職種別かつ業績別」に平均値差を求めたグラフを示します。

この例では、「業績が高い営業職でのみ、仕事満足度が高い」結果になっているので、確かに交互作用があることが確認できました。

統計的に有意な差であるか否かは、今回ご紹介したとおり「対応のない二要因の分散分析」を行う必要がありますが、それを行わないとしても複数の要因を組み合わせて差を確認することは、本例のように新たな発見をするチャンスとなります。ぜひ、皆さんもお手元のデータで、分析にチャレンジしてみてください。


第6回のt検定に始まり、3回にわたって「差の検定」について紹介をしてきました。特に分析に用いるデータ数が少ない場合は、t検定や分散分析は有効な方法なので、活用してみてください。

次回の第9回は、意識調査の調査構造の確認などに用いる、「因子分析」についてご紹介します。

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