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企業事例

全社の複合的な問題解決に新人事制度を導入 MIXI

報酬・評価・働き方 三位一体で見直す「総合報酬」を実現

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  • 公開日:2026/09/07
  • 更新日:2026/09/07
報酬・評価・働き方 三位一体で見直す「総合報酬」を実現

通常、金銭報酬たる給与や昇格と、非金銭報酬である福利厚生は、管轄の違いもあり、別々に決められることが多いが、どちらも人的投資という意味では同じだ。このたび、MIXIは両者を総体的に捉えた新人事制度をスタートさせている。株式会社MIXI 人事本部 人事戦略部部長 加藤里紗氏にその内実を取材した。

金銭報酬/非金銭報酬をトータルで設計する
住宅手当やアプリ補助を廃止しカフェテリアプランを導入

金銭報酬/非金銭報酬をトータルで設計する

ゲームやSNSサービスを手掛ける大手IT企業のMIXIが2026年4月から、給与などの金銭報酬だけではなく、成長支援や働く環境の整備といった非金銭報酬も一体で捉える「トータルリワード」の考え方に基づく新人事制度を導入した。

その背景を同社人事本部人事戦略部部長の加藤里紗氏が説明する。「直接の引き金となったのは激化する人材獲得競争です。昨今の賃上げの流れを勘案し、当社としては10年以上ぶりという報酬水準の引き上げを行ったのです。さらに当社では、標準未満の厳しい評価をつけることを厭う文化が定着しており、個人の目標達成と組織や全社レベルの成果や業績との連動が希薄になっていました。これらの問題を総合的に解決したいという思いが制度改定の背景にありました」

トータルリワードを選択した理由はこうだ。「金銭報酬の部分は時代に合わせて変えていくべきです。一方で、当社の仕事のやりがいや働きやすさといった非金銭報酬はかなり整っており、それらをトータルの報酬(リワード)として設計し、見せていきたいというねらいがありました」

具体的には、①市場競争力のある報酬水準の実現、②評価や福利厚生を通した活躍と成長の支援、③個人のパフォーマンス最大化と組織成果創出の両立へ、働き方の再整理、という3本柱から成り立つ。順に見ていこう。

最初は、①市場競争力のある報酬水準の実現である。「外部の優秀な人材を惹き付けるため、報酬レンジの下限を一般社員で約20%、中核社員から初級管理職で約20~30%、上級管理職で約50%引き上げました。高度の専門性を有するスペシャリスト層も同様の引き上げを行いました」

2つ目の柱は、②評価や福利厚生を通した活躍と成長の支援だ。

まずは評価制度を一新させた。具体的には、バリューである「発明(創意工夫による課題解決)・夢中(主体性とリーダーシップ)・誠実(信頼と協働)」の体現と組織成果への貢献の2つを評価の軸に据えた。バリューの体現が給与や昇給・昇格に、組織成果への貢献が賞与に反映される。「旧制度はSS・S・A・B・Cの5段階評価で、真ん中のAが標準評価でしたが、ここに『期待通り』と『期待には届かないが下位評価ではない』が混在し、評価が曖昧になっていたのです。これを改め、同じ5段階ですが、『Beyond(水準を上回る)』『Standard(水準通り)』といった、メッセージが明確な評価に変えました。水準を上回る評価の場合は昇給、下回る場合は降給、水準通りの場合はステイとなります」

以前より昇給額も高くなる。「それも相まって、当社で弱かった『メリハリある評価』の実現につながることを期待しています。実際の運用はこれからですが、管理職が『今までと同じ仕事に取り組んでも給料が上がりにくくなるわけですから、新しい仕事をください』と部下に言われた、という声を聞いています。そのような受け止められ方は人事として本望です」

こうした例が象徴するように、新制度下では、評価者、つまり上司には部下との対話力が重要になる。「当社には1on1をはじめとして対話する文化が根付いていたものの、評価に関する対話はどちらかといえば苦手としてきました。そこで、評価者研修を組み込んだ上で、フィードバックにおける対話の質を高めるためにAIの活用にも取り組み始めています」

加えて、以前の制度では役職と等級が紐づかない仕組みになっていた。「低い等級でも、役職にチャレンジできるようになっていたのですが、今回、職務を担ってもらうのであれば、相応の等級を付与した方がいいという声が人事内で上がり、職務ごとの最低等級を当社として初めて定めました。管理職になるのは損だ、という風潮は当社にも少なからずあります。今回の制度改定でそれが少しでも払拭されることを期待しています」

住宅手当やアプリ補助を廃止しカフェテリアプランを導入

非金銭報酬である福利厚生にもメリハリがつけられた。会社の近隣に住むと毎月3万円が支給される住宅手当と、スマホ黎明期にできるだけ新しいサービスに触れてもらう目的で設けられたアプリ決済用カード補助が一部廃止された。前者に関してはリモート勤務主体で遠方に住む社員が増えたこと、後者はスマホを巡る時代状況が一変したことが廃止の背景にある。

代わりに導入されたのが「MIXIカフェテリアプラン」。社員一人ひとりに年間24万というトップ水準のポイントが付与され、スキルアップや健康支援、育児、介護といった領域における1000件以上のメニューから好きなものを選択できる。

特筆すべきは、同社のバリューの1つ「発明」に紐づいた独自制度「発明補助」を、年間5万ポイント分、設けていることだ。音楽ライブ、アート鑑賞、スポーツ観戦、ゲームなどのデジタルコンテンツなどの参加費用に充当できる。

バリューと福利厚生を結びつけたのは画期的といえる。「カフェテリアプランの評判は抜群で、前のめりで使ってくれている社員が多い」

最後が、③個人のパフォーマンス最大化と組織成果創出の両立へ、働き方を再整理、となる。「コロナ禍でリモート勤務が主体になったのですが、どちらをどれくらい推奨するのか、全体方針を出さずに来たのです。今回、コミュニケーションサービスを事業とする企業であることを確認し、各自の生産性が高くなるように、出社頻度は各組織で決めていいとしながら、対面の機会をしっかり設け、チームで働くべきだと強調しています」

新しい仕組みを構築する上では経営層との対話も必須だった。「2025年2月以降、経営層とは最低月1回、多いときは2週間で4、5回の頻度で対話をしました。制度の中身を詰めるより、会社がどこへ向かうのかという大枠の意思をすり合わせることに力を注ぎました。社員1人あたりの利益を示す数値もすべて提示し、それに人事がKPI(重要業績評価指標)としてコミットすることで、全体の合意形成を図りました。われわれの覚悟と責任を経営層も評価してくれたようです」

社員の受け止め方はどうだろうか。「『何かが変わる』という空気が社内に漂っています。これまでにない厳しさを予想する反面、いい緊張感にもつながっている。今のところねらい通りです」

【text:荻野進介 photo:伊藤 誠】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.83 特集1「モチベーションを支える評価・報酬のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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