STEP

企業事例

社員のやる気の最大化と業績の向上は両輪で回るもの サイバーエージェント

会社は変化するもの 社員も変化対応力を身につけるべき

読了時間:6

  • 公開日:2026/06/08
  • 更新日:2026/06/08
会社は変化するもの 社員も変化対応力を身につけるべき

社員のキャリア選択の自由を認め、それを支援することは企業が良質な人材を集める上で不可欠なこととなった。一方、それにこだわりすぎると、会社都合の異動ができなくなる恐れがある。その加減をどうしたらいいのか。株式会社サイバーエージェントの例を見てみよう。常務執行役員 CHOの曽山哲人氏にお話を伺った。

経営の意思として個の意思を尊重する
年に2回行われる社内公募制度キャリチャレ
年に70%の社員が異動を経験 生き物のような社内労働市場

経営の意思として個の意思を尊重する

サイバーエージェントは「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンのもと、1998年に設立されたインターネット企業だ。ネット広告から始まり、ゲーム、テレビなど、多彩な事業を展開する。社員数は連結8000名、単体2600名だ。

同社の設立から5年目までの離職率は高かった。成果主義の行きすぎが原因だ。常務執行役員 CHOの曽山哲人氏が話す。「伸びる会社を作るには長く安定して働ける環境を整備しなければならない。それまでのやり方や考えを否定し、『社員を大事にする』という言葉を、社長の藤田晋以下、経営の意思としました。藤田は『個のやる気』という言葉もよく使っており、それも人事の基本となっています」

個のやる気を高めるには本人の意思が尊重されなければならない。その象徴ともいうべきが新卒の第1志望部署への配属率で、2025年度は実に95%を誇る。配属ガチャがほぼない状態だ。

この高さの背景には2つの事情がある。1つは各事業部で希望職種と人数を決め、全体の採用ポートフォリオを明確に定めた上で、それに合致する採用を行っていること。もう1つは内定者アルバイトの活用である。「週1回でも、配属希望の職場で働いてもらうんです。そこで人と仕事にフィットするかを確かめてもらう。バイト中に内定を辞退する学生もいますが、それはお互いにとってハッピーなことです。今では総合職内定者の8、9割はバイトに入ってもらっています」

年に2回行われる社内公募制度キャリチャレ

本人の意思を尊重するという意味では、既存社員向けに社内公募制度が2005年にスタートしている。キャリアチャレンジ制度、略してキャリチャレだ。それまでも似た制度はあったが、応募数が少ない上に、低業績社員の応募が多かった。2005年に曽山氏が人事に異動し、仕組みの改善を進めた結果、現在は年間100から140の応募があり、その7割から9割が異動につながっている。「一度落ちて、半年後に同じポストに再び挑戦してもいいんです。半年ごとに応募し続け、異動を実現させる社員もいます」

応募者を増やすため、すべてのプロセスを秘密裏に行うように変えたのが大きい。決定後、仲の良かった上司に異動を告げるのが苦痛という場合、人事が経営と連携して、「辞令」として伝えることまで行っている。「応募がばれて上司に怒られた挙げ句、合格せず、元の職場で働き続けたというケースが最悪です。これをなくしたかった」

これで応募者のハードルが下がり、現場の活躍社員が応募し合格するようになった。「こうした事例が出た場合、キャリチャレのおかげで異動できたと社内で吹聴してください、と本人に伝えました。社内報でも取り上げてもらうようにもしました」

あわせて、部下の異動と退職という2つの問題をセットにし、人事が管理職に働きかけた。「自己申告による異動も含め、上司側が驚く『びっくり退職』をなくしたいという話をしたんです。普段から部下と対話し、中長期のキャリアについて聞くのがあなたたちの仕事です、と呼びかけたところ、社内で面談が頻繁に行われるようになりました」

キャリチャレは半年に1回の運用だが、その頻度では経営側のニーズに合わないケースもある。そこで、人事内にキャリアエージェントという社内ヘッドハンティングを行う部署が設けられた。役員や幹部クラスの新しい人材が欲しいという経営側のニーズを埋める機能を果たす。

その際、ふさわしい社員のデータを収集し、意向を確認しておく必要があるが、その材料となっているのが、Geppoという組織診断用ITツール。毎月1回、全社員が回答する欄に、年に1回、自分のキャリアに関する回答を書いてもらっている。「それも参照して、経営側のニーズにふさわしい人材を選出し、経営側が承諾したら、本人に声をかけ、具体的な選考に臨んでもらいます。社員にとって大事なことは次のキャリアが確定していることではなく、選択肢としてのキャリアオプションが豊富にあること。弊社にはかなり多くのオプションが用意されています」

そうした選択肢の多さが、変化の激しい事業環境に応じて人材を柔軟に配置していく土台になる。

年に70%の社員が異動を経験 生き物のような社内労働市場

もちろん、経営の意思が優先する異動も行われている。「弊社単体で年1回異動の社員が70%います。本人が拒否権を発動できる異動と、できない異動があり、どちらにするかは経営で決めます。上司による面談が徹底していますので、本人にとって『びっくり異動』は少ないはずですし、伝える側も受け手の反応は想定内のはずです」

異動希望者のいない不人気な部署はどうするのか。「キャリチャレで頑張って、自分たちの魅力を伝え、希望者を呼び込むしかありません。それでも異動者がない場合は、有期雇用や派遣、業務委託で回していくことになります。縮小せざるを得ない部署も同じで徐々に人を減らしていき、最後は外部人材の力を借ります」

まるで社内に生き物のごとく動く労働市場があるようだ。「その主は経営陣で、人気の部署に多くの社員が寄っていく流れが自然に実現されています。スタートアップのように、人気があってもそれほどの人数が必要でない組織は、経営の意向でキャリチャレをしばらく停止させます」

同社は本人都合、会社都合含め異動が非常に多く、頻繁に人が動く会社だといっていいだろう。それにともなってレイアウトの変更も多い。その結果、社員は変化というものに慣れているという。「わが社の競争力の主たる部分は変化対応力です。事業も移り変わってきましたし、地方や海外にも拠点を増やしてきた。だからこそ、社員にも変化を求めているんです。その象徴が異動です」

業績を上げるための経営戦略と、個人のキャリア自律は別物ではないと曽山氏は言う。やらされ感を排し、社員が自分でキャリアを選べる実感をもててこそ個人と会社が同じ方向を向ける。「社員のやる気を最大化させたいという思いと、それによって業績が上がることは僕のなかでセットです。社員のためだけでは半分で、社員のためと会社のためが両輪で回ることが重要です」

【text:荻野 進介 photo:伊藤 誠】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.82 特集1「企業の変化適応とキャリア自律の接点」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

SHARE

コラム一覧へ戻る

おすすめコラム

Column

関連する
無料セミナー・イベント

Seminer&Event

サービスを
ご検討中のお客様へ

電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください

SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ
0120-314-855

受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)

facebook
x