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企業事例

最適配置と自律的キャリア形成支援 NECライフキャリア

組織価値の源泉として社員の主体性向上に経営が本気で取り組む

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  • 公開日:2026/06/01
  • 更新日:2026/06/01
組織価値の源泉として社員の主体性向上に経営が本気で取り組む

NECライフキャリアは2020年に設立された、日本電気(以下「NEC」)グループ社員の主体的なキャリア形成を支援する企業だ。同社のキャリアオーナーシップに向けた取り組みと、それによって目指す未来について、代表取締役社長の佐藤秀明氏に聞いた。

挑戦・成長し続けられる環境づくり
「選び、選ばれる関係」を支援する専門会社の役割
適時適所適材の配置とキャリア自律の実現に向けて

挑戦・成長し続けられる環境づくり

20世紀のNECは、半導体やPCを得意とする企業だった。ところが2010年代に入ると、主力事業がDXや海底ケーブル、電子政府などへとシフト。これにともなって製造現場から先端領域への配置転換が加速するなか、同社は早い時期からキャリアオーナーシップへの取り組みに着手していた。1990年代後半には「輝く個人の育成」というスローガンを掲げ、他社に先がけて社員のキャリア自律を促す取り組みを開始した。

大きな転機となったのが、2018年に行われた大規模な人員削減だ。このときNEC本社の人事部長だった佐藤氏は、強い危機感を抱いたと語る。「リストラによる財務改善効果は一時的なものにすぎず、それを繰り返して業績を改善することは長い目で見れば企業の底力を削ぐだけだと私は痛感しました。その思いは経営陣も同じで、これを機に、社員の力を最大限引き出す全社的な改革『Project RISE』が始動したのです。その一環として打ち出されたのが、社員一人ひとりが主体的にキャリアを捉え、自らの価値を最大化できる仕事に自らの意思で挑戦する方針でした。

それまでのNECでは、『キャリアは組織が作り、社員は企業から守られる存在』という考え方が一般的でした。しかし、これでは社員の成長スピードはどうしても鈍化し、組織の価値も高まりません。そこで当社は、社員が自らのキャリア構築に責任をもち、主体的に成長を目指すやり方に変えようと改めて決意したのです」

「選び、選ばれる関係」を支援する専門会社の役割

社員が主体的にキャリアづくりを行うようになり、それまでの「企業が守り社員が守られる関係」は互いに「選び、選ばれる関係」へと大きく変わった。それにともない進められたのがジョブ型人事制度の推進と賃金制度の改定だ。「各組織が戦略に基づいて必要な職務を明確にし、市場価値に基づいた賃金設計を行うようにしました。必要な人材に他の社員とのバランスをとった賃金しか払わなければ、『選ばれない企業』となり、適正な人材を獲得できないためです」

これと並行して取り組んだのが、社員のキャリア自律に対する意識改革とそれを支える仕組みの再構築だ。「当社は手挙げでの異動や転職経験のない社員が多く、配置転換を求められリスキリングが必要になっても、どう動けばいいのか戸惑いがちでした。こうした問題の解決を現場任せにせず、リスキリング支援やグループ内外の仕事へ個別マッチング支援を行うことをNECライフキャリアでは行っています」

同社の役割は、大きく分けて以下の5つ。
(1)専門家によるキャリアコンサルティングを通じ、社員のキャリア自律を支援
(2)社員が目指すキャリアの実現に欠かせない力を、研修プログラムの提供などで養成
(3)活躍の場を求める社員に、グループ内はもちろん、外部の求人とのマッチングの機会を提供
(4)社員の働きやすさを高めるため、管理職のマネジメント力を高めるプログラムを実施
(5)心身に不調をきたした社員の復職などを手助けするウェルネスサポートの整備

これらの業務に対し、従来の人事部でもできたと考える人がいるかもしれない。だが佐藤氏は、新会社創設の意義は大きかったと断言する。「理由は3つあります。1つ目は、分社化によってキャリア支援のプロを集めやすくなったこと。スキルの棚卸しから職務経歴書作成、面接指導、社内外との人材マッチングまで幅広いサービスを提供できているのは、専門的な資格をもち経験豊かなスタッフを数多く招聘できたからです。

2つ目の意義は、相談者に安心感を与えられることです。当社を訪れるグループ社員のなかには、『相談内容を上司に報告されないか?』などの不安を抱える人もいます。しかし、私たちは人事部ではなく、独立性を保った別企業。また、守秘義務があって相談内容を本社に口外しないことを、明確に打ち出していますから、相談者は安心して本音を打ち明けられるのです。

そして3つ目の意義は、人事改革への熱意がグループ全体に届いたことです。以前はキャリア自律の取り組みを進めても、社内にはなかなか浸透しませんでした。しかし、あえてNECライフキャリアという法人を作ったことで、『キャリア自律を本気で実現する』という覚悟がグループ全体に伝わったのです。その結果、改革は加速していきました」

適時適所適材の配置とキャリア自律の実現に向けて

NECグループは報酬や評価の仕組みを大きく変え、適時適所適材の実現に向けて、社内公募も上司への申請不要・一年中いつでも異動可能というオープンなものにした。その結果、社内の人材流動性は高まった。「当初は、異動しやすくなることで不人気部門から人が抜け、事業が立ち行かなくなるのではという懸念がありました。しかし、多くの事業責任者から『仮に社内から人をとられなくても、社外からとられる。だったら、魅力的な仕事を用意して社員を引きつけるのがわれわれの役割』と言われ、目を開かれる思いでした。同時に、『選び、選ばれる関係』が社内に浸透したのを感じたものです」

このように、経営が、社員の主体性が組織の価値の源泉であることを本気で信じ、積み重ねてきた数々の取り組みによって、社員のキャリア自律を高める施策が推進されている。さらには、経営への価値提供として、匿名性を担保した上で、面談などから得られたデータを解析し、エンゲージメントへの影響力を測定するなどして、グループの人事戦略への提言も行っているという。「われわれNECライフキャリアは独立した企業なので、社員給与の源泉となる売上は、NECの売上から得ています。ですから、当社がNECグループ全体に対してどんな価値を提供できるのか、常に模索し続けています。キャリア自律支援の専門スキルにより、社員のエンゲージメント向上や組織の活性化を実現する。その結果、強い個人と強い組織を育て、全社の経営に価値をもたらすことが、私たちの存在意義であると考えています」

【text:白谷 輝英 photo:伊藤 誠】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.82 特集1「企業の変化適応とキャリア自律の接点」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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