企業事例
管理職の働き方改革と並行して働きがいの追及も進む 丸井グループ
管理職一体となり働き方や役割のマイナス像を払拭
- 公開日:2026/03/09
- 更新日:2026/03/09
管理職への昇進を嫌う現象が多くの企業で起こっている。背景には多忙さに代表される管理職イメージの悪化が挙げられる。株式会社丸井グループにおいて、それを払拭すべく立ち上がった、管理職有志による活動を紹介する。人事部長 原田信也氏(写真中央)、人事部 人材開発課長 高栁麻紀氏(同左)、同ワーキングインクルージョン推進担当 課長 後藤久美子氏(同右)のお三方に、詳しくお話を伺った。
管理職の働き方の見直しから着手すべく管理職自らが結集
丸井グループで、2023年8月、「コロナ以降の働き方検討イニシアティブ(以下、イニシアティブ)」という活動が始まった。メンバーは手挙げにより集まった9名の管理職だ。多様な人材が活躍できる風土の実現に向け、コロナ禍以降の働き方を提案・推進するプロジェクトで、まずは管理職の働き方の見直しから着手すべく組成された。
同社人事部ワーキングインクルージョン推進担当課長の後藤久美子氏が話す。「組織ができたきっかけは社内調査の2つの結果でした。1つは、コロナ禍以降、テレワークなど自律的に働く環境が選択できることへのニーズが顕在化したことです。もう1つは2019年から、昇進を目指す志向が低下、特に女性のそれが落ちたことです。2019年に目指したい割合が68%だったのが、2023年には58%まで下がってしまいました。管理職を目指さない理由を探ったところ、男女ともに、1位がプライベートとの両立が難しいこと、2位が仕事量の多さでした」
そこで、一般社員と管理職の働き方を比較したところ、テレワーク率、有給取得率、男性育休取得率の3つともに管理職は一般社員より低いことが判明。逆に、時間外労働は月当たり17時間も多かった。「管理職本人の認識としては、現状の時間外労働の多さを減らしたいという人が55%で、理想の時間は月20時間未満でした」
なぜそんなに時間外労働が多くなるのか。その理由を管理職に聞いたところ、1位「会議・打ち合わせが多い」(58%)、2位「会社から求められる提出物が多い」(54%)、3位「トラブルや急な依頼業務が多い」(53%)、4位「資料作成が多い」(34%)の順だった。
では、管理職が疲弊しているのかといえば、必ずしもそうともいえなかった。「管理職は一般社員に比べ、『仕事をしていると活力がみなぎるように感じる』かつ『自分の仕事に誇りを感じる』の2つの要素で測られるワークエンゲージメントが高いことが分かりました。管理職は生き生きと働いているものの、働き方の負荷は高いという構造が明らかになったのです」
そこで、イニシアティブのメンバーが管理職層に詳細なインタビューを行った。「結果、今の働き方は自分が選択したもので、ある程度は仕方ないという意識の人が多く、行動変容が起こりにくいことが分かりました。ただ、30代半ばの若手管理職を中心に、今の働き方に違和感を抱いている人もいました。自分が入社した2010年代から丸井グループは残業の少ないホワイト企業なのに、管理職になった途端、長時間労働を強いられるのはおかしい、というわけです」
企業文化の変革を実行「上意下達」から「支援」へ
丸井グループは、1931年の創業時から小売りと金融が一体化した独自のビジネスモデルを展開。特に1980年代後半のバブル期に「赤いカードの丸井」をキャッチフレーズに業績を伸ばしたが、少子高齢化や若者向けファッションのコモディティ化をきっかけに小売りが低迷し、2009年と翌々年に2度の赤字決算を経験している。現職の社長である青井浩氏がそれを機に根本的な企業文化の変革に取り組んだ。人事部長の原田信也氏が語る。
「企業理念を『人の成長=企業の成長』とし、強制ではなく自主性、やらされ感ではなく楽しさ、業績の向上ではなく価値の向上を目指す企業文化に作り替えようとしたのです。マネジメントの文脈でいうと、上意下達から支援への転換です」
働き方改革にも取り組んだ。2008年3月に月間11時間だった1人当たりの時間外労働が2022年3月には約4時間まで削減された。「一時期、日本一残業の少ない会社を謳っていたこともあります。背景には、仕事にとって重要なのは価値を生み出すことであり、長時間働くことではないという仕事観の転換がありました。今回、変革前の時代を知る管理職の世代と、その後に入社した世代の間に溝があることが判明したのだと思います」(原田氏)
こうした世代間ギャップの他、ライフステージの違いも、働き方への違和感を生んでいると想定された。管理職への昇進時期が育児や介護と重なる場合、現状の働き方の管理職を引き受けるのは難しいと考えるだろう、というわけである。「検討の結果、意識変革に向けた方向性が定まりました。まるで24時間働くような価値観には戻れない、残業を嫌う世代の管理職像を既存管理職に波及させ、全体の改革を促すことにしたのです」(後藤氏)
イニシアティブは、3カ月に1回ほど、社長や人事担当役員などとの対話も行いながら進められた。そしてこれらの材料をもとに、2024年2月、300名ほどいる管理職を全員集め、4日間かけて共有会を実施した。イニシアティブメンバーの取り組みを共有すると共に、「管理職の働き方」や「役割の方向性」について対話を行った結果、事後アンケートでは、管理職が働き方を変えていく必要性について、93%が「共感する」、自身の働き方を変えていく必要性について96%が「必要だ」とそれぞれ回答。「管理職が魅力あるポストにならないと、企業としての成長や創造性が停滞するという声が上がり、働き方をZ世代に合わせていくことにも共感してもらいました」(同)
取り組みの成果は翌年に表れた。管理職を目指さない理由として、「仕事量」「残業」「責任の重さ」を選んだ女性社員が2023年と比べ、2024年は大きく減少、時間外労働も半数以上が減少した。
これら管理職の働き方改革と並行して、働きがいの追求も進んでいる。2025年3月、管理職と、管理職を目指すか迷っている社員約30名を対象に、「働き方・働きがい共有会」が実施された。管理職の制度説明を人事が行った上で、管理職1名に非管理職が約2~5名つき、管理職になった前後での働き方の変化や子育てと仕事の両立、管理職のやりがいや大変さなど、生の話を共有してもらった。実施後、迷っている女性のうち、半数が目指す方向に気持ちが変化したという。「今後も同様の取り組みを進め、管理職手前のグレードの女性が管理職を志向する割合を、2024年の44%から2025年は55%に引き上げるのが目標です」(同)
一方で、若手管理職の増加にともなって教育研修の内容も見直しが進んでいる。人事部人材開発課長の高栁麻紀氏が話す。「今、特に力を入れているのが1on1研修です。独自の調査から、1on1においては、管理職である上司よりもメンバーが話している割合が高い方が、メンバーが、能力の活用度合いと挑戦度合いのどちらも高いフロー状態になりやすいことが分かりました。今後は自らの1on1の中身を、人事を介さずに確かめられるシステムも検討します」。人事部は管理職の仕事を多方面から支援していく考えだ。
【text:荻野 進介 photo:伊藤 誠】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.81 特集1「『持続可能な管理職』という考え方」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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