企業事例
「支援役に回る管理職を支えること」が今後の人事の役割 リコー
若手登用の促進と「支える人事」により管理職離れを防いだ
- 公開日:2026/03/02
- 更新日:2026/03/02
株式会社リコーは2022年、「リコー式ジョブ型人事制度」を導入。並行してさまざまな施策を打ち出した結果、30 代管理職の割合を大幅に伸ばすことに成功した。こうした改革の背景には何があったのか。そして、現在の社内はどうなっているのか、同社コーポレート執行役員 CHRO 人事総務部 部長の長久良子氏に聞いた。
新人事制度導入の背景には強い危機感があった
リコーが「リコー式ジョブ型人事制度」を取り入れた背景には、強烈な危機感があった。
「当社はもともと、企業の印刷需要から多くの利益を得ていましたが、コロナ禍でオフィスの縮小が起こって大打撃を受けました。その危機から脱却するため、2020年には『デジタルサービスの会社』への変革を宣言。翌2021年には社内カンパニー制を導入し、5つのビジネスユニット(BU)が事業運営を行う体制に移行しました。こうしたビジネスの変化に、人事制度の見直しも必要になりました」
以前の同社では管理職の比率が高く、なかでも、「部下をもたない管理職が多い」ことが課題だった。一方、人材登用に経験や実績を重視する傾向があり、若手が管理職に抜擢されるケースは多くなかった。若手は「上がつかえている」と感じ、やる気が削がれがちだったという。
こうした課題の解決に向けて取り入れられたのが、「リコー式ジョブ型人事制度」(図表1)だ。注目すべきは、マネージャー(M)/エキスパート(EX)とスタッフ(一般職)の間に、部下をもたず担当領域での目標達成を目指す「アソシエイト・エキスパート(AE)」を設けたこと。
<図表1>「リコー式ジョブ型人事制度」のグレード体系

「AEの在留期間は3年で、この間に成果を上げられなければスタッフとなります。新制度は2022年4月に導入し、2025年4月にはスタッフへの移行者が出ました。ただ、反発は予想外に小さかったです。理由の1つは、全社の業績を高め危機的状況から脱するという新制度の導入意図を丁寧に説明し、同時に、AEへのコミュニケーションを欠かさなかったこと。そしてもう1つが、3年間という猶予期間を設定したことでした。チャレンジの機会を与え、成果を上げればM /EXに再登用する姿勢を見せたことで、多くの方は納得してくれたのです」
若手の抜擢とマネージャーを支える空気が管理職離れを防ぐ
新たな人事制度では短期間で管理職になることが可能になり、やる気と能力のある若手の不満はかなり軽減された。さらに、BU制への移行も、マネジメントのあり方に大きな影響を与えた。
「以前は本社人事が昇格の判断を行っていましたが、今は各BUが職務内容と個人の能力・意欲などに基づき、マネージャー/エキスパートのポジションへの登用を決めています。こうした施策が機能し始めた結果、ジョブ型導入前の2022年3月には2.5 %だった30代管理職が、2025年4月には11.4%まで上昇しました。近く、20代の管理職も出ると予想しています。
世間では管理職を敬遠する若手が増えているといわれますが、当社ではそうした動きは目立ちません。例えば、最近私には、『来年、あのポストが空きますよね? 私ならうまくやれます』とアピールするような声が上がってくるようになりました。そのようにして自律的なキャリア構築を目指すたくましい若手は、着実に増えていると肌で感じます。各種サーベイの結果を見ても、希望を抱きながら働く人の比率が、以前より高くなっていますね」
現場がポジション登用・オフの判断を下すようになり、マネージャーの抱える負担は増える傾向。だが、「管理職を盛り立てる雰囲気」が職場にあることが管理職の支えになっていると長久氏は指摘する。
「業績が落ち込み、全社員が危機感を共有したことで、当社には皆で助け合おうとする機運が生まれました。それで人事制度が変わった際にも、マネージャーは『これからは人事任せにせず、現場が引っ張っていこう』というマインドに切り替わりましたし、部下たちにも上司と一緒に取り組もうとする姿勢が自然と表れたのではないでしょうか。2021年にHRBP(HRビジネスパートナー)を設置し、人事が各BUに寄り添い並走する仕組みが整ったことも、管理職支援に効果があったと思います」
人事は「支援役の管理職を支える役割」に徹すべし
デジタルサービスの会社への変革を目指す同社では、顧客ニーズの多様化に対応する施策にも注力している。その一環として行われているのが、管理職向け研修「マネジメントカレッジ」だ。
「変革のスピードを高めるには、自律性が高く、率先して事業を生み出す人材が不可欠です。ところが、部下を上から監督しようとする昔ながらのマネージャーでは、部下の自律性を高めることなど不可能でしょう。そこでマネジメントカレッジでは、マネージャーの意識を『管理型』から『支援型』に切り替えようとしています」
こうした動きにともない、人事も変わる必要があるというのが長久氏の考え。一昔前の人事は、人に関わることがらすべてを取り仕切ろうとしがちだった。しかし今後は、「支援役に回る管理職を支えること」が人事の役割になると語る。
「餅は餅屋といいますから、誰を抜擢するかなどの判断は現場に任せ、人事は黒子に徹するべきだと私は考えています。その上で、人に投資するというメッセージを会社として打ち出し全社に浸透させる。人材育成などに悩むマネージャーがいたら、人事のルールを押しつけたりせず、良き相談相手になる。そうして管理職の負担を少しでも取り除くことを大切にしたいです」
リコーでは若手にチャンスを与えつつ、ポジション登用・オフのルールを明確にして、社員に適度な緊張感を与えている。また、キャリアを自ら切り開き若手から憧れられる管理職を増やしたり、人事が現場に対して適切な支援を行ったりしていることが、管理職離れを防いでいるのかもしれない。こうした手法は、他の企業にもヒントとなるはずだ。
【text:白谷輝英 photo:平山 諭】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.81 特集1「「持続可能な管理職」という考え方」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
おすすめコラム
Column
関連する
無料セミナー
Online seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- サービス資料・お役立ち資料
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)






